表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

プロローグ

 超能力が欲しいと思ったことはないだろうか。


 アニメや漫画にあるような、超次元的な力。

 悪と戦い正義を重んじる、主人公の行使する能力。空想の中でしか存在し得ないものに、憧れたことはないだろうか。

 手を伸ばせばいつか届くかもしれないと、少年少女は夢を見て。創作物の中で書かれる世界の様に、あらゆる敵と対峙してみたいと望む。


 だが現実問題、超能力なんてものはありえない。

 あれらはすべて空想・仮想の産物であり、我々人間が生きるこの世界にはあるはずのないもの。炎を出したり空間を移動したり重力を操ったり、そんな不可思議で非科学的な現象は起こり得ない――起こり得るはずがない。


 そんな、子供の夢を打ち砕く現実的な考えが根底から覆されたのは――二十一世紀が終わりに差し掛かった頃だった。







 朝。肌寒い気温が少しはマシになってきたとはいえ、まだそれほど心地よいとは言い難い時期。元気よく走り抜けていく子供達が、背を丸めた大人たちを追い越していく。

 そんな季節の早朝。近隣の私立高校の制服を身にまとい、首元を隠すようにマフラーを巻いた少年が一人、足早に歩いて行く。

「よう。テメェが黒井アキ、だろ……?」

 ふと、ガタイの良い男が少年の行く手を阻む。少年と同じ制服を着ていると言うのに、その体格は黒井アキと呼ばれた少年とは段違いだ。長身かつ筋肉質の彼は、初見の人なら確実に怯んでしまうような威圧感を放っていた。

 しかし、少年は動じない。それどころか、彼の言に耳を貸さずに横を通り過ぎようとする。

「待てよ。テメェ結構有名なんだぜ、うちの学校のトップだとか、喧嘩吹っ掛けて勝った奴は一人もいないだとか」

 しかし、男はそれを許さない。少年の方を掴んで、行かせまいと力を込める。体格相応に高い男の力により、少年の肩に指が食い込む。

「俺と戦え。〝最強〟の座を後輩に取られてちゃ、俺ら先輩の立場がないからな」

「……」

 傍から見れば、ヤンキーにイチャモンをつけられた男子学生なのだが、脇を通り抜けていく学生たちは気にする様子も無い。一般人と熊ほどの体格差があると言うのに、誰一人として気にも留めていない。

 その理由はやはり、彼自身の知名度にあるのだろう。

 ガラの悪い男の言うように、黒井アキと呼ばれた少年は学校内で〝最強〟と言う座を与えられていた。それは少年本人が望んだものではないにしろ、その称号を持つに値するだけの強さがあると、学内の生徒たちは知っているのだ。

 だからどちらかと言えば、通学中の彼らが心配しているのは少年の方では無く、突っかかっている男の方なのだが。

「……そんな座に興味は無い」

 突っかかられて初めて、少年は口を開く。

「欲しいならくれてやる。だから俺に構うな」

 心底どうでもいいと言わんばかりの声色で、視線すら合わせずに言い放つ。そして肩に置かれていた手を払い、再び通学路を歩み始める。

 しかしそんな様子に納得するほど、ガラの悪い男は寛容な精神を持ち合わせていなかった。

「ザケんなッ! テメェ舐めてんのか!!」

「そんなつもりはない。良かったな、これでお前が〝最強〟だ」

「ッ!!」

 男の怒号にも、少年は一切動じない。最初と変わらない調子で返答し、背を向けてその場を去っていく。その少年の様子に、男の堪忍袋の緒が切れる。射殺さんとする形相で少年を睨みつけ、敵意をあらわにする。

「殺す……ッ!!」

 明確な殺意すらも孕ませながら、男は右手を前へと突き出す。遠方へと既に移動している少年には届くはずもないが、男はそんなことを気にもしない。手を伸ばす理由は、他にあるのだから。


 男は、何もない空間から巨大な炎を出現させた。


 轟々と燃え盛るそれは、映像などでは無い紛れもない本物だった。何かしらの道具を使ったそぶりも無く、男はサッカーボールほどの火球をその場に顕現して見せた。

 それを男は、投球フォームの様に振りかぶる。

「灰になれ、〝最強〟!!」

 男の叫びと共に、しなるように振り下ろされた手から炎が放たれる。男と少年の最短ルートを辿るように、火球は吸い込まれるように少年の下へと迫っていく。

 背後から気配を察知したのか、少年は静かに振り返る。直撃してしまえば男の言う通り、灰になってしまうだろうそれを、落ち着いた調子の相貌で静かに見つめる。

「……〝最強〟の座に興味は無いが、ここで死ぬのは勘弁だな」

 静かに紡がれる言葉と同じ様に、少年は緩やかな挙動で左掌を前へと突き出した。

「それと、一つだけ訂正だ」

 あまりの熱で周囲が歪むほどの高温が、突き出された手に徐々に伝わり始める。それほどに接近していると言うのに、少年の表情は変わらない。ある意味その様こそが〝最強〟たる所以なのかもしれない。

 そして、今まさに直撃しようとした時――。






「――俺は黒井秋くろい しゅうだ、馬鹿野郎」






 少年の言葉が、紡がれた。



初めましての方は初めまして、そうでない方はお久しぶりです。検体番号10032です。

 この度は『Next Memories』のプロローグをご一読いただきありがとうございます。


 初めての挑戦として、連載小説に手を出してみようかと決意しました。元々書きたいとは思っていたのですが、中々踏み出すことが出来ませんでした。しかし、今日ようやくその第一歩を踏み出すことができました。

 これからも今回のような稚拙な文章が続くかと思いますが、ご了承いただければ幸いです。


 あらすじにも書きましたが、リアルの事情により更新が遅れがちになってしまうかもしれません。その際は温かく見守って下さればと思います。


 感想、ご意見は随時お待ちしております。ここがおかしい、これは変じゃないか、などの内容でも一向に構いませんので、何とぞよろしくお願いします。


 それではまた、次の話でお会いしましょう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