第七話
今回は区切るところがちょっと変ですかね?
感想ありがとうございます。
いろんな人が待っててくれるのは嬉しいですね。
さて、結構時間がかかったが、何とか終わった。さて、今日ですでに五日目になるわけか。ゲーム時間で二十四時を回って日付も変わっている。現実時間で二十一時を三分過ぎか。一旦ログアウトしてご飯にしよう。……一応キーヴにも連絡しておくか。
『一旦ログアウトして飯にするけど、どうするよ?』
『お、俺も食う。俺のも作ってくれ』
ああ、やっぱりか。
『ならお前買い出しな。材料費はそっちで出してくれ』
『ちょ、そこは折半だろ!?』
『今朝の睡眠時間の代金と朝飯の代金だと思え』
朝飯がっつり派のキーヴはかなり食う。朝からご飯とみそ汁、目玉焼きに焼き魚。更になぜか麻婆豆腐まで作らされた。いつもは言うように食う量はキーヴが多いので割合七対三で、買い出しを頼む時には手間賃として折半にしているんだが、先も言った通り今朝の朝飯は俺の昼飯分の材料も奴が食ってしまったから妥当だと思う。そういうとしぶしぶと買い出しを了承した。その代わりメニューはキーヴに任せた。
いつもの宿でログアウトして現実に戻るとすでにキーヴ――いや現実だし健次か、が待っていた。……俺、鍵かけてなかったか? 見るとベランダが空いていた。今朝、健次の部屋に突撃してそのままだったか。今度から気を付けよう。
健次が何をしに来たのかと思ったら晩飯のリクエストだった。
「今日はせっかくだからゴージャスに行こうと思う。ってことで暑いけどハンバーグが食いたいんだが」
ゴージャスでハンバーグ。子供か。簡単に麺類でもいいかと思っていたんだけどな。まあ、メニューは健次に任せるって言ったし、しょうがない。
「まあいいよ。少し時間かかるし、早めに材料買ってこいよ」
「っしゃ。じゃ、行ってくる」
ドタドタと玄関に行き、ベランダから来た事を思い出したんだろう。引き返してベランダから部屋に戻っていった。俺も準備をするかな。
米を砥いでから炊飯器へ。米の準備もできたし、食器も洗った。冷蔵庫の確認もしたし、あとは食材待ちだな。
と、インターホンが鳴った。タイミングよく健次が帰ってきた様だ。
「おう、おかえ、り?」
戸を開けると、そこには健次だけでなく知香の姿があった。
「何で知香が居んの?」
「そこのスーパーで会って。晩飯ハンバーグって言ったら付いてきた」
えらくざっくりした説明だ。あなたのお家は車で十五分は離れた地元ですよね。なぜいるし。しかもごはん二人分しか準備してないんですが。
「それくらい何とかなるでしょ。私の分も余分に材料買ってきたし、お金も出したのよ? なら食べる権利はあるわ」
と言ってきた。こっちにいた理由は言わなかったけど。まあ、確かに買い物はこっちが便利ではあるけど、車だろうし子供じゃないから余計な心配だろうと思うが時間遅めだけど大丈夫か? でもまあ一応了承した。その代り料理の助手を頼んだ。健次は準備と片付けだな。
料理自体はそんなに難しくはない。知香が肉を多めに買ってきたので、一人二つのハンバーグとなった。しかもサイズは手の平サイズ。減った米の分を補って余りある量だった。
冷蔵庫にチーズがあったのでチーズハンバーグと半熟玉子を乗せたハンバーグ――半玉バーグとでも名付けよう、を作った。
せっせと作って知香と一緒に焼く。キッチンも広いので二人並んで焼けるのは便利だ。健次の祖父さんに感謝だ。
牛ミンチのみのハンバーグなので若干レアに仕上げてみた。
そんなに手間のかかる料理じゃないのでさっと作って終了。食べたけど味も上々だ。健次がワインを買ってきていたからそれも開ける。この後、ログインする予定なので一杯だけだ。泥酔状態、とまで行かなくとも酔った状態だと脳波が状態異常を示してログインできないからだ。もちろん知香はぶどうジュースで。
「で、健次の調子はどうだ?」
片付けが終わってお茶を飲みながら進行状況を聞いていみた。
「戦闘は結構慣れてきたかな。今はSS使う練習中だな。優の方はどうだ?」
「俺はまだ街から出てないからな。地味にアビリティ増殖中だ。出来れば素早さ重視で行きたいからな。あ、今はジョブでダンサーってのになった。踊るだけだけど敏捷に補正があったからラッキーかなと思う」
ジョブのところで健次と知香が反応したけど、ダンサーと言ったら微妙な顔になった。まあできることも微妙だしな。
「知香はどうなんだ?」
知香に話を振るとさらに微妙な顔をした。
「例の時間加速はいいんだけど、ログインまでの冷却時間がちょっと不便ね。それにあんた達の成長ブーストも何か腹立つわね」
そんなことを言われてもどれも運営側が決めたことだしな。
