第15話 若気の至り
おじさん道。
これはただ存在するだけで嫌われる存在のおじさん。
そのおじさんをいかに少しでも嫌われないように生きるのかを問う道。
剣道、柔道、茶道に華道。武士道、騎士道。
それぞれの道はあれど、この令和の世に心密かに新たな道を切り開く!
これぞ、『おじさん道』
とある日のスタッフルーム。
鈴本さんと田中さんが話していると、飯塚さんがコーヒーを片手に入ってきた。
飯塚さん「お疲れ様ー」
鈴本さん「あっ…飯塚さん、お疲れ様です。」
田中さん「お疲れ様です。」
飯塚さん「こないだ、3階のユニットでちょっとしたトラブルがあってね。
施設内で共有してほしいってことなんだけど。」
鈴本さん「はい…」
飯塚さん「…と、言いつつもただのゴシップネタでもあるんだけどね。」
飯塚さんはニヤニヤしながらそう言うと、向かいの席に座った。
田中さん「3階のユニットって…及川さんのところですよね。」
飯塚さん「うん、まさにそうそう。田中くん、及川くんと同期だったっけ?」
田中さん「はい。何でも卒なくこなすタイプですね、あの人。
口には出さないけど、世の中チョロいって思ってるような…。
でも、なんとなく『確実に勝てる勝負しかしてなさそう』な感じです。」
鈴本さん「田中さん、すごい分析するね。」
田中さん「昔からそういうの、好きなんですよね。」
飯塚さん「その通りなんだよなぁ。
で、その及川くんが、ベテランの若島さんを、普段から小バカにした態度を取ってたらしくてね、
『若島て名前なのにおっさんですね』とか、
『こんな事もできないのかよ。ったく、これだからおっさんは。』とかね。」
田中さん「ひっどいな……」
飯塚さん「若島さんもリーダーに相談してたんだけど、なかなか態度は改まらなかったみたいで。」
鈴本さん「うわぁ…。」
飯塚さん「そんなある日、及川くんの担当の日に、利用者さん同士がケンカを始めちゃってね。
それで、一人じゃ手に負えなくなって、隣ユニットにいた若島さんに助けを求めたんだけど…
若島さん、『こっちも食事準備で忙しいので。それに及川さんは何でもできるでしょうから』って、
やんわり突き放したんだってさ。」
田中さん「まぁ、普段の態度から考えれば、そうなりますよね。」
飯塚さん「うん。でも、さすがにケンカが収まらないから、若島さんも最後はサポートに入って、見事ににその場を落ち着かせたんだ。」
鈴本さん「すごーい!どうやってトラブル解決したんですか?」
飯塚さん「ケンカの原因ってのが、普段から編み物してるお客様と、
それを自分ができないからって疎ましく思ってるお客様がいて、
若島さんが普段から見てて、なんとなく予見できてたんだろうね。」
鈴本さん「さらにすごいな。」
飯塚さん「それでゴミ箱に編み物セットが捨ててあるのを見つけ出して、なんとか一件落着」
田中さん「よく見つかりましたね。」
飯塚さん「それも行動範囲とかで、あの人ならここだろう。ってわかったらしいよ。
で、その後、及川くんが謝ってきた時に、今までずっと我慢してた若島さんが、静かに。
でもハッキリ言ったらしいんだ。」
若島さん「おっさんになってからの方が、人生なげーんだよ。おっさん、舐めんな。」
田中さん「……若島さん、すごいっすね。」
鈴本さん「(出たぁー!今日のおじさん道、名言!)」
飯塚さん「ちなみに、若島さん、若い頃はまぁまぁヤンチャだったらしいよ。」
鈴本さん「……そうなんですね。今の若島さんからは想像つかないです…。
けど、そのセリフ、なんだか納得です。」
嫌われないだけが守りじゃない。
時にプライドを持って言い返す。
それもまたおじさん道。
最後までお読みいただきありがとうございました。
おじさん道 第15話でした。
私は昔語りできるほどの武勇伝はありません。
しいて言うなら小学生の時、体育の授業で初体験だったバレーボールのサーブが
なぜかめちゃくちゃ決まったくらいですかね。
更新は金曜23時です。
今後ともよろしくお願いします。




