第20話 守れ!心の鎧
おじさん道。
これはただ存在するだけで嫌われる存在のおじさん。
そのおじさんをいかに少しでも嫌われないように生きるのかを問う道。
剣道、柔道、茶道に華道。武士道、騎士道。
それぞれの道はあれど、この令和の世に心密かに新たな道を切り開く!
これぞ、『おじさん道』
飯塚さん「鈴本さん。新しい利用者さん。男性なんだけど。これ資料ね。。」
鈴本さん「川上さんか……えっ……この人カツラを着用してて、それを触れちゃいけないってことですか?」
飯塚さん「うん、わりとハッキリしてる方だから、ご自分のことはご自分でなさるし。
でもカツラを着用してることを触れたら、すごい不穏……というか荒れるらしいんだよね。」
鈴本さん「ご病気とかで医療用ウィッグつけてるとかですか…?」
飯塚さん「いや、純粋なファッションウィッグ。」
鈴本さん「ファッションウィッグ……?つまり……?」
飯塚さん「おれの口からは言いづらいけど、要は世間一般的なカツラってイメージかな…」
鈴本さん(思わず天を仰ぎ)「カツラかーしかも触れちゃいけないのかー」
飯塚さん「利用者さんはみんなそうだけど、ご本人のこだわりがあるからね。
川上さんにとってはそれが心の支え。心の鎧みたいなもんだよ。」
鈴本さん「心の鎧ですか。どう対応してこう……」
飯塚さん「まぁ、書面であれこれ考えるのも大事だけど、ご本人とたくさん接してくのが一番なんだよね。」
後日
鈴本さん(やばい。川上さんと初対面が起床介助なんて……どうしよう……)
(でも行くしかないっ!
よしっ!
がんばれ!おれ!)
コンコンコン
鈴本さん「川上さーん、おはようございます〜」
(うおっ!なにあれっ?!
床に……小動物……?!
あっ…川上さんのカツっ………心の鎧か……
でも、どうしよう。。
今ここで起こしたら川上さんが気づいてしまうし、おれにも気づかれてしまう。。。
どうする…?どうする…?)
鈴本さん(よしっ!とりあえずは時間を置こう!
まだギリ起きなくていい時間。そうそう。一旦居室から去ろう。)
数分後。
(そろそろ起きてるかな。。)
ドアをそっと開けるが、まだベッドの上には川上さんが。。
再度、そっと閉める。。
「トントントンっ!川上さーん、そろそろ朝ですよー!起きてくださーい。」
「………」
(やばい。声だけで起こす作戦も失敗。。けど、もう起こさないと後々の時間が押してくるし。。)
ドアの隙間から川上さんの位置、心の鎧の位置を入念にチェックし。。。
(いざっ………!)
ジムのヨガで鍛えた(?)しなやかな動きとスピードで流れるようにカツラを拾い、
反転する勢いそのままに川上さんの頭に
「ふぁさぁぁ…」(よしっ…!)
「川上さーん、朝ですよーカーテン開けますねー」
(そう!私は今カーテンを開けるのに夢中ですからね!
その間に川上さん………頼む!起きててくれ...!そして直しててくれ………)
川上さん「んっ………もう朝かぁ……そろそろ起きるか。」
(背中越しに…)「はいっ!もう朝ですよー」
(いつも以上にカーテンベルトをモタモタと結び。)
「いやー、しっかし今日はいい天気だなー!雲一つない。実に清々しい!
今日みたいな日は………今日みたいな日は、そう!お散歩!
お散歩に行きたくなりますねー
ねぇ?川上さん。」
(もう、十分時間はとったはず……そろそろいいか……?!再び、いざっ……)
(………よかったーー!ちょっとずれてるけどかぶっては、いる!!)
「さぁー、川上さんっ!洗面台行きましょうね〜。
終わったらナースコールお願いしますね!(きらっ)」
スタッフルームにて
飯塚さん「鈴本さ〜ん、すっごい疲れてるね〜」
鈴本さん「……はい。今後どうしましょう……もう1人じゃ抱えきれません。。」
最後までお読みいただきありがとうございます。
おじさん道 第20話「守れ!心の鎧 」でした。
職場のお客様の中にもこだわりが強い方、結構いらっしゃって。
もし自分なら、どんなことにこだわっていくのか。。
と、ふと考えてしまいます。
春巻き、たまにはパリパリのが食べたい。とか言うかも。
更新は毎週金曜日の23時です。
今後ともよろしくお願いします。