「んなこと言ってもいくらブーストかかっててもまだ知香のステータスには遠いぞ?」
健次が反論するが知香の指摘点はステータス値ではないらしい。
「そうじゃなくて、私が苦労したところをサクッと終わらせるのがイラッとするのよ」
ああ、例の道場な。
「でもあれも微妙だぞ? ちょっと教えてもらって少し素振りしたら終わりってどうよ? 一応基本と型は教わって使えるからアビリティ取得したんだろうけど、実際のとこちゃんと使えるのか不安だったわ。戦闘してみるとちょっとぎこちない気もしたし。まだ体が覚えてないって感じだった」
健次がそう伝えると少し考えて渋い顔をして、それもそうね、と肯定された。俺もそう思うし、理解が得られて何よりだ。システムのアシストがあっても長時間教わったほうが身体もちゃんと動くだろう。
「今日はもう二時間くらいインしたら寝ようと思ってるけどどうする?」
明日は休みだし、朝にログインしたら昼を取ったあとは八時間くらいぶっ続けてインしようと思っている。そのことを伝えると二人とも大体同じ予定らしい。健次が朝飯と昼飯を俺に頼むと知香が羨ましげにこちらを見てきたが、流石にそれだけのために来ることはないと思う。それに知香は家で料理しないじゃんね。小母さんいるし。
健次がそろそろ一緒できるかと聞いてきたが、俺はまだ街から出てないし、知香との差も流石に開いているので、もう少し差が縮まってからということになった。成長ブーストがあるのでそれほど時間かからないだろうけどな。
知香もログインするために帰るとのことでお開きになった。現在十一時半。今行っても夜なので少し休んで、そうだな……後一時間くらいしたら俺もログインしようと思う。
寝落ちした。焦って時計を確認したらまだ零時四十分。ゲーム内でも寝てるからか短時間で起きられてよかった。早速ログインした。
さて、とりあえずざっくりとだが街でできることを消化したつもりなので、今度は狩りなどの戦闘をやろうと思う。二時間ってことはゲームで十六時間。計画的に行こう。
街から出るために門に向って走る。流石に街を守る門だ。城の門も出かかったがその倍くらいありそうだ。その門の前には初心者のための掲示板が複数あり、数人のプレイヤーが熱心に読んでいた。俺も並んで読んでみた。
一番大きな掲示板には地図が書かれており、東門から出ると初心者フィールドとあり、森に囲まれた草原で森の奥は深い谷と川が流れている。川は街の北にある湖から流れており、湖から用水路が北門のさらに西側から街に引かれている。その周りには農場とあり、これは北門とつながっている。初心者フィールドの南側には柵がされた牧場があり、馬と羊が放牧されているようだ。牧場のさらに南は崖があり、これは西門から迂回しなければ進むことが出来そうにない。初心者フィールドとあるだけに閉鎖的な場所らしい。東門と北門南門は一つのフィールドと思っていいようだ。その他の場所に行くには西門から出るようだが、そこから先は地図に載っていない。
隣の掲示板には初心者フィールドのモンスター情報が載っていた。草原にはノンアクティブのラビィが棲息しており薬草等を食べていると。そのためラビィを見付けた時には周りを探すとよく薬草等が有るらしい。俺も探してみよう。
森の方はアクティブのモンスターが多く、ウルフやベアと呼ばれる基本的なものが多い。
南側に近づくと牧場の動物を狙うウルフが森より大きな群れを作っているとのことだ。
たぶんだけど、草原で基本的な動作を学び森で応用編、牧場で多数を相手に仕上げといった難易度調整だと思う。
さらに読んでいくと、モンスターのドロップアイテムは解体して手に入れるとある。ご丁寧に解体手順まで明記されている。
本格的過ぎる。ここまで来ると呆れを通り越して感心する。
倒しかた次第では解体しても得られないものもあるらしい。例えが載っているがそれによると、毛皮等が欲しい人が火属性の魔法を使って倒すと、皮が焦げて使い物にならなくなるとのことだ。斬りつけて傷だらけにしても同様らしい。
戦闘時の希少部位破壊と解体ミスは気を付けるように書いてあるので、レアドロップの有無は戦闘内容と解体状態によるみたいだ。
運営頑張りすぎだろう。俺は今でこそマンション暮らしだが、もともとは田舎者なのでじいちゃんの捕った猪を解体したりして慣れてるけど、人によってはキツいぞ。このゲームは嗅覚もしっかり再現されてるし。
……読み続けると一応解体屋が居たり、死体そのままでも買取ってくれたりもするらしいが、手間賃が掛かったりするため、自分で解体を推奨とあった。解体専門の人とパーティを組むのも有効とある。解体専門の人とかもいるのか。どんな人かちょっと気にもなるが、俺はお世話にはならない、と思う。