第3話 ようやく異世界へ
『加護』のデメリットはもうちょっと秘密。
次話あたりで明らかになるはずです。
「……今の話、…本当か?」
「勿論、本当。」
あの後、『加護』というスキルのデメリットを説明してもらったのだが、
これが予想以上にひどいものだった。
最悪、俺が魔王を倒さないといけない。
それくらいの内容だったのだ。
「便利なスキルだってのは認めるが、ちょっと酷すぎやしないか?」
「逆に考える。それだけ強力なスキルだと。」
どっかで聞いたような言い回しに俺の不信感がマッハだ。
だが、ルーの表情はどこまでも真面目だった。
いや、それはそれで不信感を煽るのだが…
「本当に強力なんだな?さっきのデメリットを加味しても?」
「正直、これ以上強力なスキル無いと思う。」
「本当だな?信じるぞ?」
「なんでそこまで疑うの?」
胸に手を当ててみろ。そして絶望するがいい。なんて言えない。
まぁいい。良くないかもしれないが他に思いつかないし。
ルーがここまで太鼓判を押すんだ。
1回は信じよう。1回は。
「…おっけー、その『加護』って奴、頼む。」
「わかった。」
そう言うとルーは目を閉じ、俺の胸に右手を添えた。
しばらくすると、その右手は優しい光を放ち始め、その光は徐々に俺の胸に浸透していった。
(すごい、まるで女神のようだ・・・)
ルーが右手を離しても、俺の胸はしばらく光っていたが、
まるで馴染むように、徐々に消えていった。
「…これで終わりか?」
「ん、これでセーイチに『加護』のスキルが宿った。後何か失礼な事考えなかった?」
ルーは懐から割り箸をちらっと見せた。
「よし、これで出発する準備できたな。さぁ行こう。今行こう。」
「…ん、やる気があるのはいい事。」
ルーは『ちっ』と舌打ちし、割り箸を戻した。
舌打ちすんなよ。怖いだろ。
「…最後にセーイチに渡すものがある。」
その顔は自信満々に『忘れてました』と語っていた。
なんでそんな自信満々なんだよ。その自信どっから来るの?
「…まだなんかあるのか?」
「これは他の人達にも渡してるんだけど、自分の状態を客観的に見る魔法。」
「自分の状態を、客観的に見る?」
「使ってみればわかる。」
そう言うとルーは再度、俺の胸に手を添えた。
さっきと同じようにルーの手が光ったが、今度は随分短い時間だった。
光が俺の体に馴染むのも早く、あっという間に消えていった。
「えらい早かったが終わったのか?」
「ん、頭の中で『ステータス』って唱えてみて。」
「あぁ、ステータスの事だったのか。」
自分の状態を客観視って、随分遠回しな言い方だな。
ステータスって言ってくれれば一発でわかっただろうに。
まぁいいや。早速使ってみよう。
俺はちょっとどきどきしながら頭の中で『ステータス』と唱えてみた。
すると頭の中に文字が浮かび上がってきた。
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名前:黒谷 誠一(Lv1)
年齢:17
称号:学生?
装備:布の服
革の靴
体力:無いよりはまし
魔力:無いと言っても過言ではない
攻撃力:話にならない
防御力:話にならない
素早さ:話にならない
幸運 :無いよりはまし
スキル:女神の加護(Lv1)
弓術(Lv1)
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「なぁ、ルーさんや」
「ん?」
「喧嘩売ってるんだろ?そうなんだろ?」
「なんで怒ってる?」
普通怒る内容だったと思うんだが。怒るよな?
なんだよ、『学生?』って。
なんで疑問系なんだよ。学生だよ俺は。
それよりひどいのが攻撃力とかだ。
『話にならない』ってどういう意味だよ!
普通、攻撃力:10 とか数値で表すんじゃないのか?
なんで曖昧表記なんだよ。
「そこらへん、どう思うよ?」
「解かり易くていんじゃない?」
いいならいいんだw
なんて言うと思ったら大間違いだ!
