第23話 ある中学生日記
おじさん道。
これはただ存在するだけで嫌われる存在のおじさん。
そのおじさんをいかに少しでも嫌われないように生きるのかを問う道。
剣道、柔道、茶道に華道。武士道、騎士道。
それぞれの道はあれど、この令和の世に心密かに新たな道を切り開く!
これぞ、『おじさん道』
ある日のスタッフルーム
(新しいお客様の資料かー
中之橋さん。女性。中学の同級生にも同じ苗字の……
えっ……キーパーソンが中之橋…しょうたろう…?!
…まさか?
そんなこと………
あった!
中之橋さん入所当日
中之橋しょうたろうさん「よー!鈴本じゃん!久しぶりだなー!なに、お前、介護士やってんの?!」
鈴本さん「あっ…そうだね…お…久しぶり…ですね…」(どうしよう…どうしゃべっていいかわからん!敬語とごっちゃになる……)
しょうたろう「あっ…これ…おれの母親。よろしくねー」
中之橋さん母「………」
鈴本さん(自分の母親を「これ」って言うなー!)「中之橋さーん、はじめましてー。介護士の鈴本と言います。よろしくお願いしますねー」
中之橋さん母「………」
しょうたろう「それよりさ、ここで働いてるなら、ちょっとサービスとかできないの?」
鈴本さん(うわー…始まったよ、中之橋のこの感じ…。距離を詰めてくるというか。昔からそうだったな。)
「いや、そういうのはやってないんで…」
(んー…でも待てよ?ここでおれが感情的になったら、それはただの私怨。おれは今、一介護士。公私混同は、「おじさん道」に反する…!)
しょうたろう「そんな事言わずにさ、同級生のよしみでなんとかならない?!」
鈴本さん「そういうのないんで。。てか、無理ですから。」
しょうたろう「お前の方から事務に掛け合うとかさ…」
鈴本さん(えらい絡んでくるな…どうしよう。そもそも介護士なんだから、そんな事できる知らないし…)
中之橋さん「…しょうたろう!あんた、いい加減になさい!これから私がお世話になる人に対して、そんな言い方して!!」
鈴本さん(うぉっ、お母さん、しゃべった!!)
さらに畳みかけるように中之橋さんが
「そんなんだから、2回も嫁さんに逃げられて!若い女ばかり連れてきては逃げられて!」
しょうたろう「……でも…ママ…」
鈴本さん(えっ…えぇーー!情報量多いけど、なによりもこの歳で…ママぁーー?!)
中之橋さん「ったく。。」
しょうたろう「……」
鈴本さん(うわー、今度は中之橋の方が黙っちゃったよ……どーしよー、この空気ー)
「いや、まぁ……あの……中之橋さん、じゃあ、施設の紹介していきましようかね〜なんて……」
そうこうしてるうちに、中之橋さん(息子)は居室の整理を終えていつの間にか帰り、お母さんの施設での生活が始まりました。
中之橋さん「息子の事。ホント…ごめんなさいね。」
鈴本さん「大丈夫ですよー中学の頃と変わってないですね。しょうたろうさん。」
そして退勤時間。
鈴本さん「……って、事で私事を含めた今日の申し送りです。。」
田中さん「鈴本さん、疲れてますね〜そんなまさかの再会があるんてすね。」
鈴本さん「うん、すっごい長くなるんだけど……
おれに、やたらと自分の部活や塾に「遊びに来たらいいよ。いつ来ても大丈夫だからさ。」
みたいな事言って、いざ遊びに行った時の先生方の反応といったらさ!」
田中さん「はい……」
鈴本さん「えっ、何?急に?!みたいな空気感になるじゃない!
大人からしてみれば、そりゃ「なんのアポもなく来てんの?!」みたいになるし、その空気を肌で直に体感させられるし、
田中さん「たしかに。」
鈴本さん「挙句の果てに帰り際、個別で呼ばれて「ホントに入る気あるの?!」みたいな矢面に立たされた上、本人は無関係ですよーみたいな顔してさ。おれは遊びに行った感覚だったのに。。そりゃそうさ!だって中2の秋だもん!」
田中さん「まぁ、そうなっちゃいますよね」
鈴本さん「所詮、中学生男子が大人ぶってやってたことだったんだけどね。。」
田中さん「振り回されてましたね。鈴本さん。」
鈴本さん「他にも!他にもね!高校に入学する春休みに遊びに行った先で、急にコーヒー飲もうって、喫茶店入る!それに付き合わされて中学生のお小遣いにしてはバカ高いオレンジジュース飲む羽目になるおれ。とかね。」
田中さん「鈴本さん、オレンジジュースなんだ……」
鈴本さん「当時はコーヒーとか飲めなかったからさ。。スタバとかじゃないからね!ホントに純粋な大人がいるような喫茶店よ?!」
田中さん「鈴本さん!鈴本さん、わかりましたから。なんか最近、鈴本さんの悩み聞くこと多いな……」
鈴本さん「ごめんね。田中さん。。」
田中さん「なんか鈴本さんの話聞いてたら、
息子さんはそういう行動って結局は鈴本さんの事を『友達』としてではなく」
鈴本さん「うんうん。」
田中さん「『塾や部活に友達呼んじゃうおれ』とか『大人っぽく喫茶店入っちゃうおれ』を演出するための、小道具として使っていただけみたいな感じですよね。要は見栄っ張り。」
鈴本さん(そっか。おれはあいつの小道具だったのか……だから当時もモヤモヤして、だんだん距離をとったんだ。。。)
「なるほど!
さすがユニットの分析官!
すっごいしっくりきたよー!ありがとう!」
田中さん「さっ、モヤモヤも少し晴れたでしょうからそろそろ上がってください。
これからは夜勤のぼくの時間なんですから(ニヤッ)」
鈴本さん「頼りになるな〜!じゃ、お先に失礼します。ホントありがとね。」
田中さん「お疲れ様でした。」
鈴本さん(中学時代からのモヤモヤが復活しそうだったけど、田中さんのおかげでちょっと気が楽になったな。今後は「お客様のご家族の方」な対応にしとくか!)
おじさん道 今日の学び
「しょせん中学生男子は、しょせんおじさん男子になる。」
最後までお読みいただきありがとうございます。
おじさん道 第23話「ある中学生日記 」でした。
ふとフラッシュバックした中学時代のモヤモヤ。
まさか話のネタになるなんて! そして書くことで、
ちょっとだけモヤモヤが解消できるなんて!
そんな新しい発見があったお話でした。
物書きセラピーでしょうか?
更新は毎週金曜日の23時です。
今後ともよろしくお願いします。




