第二十一話
感想ありがとうございます
今回、異世界転移は無いですが、今後の予定ではかなり先で、ですが現実世界に影響が出てくる予定です
襲撃とかもなく、無事に朝を迎えた。朝食をとって、出発までの時間で道中に採取した薬草でポーションを作ることにした。
「ユルさん、出来はどうです?」
横合いからエリザがのぞき込んできた。
「ん、割と良いんじゃないかな。といっても暇つぶし程度だし物自体が低ランクだけどね」
実際に作ったものは初級ポーション。アルトさんと作ったハイポーションはまだ使わずにとってあるし、そもそも初級以外の材料がないし。
「あの、それ貰ってもいいですか?」
「これを? 別にいいよ。でもエリザにはあまり意味ないような」
確かに市販の初級ポーションより効果高いけど体力が高いエリザは効果が薄いはず。
「ポーション系の回復薬は飲まずに体にかけると徐々に回復して行くんです。初級ポーションは飲むより体にかけたほうが回復量は多いんですよ」
そうなのか、知らなかった。
「ならミドルポーションもあげようか? 結構作ってきたし」
「いえ、何故か初級以外のポーションは飲んだほうが効果が高いんです。噂だと製造系のレベル上げるのに初級作っても売る以外の需要が無いと勿体ないからじゃないか、って。実際に素材を採取しないで購入して作ると大した金額になりませんし」
「ん~、丸薬とか色々できるけど大したものじゃないしね。……あ、別にいいよ。結構な量出来たしね。需要があるならジャンジャン使っちゃってよ」
「ありがとうございます。でも戦闘が少ないのでそんなに使えないですけどね」
「そうだね。エンカウント率って大体どんなもの?」
「そうですね、積極的に探さないという条件であれば、平原や荒野だと平均して一日に一回程度ですか。運が悪いと一日に七回ぐらいじゃないかと。森の中だと平均が一日四回程度だと思いますよ。岩場や森が近いとエンカウント率は上がります。とはいっても周囲の生態系によって変わります。縄張りも関係しますし。これは今進んでいる開拓範囲の話ですが休憩はだいたい今みたいな平原で、もし夕方近くに森に入ることになりそうなら、その日は森に入るのをやめて少し早くても平原で野営の準備をして、次の日に一気に抜けますね。ちなみにダンジョンのエンカウント率はかなり高いですよ」
「やっぱり森は多いのか」
野生の馬を捕るには森に行かないといけないから気を付けないとな。
その後、運よく? 戦闘は無く、二日目の夜。
「今日は一旦ログアウトするわ」
エルファの宣言で時間を思い出した。十八時インして二日目の夜なら今は二十三時を過ぎている。明日しっかりインするにはそろそろログアウトした方がいいかもしれない。
「んじゃあ、今日はご飯してログアウトだね。ユル君、ログアウト用テントは?」
「エルファに聞いてちゃんと準備してあるよ」
準備は万全ですよ。
「ふ~ん……ならご飯も準備してログアウトしちゃおうか」
ティアのその間はなんだろうか。ちょっと気になるけどまあいいか。
食事を終えてログイン時間を確認したらみんなでログアウトした。
少し小腹がすいたので買い置きのラーメンを食べて寝よう。
そういえば野営準備前に言っていたティアの例の間は、仲のいいパーティはパーティ用の大きなテントを各自が買ってローテーションで使うそうだ。そうすると各自一つのテントで長旅が出来てかさばらないそうだ。
「大きいテントにするように言おうかとも思ったけど、こっちの二人とはまだ初対面だし、止めておいたわ」
とエルファが言っていた。
「別におっきいのでよかったのにね~」
とティアはエリザに同意を求めていたが、困ったようなエリザの顔はエルファの選択が間違いではないと語っていた。
明日のログインは七時ジャスト。簡単に朝食が済ませられるようにセット。ついでに目覚ましもセットしてギリギリ日付が変わる前に布団に入れた。
目覚ましをセットすると目覚ましより先に目が覚めるという現象が結構発生する気がする。時計を見ると五時半には後五分ある。まあ遅刻するよりはいいか。
ご飯もタイマーで炊いてる最中で味噌汁も夕べから鰹節と昆布を漬けてある。少し熱して……はい、終わり。まだ六時にもなってないというね。シャワーでも浴びてこよう。
そう言えば今朝は健次がまだ静かだ。まあ平和で結構であるが。一応メールでもしておこう。『パーティー組んでるから七時ジャストログイン。よって飯は諦めろ……とは言わないが片付けはよろしく。ベランダを開けておいてやるよ』よし、送信。優しいな俺。
