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救いのない小説  作者: Fall44


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第一章:崩壊の夜

雨が降り続ける街。

かつての栄光は跡形もなく、廃墟と錆だけが残っていた。


この世界に、希望は存在しない。

正義も善意も、誰かを救う力も、すべて意味を失った。


そんな街で、一人の少年が生き延びていた。

名前はレイ。かつて文明の片鱗を知る家系の生き残り。

だが、彼の心は孤独に蝕まれ、明日への期待も、救いも、何も残っていなかった。


これは、救いのない物語。

希望を求めても、虚しく散るだけの世界。

この街に残るのは、雨と錆と、終わりのない孤独だけだった。

 雨が、街をゆっくりと溶かしていた。

 舗装の割れた道路に黒い水が広がり、街灯の明かりを歪めながら流れていく。その揺らぎの中に、自分の影が伸びたり縮んだりするたび、レイは胸の奥がざわつくのを抑えられなかった。


 この街はもう死にかけている。

 そう思うたび、呼吸が少しだけ浅くなる。


 どこからか聞こえてくるのは、壊れた機械の軋むような音。

 風に運ばれるのは鉄の匂いと、濁った湿気。

 人影はない。夜道に残されたのは、雨とレイだけ。

 それなのに――背後に、何かがまとわりつく気配だけが確かにある。


 靴底が水を踏むたび、ちゃぷ、と濁った音がした。

 一歩進むごとに、その音が街の静けさを破り、何かを呼び寄せてしまいそうで、レイは歯を食いしばりながら歩みを続けた。


 逃げているわけではない。

 だが、立ち止まることもできなかった。


 ――この街では、止まる者から消えていく。


 噂なのか、警告なのか、確かめた者はいない。

 ただ、日々誰かが姿を消し、翌朝にはその人がいた場所の空気だけがわずかに冷えている。それだけが事実だった。


 「……はぁ」


 吐き出した息は、雨に呑まれて消えた。

 行くあてがあるわけでもない。

 ただ“あの気配”から距離を取るために足を動かしているだけだ。


 だが――。


 ピタ、と。

 背後で水を踏む小さな音がした。


 レイの心臓が、ひとつ大きく脈打つ。


 音は、すぐに消えた。

 風のせいかもしれない。

 水滴が落ちただけかもしれない。

 それでも、首筋を冷たい指でなぞられるような不快さが残る。


 「……来る」


 雨音を吸い込むように、街が静まった。

 風も止み、壊れた機械の軋みさえ消え、世界がレイの呼吸だけになった。


 逃げろと言われても、どこに逃げればいいのか分からない。

 この街のどこにも安息はなく、どこも等しく崩れかけているのだから。


 レイは、にじむ街灯の下で足を止め、深く息を吸った。

 何も見えない。

 何も聞こえない。

 それでも、確かに“何か”が近づいている。


 雨はただ静かに降り続き、レイの肩に、髪に、服に、じわりと重さを刻んでいく。

 その冷たい感覚だけが――

 自分がまだ生きている証のようだった。

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