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第13章 レギュラー争い

レギュラー争い


初出場の近畿大会は対戦相手の格の違いに圧倒されながら、斎藤の踏ん張りと井上の活躍で何とか三回戦まで進めた。


結果は敗退。


夏に向けて着実にステップアップしている気がした。

新入生が入って一ヶ月がたち、60人から早くも40人に減った。


しかしながら、人が多く入ったと言う事はそれだけいい人材に出会える確率も増えたと言う事


一年生の何人かに即戦力になりそうなのがいた。


すでに上級生の僕たちと練習している一年生もいた。

監督としては喜ばしい事だが、僕たちにとっては死活問題。


レギュラー組も、うかうかはしてられなかった。


内野手でなかなかいい奴がいた。


監督は夏に向けてレギュラー争いをさせて、チーム力を上げようとしているみたいだった。


「うっちゃん、なかなか一年豊作やな」


「確かに、ええのおるわ」

今や大エースの斎藤だけは安泰って感じだった。


「うかうかしてたらレギュラー取られわ」


「うっちゃんは大丈夫や」


お世辞でも嬉しかった。


しかし、現実はかなり厳しく、練習試合では僕をはじめ、こいちゃんもれんちゃんもスタメン落ちする事が多かった。


昨年に比べればチーム力は圧倒的に上がっていた。


それは結果が証明している。


話題先行のチームだった半年前とは何もかもちがっていた。


レギュラー争いは練習をハードさせていた。毎日、みっちりやっていた。


入りたての一年生にはさぞきつかった事だろう。


こいちゃんもレギュラー争いに必死だった。


守備力はぴか一だけどやはりバッティングは非力が災いしていた。


こいちゃんの手の平は女性とは思えない豆だらけだった。


れんちゃんはここ数カ月で身体がひとまわり大きくなった。


皆がレギュラー取りに必死だった。


そろそろ汗ばむ日が増えてきた。


夏の予選は刻々と近づいてきていた。


こいちゃんの県大会以降の出場については今だ進展がなかった。


ガッツで行こうもかなり色んな方面からアプローチをかけていたが、成果はなかった。


大人達の奔走の中、僕たちは何をすべきか悩んでいた。


そんな時にシンポジウム開催の案内がきた。


「高校野球シンポジウム」

主催は伏魔殿だった。


「これってなんなん?」


れんちゃんの疑問は当たり前だった。


「討論会みたいな感じちゃうか」


斎藤の言ったことがほぼ正解のようだった。


パネラーには元メジャーリーガーや甲子園を沸かした選手の名前があった。


なんだかんだと昨年は特待生問題でごたついてイメージ悪くなっただけに、色々策を練っているのだろう?

僕たちもそこに付け込んでこいちゃん問題を何とかしょうと思っていた。


シンポジウムは監督を含めて10人で行く事になった。


何だかのきっかけになればいいと思っていたが、現実はこいちゃんの甲子園出場は難しい状況にきていた。

県大会の出場を認めただけでもかなりの譲歩だと思ってるに違いない。


シンポジウムには子供から大人まで色々な人達が来ていた。


檀上ではパネラー達が高校野球について語り合っていた。


確かに面白い話しではあったが、女子選手についての話しは全くなかった。


シンポジウムの後半に来場者からの意見を聞く時間があった。


僕たちも手を挙げて機会をまったが、まったく相手にもしてもらえなかった。


ところが、ひとりの小学生が驚く質問をした。


その小学生はなぜ女子がだめなのかを質問し、自分の意見まで言ってのけた。


場内は驚き、檀上は浮足だった。


パネラー達はよく言う台詞を並べ立てているだけで、その小学生が納得出来るものではなかった。


会場からは、やじめいた言葉も飛び交い、ざわついた雰囲気になっていった。


それを静めるべく、伏魔殿の代表が前向きに検討している事を連呼し、県大会までに結論を出すといった。

小学生は最後に力があるものがレギュラーになれる、だから野球は楽しい男も女も関係ないと締め括り、会場は拍手喝采で幕を閉じた。


シンポジウム終了後、僕たちはあの小学生を探した。

マスコミ陣が彼を取り囲み取材をしているのを見つけ、僕たちは駆け寄った。


こいちゃんは我慢できず、取材の輪に割って入り、彼を抱きしめてお礼を言った。


彼は照れ臭そうにしながらも、こいちゃんにエールを送った。


彼の名前は坂本タケルくん、小学五年生だった。


もちろんガッツで行こう見てくれて応援してくれてる一人だった。


彼も僕と同様に幼なじみで野球をしている女の子がいるらしい。


でも、色々な弊害で悩んでる姿を見ているのて゛今回の事は他人事に思えないようだった。


こいちゃんと僕たちは、必ず甲子園出場してみせると約束をした。

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