ステルス・コンフリクト
「ちょ、ちょっと本気ですか、アイリ。私たちと行くと言うことは、子供を戦争に巻き込むと言うことですよ」
アイリは、いつになく真剣な眼差しをリタへと向ける。
「リタ、子供たちは、とっくの昔から戦争の被害者だよ。それにこの子は、アフリカのステルス紛争で私達に牙を剥いていた――」
「まさか、あの時の――」
ステルス紛争とは、当時国以外の政府関係者や、メディア等の介入をさせない、意図的に無視されている紛争のことである。
ステルス紛争では、支援が少なく、他国からの強制措置も自制も効かず、飢饉や病気、弾丸や爆弾による死亡者は、歴史に記される戦争の比にならないこともある程である。
そもそも、紛争を引き起こす原因には、勢力争い、不満による暴徒化、土地や資源の奪い合いと言った利害関係や国際関係、宗教、経済事情、文化など、紛争の起因は様々なのである。
ただ、ステルスで行われていると言うよりも、ステルスにされている紛争には、当事者と共にそれらを助長や援助する第三者にも何らかの利益は当然のものとしてあるのだろう。
その証拠に、ニナを含む奴隷たちは、第三者によりステルス紛争へと派遣され、ある一方が勝つように加担していたのだ。当然、それを奴隷たちが知る由も無い。つまり、使い捨て奴隷と言うわけである。
ステルス紛争と言う大きな仕事をアイリが見逃すはずも無く、アフリカへ大量の武器を持ち、赴いた。しかし、取引相手としたのはアフリカ現地にいる武装集団だ。
ステルス紛争を助長、援助する第三者の尻尾を掴もうと試みるも、トカゲの尻尾切りで、その実態を掴むことは出来なかったのだ。ただ、その敵対勢力である武装集団を取引相手として選んだのにも勿論理由はある。
それは、豊富な資源である。武器の販売をする代わりに、レアメタルやスズと言った資源を対価として受け取ることにより、仲介手数料を発生させること無く、販売ルートを選べば、結果的に多くの売り上げに繋げたのだ。恐らく、見えない第三者の狙いも、資源の独占だったのだろうと予想は付いていた。
ニナに出会ったのは、その商談の帰路でのことだった。
頭から血を被ったように真っ赤に染まり、希望を持たないその光無き眼と共に銃口をこちらへ向けた。慌てて、リタとシャルルがアイリの前へ出て盾となり、瞬時に残りの隊員は銃口をニナへと向けた。
アイリ率いる一個小隊にたかが奴隷の少女が立ち向かったとして、勝てる見込みなどありはしなかった。しかし、本来奴隷とはそう言う使い方であり、そう言う使われ方なのだ。
互いに微動だにせず、暫しの間が空いた。アイリがその間に耐えかねたのか、それともニナが敵ではないと悟ったのか――ニナが銃を下ろしたのと、アイリが隊員に銃を下ろさせたのは、ほぼ同時であった。
そのまま何事も無く、すれ違うようにして通り過ぎて行ったが――しかし、互いに殺気を殺すことなく、むしろ自身の強さを誇示するかの如く、殺気に満ち溢れていた。
「シシシシッ。見つけた」
アイリは額に手を当てながら天を仰ぎ、あまりのその嬉しさに、有り余るその喜びに、思わず笑みを浮かべていた。そして、ありとあらゆる手段を用いて、こうして再会するに至ったのだ。




