「お別れ しますか?」
実際正直調子乗った感じが半端ない。反省はしてる、だが後悔はしてない。
ていうか分けたい、しかしどこで分割すればいいのかわからないゆえのそのまま投稿。
ついでに一人称は漢字の方が優先されます。ルビは雰囲気でつけたものなので……
~F12~
剣戟の音がする。
その甲高い剣と剣の共鳴音は高速のリズムで打ち鳴らされ、もはや一つの音が長らく続いている感覚すらしてくる速さで、だ。
音の正体はある二つの影によるものだった。
片方は美しい金の髪をした中性的な顔立ちの少女。
手にある銀に装飾された剣は薄く発光し、剣戟速度が徐々に上昇している。
対するもう片方は美しい銀の髪をした中性的な顔立ちの少女。
顔は似ている、のではなく全く同じ、と言った方がしっくりとくる程、全てが同じだ。
やはりこちらも、金に装飾された剣が薄く発光し、同じように剣戟の速度が上昇している。
やがて一際大きな音がし、二人の少女は互いに距離を開けた。
「……さて、もう一度聞かせてもらおう。駄目だと言っても力尽くで聞くが、
貴様は誰だ?」
その問いに銀髪の少女は小さく、しかし聞こえる程度に笑う。
「わかっているのに聞くのはカンナ、君の悪い癖だ。しっかり見ていただろう?」
そう言って、整えられた広場が作られている部屋の奥にある、人一人の全身が映り込む大きさの鏡を金の剣先で指し示す。
「君がアレに身を映したから僕が生まれた。まぁもっとも、そうなる様に誘導したのは僕なんだけれども」
「……」
「いやいや、まさか君があんな罠に引っかかるとはねぇ……どれだけ好きだったのさ、あの男の事」
「……黙れ」
「それにしても愛情がいき過ぎだと思うよ? 確かに僕の髪を気味悪がる事もなかったし、顔も悪くない。
けど性格が最悪だ。きっとあの男は自分が死のうがどうでもいいだろうし、人の事を何処か違う見方でしか見れないだろう。
わかるかい? 外れ物の君を暗い部屋でいつまでも慰めてくれたあの男は言葉通り、どこまでも歪んでるんだよ」
「黙れぇ!!」
カンナは怒号を飛ばすと構えていた銀の剣を力強く、しかし素早く銀髪の少女に向け、神速の突きの攻撃を行った。
「『光り輝く奇跡の剣』」
突きの姿勢のままスキル名を詠唱し、自身が持つ剣以外に相手に剣先を向けた四つの輝く細剣を具現化させる。
そして、その四本の剣を周りにまとい突撃のスピードが上げる。
それを見た銀髪の少女は笑った顔のまま剣を構え直し、同じく突きの姿勢をとった。
「『鈍く光る不幸の剣』」
同じく四本の黒に染まった剣を出現させ、迎撃体制を整える。違うところは、身に纏った剣が大剣だという事と、カンナと比べると、一つ一つの動作が遅いというところだけである。
遅い、と言っても普通に見れば普通の冒険者よりはだいぶ速いだろう。しかし、光速で動けるカンナと戦うには分が悪い。
ここで説明させてもらうが、速い、という事は端的に言えば行動回数が多い、という事である。
攻撃行動、回避行動、防御行動、先制行動と、これら全てを有利に進められるのが速さ、つまり『素早さ』である。
今のカンナは元々の身体能力にスキルの効果を受けており、本来人間が不可能な速さを肉体損傷無しで出す事ができる。
更にスキルにより攻撃力が強化されており、『速く攻撃力が強い』という状態である。
今の状態ならば、ミノタウロス相手にも善戦をする事ができ、うまくいけば重傷すら負わせる事ができるだろう。
しかし、そんな状態でも押し負けることもある。
武器のランク、発動スキルの性能、ステータスの差などがあるが、しかし今の状態のカンナならどれも最高のものが揃っており、普通なら押し負けるなどあり得ないだろう。
そう、普通なら。
「馬鹿な……!?」
「おいおい、仮にも自分に向かって馬鹿、はないだろう。
───残念だろうけど、これが君の実力だよ」
相手が自分より遅く、攻撃力が無いのなら、今ので勝負はついていただろう。
しかし違った。
相手は確かに、攻撃力、素早さ共に劣っているが、
