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改稿版 New Life  作者: basi
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第四話

確認はしている……はず

何かあったらご連絡ください

 この世界での新しい人生(ニューライフ)が始まった。

 まずすることは――『走る』。

 移動の際はとにかく走る。とにかくアビリティを覚えて自身を強化。

 俺はマッチョ系より速度重視で行きたい。速さで翻弄するのってかっこいいよな。

「何にせよ、まずは装備を揃えないと」

 そのためには、お金が必要だ。初期は1000Gガル持っているが、色々としたい俺としては全く足りない気がする。

 とりあえずお金を稼ぐために仕事か何かを探さねば。クエストリストなどないし、何をすればいいやら。悩んでいたけど、思い切って目についたNPCに話しかけた。

「すいません」

 街を歩いていた女性NPCに声をかける。

「はい? あら、こんにちは。見たことない人ね。何かごようかしら?」

「あの、初めてこの街に来たんです。買い物をしたいのですが、ちょっとお金が足りなくて……。何かいい仕事とかありませんか?」

 このゲームでは決まった形のクエストが少ない。こちらの話し方、内容によってクエストの内容から目的、報酬も変わる……らしい。

「そうなの~。ミルスへようこそ。そうねぇ……そうだわ。この先の武器屋さんが私の知り合いなの。そこで何か仕事がないか聞いてみて。メリーザからの紹介だって言えば大丈夫よ」

『チェーンクエスト《武器製造》発生』

 突然のアナウンスに驚いた。うわぁ……いきなり製造系のクエストか。まあいいか。受けれたってことは発生条件をクリアしてるんだろうし、とりあえず出来ることを一つずつクリアしていこう。

「ありがとうございます。早速行ってみます」

 初めてのアビリティはまだお預けかな。って初アビリティは知香の、じゃないエルファの一撃でゲットしたんだった。


 やっぱり店を探しながら走ってもアビリティのゲットはならなかった。まあ、店が結構近かったのもあるけど。

「すみませーん。メリーザさんからの紹介できたのですが」

 そう声をかけると奥からひとりの女性が出てきた。

「メリーザから? 珍しいじゃないか。それで何の用だい」

「……こちらで仕事を紹介して頂けるとのことだったのですが」

 出てきた女性に正直圧倒された。とにかくデカイ。女性には失礼な表現だったかもしれないが、とにかく身長が高く体も女性らしい細っそりした感じではなく、ムキムキだ。首もかなり太ましい。

「ふん、そうかい。まぁメリーザの紹介なら仕方ない。あたしはイアンナだ――ちょっと手伝いな」

 そう言うと付いてこいと促され俺は店の奥に連れて行かれた。

 そして「製造クエスト」というより「しごき」が始まった。


「甘い! そんな研ぎ方じゃなまくらになっちまうよ。馬鹿! そっちの石じゃないよ。荒い石からって教えただろ。そりゃ仕上げ石だ」

「柄がガタガタ、やり直し!」

「なかなか覚えが早いじゃないか。鍛えがいがあるね……もっとビシバシ行くよ!」

「炉の温度が低い! もっとしっかり空気送る!!」

「馬鹿! まだ早いって言ってんでしょうが! 鉄の色を良く見な、まだ温度が低いんだよ。しっかり見なっての」

「そんな打ち方で何造ろうってんだい! 鉄の棒造ってんじゃないんだからね」

「何だいこの細工は……ミミズがのたくってんのかい?」

 研ぎ方から始まり武器の組立、錬鉄、鍛鉄、成型・製造、刀身の細工と一つ終わるとすぐ次へ。休むことなく言葉通り「叩き」込まれた俺は彼女、イアンナから合格を貰った頃にはへとへとになり、崩れ落ちたのだ。

 このゲーム、HPはダメージだけでなく肉体疲労でも減るらしい。作業するだけでどんどん減っていった。時々殴られるし。そしてHPが切れかけるとイアンナがポーションをかける。どんなプレイだ。途中からは火傷の状態異常も受け、ギリギリまで放置。死にそうになると回復させられる。もう少し続いたらマズイ方向に目覚めそうだ。

 何度かシステムがアビリティなどの取得を知らせたがそれどころではなかった。今も確認する気力はない。

 日をまたぎ、仮眠の後繰り返される作業。そしてまた日が暮れる頃何とか終わることとなった。

「ま、なんとか見れる物が出来たね。とりあえず今位の腕なら最低限の売り物になるだろうさ。思ったより筋が良いのか短時間でここまで出来るとはね。さすがに予想しなかったよ」

