第十七話
お待たせしております
三人称は外しております
そろそろ改稿前とはかなり変わって行きます
食糧は自作せずに売ってあるものを買った。ちょっと多目に準備したし釣り道具も一応作ってきた。弓も矢を多目に準備したのでかなり余裕がある。木の矢なら作れるし。ちなみに弓を使うのはイアンナさんには内緒にしている。初めての遠出なので弓も新調しようと他所の工房で気負わずにウルフラップド・ボウ+4を造った。
早めに着いたので荷物の確認をしていたらエルファ達が来た。
エルファの他には猫の獣人と盾装備の騎士かな? の人がいた。共に女性だ。
彼女達は此方に来ず立ち止まっていた。
「おはよう、エルファ。そっちの二人が一緒に来てくれるのか?」
エルファ達が動かないので此方から声をかける。
「初めまして。ユルです。一緒に来てくれるみたいで、ありがとうございます」
「私はティアだよ。馬が手に入るんだし気にしないで。仲良くしようね!」
「エリザです。不束者ですがよろしくお願いします」
初対面の三人でよろしく、こちらこそ、と挨拶をしているとエルファが詰め寄ってきた。
「な、何、かな? エルファ、近いよ」
「……その格好、どうしたのよ。見た感じだと初心者には結構な値段がするはずよ(似合ってるけど今日それじゃなくてもいいでしょうに)」
ああ、装備見てびっくりしたのか。実際、俺も驚いた。実は最初にコートを造った時に気付いたけど、下級装備と上級装備では値段が素敵に違う。生産アビリティ自体が違うのであたりまえだけど、素材の選別や加工箇所も様々。下級装備はある程度サイズの手直しが出来るが、上級装備は完全にオーダーメイドになる分、高価になる。しかも今の装備は装飾付与品。見た目もがらりと変わって値段も性能も違うのだ。
「結構大変だったけど自分で造ったよ」
「「「造った!?」」」
……うん、驚き過ぎだと思う。しかも他の二人まで。
俺は昨日エルファと別れてからのことを説明した。
「それでもおかしいんだけどね。普通、そんなに早く製造レベル上がらないし」
「でも上がったのは事実だしな。……死ぬかと思ったけど」
実はまだユル達も誰も知らないが、チェーンクエストは途中で止めるとそれまでの成果はすべて消えるのだ。代わりにそのクエスト間の成長率と報酬は高めである。この情報はもうしばらくするととある事情により流れることとなる。
そして永遠に誰も知らないことだが、ユルを指導した三人は生産ギルドの各職人の代表で《技の伝道師》《鬼指導官》の称号をもち、さらに《スパルタ》のアビリティ持ちだった。
これらの相乗効果がユルの急成長の理由だが、もちろん誰も知らない。
「まぁそんなこと言われてもどうしようもないことだし」
事実成長したんだし、造ったのも事実だ。
「……余計なことを」
エルファはまだ何かぶつぶつ言っている。
そろそろ出発したいんだけど。
「エルファ、そろそろ出発しませんか」
エルザさんがエルファに促し、漸く出発しようということになった。
何はともあれ、俺にとって初の旅だ。
いざ冒険へ、なんてね
出発したけど特に何もなく、しばらくは雑談が続く。
どうやらみんな同い年のようで敬語は止めた。エリザはあれがデフォらしい。慣れるとそのうちに少しは砕けた物言いになるとのこと。いいところの御嬢さんかと思ったけど、小学校の高学年くらいから身長が伸び始めて、ガサツになって男に思われたくないと中学校から丁寧な言葉づかいをするようにしたら癖になったそうだ。
俺達のパーティーは前衛の盾持ちのエリザ、ハンターのティア、後衛の魔術師エルファ、そしてダンサーの俺。
……新しいジョブが欲しい。ジョブだけ見ると役割謎すぎる。
装備を替えてから見た目とジョブが明らかに一致してない。
武器職人とかでもいいのに、と思ったら武器職人は存在しないらしい。意味わからん、と言ったらジョブとしての職人は刀剣鍛冶や皮加工職人などのプロで特化職らしい。もちろん職業以外の物も作れる。ただ、総合の武器、防具や装飾品といったジョブは無いそうだ。なので装備を変更するときには自分の装備の加工ジョブを持っているところに行くと良いものがあるらしい。他よりも高くはなるそうだが。
「ユル君、ユル君。ユル君は刀二本装備してるけど、筋力重視の攻撃型?」
「いや、敏捷重視でトリッキーなタイプを目指してる、つもり」
「なるほど~。ステータスとか教えてもらえる? 私等も教えるからさ」
と言ってエルザに確認をとる。事後承諾の形に苦笑しているが頷いているので問題ないみたいだ。
「私は前衛で皆さんの盾ですから。もちろん攻撃もしますよ」
エリザ 人
称号 耐える者
状態
装備 ロングソード「オノール」、ナイトメイル(全身)+8、エレメントシールド+9、豪傑の腕輪、祈りの腕輪
筋力 C+ 成長率 396%
体力 C+ 成長率 389%
敏捷 E+ 成長率 112%
器用 D- 成長率 146%
知力 E- 成長率 96%
精神 E- 成長率 106%
総合攻撃力 C-
総合防御力 C+
「私は遊撃かな。罠の設置や解除が主なお仕事だよん」
ティア 獣人・猫
称号 レクレスハンター
状態
装備 グリーディナイフ、柳葉飛刀×8、ディスカのチェニック、ディスカのパンツ、疾風のブーツ、盗賊の腕輪+7
筋力 D- 成長率 136%
体力 D 成長率 179%
敏捷 C- 成長率 282%
器用 C 成長率 326%
