第十六話
短め
またまたやり直したくなってきたり……
普段なら楽勝の四匹の群れですが、一杯一杯です。
かわして発經、強化が切れる。気配が薄れる。避けきれず。という流れがあった。装備はもったいないので初期装備に戻してある。それもあって現在の俺は傷だらけです。途中、回復休憩をしないとすぐ死んでしまう。というか死にかけた。
ちなみに戦闘中の気配が薄れるというのは存在を感じないとかではなく、何と言うか殺気？ みたいなものを感じにくいということだ。感覚を強化しているので、空気の動きや音などでどの方向から攻撃が来るかが分かるのだが、強化が切れると大体どこに居るのかはわかっても、攻撃してきているのか何をしているのか、はっきりしなくなるのだ。
さて、休憩と反省をして再チャレンジ。発經の威力を抑えて気の減少を減らせば継続可能ではないかという意見が脳内会議で決まった。一番の問題点はただ錬気のレベルが低いのではないかというのが大多数の脳内俺の意見だった。何と言っても錬気は未だにLv2で熟練度は47％だ。恐ろしく成長度が低い。ロウが言っていた気功術の習得者が少ない原因はここにあるのかもしれない。
とりあえず三匹以下の群れを探しては、回避と発經を繰り返す。発經の威力を抑えているので強化が切れることはなくなったが、一匹をしとめるのに結構な時間がかかった。
結局三匹の群れをしとめるのに三十分かかった。発經の再発動までの気を練る時間もかかるので仕方ないとしてもかなり時間がかかっている。もう少し発經の威力をギリギリまで上げる必要があるかもしれない。
ログインしてから四時間程度が経った。
ようやく五つ目の群れを仕留めることが出来たが、非常に疲れた。発經の威力を上げたが、今度は強化の維持に意識が行って回避が遅れて攻撃がかすることが何度かあった。いくら回復できるといっても体力的にきついし、何と言っても集中力が必要でこれ以上は無理だ。
かなり早いが、今日はこれでログアウトしよう。
それから三日間はバイトを増やしてもらってログイン時間を減らした。
時間を制限して訓練しているからか、かなり集中した濃い訓練になったと思う。レベルも気功術Lv5の熟練度97％、外気功と内気功もそれぞれLv5になり錬気もLv3になり熟練度58％とログイン時間からみるとかなりの成長だ。ブーストさまさまだ。
さて、今日はエルファ達とカヴァーロへ向かう日だ。そして忘れてたけど大学の長期休暇が来週から始まるので実は大学の前期が今日までだ。そんなわけで今日は講義がないものが多い。俺も一コマだけであとはバイトを十七時までやって、十九時にはログインする予定だ。
猫を撫でまわしながら最近行っていることがある。それは錬気だ。別に現実で気功術が使えるとかじゃないけど、なんか出来たらいいな～くらいの軽い気持ちでやってる。実際にゲームと同じ感覚でやるとゲームでのスキルも上がりやすいかな、と思ったのがきっかけで、呼吸法と錬気をゲームの感覚を頼りにやっている。錬気はやってるつもりだけど、実際にゲームの中みたいな気が練れている感じとかはない。
まあ、あれだ。人に知られると結構恥ずかしいことをやっている自覚はある。
なので、人が来るとすぐやめている。
「毛玉取り、お願いします」
まだ若い女の子が奥から出てきた。お昼前に一人で来た子だ。昨日くらいから高校生くらいのお客さんをよく見かける。もう夏休みに入っているんだね。
「はい。ちょっと待ってくださいね」
そのまま立つと猫たちが転げ落ちるので一匹ずつ引きはがして立ち上がる。ちなみに習慣にもなっているので引きはがしてもすぐには乗ってこない。賢い子たちだ。
「と、ぉっとと……」
「きゃ」
バランスを崩してお客さんに寄りかかってしまった。けど相手は女の子。俺の胸辺りの身長の子は当然支えれずによろけた。流石に覆いかぶさってこけると危ないのでどうにか彼女を抱えて二、三歩ほどたたらを踏んだ。そんなに広くもないので何とか壁に手を付いて体を支えた。
「ごめん。大丈夫？ 慣れてなくて」
体制を治して彼女を解放した。今日の服装イメージは秘書だそうでタイトスカートのスーツにハイヒールだった。ヒールはまだ慣れていないのでバランスが崩れたのだ。あと、タイトスカートってのもまずかった。足が開きにくいから体制を整えにくい。
「ふぁあ。だ、大丈夫です」
手を必死に動かしてアピールしている。特に問題なさそうなので抱えた時に乱れた髪の毛を軽く手櫛で整えてコロコロと毛玉を取った。猫まみれの俺が引っ付いたせいですさまじい量の毛玉が取れた。流石抜け替わり時期。
このバイトしてると女性との接触が増えて嬉しい。高校の時は抱き着いてくれる子とかがいたけど、大学になると無くなった。やっぱり高校とはノリが違うんだろう。
バイトも終わって帰宅。今日も食べて帰ってきたので時間は十八時過ぎ。お風呂は今からだとちょっと待ち合わせに間に合わないかな。軽くシャワーを浴びてログインしよう。