 そう言われて気付いたけど、今は成長ブースト期間のはず。これが期間外だったらもっと長時間拘束されるのかと思うとかなり恐ろしいクエストだ。

 しかし短時間と言うが、時間を確認したところ四十二時間も経っていた。もう朝だし、なんだか異様に疲れた気がする。食事や仮眠をとったと言ってもほぼ休憩なしだった。いや、その条件で夜を二回も迎えたんだから当然だ。でもそのおかげで色々と今はなんかダメだな。報酬もらったら一旦ログアウトしよう。

「これが報酬だよ。何本かナマクラにされたからその分は引いてあるからね」

 受け取った報酬は――金貨二枚、ニ万ガル。これは多過ぎではないだろうか?

「……こんなに貰ってもいいんですか?」

 初期にしては多い報酬にビビっているのだがイアンナは

「当然さ。ウチはそこら辺の鍛冶屋とは違うからね。修理にしても製造にしてもそれなりの金額を取るからね。金貨二枚なんて安い安い」

 と豪気に笑うのだった。

「ありがとうございます。お世話になりました」

「おっと忘れてた」

 お礼を言って店を出ようとしたら呼び止められた。

「コレ。紹介状だから。アタシの知り合いの道具屋と防具屋。逃げんじゃないよ? ちゃんと行きな。地図も入れといたから。それとこれは餞別だよ」

 小包と二振りの短めの刀をくれた。

「あんた、剣を扱う時より刀を扱う時の方が目が輝いてたからね。興味あるんだろ?」

 しごきはキツかったけどいい人だ。

「ありがとうございます。大事に使います」

 そしてようやく店を出るのだった。


 初めてのログインでへとへとにしごかれたので一旦ログアウトした。ログアウト時には宿で部屋を取らないとログアウト中もゲーム内ではアバターが残るため、何をされるかわからないらしく、初心者用の安宿に泊まった。もちろん他に安全確保が出来る場所や悪戯をされることを一切気にしないならどこでログアウトしてもいいが。ちなみにNPCの家と言うか、民家なども家主の許可があればもちろん安全地帯だ。

ログインしてからログアウトまでが約六時間。すごい。改めてすごい技術だと思う。

 次のログイン可能になる時間まで後一時間、知香に言われて公式情報を調べた結果いくつか分かったこと。

 一つ、イベントなどの開催は現実時間で行われる。そりゃそうだ。現実にいるとゲームの時間が分かりにくい。だから、時間指定とか難しいだろう。

 一つ、ゲームの中ではゲームの時間がメインなので、通常表示の時計はゲーム内の時間。システムウィンドウを呼び出すとリアルの時間が表示されるとのこと。

 一つ、ゲーム内は時間経過が八倍なので、クエストを受けてログアウトすると時間切れになるものもあるのでクエスト受注時は気を付けなければならない。

 一つ、生産職の生産に関して。生産の為のスキルを使用すると効率は良いが品質は一定になるため、手順を踏んで手作業の方が品質も良く人気で、売値も高い。武器や防具などはスキルメイドでなくハンドメイドが多い。

 ざっくりと今関係ありそうなところだけ読んでみた。他にもいろいろあるが、今はこんなところで良いか。正直システム関連は結構細かくなっていて見るのが面倒くさい。でも知香はこれを読んだんだろう。すげぇわ。

「……知香に聞いてたらまた怒られただろうな」


 今朝は朝飯が早かったこともある。かなりお腹がすいた。ゲームでのことだけどしごかれたし、調べ物したり、なんだか疲れた気がするので、コンビニでインスタントにパスタやらドリアやらと甘いものをデザートに買ってきてお昼を軽く? 食べたりしていると、気がつくとログアウトしてから二時間近く経っていた。もっと早くログインするつもりだったので急いでログインすることにした。

 ログインし直して道具屋と防具屋に行った。行ったんだが、そこで自分の確認ミスというか何というか……色々有りましたよ、ええ。

 ――チェーンクエスト、クエストの連鎖ですよ。

 武器製造の時に表示されてたやつ。なぜ気付かなかったのか。しかもログインしたのはゲーム内で夕方じゃないですか。そこから製造クエストに行くとは思わなかったし。

 防具屋では皮加工と防具作成そして武器の時にもやったけど細工、道具屋では調薬と合成、ここでも更に細工。と言うかメインが細工だった。細工をどんだけやらせるんじゃ! と叫びたかった。でも怖かったので言えませんでした。

 とにかく叩き込まれた。イアンナと同じく「叩き」込まれました。最初は優しそうだったのに……。

 全て終わった時、外は発光魔素が少し明るくなっている。どうやら朝を迎えているようで……今何日目?

