小話4 眠れない夜は
眠っているリヒトの腕の中、子供のノクスが眠っている。
いつのまに——。
リヒトは、あどけない子供の柔らかい頬を撫でた。
ノクスはくすぐったそうに顔を一度振る。
普段は大人の姿をしているくせに、
時々、わざわざ子供の姿になって
こうしてリヒトのベッドにもぐりこんでくる。
リヒトももう慣れたもので、毛布をかけ直し、
そのまま抱きかかえるようにして目を閉じた。
アズは眠らなかった。
眠っていたのを見たのは最初の一度きり。
夜はいつも窓辺に浮かんで、外を眺めていた。
あの青い髪と背中を思い出す。
逆にノクスはよく眠る。
一度、大きな姿のままベッドに入ろうとした時は、さすがに拒否した。
「大人の男が二人で寝るのはおかしいだろ」と。
それ以来、子どもの姿で潜り込むようになった。
リヒトも、まぁこの姿ならいいかと、いつしか諦めていた。
瞬に知られたら怒られそうだ——言わないけど。
窓際の簡易ベッドでは、ナギニがいびきをかいている。
外の空には、星が肥大したように降るほど光り輝いていた。
それでも、窓辺の主は不在のまま。
夜は静かに、穏やかに、更けていった。




