小話3 自覚
昼食の時間を外れた食堂はしんとしていた。
配膳ロボットが運んできた食事を受け取ると、リミは食堂の真ん中にぽつんと座っている一人の人物へと近づいた。
「ここ、いい?」
食事の手を止め、瞬が意外そうな顔をして、リミを見返す。
「好きにしろ」
この女は自分のことを嫌っていなかっただろうかと疑問がありありと浮かんだ顔だ。
「リヒトのことか?」
「違うわよ」
リミがほんのり照れた顔で言い返す。
そして、それを振り払うように髪をかき上げる。
「黄の組織のトップってどんな気分?」
「どういう意味だ?」
「あんなに大勢を一気に統率しなきゃいけない気分って、どんなかなって気になったのよ」
「白の不適合者受け入れが上手く行ってないのか?」
「そういうわけじゃないけど…」
リミは言葉を濁す。
「黄は元々、適合できないやつらを受け入れた烏合の衆だ。自分に自信がなく、仲間意識も薄い。奴らは強いリーダーでなければついてこない。多少横柄で、冷酷で、分かりやすい独裁のリーダーが必要だ。俺はそれが出来る。ただそれだけだ。」
「だが、お前たちは違うだろう。白には白の特性に合ったリーダー像があるはずだ。」
「リヒトに相談しろ。アイツのがそういうことは得意だ」
瞬は言いたいことだけ言うと、最後の一口を口に放り込み、トレーを持って行ってしまった。
リヒトのいない時の彼はものすごくそっけない。
本人は気づいているのだろうか。
「ああ、リミ!ここに居たんですね!」
白のNo.2のサネナリがリミを見つけて笑顔で近づく。
「性格と能力別で、白の班割りを考えたんです。見てもらえませんか?」
「ええ、見せてくれる?」
白は白なりの…
そうか、強いリーダーでなくても、私は私なりの彼らのリーダーになれる。




