小話 アズとリヒトの日常
ピピピ
ベッドサイドの目覚まし時計が鳴る。
目覚ましを止め、あくびをしながら、リヒトは大きく伸びをした。
その気配に反して、隣では小さな頭が布団に半分沈み、すやすやと寝息を立てている。
安心しきった子どもの寝顔。胸がほわっと温かくなる。
(……かわいい)
もちろん、本人に言えば間違いなく怒るので心の中だけに留める。
廊下に配膳されたミールキットを取ってくる。
湯気のたつスープと焼きたてのパン、柔らかいサラダに紅茶が二人分。
「アズ、朝食食べるかー?」
テーブルに並べながら声をかけると、
ベッドの小さな塊がもぞ……と揺れた。
「ん……」
アズランはひどい寝起きだ。
それを知ったのは、彼が“子ども”になってから。
寝るし、食べるし、機嫌も悪くなる。
……妙に人間っぽくなった。
「アズ、起きろ。冷めるぞー!」
ばさっと布団をめくると、
眩しそうに眉を寄せたアズランが、ぱちぱちと瞬きを二回。
そして、ふあぁ……と大きなあくび。
寝起きのまま、ふよふよと浮いて椅子へ向かい、ちょこんと座る。
リヒトは紅茶を注いで、そっと前に置いた。
「はい、熱いから気をつけろよ」
「ん」
アズランは小さな手でカップを包み、
子どもそのままの仕草でフーフーと冷ます。
リヒトも席につき、自分のカップを手に取った。
「おはよう」
「……おはよぉ」
またひとつ、眠気を引きずったあくび。
そして自然に、もくもくと朝食を食べはじめる。
――帰還して、何度目かの“平和な朝”。彼らの新たな関係が日常になっていく。




