第二十五話
森から出て村が見えるとこまで来たとき、前方にバンデットの群れがいた。村を襲うつもりなのか分からないが、見える範囲に居ると言うことは戦闘になる確率が高い。放置して村を襲われても厄介だ。
となると先手必勝。少し馬を止めてみんなに確認する。
「目の前に見える奴ら、狩るつもりだけど、どう?」
「いいんじゃないの。襲ってきても面倒だし」
「そうそう。数も少ないし、ちゃちゃっとやっちゃおうよ」
エリザも頷いて了承する。
「よし、じゃあ奇襲!」
馬上から弓を引いて発射。それと同時に馬を駆る。一匹は奇襲が効いたのか一撃で沈んだ。それによりこちらに気づいた群れが反転して駆けてきた。
馬を駆りながら次々と弓を射て掃射をかけるが、一撃で倒れるものは少ない。六本ばかり撃ち込んでから武器を変え、敵の中に突っ込む。
馬上での戦闘は初めてだが、牧場での事を思い出せ、と自分を励まし左右の刀を振る。
左右から飛び掛って来たのを上から振り下ろし、両断。すれ違いざまに薙ぎ払い、腹を切り裂く。正面から馬を狙ってきたやつ手を伸ばしてを突き殺し、後ろに回った奴をカイザーが蹴り殺す。
馬の突進に任せて弾き飛ばし、踵を返しまた突っ込む。その間も左右の刀を振り数を減らす。ふと気付くと、動くバンデットは居なかった。
なんだか呆気ないな。そう思っているとみんなが寄ってきた。
「ユル君、何かえらく強くなってない? あっという間だったよ」
「何で両手放して落ちないのよ」
「どうやったらそんな風に馬を操れるんですか?」
一気に聞かれても答えれんわ。
「あ~、質問は後で。コイツら解体して素材とってさっさっと村に行こう。腹減ったし」
教えることも多そうだし、一先ず村に戻ってからだ。
「馬での戦闘って難しいよ~。バランス取るのも難しいし、馬が怖がって動かないし」
食事を終えてから、宿の部屋でティアが切り出した。
戦闘の後、色々聞きたかったんだろうけど食事のあとでね~、と言っておいたのを守って今まで聞かなかったのだ。御陰でしっかりご飯食べました。ケプッ。
「それで、何か聞きたいことは?」
そう聞いたら、三人同時に話し出した。
「はいはい、順番にね」
「じゃあ、まず何で両手放して落馬しないの?」
「それと、どうやったらあんなに馬が云うことを聞いてくれるのか、です」
「そんでもって、えらく強くなってる気がするんだけど、気のせい?」
エルファとエリザの問いにはペイドさんに聞いたことを話す。
「なるほどね。それで一週間くらいずっと牧場に居たって言ってたのね」
「では練習と仲良くなることが課題ですね」
「そうなるね。まあ、接し方と後はひたすらに乗るだけだから。そんなに難しくはないしね。頑張って」
「ねぇ~、私の質問~」
「はいはい。強くなったっていうか、新しいアビリティを三つ程覚えたからじゃないかな。エーテル関係で気功にも影響してるだろうし。それでじゃないかな」
当然三人に教えて、と言われ教えるが、瞑想とイメージトレーニングはおろか小周天も覚えられなかったようだ。おそらく何かが足りないのだろう。
「要修行、だね」
そう言ってみんなで寝るまで瞑想とイメージトレーニングに励んだ。
しかし、女性と同じ部屋に居るといい匂いがして、俺だけ妄想と自制トレーニングになってしまったけど。