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黎明の適合者 -Colors of Dawn-  作者: 雨野 天
第一部 第四章

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16.喪失

炎の匂いが、まだ空気に残っていた。

リヒトは腕の中のアズランの身体を見下ろしながら、静かに言った。


「ロッソ、アズも焼いて。外の奴らに利用されたくないんだ…」


(アズラン)(ロッソ)の炎で焼かれる。

もう誰も言葉を発しなかった。

今回の戦闘で失われた命が、無言の墓標となった。


青の力が抜けたアズランの体は簡単に灰になった。

彼の星獣がコトコトと彼の周りをまわる。

星獣たちは、灰の周りをただ静かに回っていた。

まるで主の帰りをまだ信じているかのように。

光の尾がいくつも、冷たい空気に溶けていった。


(ヴェルディア)が近づいて、リヒトに言った。


(アズラン)はまた生まれる。世界がその役割を必要としている限り」

「それは俺の知ってるアズじゃないよ…でも、ありがとう。」


リヒトは最後まで墓標の前に立っていた。

一人になると、星は寒々しく瞬いた。


「リヒト…」

「瞬」


リヒトは瞬から目を逸らす。

あの時、自分の覚悟の揺らぎを悟られたことが恥ずかしかった。

自分が躊躇ったせいで助からなかった命も少なくない。


「迷っているなら、なぜ俺に言わなかった?」

「だって、瞬、忙しいじゃん。」

「お前の愚痴くらい聞く時間はある」

「じゃあさ、今から言う弱音も聞く時間ある?」

「ある」


リヒトはその場でうずくまる。


「俺のせいだ。柚葉が死んだのもアズが消えたのも、今日死んだやつらも…」

「ばぁか」


どしん、と背中に瞬の重みがのしかかる。


「お前のせいな訳あるか」

「でも俺がもっと…!」

「それなら、今日の掃討作戦を決めた俺の責任だ。」


リヒトが驚いて振り向く。


「なんだ?軍隊なら普通のことだ。すべての指揮の責任は上が取る」

「お前…いつのまにそんな覚悟して」


リヒトは前を向いて頭を抱えた。


「ごめん、俺。お前に重責を…」

「俺は全部を救う気なんてない。届く範囲だけで精一杯だ。」

「お前は違うだろ。それでいい。」

ぽつりと瞬がつぶやいた。


「ごめん、明日には普通に戻るから…」

今日失くした分だけ泣かせて、というのは声にならなかった。


リヒトは頭を抱えたまま、何も言えなかった。

星の光が滲んで見えた。

そこへ毛布を抱えたリミがやってきた。


「アンタたち、またイチャコラして。ホモなの?」

「うるさい。何しに来た?」

「私たちのリーダーを慰めに来たのよ」


そう言うとリミはリヒトの上に毛布を落とす。


「わぷっ!」

「どうせ今日はずっとここに居るんでしょ。付き合うわ」

「あ、あんたは帰ってもいいのよ」

リミは瞬を見てにやりと笑った。


「誰が帰るか」

瞬は毛布を被ったリヒトの背にまた圧し掛かる。

リミもリヒトの隣を陣取って彼にくっついた。


二人分の重さを感じ、リヒトは毛布の中で涙を流した。


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