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11.せめて潔く……


「芳しくない結果になりそうね」


「もう完全に悪霊って信じ込んじゃってる」


「そうね」


 表情の暗い楓と唯だが、雅だけは全てを受け入れたかのような堂々とした眼差しを向けている。


「てっきり暴れまわるのかと思ったけれど?」


 そう尋ねたのは楓だ。


「そんなことしないわよ。これ以上悪く思われるなんて耐えられないもの」


「こういう時ってさ、言葉を……気持ちを伝えられないのって…………つらいね」


 必死に笑顔を作ろうとする唯だが、すぐに声のトーンが落ちてしまう。


「偶然とはいえ、地縛霊だった私を解放してくれただけでも、この人には感謝しきれない。これ以上何かを望めば、きっとバチが当たるわね」


「それはアタシも同じ。おかげでこんな姿になっても、すごく楽しかったんだから!」


「……ねぇ、アンタ」


 唐突に雅が唯に話しかける。


「ん? なに?」


「さっきは……ゴメンね。大人げなかった」


 さっきという言葉を聞いて、唯はすぐに思い当たった。

 きっとここに来るまでの諍いの事を言っているのだろう。

 素直になった雅の顔を見たら、なんだか自然と気持ちが楽になった。


「別にいつものことだし、全然気にしてないわよッ」


 そのいつも通り快活な唯の表情を見て、雅も自然と笑みが零れる。


「ワタシもさ、ダーリンや……アンタ達と一緒に居て……楽しかった。まさか幽霊になってから、こんなに楽しい思いができるなんて夢にも思ってなかったからさ、ちょっとはしゃぎすぎてた。……反省」


「だァ~かァ~らァ~気にしてないってば! アタシも酷いこと言ってごめんね」


「ああ、ババアね」


 と、楓が横から割り込む。


「ぁあン!!?」


「いちいち言わなくていいから……」


 悪びれる様子もなく言い放った楓に、呆れ顔の唯。

 いきなり逆鱗に触れられた雅はドスの利いた声を上げたが、それもフッと力が抜ける。

 

「ぷっ……アハハハッ。いいわよ最後くらい。好きなだけ言いなさいよ」


「言わないわよ」


「ババア」


「言うんかいッΣ」


 ノータイムで繰り返す楓に、すかさず唯がツッコミを入れる。


「それに、ダーリンには恋まで教えてもらったんだもの。もう思い残すことなんてないわ」


「そうね、私も心からそう思うわ」


「やっぱりアンタも好きだったのね」


 簡単に自白した楓を横目に見る唯だったが――


「あら、貴女はこの人のこと好きじゃないの?」


 思わぬカウンターが飛んできた。


「それはッ…………ちょっとは……好キ……ダケド?」


 顔を赤くしながらカタコトのように呟き、どうしたもんかと目を泳がせていた唯だが、続くロリ娘の暴走に助けられる。


「ぬわぁに言ってんのよ! ダーリンの相手をするのはワタシだけで十分だわ! しっしっ!」


「ハッ、そっちこそ何言ってんだか。アンタじゃコイツの身体がもたないわよ! もちろん暴力的な意味でね!」


 邪魔者を遠ざけるように嫌な顔で手首をスナップさせる雅に対して、余裕の表情で煽るように顔を覗き込む唯。


「最後の最後で品のない会話なんだから、まったく」


 人知れず二人のことを心配していた楓が頭を抱えるが、その表情は、ほんの一瞬だが、確かに笑っていた。


「でもこれで……お別れね」


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