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その3

 おれが会社についたのは、八時十分だった。


 当然の事として、社内は突然の“皆既日食”の事で持ちきりだった。

 女子社員の中には泣いている者もいた。

 

 会社の建物の入った途端、“皆既日食”が終わった事に怪訝な顔でおれの顔を見つめる若い女子社員もいたが、まさか“皆既日食”がおれの関係しているなんて思えないから、彼女が何も言わなかったのは幸いだった。


 わが社では八時半が業務スタートだったが、八時半になってもテレビのスイッチを誰も切ろうとはしなかった。

 八時半からのニュースの最初の話題が、当然、この“皆既日食”だった。


 アナウンサーが言った。

「D県R市B町で、今朝七時半に突然“皆既日食”現象が発生しました・・・。

 その後この“皆既日食”現象は県道××××線沿いに時速40キロ程度で南下し、八時過ぎに隣のJ市L町で突然消滅したと言う事です。


 D県警察本部の発表によると、この“皆既日食”現象以外異常な事は発生していないということだ、今のところ両市内ともに平静が保たれている、との事です」


 画面が変わり気象庁の責任者が、半ばヤケクソに言った。

「明日の“皆既日食”現象は天文学的には当然の事ある。

 しかし、今日、D県で“皆既日食”はあり得ない。

 ましてや、“皆既日食”が県道沿いに起こり、それが突然消えるなんてありえない事だ。

 今回の事がもし事実の事だとしても、それは太陽・月・地球が一直線上に並んだ天体現象ではなく、何らかの外的な要因によるものだろう!

 だが、それが何なのかは私のは分からない。

 アメリカのNDRADにでも聴いてくれ!」


 また、おれは近所で見た事がある老人がインタビューに答えて言った。

「驚いたね。

 日にちを一日間違えているのか、と思ったよ!

 どうしてこんな事になったのかは、おれには分からないね!


 でも、このクソ暑い時に自分の周りがいつも“皆既日食”だと涼しくていいね。

 誰か、おれがいるところもずうっと“皆既日食”にしてくれ!」

 これを聴いて課長が言った。

「何ていい加減な、じいさんだ!状況を理解していない。

 もっとも、誰にも分かっていないけど・・・

 兎に角、この“皆既日食”が飛んでもない災難の前触れで無い事を祈るばかりだ・・・」

 

“誰か、おれがいるところをずうっと“皆既日食”にしてくれ!”

 このセリフ、金曜日におれが呟いたセリフだ。

 あの呟きが、この“皆既日食”と関係あるのだろうか・・・?

 そんな馬鹿な!

 


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