「数値とかにできないのか?」
「できない。」
「なんで?」
「ボクの好みだから。」
「お前の好みとかどうでもいいから!」
…はぁ、もういいや。
これ以上文句言っても、疲れるだけな気がする。
それに曖昧ではあるが、強いか弱いか一目でわかるのは、
そんなに悪くないかもしれない。
っていうか、強くなったらどう変わるのか、ちょっと楽しみでもあるな。
「まぁいい。後一個教えてくれ。」
「なに?」
「スキルのレベルってのは、使ってれば勝手に上るのか?」
「そう、使えば使う程上る。」
「よし、そんだけ聞ければとりあえずいいや。」
おれは門の前へ移動し、手を押し当てた。
「んじゃ、行ってくるわ。」
「セーイチ、がんばる。」
そう言って、ルーは手を振ってくれた。
色々ぐだぐだやってたが、やっと異世界へ出発である。
あの可笑しな女神様ともこれでしばらく会う事も無いだろう。
少し寂しく思わなくもないが、それ以上にあいつの相手は疲れる。
正直しばらく一人でいたい気分だ。
門扉は見た目に反して、軽く押すだけで開いた。
開いた部分から向こう側を覗くと、真っ暗で何も見えなかった。
戸惑いつつも1歩足を踏み出すと、まるでブラックホールのように吸い込まれ、
あっという間に暗い空間に放り出された。
しばらく待っていると、急に前方に白い点が生まれ、
それが急速に広がり、目を開けていられない程明るい空間に包まれた。
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目を閉じたままじっとしていると、唐突に背中に地面と引力を感じた。
最初に感じたのは、濃い緑と土の匂い。
そして、暖かな日差しの温もり。
遠くからは、水の流れる音が微かに聞こえてくる。
僅かに目を開けると、豊かな枝葉に遮られた木漏れ日が優しく降り注いでいた。
ゆっくりと体を起こし、辺りを見渡して見る。
どうやら、草原から森に一歩踏み入った場所のようだ。
良く人が踏み入るのか、地面は僅かに踏み固められ、まるで獣道のようになっている。
一方は森の奥へと続き、途中で曲がっているのか、緑がより深くなっているのか、
途中から見えなくなっていた。
もう一方は草原へと続き、小川のほとりを下流へと続いているようだ。
「…どうやら、無事着いたみたいだな。」
正直、あの女神が用意したものだったので、何かしらアクシデントでもあるんじゃないか、
と、身構えていたんだが、ちゃんと移動できたようだ。
とりあえず、体についた土や草を軽く払い落とし、ゆっくりと立ち上がった。
「…ふぅ、綺麗な場所だな。自然が豊かっていうか。空気がうまいな。」
俺が住んでいた場所は市街地であり、近くに山や森も無かった。
だからか、こういう自然に少し憧れがあったのかもしれない。
「あ~…、いいな、ここ。癒されるわ~…、が、いつまでもこうしてる訳にもいかんな。」
獣道とはいえ、道の上にいる以上、選択肢は2つ。
森の奥に進むか、草原へでて、小川の下流へ向かうか、だ。
それ以外の選択肢も無い訳ではないが、迷子になる可能性が高いから除外しておく。
現在地が分からない現状も、迷子と言えるかも知れないけども。
「さて、森の奥へ行くのは論外だな。そういう服装じゃないし。獣とか虫とか多いだろうし。となると、草原へ出る、一択だな。」
やらなきゃいけない事はあるが、そんなに急ぐ旅でもない。
俺はゆっくりと森を出て、道なりに小川まで歩く事にした。
「さっき聞こえた水の音はこれかな。」
それほど大きな小川でもない、川幅は2m~3mといった所。
水深も浅く、深い所でも50cm程度の川だった。
ただ水の透明度は高く、綺麗な水だった。
「こんだけ綺麗なら、飲んでも大丈夫かな?」
しゃべりっぱなし(突っ込みぱなしとも言う)で喉が渇いていた事も有り、
少し口に含み、変な味がしない事だけ確認してから、喉を潤した。
「っぷは~、うまいな!都会の水とは大違いだ。でも飲み過ぎると腹下しそうだし、こんなもんにしとくか。」
さて、現在の場所はなだらかな丘の上のようで、小川に沿った道は、そのまま下流へと続いており、
今いる道より少し大きな道に繋がっているようだ。
一方の道は、小川を橋で渡り、そのまま左へ。もう一方の道は森の淵をなぞるように右へ続いている。
目視できる範囲には、建物のようなものは確認できなかった。
そこで俺は思い出した。
「『全ての行動』に補正が付く……だったよな?」
それが本当ならば、『遠くを見る』という行動にも補正が付く…はずである。
「でも、現状では補正が付いてる様子もない…って事は、まさか…」
脳内で『女神の加護』と念じてみる…
すると脳内に文字が浮かび上がった。
*『女神の加護』を発動しますか?<はい>・ いいえ
「パッシブ(常時発動)じゃ、ねえのかよ…」
まさかのアクティブ(任意発動)スキルであった。
やっと異世界へ到着しました。
読んでくださった方、ありがとうございます。