 ログインしたときからさらに四十八時間。え、まだそんな? もう三日くらい寝てない気がする。それくらいに、

「…………疲れた……」

 クエスト放棄すれば良かったのかもしれないが、クエストは受けたからにはクリアせねば。途中放棄なんぞMMOプレーヤーとして許せはせん。

 というか、失敗とかならともかく一度逃げたり諦めたりすると悪い癖が付きそうだからな。

 …………とか言ってみたけど、防具屋のデイルさんが疲れて半分寝ていた俺を荷物の様に抱えて道具屋に連行したから途中逃げられなかったのもあるが。いや、逃げるのが嫌だったのも本当だよ。

ステータスのおかげか慣れなのか、イアンナさんの時ほどではないのが救いか。

「とりあえず製造はもういいや……。そういえばアビリティとかどうなったかな」


 ユル 人

 称号 製造マスタリー 鬼達の弟子

 装備 直刀「無名」、直刀「無名」、デイルのコート、デイルのパンツ、デイルのシャツ、アルトの腕輪

 筋力 G+ 成長力 32%

 体力 G  成長率 26%

 敏捷 G  成長率 17%

 器用 F- 成長率 143%

 知力 G+ 成長率 31%

 総合攻撃力 F-

 総合防御力 G+


《レアアビリティ》

【職人の手Lv6】

《アビリティ》

 【物理耐性 Lv4】【研ぎ Lv5】【木材加工 Lv6】【火耐性 Lv6】【製鉄 Lv6】【練鉄 Lv6】【鋳造 Lv6】【鍛造 Lv5】【鍛鉄 Lv6】【上級武器製造 Lv1】【走行 Lv2】【上級防具製造 Lv1】【衣類製造 Lv6】【軽装備製造 Lv5】【重装備製造 Lv5】【裁縫 Lv4】【紡績 Lv6】【製糸 Lv6】【皮加工 Lv5】【金属加工 Lv5】【調薬・調剤 Lv4】【薬学 Lv5】【合成 Lv4】【分解 Lv6】【抽出 Lv6】【細工Lv7】【彫金 Lv3】


 増えた……増えすぎだ。これは把握というか管理するのが大変だな。

 ほとんどが製造関係なので器用の成長率がやたらと上がった。成長ブーストもあるしね。でもそれがあったから短時間で済んだんだろうな……そしてきっと製造を続けるとすごい数値になるんだろう。

ん? レアアビリティってなんだ?

珍しく説明書きがある。というか追加された?


《レアアビリティ:特定の条件をクリアすることによりステータス以外の要因で得られるアビリティ》


 ほほぅ。そんなものがあるのか。効果のほどはどうかな。


《職人の手:戦闘系アビリティを四つ以上習得する前に生産系アビリティを三つ取得した者が習得できる。生産アビリティの熟練度上昇率、製品の品質上昇率、器用値の成長率、各種上昇および製造時間短縮》


 なるほど。製造クエストがここまで早く終わったのはこれのおかげかな。と言うかこれがなかったら、いったいどれだけ時間を食うのか。


 気を取り直して上昇しているステータスを確認するため、アビリティの説明を見るとどうやら鍛鉄や鍛造で筋力の、薬学とかで知力の成長率が上がっているらしい。ついでに「叩き」込まれたので物理耐性が上昇して体力とか上がったけど何か……情けない、ね。かなりのスパルタでした。まあ、おかげでHPバーの減りは少なくなってきてる。疲れにくくもなったみたいだし。

 上級の製造があるが下級はないのかと思ったら下級が上級へ変わったらしい。上位を取ると下位は消えるのか。何が違うのかと思ったら、デザインとかを自分で変更したり、オリジナルのものが作れるらしい。なるほど。

 行動とって取得したことがそのまま能力になるのは良いけど確認がめんどくさい。

 アビリティの確認はあまりしないようにしよう。

 初めて取ったけどこの称号はなんだろうか?


《製造マスタリー:製造熟練度上昇率、製造品質上昇率アップ》

《鬼達の弟子:鬼の弟子からの進化。製造生産アビリティの習得率・熟練度上昇率アップ。師匠の指導下では効果がさらに上昇》


「おお、便利だ。……便利だけど製造はしばらくしたくないな。それにしても鬼達か……」

 うん、考えるのはよそう。さて、ログアウトにはまだ早いな。だって疲れてても朝だし。


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