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21.表裏の狭間に潜むモノ


「千歳?」


 たまたま外に視線を向けていた先から、同じクラスの千歳が姿を現した。


「おい、何見てんだ」


 目が合うや否や、いきなり圧のかかった声がかけられる。


「いや、急に千歳の姿が見えたから、こんなとこで何してるのかなと」


「別に何でもねえよ。お前こそこんなとこで何やってんだ」


 そう言われ、一瞬何と答えれば良いのか分からなかった。

 まさか馬鹿正直に守護霊と話しをしているとは言えまい。


「ぁ~、ちょっと考え事」


「ハッ、なんだそりゃ」


 鼻で笑い立ち去ろうとする千歳だが、すぐに足を止めるとこちらへ振り返った。


「なあオイ、お前あの赤ロン毛と仲良さそうだからあいつに言っといてくれ。クソうるせえってな」


「了解、伝えとく」


 苦笑混じりに答えると、千歳もこちらの胸の内を悟ったのかニヤけた笑みを残してその場を立ち去った。


「まあ、誰が見てもうるさいわな」


 親しく接してるオレ自身でさえうるさいと感じる時があるんだから、交流のない人が義輝をうるさいと感じるのも当然といえば当然だろう。


「それにしても、そんな留年するほど悪いヤツには見えないんだけどな」


 疑問に思いながら立ち去った千歳を思い浮かべていると、突然頭に何かが触れる気配がした。


「キズナはっけ~ん♪」


「うおっ、びっくりしたぁ~」


 慌てて後ろを振り向くと、無邪気な顔で笑うナノがそこに居た。


「オマエなんだよいきなり」


「え~今朝言ったじゃんか、頭ナデナデしてあげるって」


「それはいらんて言っただろうが」


「私にそんな遠慮はしなくていいの」


「いや遠慮とかじゃなくて」


「それより、さっきの千歳くんだよね?」


 言いながら先程まで千歳が居た場所に目を向けるナノ。

 心なしか明るかった表情はナリを潜め、声のトーンも若干低くなっている。


「ああ、見てたのか」


「なぁに? もしかして弱み握られたりしてるの? 私が行こうか?」


 口では笑っているが、決して冗談なんかで言っている訳ではないナノの目を見てイヤな予感を覚える。


「やめろ、偶然会っただけだし、弱みとかもねえよ」


「ねえキズナ。私に隠し事してると、バレた時どうなるか分からないよ?」


「おいナノ、オマエはオレに心配させたいのか?」


「キュン!」


 そう言ってときめいた表情をしながら握りしめた両手を顎の下にあてるナノ。

 しかしそれがただの演技だと知っているオレには何の効果もなかった。


「キュンじゃねえ。オレの為に言ってくれてるのかもしれねえけど、なんでもかんでも関わろうとするな。マジでいつか怪我するぞ」


 その時――



 ――ダァァーン!!