「君の『光り輝く奇跡の剣が一撃必殺の突撃能力なら、僕のは『鈍く光る不幸の剣』絶対防御の守護能力だ。確かに君には攻撃力も素早さも勝てないけど、
防御力で言うなら僕は君にすら勝てる」
その言葉にまた口を開いたカンナだが、何かに気づいた様に首を降り、自分を落ち着かせようとするのか深呼吸を始めた。そして、あたりを見渡し、今度こそ言葉を発した。
「……随分とよく喋るな、貴様は」
「……なんの事だい?」
「いや何、この部屋の仕組みにやっと気づけてな」
「……へぇ? 『仕組み』、ねぇ。どういう風に、何に気づいたのか教えてくれるかな?」
その言葉に、カンナは床をスキルの剣で傷つける。すると、その床の傷がゆっくりと、しかし確かに修復されていった。
「いや、貴様に攻撃を当てるまで気づけなかったのだが、
これは現実では無いな?」
「……ッ」
銀髪の少女の顔に焦りの色が浮かべられる。カンナはそれを見て、ため息をついた。
「通りで体に疲労は来ない上にスキルの吸収効果も働かない訳だ。さらに言えば拮抗した者通しの戦いでも物に傷がつかない、というより治る。ここまでされたらな、流石に気づくよ。……貴様の本体は現実世界にある鏡、と言ったところか。しかし精神干渉を無効にするはずの私にどうやって術をかけれたのかが、気になるな」
銀髪の少女が、受け止めていた剣を弾き再び距離をおく。
「……無効にする、って言っても所詮相手からだけだろう? あの鏡はたった一つの術が掛けられているだけだよ」
「一つの術……?」
「そうだよ、効果は『動揺』。
相手を動揺させる映像を写し、精神干渉妨害スキルの効果を極端に下げる。これにより、君のスキル効果は弱くなり、もう一つ部屋に仕掛けられていた『自己暗示』の術が効果を表す。そこで催眠状態に陥らせる、ってところかな」
そうしてそこにつけ込んで侵入したのが僕だよ、と続ける銀髪の少女。
「……なるほど、確かにあの人ならいくら私でも驚いてしまうな。……では、ここからはどうやったら抜け出せる?」
「安心しなよ、この仕組みに気づいた時点で術の効果は徐々に薄くなっていっている。もうじき目が覚めるだろう」
お互いの周りに浮いていた剣が次々に消えていき、カンナの体が足から無くなっていく。
銀髪の少女は後ろを向き、剣を一振りし、背中にしまう。
「……また鏡に戻るのか。まぁいいや、どうせすぐに次の奴も来るだろうし」
「次の奴? どういうことだ? また新しくダンジョンに人が入ったのか?」
「そうだよ。あと、意味のわからない何かがあるのもわかる。因みに新しい奴は君より弱いらしいけど」
「……何故わかる」
「そういう機能がついてるからね、ダンジョン侵入者の中で最強の者の姿とそれに対抗する能力を得る。だから新しく君が入ってきた時、僕は僕になった。感知能力はただのオマケみたいなものさ」
言葉を切り、体の胸あたりまで消え掛かったカンナを見据えて更に言葉を紡ぐ。
「……さて、そろそろお別れの時間だ」
「……貴様を鏡から開放する手段は?」
「あると言えばある。しかし残念ながら君では絶対に無理だ」
「……何故か、は聞く時間が無さそうだな、まぁいい。帰りにまた来よう」
「ふふ、期待しないで待ってるよ。
じゃあね」
「ああ、また───」
そう言って銀髪の少女は笑ながら手を振り、最後まで言葉が言えず消えていくカンナを見送り、小さく呟いた。
「……会話なんていつ以来だろう」
「……あぁ、寂しいなぁ……」
その後、少女は壁に寄りかかり、先程の会話と戦闘を思い浮かべながら眠りに落ちる。
ほんの少しだけ、幸せそうな顔なのは誰も知らない。
「驚いた……とか言ってたけど、それより嬉しさが勝ってたくせに……見てるこっちが恥ずかしいや」
金髪君クローズアップ階です。間違えた、回です。あ、話だ……orz
うん、何か超展開というか展開が早すぎるというか……あれ一緒だ。
さて、主人公を喋らせるか否か……アンケートを取るほど見てくれてる人がいるといいんだが……