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46.召集


 昼休み、食堂にて。


「なあキズナ」


 隣で学食の唐揚げをもぐもぐ食べている義輝がお茶に手を伸ばしながら尋ねてくる。


「どした?」


 対するオレは自分が注文した目の前の出来立て回鍋肉に箸を伸ばす。この学食の回鍋肉がまた超絶に美味いのだ。


「守護霊の皆様を視ることも会話することも出来ないって昨日言ってたけど、家ではどんなふうに過ごしてるんだ?」


「どんなふうにって、別に普通に過ごしてるけど」


 コイツはまた大勢の生徒が溢れかえっている中で何を訊いてきやがると思ったが、義輝なりにボリュームを抑えてくれているようなので仕方なく会話を続ける。


「話しかけたりはしてるのか?」


「そうだな、たまに話しかけてる」


()()()だとッ!?」


 最後の唐揚げを口に入れる直前で義輝が戦慄の声を上げる。オマエその唐揚げ……絶対に落とすなよ?


「なに考えてんだよキズナッ! せっかく守護霊の皆様が三人も憑いていらっしゃるってのに、そんなお前薄情なッ……いや、でもキズナらしいっちゃらしいのかッ……いやでもなぁーッ……!」


 空いてる手で机を軽く叩いたと思ったら急に考える素振りを見せ、そしてすぐ悩ましげに額に手を当てる義輝。まず落ち着け。んで、オレが薄情ってどういう事だ?


「なあ……キズナ」


 さっきよりも声のトーンを落とした義輝が、少しだけ悲しそうな顔で声をかけてくる。


「な、なんだよ?」


「なんつーか、部外者のオレが口を挟む事じゃないのは重々承知してんだけど……さ」


「ああ」


「守護霊の皆様の事……大切にしてあげてくれよ?」


「おい待て待て、急にどうしたんだッ? 死亡フラグ立ちまくってんぞッ? あとみんなの事は大切に想ってるに決まってるだろうがッ。……ぁ……」


 義輝の突然の遺言じみた発言につい熱が入ってしまったが、その拍子に本人達の前でメチャクチャ恥ずかしいことを言っている事に気づいてしまった。 


(姿が視えないからって思わず言っちまった!)


 するとオレの顔を見ながらヒュ〜と口笛でも吹きそうな顔した義輝…………の、箸に挟まれている最後の唐揚げがポーンと宙に舞い上がった。


「ちょおおぉあッ!!?」


 いきなり手元から逃げ出した唐揚げを見て慌てて変な声を上げた義輝が、見事な反射神経で上から戻ってくる唐揚げを口でキャッチした。たまたまその瞬間を見ていた数人が「おぉ〜」と小さな歓声を上げるが、周囲のどよめきに気づいていない義輝は「あっふふぇ〜」と胸を撫で下ろしていた。


「よく落とさなかったな」


「いあいあおああひえあうあふぁっふぁっへ」


「……そうだな、唐揚げって美味しいよな」


 とりあえず意味不明なので適当に受け答えすると、義輝はうーうー言いながらブンブン首を横に振っていた。

 

「ング……しっかし何だ今の!? 絶対勝手に飛び上がったって!」


 ようやく唐揚げを飲み込んだ義輝があり得ないといった顔で自分の箸と天井を交互に見返している。


「いや、たぶん…………みんなが何かしたのかも」


 根拠はないがそんな気がしたので軽い気持ちで言うと、義輝がクワっと凄まじい目力でこっちを向いた。


「ま……マジか、……今のがッ……」


 あんぐりと口を開けカタカタと震える顔をゆっくりとオレの後ろに向ける義輝。つられてオレも振り向いてみたが、いつもと同じで期待した三人の姿を視ることは出来なかった。


「ぅぅぁありがとうございますッ! 俺ッ……感動で泣きそうですッ!」


「オマエ……」


 泣きそうどころか既に涙ぐんでいる義輝を見て、コイツは本当に人外のヒトのことを特別に想ってるんだなとしみじみ思う。


(はた)から見たらふざけてるように見えるけど、実際はいつだって本気なんだよなー)


 そんな義輝の姿を見て少しばかり温かな気持ちになったオレは、チラリと後ろを振り向き傍に居てくれてるであろう三人にひっそりと微笑みかけてから、改めて食事を再開――


「――ごめんね、ちょっといいかな絆君?」


「…………クッソ……」


 食事を再開したかったんだけど、なんとまあ聞きたくもない声が聞こえてきやがった。


(なんでこうタイミングに恵まれてないかなッ!?)


 それでも名前を呼ばれたのなら振り向かない訳にも行かないので、イライラをどうにか抑え込みながら声のした方を向いた。

 そこには予想通りの人物が、校内だというのに珍しく一人で突っ立っていた。


「ああ、柊木さん。どうかしたの?」


「あのね、この間の作業のことでお話しが――あっ」


 そこでナノのポケットからボールペンが落ちる。カランと乾いた音が鳴ったペンは、そのままオレの足元に転がった。


「ごめんなさいッ、今拾うね」


 そうしてナノがお淑やかにしゃがんでボールペンに手をかけようとした、その時――


「……?」


 一瞬ナノの地声が聞こえたかと思い二度見すると、ナノは何かを訴えかけるような眼差しをオレに向けながら起き上がった。


「でもあれだね、よくよく考えたらお昼食べてる時に話すことじゃなかったね」


 すぐに申し訳なさそうな顔つきになったナノが「また後で声かけるね」と遠慮がちに言うと、可憐な雰囲気を漂わせながら食堂を後にした。

 するとすかさず食堂内で「やっぱ柊木さんカワイイよな〜」とか「俺、今度告白してみようかな」等々どうでもいい話題が持ち上がり始めた訳なのだが、そんな与太話に耳を貸すことなくオレはポケットからこっそりスマホを取り出した。

 …………。

 ……。


「柊木さん、いったい何の用だったんだろうな……って、どしたキズナ? すんげぇ~不満爆発な顔になってんぞ?」


「……なあ、義輝。もう昼飯食べ終わったよな?」


「ん? ああ、食い終わった。相変わらず美味かったわ」


「そうか。じゃあ……行こうか」


「は? どこに?」


 訳もわからずキョトンとしている義輝に分かるよう、スッと上を指さす。


「…………宇宙(そら)?」


 どこまで行く気だオマエは。


「屋上だよ」


「屋上ぉ? いや立ち入り禁止じゃなかったっけ?」


「そうだな、許可がなければ」


「えっ? あんの?」


「みたいですよ?」


「みたいィ?」


 ますます訳が分からなくなっている義輝にオレも肩をすくめて答えた。



 『屋上に来て、変態パートナーさんと一緒に』



(マジでウザいぞ、この幼なじみ……)


 ぶっちゃけアイツの目的が何なのかは見当もつかないが、不名誉な二つ名を消し去ってくれる手前無視する訳にも行かないので、すぐに向かうべくオレはちょっと冷めてしまった回鍋肉を急いでかき込んだ。




義輝のから揚げが飛び跳ねた原因ですが、思わぬ絆の告白(勘違い)に反応した雅が盛大に卒倒した際、偶然つま先が直撃した為です。お茶目だね!

余談ですが、この時楓もクールに卒倒してました。

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