第29話 世にも奇妙なサウナ物語
おじさん道。
これはただ存在するだけで嫌われる存在のおじさん。
そのおじさんをいかに少しでも嫌われないように生きるのかを問う道。
剣道、柔道、茶道に華道。武士道、騎士道。
それぞれの道はあれど、この令和の世に心密かに新たな道を切り開く!
これぞ、『おじさん道』
ある日のサウナにて
「おっ!鈴本さんじゃないですかー!お久しぶりです。」
湯気の中で響くイケボ。 声の主は、鈴本さんのジム友達の戸田さんだ。
鈴本さん「あー!戸田さん!しばらくぶりですね。」
戸田さん「しばらくちょっと地方に行ってまして。ジムも久しぶりなんですよ。」
鈴本さん「出張ですか、大変ですねー。そういえば戸田さんってお仕事何されて…」
戸田さん「(やばっ、顔出ししてない声優です。なんで言えないしな……)仕事……は……なんていうかフリーランスで……自宅で作ったデータとかやり取りしてるような仕事……です…かね?」
鈴本さん「あー!フリーランスなんですね!なんか大変そうってのとかっこいいってのが両方ありますね。」
戸田さん「まぁ、ある程度固定客っぽい繋がり(レギュラーキャラクター)はあるので、そこまででもないですよ。今回は(収録)現場で」
鈴本さん「へぇ~、そうなんですねぇ~」
戸田さん「そうそう!鈴本さん………!」
すると周囲に人がいないことをキョロキョロと確認しながら戸田さんが
「鈴本さんは、信じますか……?
この世には、科学では解明できない……奇妙な出来事があるってことを……」
鈴本さん「……戸田さん、どうしたんですか? 急に改まって……稲川淳二ですか。。」
戸田さん「まぁ、ちょっとっぽい話なんですが・・実は先日のことです……。
いつものように、サウナに入っていたんです。時間は午後4時過ぎ。
中には、私と、数人のお客さんがいました……。
テレビでは、どさんこワイドが始まろうとしてるような
どこにでもあるような平和な……いつもの午後でした。
……そこへ、入ってきたんです。
一人の男性が。。。」
鈴本さん「男性…………?」
戸田さん「はい…年齢は60代くらいでしょうか。
小柄で、どこにでもいそうな風貌でした。
でも、何か……違和感があったんです。
彼は、入ってくるなり、空いている席には座らず……
真っ直ぐに……テレビの前に立ったんです。」
鈴本さん「(ゴクリ)……テレビの前に……。」
戸田さん「そして、一言『相撲に変えますねー』と。
チャンネルを変えたんです。」
鈴本さん「……相撲に?!」
戸田さん「…最初は気づきませんでしたが、私の感じた違和感の正体は、手にリモコンを持ってることでした。全裸にタオル1枚に……リモコン……。」
鈴本さん「……ジムのスタッフの人では…?」
戸田さん「ないですね。今の僕たちと同じ。まさに風呂に入ってる人の姿でした。」
鈴本さん「なら、違うか。。」
戸田さん「そこから不可解な事が続くんです。『あぁ、相撲が見たかったんだな』って僕も、多分周りのお客さんも、そう思いました。
でも……。
彼は、チャンネルを変えると……そのまま、クルリと背を向け……
サウナ室を、出て行ってしまったんです。」
鈴本さん「えっ……? 出て行った……?」
戸田さん「ええ……。入ってきて、チャンネルを変えて、そのまま……。
僕たちと……相撲中継だけを残して……。」
鈴本さん「えっ………?」
鈴本「『トイレかな?』『水飲みかな?』『戻ってくるよな?』
……多分誰もがそう思っていました。
相撲を見ながら……僕たちは待ちました。
でも……。
そのおじさんは……二度と、戻っては来なかったんです……。」
鈴本さん「……!!」
戸田さん「そして、ふと我に返って思ったんです。
あのリモコンは、どこにあったのか……。どこから持ってきたのか……。
何よりあのおじさんは、一体誰だったのか……。
そして……自分の見ることはない相撲中継に変える必要があったのか……。
全ては……深い霧、いや、ロウリュウの蒸気の中です……。」
鈴本さん「……戸田さん。それは………」
戸田さん「はい。」
鈴本さん「……ただのお節介ないい人なのでは……?」
戸田さん「……そうなんです。。
しかもみんな結構相撲見たかったみたいで、盛り上がってたんです。
もしかしたら彼は、あの場にいた誰よりも早く、
みんなが見たがってる『空気』を読んでくれたのかもしれません……」
おじさん道 今日の学び
「サウナには時折、常識では説明のつかない『親切な魔物』が潜んでいることもある。」
最後までお読みいただきありがとうございます。
おじさん道 第29話「世にも奇妙なサウナ物語」でした。
ジムで実際あったお話が素になっており、今も真相は湯気の中です。
更新は【毎週金曜日の23時】です。
今後とも「おじさん道」をよろしくお願いします。




