十三話
感想や誤字脱字報告ありがとうございます
アップのために読み返すとついつい手直しをしてしまいます
直してやめて、直して止めて……結局戻ったり
時間だけがかかります
と言い訳をしてみました
とりあえずお休みが欲しいですね
とりあえず一年くらい
宝くじ、当たらないかな
とりあえずログアウトするにしても何にしても、街に戻ろう。
いつも街に戻ると思うのだけど、最初の街にしては結構人が多い。
街道沿いに露店が並び冒険者で溢れている。素材から加工品まで様々だ。ついつい見て回ってしまう。
「あれ? ユルじゃない。何か買い物?」
露店を見ていた俺に後ろから声をかけたのはエルファだった。
「あんた、少しは連絡しなさいよね。キーヴは結構マメに連絡してくるのにあんたは質問しかしてこないじゃない」
「あぁ、悪い。他に用とかも無かったし、色々やってたからさ」
「はぁ……まあいいわ。」
「ところでエルファはここで何してるの? 初めの街にしては人多いし、ここって何かある?」
「私はここに素材を売りに来てるのよ。それにまだこの国は二割も開拓されてないのよ。世界全体でみてもまだ一割にも満たない。転移ができる大きな街もまだ一ヶ所だけだしね。だからまだ此処を拠点にしてるプレイヤーが多いのよ。自然と露店も集中するわけよ」
なるほど、と思ったが一つ気になることが。
「半年も経ってるのにまだそんななのか?」
「なら聞くけど、一日中歩きでモンスターと戦いながらどれだけの距離を進めるの? もし仮に日本くらいの土地面積の国を一年半でどれだけまわれるのかしら? 人が多く行き来する町や村しかちゃんとした道がないこの国で」
半分据わった目付きでずいっと詰め寄られた。怖い。
「悪い、ごめん。すいませんでした!」
もう謝るしかない。と思って謝ると肩をすくめて舌を出した。
「……なんて、私も実際に旅してみるまでチョロいと思ってたのよ。正直なめてたわ。それにこのゲーム作った奴、現実感出しすぎ。そういやあんたはどこ行ってたの?」
なんだ、演技か。少しほっとした。
「このゲーム始まって最初の日は街の中に居たけど、それ以外は東にずっといたよ」
「……あんたそんなに何やってたのよ」
「狩り以外はほとんど牧場にいたよ」
「ほとんど牧場って……はぁ。アホだわ」
肩を落として呆れている。俺としては結構することあると思うのだが。
「じゃああんたはまだキャンプしてないの?」
「してないけど、何かあるの?」
「このゲームってログアウトするときって宿以外は危険ってあったでしょ? 実際そうなんだけど、道具屋に行くとテントを売ってるのよ。一つは普通のテント。もう一つはちょっと高いけど、遠出用のテント。それの効果がログアウト時の安全地帯確保になるわけ。それで遠出が出来るようになってるのよ」
ほほう。そんなアイテムがあったとは。
「でもそれにもちょっとした仕掛けがあってね。使用回数。三回しか使えないこと。さらにログアウトで睡眠はリセットされるけど、空腹はリセットされない。宿みたいに泊まれば万全って訳にはならないの。それにパーティー全員の予定が合わないと遠征途中で都合悪くなると取り残されちゃうし。しかも今度から時間加速効果でみんな一緒にログアウトしてログイン時間も合わせないと待ちぼうけ食らうわよ」
そうか。現実とゲームの時間差があるから結構やりにくいかも。
「モンスターとかもいるから見張りがいるし、そうなるとソロじゃ無理だからパーティーかキャラバン組まないとだし。中々予定が合わなかったりでほんと開拓進まないわ」
初めて聞いた。エルファも最初は知らなかった口ぶりだし、公式サイトにも載ってないのかもしれない。
「それはなんというか、すごいな?」
しかしエルファは笑いながら続ける。
「ええ、すごく大変。でもすごく楽しいわ。まるで現実なのよ。他のゲームにはこんなリアリティー無いわ。時々これがゲームだって忘れてしまう。此処に現実がある。そしてそこで生きてる。ホントに《New Life》よ。もう一つの世界、もう一つの私の人生だと感じれるわ」
そう言って笑っている。すごく生き生きと。
「それで? ユルはここで何してるの?」
「あぁ、俺もそろそろ旅しようと思って。その準備」
とは言え、エルファの話を聞いた後だ。独りで行けるとは思えない。誰か一緒に行ける人を探さないと。それに思った以上に大変そうで準備も結構かかりそう。
「旅に必要な物って何? 色々買わなきゃだし、お金足りなかったら稼がないと」
取り敢えず手持ちのアイテムを加工できるものは加工して、売って資金を作らないと。
「必要な物かぁ。まずテント。さっきも言ったけどログアウト用と普通のやつの二通り。まぁ外で寝るのを気にしないなら寝袋でもいいけど、季節によって夜露とかもあるし、やっぱりテントは欲しいかな。それとランタン。保存の聞く食材も要るわね。あとアイテムボックス内でも街の外では食品は腐るわよ。ログアウト用テント内だと例外だけど。だから耐久時間をちゃんと確認すること」
そういやそんな項目もあったな。気にしてなかったから忘れてた。保存食とか在るのかな?
