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追放代行サービス「モーイラン」【短編】  作者: 夢野又座/ゆめのマタグラ


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1話 モーイラン


 チリンチリン――と事務所のドアに掛けられたベルが鳴る。

 来客の合図だ。

 ()()()には存在しない生地のネクタイを締め直し、姿見でメガネを直す。

 ストッキングも伝線なし、メイクはバッチシ。髪は整っててヨシ!

 受付カウンター前には、すでに依頼者がお見えになっている。


「お待たせしました。追放代行サービス『モーイラン』のヤマグチ・キョウコと申します。本日は、どのようなご用件でしょうか?」


 気弱そうで華奢(きゃしゃ)な少年だ。

 日に焼けた健康的な肌とは裏腹(うらはら)に、どこかオドオドとして落ち着かないようだ。

 フワフワした金の髪が帽子からはみ出している。

 しきりに帽子の様子を気にしている――誰かに見られていないか不安なのだろう。


「その……エドって言います。今のパーティーから抜けたくて……」

「なるほど。ご自身の意志では抜けられないと?」

「リーダーの……カレンが強引で。あと、できれば追放って形がいいんです」

「冒険者ギルドでも、次のパーティーに加入するまで支援を受けられますもんね」

「はい……」

 

 この数年。

 ギルド界隈(かいわい)では、パーティーを理不尽な理由で追放される冒険者が後を絶たない。

 正当な理由で追放される割合が10%だとしたら、残り90%は言い掛かりも甚だしいものばかりだ。


 一部追放理由例

・サポート専門職なのに役に立たないと追放

・どう考えてもチートスキルなのに気付かず追放

・1番年上、または年下なことを理由に追放

・荷物持ちしかできないと追放

・リーダーが他の女性メンバーに手を出しまくって邪魔になって追放

・ギルドマスターになんとなくノリで追放された、など。

 

 もう挙げるだけで頭が痛くなる前例ばかりだ。

 そんな追放された冒険者を支援するシステムが、最近できたのだ。

 理不尽(りふじん)な理由だと認められれば、支援金も出るし、元パーティーもペナルティを受ける。

 こうして無茶な追放は数を減らしたのだが――今度は逆の需要(じゅよう)が高まり始めた。

 

 辞めたくても辞めさせて貰えない。

 追放したいが、ペナルティが怖くて切り出せない。

 

 そんな状況に対応できるのが、追放代行サービスだ。

 

「ボク、あまり強く言えなくて……」

「分かりました。ですがご安心してください。当サービスをご利用の方には、エド様のような方がたくさんいらっしゃいます」


 営業スマイルで微笑むと、エドも少し安心したのかホッとしたような顔になる。

 

「料金は、前払いで銀貨(ぎんか)10枚ですよね」

「はい。解決には、1週間ほどの期間を頂きます。――追加オプションとして当社指定の宿舎でのお泊りも付けられますが、いかがでしょうか?」

「えっと、それはなんでですか?」

「当サービスを受けたと聞いたパーティーの方々が、ご依頼者様を拉致監禁(らちかんきん)して脅そうとすることもありまして……」

「ひっ」

「ご依頼者様の安全をお守りするのも、我が社のモットーであります」

「じゃ、じゃあお願いします」

「追加で銀貨7枚でございます」


 他にも詳しいパーティーの状況、ギルド登録ナンバー、拠点にしているギルドや宿屋を書類へ記入して貰う。

 諸々の手続きを終え、ナンバーのついた鍵を手渡す。


「この事務所の裏口から出て、真っ直ぐ右へ行って下さい。突き当りの宿屋にこちらの鍵を見せれば、すぐにお部屋にご案内します」

「分かりました……よろしくお願いします」

「はい。全力でエド様が追放されるよう尽くしますので――吉報をお待ちください」


 深々と礼をして、ご依頼者様をお見送りする。


 ◆ ◆ ◆


「おいアンタ。ウチのエドを知らねーか?」


 こちらから接触(せっしょく)しようとする手間が省けたと喜ぶべきか――

 思わず頬が緩みそうになる昼下がりの陽気さも、粗暴(そぼう)を形にしたような彼女らには無意味なものだろう。

 私が出掛けようと事務所を出て、通りに出ようとしたところへ声を掛けられたのだ。


「そこの路地に入っていったのを見たって奴が居るんだ」

「アタイらに隠し立てすると――」


 女性としては高身長である174センチほどの私をも悠々に超える大女は、その自慢気に担いでいたハンマーを振り下ろす。

 ボロのタルが粉々(こなごな)に砕かれ、破片が路上へと散らばる――


「ロクなことにならねーからな?」


 筋肉の引き締まった大中小の女性冒険者が3名。

 さっきハンマーを振り下ろしてきたのが、マギ。

 片目が隠れている小柄な少女が、レイカ。

 赤いロングストレート。ビキニのような鎧を着ているのがカレン。彼女がリーダーだ。

 

 全部、エドより聞いていた特徴(とくちょう)合致(がっち)する。


「あまり往来で暴れると迷惑ですので……近くのカフェで、お茶でもどうでしょうか?」

「ああ? エドの行方を知ってるのか、知らねーのか。そう聞いてるんだぞ!」

「ああん? ナメてると、ナイフでバラすぞ?」

 

 もう少ししたら通行人が衛兵へ通報でもしそうだ。

 そうなれば、こちらとしても仕事がやりにくくなってしまう。


「ではお話しますので、こちらへどうぞ……」


 ほこりまみれの彼女らを事務所に案内したくないな……しょうがないか。

 せめて穏便(おんびん)に話が終わってくれますように――


全3話+後日談となってます。

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