知力 D- 成長率 156%
精神 D- 成長率 146%
総合攻撃力 D+
総合防御力 D
「エルファは?」
「私はこの前見せたでしょ。あれから魔法系統が成長したくらいだからパス。二人も知ってるし」
「そうかい」
ユル 人
称号 製造マスター、鬼達の弟子
状態
装備 直刀「焔+3」、直刀「焔+4」、タリスメンラインコート+4、シャドウジャケット+5、シャドウパンツ+4、ミラジェンブーツ+5、ウェイクカフス+5、アーティザンリスト+4、エフォートチェーン+5
筋力 E 成長率 126%
体力 E 成長率 109%
敏捷 D 成長率 312%
器用 D- 成長率 266%
知力 F+ 成長率 99%
精神 E+ 成長率 162%
総合攻撃力 D-
総合防御力 E
「こんな感じ」
「……えらく高いね」
「第二陣のパラメータじゃないです」
と言われても困る。だいたい他の第二陣のパラメータ知らないし、成長ブーストとエーテルによる基礎能力の補正が大きいだけだと思う。
「エーテルの強度が上がると身体能力も上がるからだと思うよ。俺は今も練気はしてるし」
実は錬気はエーテルだけじゃなく生命力とエーテルを生み出す源も強化するらしい。それにより生命力とエーテルが強化される。生命力が上がるとそれにより身体能力が上がる。ただし、ステータスとして上がるのではなく、成長の基礎値が上がるらしい。練気で練って強度と濃度を上げて置けば能力が上昇する基礎が上がるのでステータスも上がってくる。
それに練って上昇した濃度と強度は余程のことがない限り減少しないらしい。ただ、死亡すると一気に減少するとのこと。発經とかの気の放出で減る気は練った気ではあるけど実際はちょっと違う。
練って上昇した濃度と強度というのは、器の中のエーテルで、放出するのはその状態から更に練ってあふれた物を放出する感じ。濃度はそのままの意味もあるけど器の深さ的? な意味合いもあるらしい。浅い井戸よりも深い井戸のほうが水の湧き出る量が多い、みたいな感じだと思う。強度っていうのはエーテルを取りこんで増やす量と言えばいいのかな。生産力みたいなものだ。
練気の説明をしっかりと読んだのは実は例の訓練。短時間集中の訓練だったので、より理解を深めるべく効果のイマイチわからないアビリティを色々と調べたらそう書いてあった。だからつい最近知ったことだったりする。
ちなみに濃度と強度は数値としては見れないので、なんとなくで適当に判断してる。
と、まあ簡単に説明したのだが、
「エーテルの強度って何?」
「練気って何ですか?」
「そんなこと聞いたことないわよ」
「はい?」
俺はエルファの言葉で魔法を習いに行ったはず。そのエルファが知らないとか、どういうこと?
「……皆はもちろん魔法を習ったんだよね?」
「もちろん」
「エーテルのことは聞いた?」
「魔力なら聞きました」
「魔力? エーテルじゃなくて?」
「そんな話はなかったわよ」
「ロウがちゃんと教えてくれたでしょ」
「「「ロウって誰?」ですか?」よ」
え~、なんで皆知らんのよ。一緒に教えてくれたじゃん。
「道場にそんな人居なかったわよ?」
「は? 道場? 城の訓練所だろ」
なんか情報がおかしい
「ユル君。道場で魔法を教えてもらったんじゃないの?」
「え、魔法って道場で教えてくれるんか?」
「私キーヴにも行ったわよね? まず道場ねって」
「あれって戦闘行動を覚えるためだろ? それにエルファは街では魔法系の行動をとっただけって言ってたじゃん。だから他所で魔法覚えたんだろ」
キーヴは戦闘力を伸ばしたいって言った。そしたらエルファは道場に行って修行(と云う名のアビリティを覚えるだけの行為)をして街の外へ~って言ったはず。ベリーも何やら学校がどうのこうの言ってた気がする。
「魔法は道場で教えてくれるし、それに魔法系の行動って知力上げるための行動よ」
えー、何それ。聞いてないし。
「じゃあ三人とも気功って知らない?」
「「「知らない」」です」
道場じゃ教えてもらえないのか? そういやロウも道場開いたけどやめたって言ってたしベリーもそれらしいこと言ってた気もする。でもそもそも何でいきなり道場行くんだ?
「公式ページに書いてあるし」
あ、俺読んでないからなぁ。
「……もしかして、街の人とあまり話とかしてない?」
「クエストとかある人は印でるし、用が無い人とはあまり話してないね」
それが原因か。てかこのゲーム、やたらとリアリティの追求をしてるのに何故そんなアシストが付いているのか(ちなみにシステムオプションで表示が出来るらしい。デフォは非表示。これも公式に書いてあるらしく今知った)。人との会話とか情報収集って冒険の基本じゃん。
ん? まてよ。瓦版屋に載ってれば皆も知ってるはず。ということは、このゲームのプレイヤー達はNPCと会話をほとんどしてない? ゲーマー達よ、何してるんだ。
「……皆、もっと人と話そうや」
あ、秘匿してるってこともあるか。
取りあえず、俺は魔法を覚えた経緯と、ロウに聞いたことを伝えた。
「あ、なるほど。何か覚えたよ」
「私も覚えました」
「私も……」
俺からの又聞きでも覚えられるんだ。まぁ魔法自体は修得してるんだから当然かも。
概念とかは楽に覚えたけどエーテル自体はやっぱり分かり難かったらしく俺が直接流し込んだ。
《ピンポン。アビリティ《指導》を修得》
なんだかあんまり役に立ちそうに無いアビリティが増えるな……