「ハムとか干物ってある?」
「どうだろう。ハムとかNPCが売ってるのは知ってるけど、あまり見たことないなぁ」
「無いのか……薫製くらいなら作ったこともあるし、出発までに少しやってみようかな。他には何かある?」
「後は……そうね、釣り道具があれば魚が食べれるとこがあるわ。川の側とか。後、各種回復アイテムは多目に持っていくくらいね」
「ありがとう。助かったよ。エルファに会えなかったら途中で死んでたかもな」
下手したら一日目で死んでそうだ。
「ホントよ。初心者の死亡率の八割方は旅の準備不足。旅に対する無知も含めてね」
げげ! 八割とか半端ないな。
「マジかぁ。あ、ついでに聞くけどパーティーの募集とかって何処かでしてる?」
「それなら各門の近くに酒場があって、その入り口の掲示板に張ってあるわよ。そう言えば聞いてなかったけどどこ行くの?」
「南西のカヴァーロだけど」
俺の答えに怪訝そうな顔をする。そんなに変なこと言ったか?
「カヴァーロって何よ? 聞いたこと無いわ」
「え? 牧場いってないのか? 教えてくれたぞ」
「うそ、行ったけど何もなかったわよ」
? どういうことだろうか。
「あ」
ペイドさんとの話を思い出した。たぶん普通じゃ教えてもらえないんだ。
「たぶんクエスト? だわ」
そして俺は牧場でのことを話した。
「……なるほどね。なら私も行くわ。馬に乗れたら開拓速度上がるわね」
「そうだろうけどね。馬乗れるの?」
「大抵の人は乗れるわ。牧場にも行ってるはずだし。ただ馬の確保が出来てなくてね。多分ユルが初でしょ。行って確保できたら瓦版屋にでも行って号外出してもらいましょう」
乗れるけど場所を知らないってことは、ペイドさんの言う「馬に乗せられている」状態だろうか。まぁ乗り続ければそのうちなんとかなるかもしれない。それに今からあのイベントクリアしに行くと結構時間食うはずだ。エルファは成長ブーストが無いはずだし。……それもあるけど瓦版屋って何ぞ?
「瓦版屋って何?」
「ん? ああ、このゲームってネットでの情報拡散とかできないでしょ? それだと不便だし、どうにかならないかってことで色々やってみたらしくって。ゲームの中に掲示板立てた人も居たんだけど、大混雑の上に喧嘩騒ぎまで起きてね。衛兵に捕まっちゃった。まあ、厳重注意で済んだけど。それで、考えたのが瓦版。まあ新聞みたいなものよ。元々はテスターの情報屋が始めたんだけど、今ではギルド立てて、情報の検証と買取をして瓦版で拡散してるわけ。製紙技術もあるみたいだし定期的に情報発信してるわよ。ギルドに行けば過去配布分も含めて一部1000ガルで売ってるわ」
なるほどね。そのうち顔を出してみてもいいかもしれない。
「エルファのゲーム情報はそこから来てるのか。ところで二人で行くのか? 他にも誰か誘う? キーヴとか」
「ああ、キーヴは今別でパーティ組んでるはずよ、連絡あったし。とりあえず後二人位いると楽かな。知り合いに声かけてみるわ」
「そっか。そういえばそんなことも言ってたな。うん、そっちは任せたよ。準備とかもあるし。出発は……」
「こっちの都合とかもあるから後で連絡するわ」
「了解。明日のバイトは朝だし、講義も昼から一つだから十六時にはログイン出来るかな」
「ふふ、流石に明日すぐは無理よ。それじゃあまた」
エルファはさっと転移門のある方へ走っていった。