ログインするともうすでに朝食の準備が出来ていた。時間を間違えたわけではなく、みんなが早く入ったそうだ。と言っても現実で十分くらいの話。現実の十分がゲームでは八十分。……お待たせしました。
料理はエルファも作ったと聞いて不安になったけど、どうやら味付け以外で手伝ったらしい。なら一安心だ。エリザは基本的に不器用らしく、包丁持っても危なく、料理下手に多い謎のアレンジをしたがるそうで危険物になりやすいため、食器等の準備だけ手伝ったとのこと。
サクッと朝食を済ませて出発する。
途中、ラビィの群れがいたがそのまま放置。それ以外は特に何もなく三日目の昼過ぎ、森が広がり始め、だんだんとその手前に小さく建物が見えてきた。あれがカヴァーロの村だろう。
カヴァーロに着いたのは夕方近くだった。
門、といえるものは特になく、周囲を木の壁で囲まれた村だった。
「こいつは珍しい。何年ぶりのお客かの」
村に入ってすぐの位置にある家の軒下で編み物をしていた老婆がこちらに気づいた。
「お婆さん、こんにちは」
「おうおう、こんにちは。めんこいのが大勢来なさった」
めんこいって、俺も入ってるのか。
「こんなところに何しに来なさったね。ただの旅人かい?」
「私たちは此処で馬を手に入れられると聞いて来たんですが」
「ほっほ、馬かね。ペイドめ、最近来なんだと思ったら、こんなめんこいのを寄越すとはの」
ペイドさんを知ってるのか。もしかしてペイドさんの御遣いだと思われてるのか。
「いえ、馬が欲しいのは俺たちです。ペイドさんから此処に来ると手に入ると聞いたので」
「ほ、嬢ちゃん達が欲しいのかい。そりゃそりゃあ。しかし、ちとタイミングが悪かったの。今、余った馬がおらんのじゃよ」
「え、なぜです?」
「ここ最近、馬が欲しいっちゅう者がおらんでな。養うのも易くない。皆自分の持ち馬で精一杯じゃからな。昔みたいに馬で暮らしとらんのじゃ」
ははぁ、ペイドさんも自分で繁殖させてるみたいだしな。昔は結構需要があったそうだが、今では馬車業者も自分で必要分育てるらしく、此処に来るのは病気が流行った時や戦があるとき位なのだそうだ。
まぁ元々俺は森で捕まえる予定だったし問題ないけど。と思ってたらエルファに腕を引かれて村との堺に引っ張られた。
「ちょっと、ユル。どうすんのよ」
「大丈夫。ペイドさんに森で野生の馬が捕まえられるって聞いてるし、俺は元々そのつもりだったから」
「なんだ、ちゃんと方法あるんじゃない。なら今日は遅いし明日ね」
「そうですね。お婆さん、宿屋とかってありますか?」
「宿か……一応在りはするが、ここ最近使ってないからの。聞いてみるといい。あそこがそうじゃよ」
お婆さんの指した先にはどう見ても普通の一軒家があった。
案内された宿ではちょっと困ったことが。
「ごめんなさいね。今まで誰も来なかったからここしか空いてなくて」
そう言って案内された部屋に、四人で座っている。
元々大勢の人が来る村ではなかったらしく、客室は二部屋。ただ、数年の利用者不在により物置と化しているために一部屋しか空いていないとのこと。
「あー……廊下かどっかで寝ようか? それか野営でもするし」
一応男であるし、このまま皆で、となると何をするわけでもないにしてもうれしく思うが、提案してみる。できればここで寝たいが。
「ええ~、別にそこまでしなくてもいいよ」
「え、でも」
「そうですね。これと言って不快ではないので別に一緒でもいいかと思います」
「え、あ、そう、ですか」
頬をポリポリと掻いて目を泳がせる。内心ガッツポーズを決めているけどそれをすると追い出されるかもしれない。
「私も一緒の部屋でいいわよ。ユルだし」
まあ、エルファはね。実家に帰った時、家族込でだが時々、一間で雑魚寝してるし。
「ん、わかったよ。なら次は明日のことだね。明日はなるべく早く森に入ろう。何処に馬が居るかわからないし、すぐに捕まえられるとも限らないからね」
「どうやって捕まえるんですか?」
「え、普通に捕まえるんじゃないの?」
「普通って?」
「……さぁ?」
皆固まってしまった。そういえば具体的方法を聞いてないな。
「あの、何か知ってますか?」
「俺が知ってるのは手懐ける方法、かな? ペイドさんに一応聞いてる。それ以外の事は聞かされてないから多分だけど、その方法で向こうが気に入ってくれたら自分から来てくれるよ」
「追っかけ回して縄とかで捕まえるわけじゃないんだ」
「……それをやる人は馬には乗れないと思うよ」
まあ、なんとかなるだろう。
「そろそろご飯にして、明日もあるからしっかり休もう」
どうにもならなかったらその時考えよう。
それよりも、ちゃんとご飯ってでるのかね?