「えっ、なに?」


 ナノが訝し気な顔でオレの後ろに目を向ける。

 突然オレの背後から床を叩きつけるような音が聞こえてきたのだ。


「さ……さあ?」


 まさか守護霊の皆さんが……とも思ったが、ここは何も知らない素振りを見せることにした。


「しっかしキズナがそんなに私のことを心配してくれてるなんて、それってもう好きって言ってくれてるのと同じだよ?」


「腐っても家族みたいなもんなんだから、心配して当たり前だ。オマエが執拗にオレに関わろうとすることと一緒だろ」


「さぁ~、それはどうだろうね~……あっ、ちょっと待って」


 そう言うとナノは目を瞑り、またすぐに目を開いた。

 その後すぐに知らない女生徒が二人、会話をしながら校舎の方から姿を見せたと思ったら、さっきとはまるで雰囲気の違う優しい口調のナノが話しかけてきた。


「でね、皆から集めたプリントなんだけど、絆君ちょっと職員室まで持っていってくれないかな?」


 それを聞いてこの状況を理解したオレも瞬時にスイッチを切り替える。


「了解、じゃあそっちの件は柊木さんに任せるとして、機材運びはどうしようか?」


「そうだね~、佐久間くんになら……あっ、こんにちは♪」


「こんにちは~柊木さん」

「こんにちは~」


 女性徒二人がすれ違う時にナノがニコッと会釈をすると、二人も同じように笑顔で会釈した。

 そしてナノが話しを再開させる。


「それでね、佐久間くんになら任せられるかもしれないと思って」


「オーケー、じゃあ義輝には後でオレから伝えておくよ」


 そんな何の意味もないやり取りを交わしている内に先程の二人が横切り、旧部室棟の方へ去って行った。


「なかなかやるじゃん♪」


 また無邪気な顔に戻ったナノがオレの脇腹を肘でツンツン突いてくる。


「うるさい、もう十年もこの調子だぞ。付き合わされる身にもなれ」


「感謝してるってば。でもね、これは譲れないの。私の素顔は他の誰にも見せない。キズナだって面倒事は嫌でしょ?」


「だったら頭とか撫でるなよ。見られたら一発でアウトだぞ」


「見られないからナデナデしたのに。キズナってホントに心配性だね」


 ちょっとバカにされた気分になってムッとしたが、ふとそこで自分に取り憑いてくれている方達を思い出し、なんとなくナノに尋ねてみる。


「ちなみになんだけど、今は大丈夫なのか?」


「当然、誰の気配も感じないわ。油断も隙も一切ない」


 ドヤ顔で豪語するナノを見て、コイツは()()()()()()()()()()()()()()()んだなと再確認する。


「そうか、やっぱり不安だ」


「なんでよッ?」


「いや、別に」


 わざわざ説明してめんどくさい事になるのも嫌なので、やはり黙っておくことにした。


「それじゃあ、オレはそろそろ先に行くわ」


「あ、うん……分かった」


 ずっと隣同士で一緒に居るのも変な噂が立ちかねないので、朝と同様別々に教室へ戻ることにする。これもいつも通りのやり方だ。

 オレはすれ違いざまにナノに目を向けることもせず、その場を後にした――――








「オレの為……かぁ」


 一人になった名乃が見えなくなった絆の背中から視線を外すと、ぽそっと呟いた。

 そして何を見るでもなく外の景色に目をやると、ニタッと口元が緩んだ。


「そうじゃないんだよ、キズナ……」

 ――――

 ――









 ――――


「な~にが油断も隙も一切ないよ、アンタの本性はバッチリ見てるんだからね!」


 名乃の姿が見えなくなって尚、何度も舌をべぇ~っとお見舞いしている雅。ぎこちなさが見えるあたり、あまり得意ではないようだ。


「まぁ~アタシ達が居ることまではさすがに分かんないよね」


「羨ましい……」


「えっと、……カエデ?」


 絆にくっついて教室へ戻ろうとしている最中、一人落ち込んでいる楓へ様子を窺うように声をかける唯。

 そこへくわっと目を見開いた雅が言い聞かすように楓の肩を揺さぶった。


「ダメよカエデ! 負けちゃダメ! ダーリンは優しいから誰にでもああ言うの! 別にあの女が特別って訳じゃないの!」


「って言ってるアンタも相当ダメージ受けてたわよ?」


 つい先程二人が激しく床を叩きつける仕草を見ていた唯が無慈悲にツッコミを入れる。すると雅の動きがピタっと止まり、次第にわなわなと震えだした。


「ぅうっさいわね! 逆にアンタは何でいつも平然としてられるのよ!」


「アハハ、あまりのカッコよさにちょっとトキめいちゃってた」


「こぉんのハッピー頭めッ! アンタが言われた訳じゃないのよ!?」


「じゃあ今、自分が言われたと思って想像してみて?」


 唯に言われて、雅と楓が上を向いて絆とのやり取りを思い浮かべる。

 そして、二人の顔はみるみる蕩けていった。


「ハァ~、ダーリン素敵ぃ~♪」


「ホントに単純なんだから」


「ご主人さま、もっと激しく罵ってくださいませアハァ~~♪」


「いやアンタ何を想像してんのよ……」









 ――――


「義輝」


 教室に戻ると他のクラスメイトと話す義輝の姿があったので、後ろから声をかけた。


「おおキズナ、もういいのか?」


「ああ。さっきの話しなんだけど、オレも付いていくよ」


「おおマジか! じゃあ早速今日の放課後でいいか?」


 待ち遠しくて昂っている義輝の言葉に分かったと頷くと、ついでに言伝を伝える。


「あと義輝、千歳がうるせえって」


「そうか、知らん」


 一瞬で興味を失った義輝が、超速であしらった。





学年を問わず非常に校内での知名度が高い名乃ですが、大半の理由を占めている美貌と性格による人気の高さの他に、名乃が『生徒会の一員だから』という要因があります。

やはり生徒会の一員ともなると、たくさんの生徒達と接する機会が多いんでしょうね。それとも何か裏があるのかな、柊木さん?

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