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テロ・リズム

 リタを男子トイレ前へ配置し、アイリとニナは男子トイレへ突入の為に待機していた。


 トイレの扉を少し開き覗いてみると、中にはチャールズ・クーウェル議員の他見当たらない。個室のトイレも使用している様子は見られず、突入可能と判断したアイリは、ニナを連れて中へと入って行く。


「おや、どうしましたかな? 先程のことなら――」

「いやいや、先程のことなら気にしていませんよ」


 笑みを浮かべるアイリを疑問に思いながら、鏡に映るもう一人の少女の手に銃が握られていることに気付くと、その表情は一変した。


「騒がないでね」

「闇雲に私を狙った、と言うわけではなさそうだな。一体、何が目的だ? 金か、私の地位か? それとも?」


 チャールズの問い掛けに、アイリは笑みを浮かべた。


「いえいえ、目的などありません。今から私は、独り言を話します。ただ、それだけのことです。そこから、どう判断するのかは私の知るところではありませんので」


 チャールズは、服を拭きながらアイリの話に耳を傾ける。


「これから、数日以内にある組織がテロを行うかもしれない。その組織は、あなた方をよく知る人物かもしれないし、そうでないのかもしれないし――あなた方を敵視している人物かもしれない」


 チャールズは、何か言いたげな表情をしていたが、アイリは構うことなく独り言を続ける。


「テロと言えば、あれを思い出すわね。忘れもしない9月11日。そう、アメリカ同時多発テロをね」


 チャールズは、その言葉に目を細めた。


 一見、アメリカと北アイルランドと何の関係性も無いように思える。しかし、それこそがIRAが武装解除に応じた最大の要因だった。


 そもそも、アメリカ同時多発テロとは、アメリカ合衆国で発生した航空機を使ったテロ事件の総称で、航空機が使用された史上最大規模のテロであり、21世紀において最初に発生した大規模なテロであった。


 そして、世界中へとメディアを通じて発信されるとテロ活動に対する脅威を改めて知らされることとなり、それはテロに対する認識を一変することとなった。


 IRAは、米国に住むアイルランド系による資金的援助のもとで活動していたのだが、彼らのテロに対する認識が一変すると、IRAへの資金援助が激減したのだった。


 そして、IRAは資金難に陥った。更に、IRAは米国のテロとは無関係であることを世界中に示す必要があった。それらを同時に解消するには、和平交渉に応じざるを得なかった。


 その結果が、武装解除だったのだ。


「確か、あの時の武装解除は、武器を廃棄すると言うことではなく、武器を使えない様にすることが目的だったわよね。その使えない様と言うのも、武器を破損させて使えなくするのではなく、武器を使えない様な環境にすると言う風にね」

「話が見えないな」


 チャールズは、鏡越しにアイリへと声を掛ける。


「話は見るものでは無く、聞くものなのだよ」


 アイリは、小馬鹿にするようにそう返し、シシシシッとまた小馬鹿にするように笑った。チャールズは、表情こそ変えなかったが、ムッとしたその様子はニナでも感じ取ることは出来た。


「では、独り言はここまで」


 アイリは、手をパンパンと叩き、そう合図を出した。


「ここから先は、情報屋としてでは無く、商人としての話だ。私の扱っている商品を検討して頂きたい」

「ほう、何を扱っている?」

「私が扱っているのは、武器です」


 チャールズは暫しの間を取り、そしてまた服を拭き始めた。


「今この国が、武器に関して厳格なのは知っているだろう。そんな物を個人で所持しているなんてことが知れれば、私もお終いだ」

「だから、いつまで経っても中途半端なのよ」

「なんだと」

「確かに、知れるところに知れれば立場は悪くなるかもしれないけれど、その逆も然りよね?」


 鏡越しとは言え、アイリのその睨みにチャールズは思わず目線を逸らした――その時、トイレのドアがノックされた。リタからの誰かがトイレへ向かっていると言う合図だった。


「では、我々はこれで失礼しますが、もし万が一興味がおありでしたら、ここまでご連絡を下さい」


 そう言い、アイリは使い捨ての電話番号の書かれた紙をチャールズへ渡し、男子トイレを後にした。暫くの間、チャールズはその紙を見つめ、何やら思いにふけると、その紙をポケットへと捻じ込み、秘書のケイトリンの元へと戻って行った。


 チャールズがケイトリンの元へと戻る頃には、少し前まで居たはずのアイリ達は既にそこにはおらず、食べかけの食事だけがそこに残されていた。





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