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タオル・ミーナ

 シチリア・タオルミーナ。


 アイリ達は、カターニャから車でタオルミーナまで移動し、アルトゥーロに用意されたホテル前まで足を運んでいた。


「うわ、何だこれ。城かよ」


 フレイがシチリアのホテルを前に声を上げる。


「シチリアは、リゾート地で有名ですからね」


 ヤンがフレイの為に軽く補足説明をしている。


「あんまり燥がないでよね、恥ずかしから」


 シャルルが素っ気なくそう言うと、内心で心を躍らせていたニナはハッとして、少しばかしゆるんでいた表情を固める。その様子を偶々見ていたルクサーナは、小さく笑みを溢していた。


 シチリア島は、イタリア半島の西南の地中海に位置しているイタリア領の地中海最大の島であり、世界有数のリゾート地である。雄大な自然と透き通るような綺麗な海、温暖な気候や数々の世界遺産、そしてイタリアの郷土料理などが魅力的なリゾート地だ。


「取り敢えず、リタとヤンとで宿泊する部屋の下調べを頼むわね」

「了解しました」


 アイリの指示に、リタとヤンは声を揃えて返事する。部屋の中に盗聴器が仕掛けられていないか、上下左右の部屋に爆発物が仕掛けられていないか、利用客はどんな人か、外部から狙撃されそうなポイントがあるかどうかなど、必要以上に慎重になる必要がある。


 残された人間で、ルクサーナの身辺警護にあたる。皆が辺りに気を張る中、アイリは欠伸をしながらやや緊張感に欠けていた。それは、アイリはここではまだ襲っては来ないと踏んでいたからだ。


 暫くすると、リタとヤンの二人が戻って来る。 


「大丈夫です。問題ありませんよ、アイリ」

「電子機器系も問題なさそうです」


 アイリは、一つ大きく伸びをする。


「では、諸君。ホテルに行くとするか」


 すると、ルクサーナはアイリに声を掛け、その足を止める。


「あの、アイリさん」


 何か様子が可笑しいと、アイリを見兼ねてルクサーナは声を掛けたのだ。他の隊員は思ってはいたが、アイリには聞かないことがルールであるオルガ商会では、聞こうとする者はいなかったが、しかし、それだけでは無かった。


「何かね、ルクサーナ」

「どうかしましたか?」


 ルクサーナは、申し訳なさそうに聞く。


「どうか、とは?」


 アイリは、わざと回り諄く返した。


「いえ、何か先程とは様子が違うように見えたもので。私の気の性なら、別に構わないんですが」


 やや俯くルクサーナに、アイリは口を開く。


「いや、気の性では無いよ。ただ、何か確信があるわけじゃなくてね。何となく、何となくだけど、嫌な予感がするものでね」


 アイリは、そう言い残すとホテルの中へと入って行く。他の隊員もアイリに続けてホテルの中へと入って行く。誰もアイリに何も聞かなかったのは、他の隊員も何か靄の掛かっている様な嫌な感じを各々に感じ取っていたからだ。


 タオルミーナ・ホテル。


 ホテルの中は、広々としていた。部屋からは、一面海を見渡すことが出来る上に、更にプールまで備え付けられていた。


「うわあ」


 ニナは、小さく声を上げた。

 部屋からは、タオルミーナの街並を一望する出来る。また、青く透き通った海をも見ることが出来、それらは絶景と言う言葉の他には見つけられない程に美しかった。


「では女諸君、水着に着替えてからプールに集合だ」


 先程の様子とは打って変わり、アイリは拳を突き上げ、元気に燥いでいた。


「ちょっと待ってくれ、お嬢。俺の聞き間違いじゃなければ女諸君って聞こえたんだが、言い間違いだよな」

「いえ、女諸君って間違いなく言ったわよ」

「それじゃあ、男諸君はお呼びじゃないってことなのか?」


 フレイは、アイリへいつになく真剣な眼差しで聞く。


「男諸君には、非常に重要な仕事があるのだよ」


 フレイの表情は、忽ち青くなっていく。

 まるで、シチリアの碧い海の様に。


「男諸君たちに任せたい仕事は、車高の低い黒塗りの車を見つけて来て欲しいのだよ。バンとかなら、丁度良いかな」

「そんな物、男全員じゃなくても直ぐに見つけられるだろ」


 フレイは、必死に抵抗を見せる。


「車を見つけて来てからが本当の仕事。フレイは、見つけて来た車を防弾使用に仕上げてきて、車の底に人が通れるくらいの穴を空ける細工を施して欲しいのよ。ヤンは、その車をリモコンでも操作出来るようにしておいて。ノアは、カルロに案内して貰いながらこの辺の地形を運転して、覚えて来て。じゃあ、男諸君よろしくね。さあ、女諸君はプールへと行きましょう」


 アイリはそう言い、水着に着替えに自室へと戻って行った。リタは、気に留める素振りすら見せずに、アイリの後を小走りで追って行く。


「残念だったわね、フレイ」


 シャルルは鼻で笑い、小馬鹿にしたようにフレイの肩をポンと叩き、笑みを浮かべながら出て行った。そして、フレイは一人膝から崩れ落ち、床をどんどんと叩き付けていた。


 ニナはその様子をぼんやりと見つめ、何か見てはいけないものを見ている様な気がし、見なかったことにしてアイリへとシャルルの後へ付いて行き、ルクサーナは取り敢えず、一礼だけしてその場を後にした。


「おい、いつまでそんなことしてんだよ。さっさと仕事終わらせてワインでも飲みに行くぞ」


 カルロは、フレイの尻を蹴り飛ばし仕事へと向かって行った。


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