スターチスラプソディ
「よお郁弥。待たせたな」
「遅かったじゃないか。相変わらず遅刻しやがって。何してたんだよ?」
「心配したか?そんな事ないか。いやな、道が混んでたんだ。無事に着けたんだし、いいだろ?」
「寝坊じゃないのかよ。ねぼすけ遥一」
「しかし、懐かしいなあ。ここはあの頃と何も変わっちゃいない」
「だろ?相変わらず平凡で退屈な所さ」
「元気にしてたか?…なんてな」
「見りゃ分かるだろ。ピンピンしてる。遥一も元気そうだな」
「そうだ、土産があるんだよ。ちょっと待ってろ」
「おいおい変なものじゃないだろうな?お前はいつだってゲテモノ掴まされて失敗するんだ」
「じゃーん!今住んでるとこの地酒だ。お前とは約束したのに、結局飲めずじまいだったからなあ」
「おおお、お前にしちゃ良さそうじゃないか!それに約束覚えててくれたんだな。で?お前酒は飲めるのかよ?家族揃って弱かっただろうが」
「俺は悲しい事に下戸だ。ま、今日くらいはいいんだよ、一杯くらいなら飲めるんだ。ほれグラス。今日の為に用意してきたんだからな?」
「はは、やっぱりそうだと思った。ほら、さっさと寄越せよ」
「やっぱり美味くはないな。なんだよ、不味くたって別にいいだろ?お前と飲むのが重要なんだ」
「酒の味も分からないなんて、子供だなあ。でもま、気持ちは嬉しいよ。ありがとな」
「そうだ、土産はもうひとつあるんだよ。実はこっちが本命」
「なんだなんだ、久しぶりだからって大仰な…」
「花束をな、買ってきたんだ。我ながら柄にもない事をしちまった」
「へえ?俺が花好きだって、言ったことあったっけ?何買ったんだ?見せてみろよ」
「種類はなんだったかな…ス、ス、ええと、スズランじゃなくてな…」
「綺麗なスターチスじゃないか!俺の好きな花だよ!」
「そうだ、スターチス!」
「うわあ、嬉しいな。あれ、でも遥一にスターチスが好きだって言ったっけ?」
「初夏の今頃にいい花をって店の人に伝えたら、オススメされた」
「なんだたまたまかよ…それにしても、全然傷んだ感じもないよな。この辺に花屋なんて無かったのに、どうしたんだ?」
「道すがらにな、新しい花屋が開いてたんだよ。こんな田舎でも華ができていいよな」
「え?そうなのか。まあ言っても俺も引きこもってばっかりだからなあ。それよりどうやって飾ろうか…」
「俺が飾ってやるよ。なに、インテリアならお手の物だ」
「はあ?ぶきっちょのお前が?笑わせるなよー。変な風にしたら承知しないぞ?」
「これでよしと。どうだ、いい感じだろ?」
「ほお…遥一にしちゃ上出来だな。一体どうしたんだ?」
「インテリアデザインを勉強してんだ。今の仕事に必要でさ。こんなもん趣味じゃないから、毎日苦労してるよ」
「遥一、デザイナーになりたいって絵ばっかし描いてたのにな。夢の為には嫌な事も勉強しないといけないのは辛いとこだな」
「しかし、あれから何年経った?俺が出てったのが15年前か。あっという間だよな」
「なんだよ、改まって」
「なあ郁弥…俺な、今でも夢に見るんだ。お前と二人乗りでバイク乗り回して…」
「ああ、そんな事もあったな」
「そんで事故を起こして」
「…そうだったな」
「俺は身体を打ったくらいで済んだけど、お前はガードレールの外に投げ出されて…」
「遥一…」
「あれからバイクはもちろんだし、車や自転車にも乗るのは躊躇うんだよな」
…
「お前の親御さん、俺の事恨んでるかな。俺がツーリングに誘わなかったら、あんな事にはならなかったかもしれないのに」
遥一、そんな事は絶対、
「お父さん、遅い!いつまでいるつもりなの?」
「おお悪いな、もう行くよ」
「ここ、誰のお墓?ウチのじゃないのにお参りしてるの?」
「これはな、お父さんの大親友のお墓だよ。お前も挨拶しなさい」
「ふーん。まあいいけど」
「ありがとう。もう用事は終わったから、先に行っておいで。後始末をしたらすぐに追いかけるよ」
「はーい」
「…可愛いだろ?事故の後、お前の彼女から妊娠の事を言われた時はびっくりしたよ。なんであんな置き土産しやがるってな。あいつと二人で育ててるが、実は籍は入れちゃいない。向こうは良いって言ってくれてるが、お前が許してくれるか分からなくてな。
…長くなっちまったな。これからお前と、あいつの実家に行くんだよ。事故も結婚も、逃げるのにも疲れたからな。そろそろ気持ちにケジメつけないと。また来るからな、元気でいとけよ」
「おう、約束だ。すっぽかすなよ?」
よくある手法ですが、自分もやってみたくて書いた作品です。うまくできてたら幸い。




