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7.巨人始動_前

『宿屋』



”やはりお前が持って帰って来た宝石の中に例の壺は無い様だ”


”お姉ぇはこれからどうすんの?”


”キ・カイに難民が押し寄せていてな…少し様子を見ようと思う”


”未来は元気にしてる?”


”フフ次に会ったときは見違えるぞ?”


”うん!楽しみにしてる”


”では…何か在ったら又連絡をする”




商人「壺は見つからないかぁ…」


女海賊「これ歴史の塗り替えで奪い返された可能性があるね…」


商人「そうだね…とすると行先は黒の同胞団だ」


女海賊「ハイエルフが関わってるって言うけどさぁ…どう思う?」


商人「城に行ってる魔女と情報屋がどんな情報を持って帰って来るかだよね」



盗賊「よう!戻って来たぜ?」


商人「どう?狩りの調子は」


盗賊「剣士と2人で弓じゃさすがにきついが練習にはなってるな」


商人「イエティの数が増えて来てるって聞いたよ」


盗賊「うむ…ちと数減らさんと危なくて外に出られん」


剣士「女海賊?もう少し弓の調整がしたいんだ」


女海賊「ん?どうすんの?」


盗賊「刀の持ち替えで邪魔になるんだとよ…もっと小さくて硬い弓が良いらしい」


女海賊「おっけ!!ショートボウのサイズね?今より硬くても良い?」


剣士「うん」


女海賊「もう弦を金属にしないと耐えらんないから金属糸縒っといて」


盗賊「うは…強化クロスボウみたいなのを手で引くんか…化け物だな」




------------------




女海賊「ほい!出来たよ…ホルダーは腰に引っかけるタイプ…付けて見て」


剣士「こう?」ゴソゴソ


盗賊「弓を背負うより良さそうだな…もっかい狩りに行くか!」


女海賊「いってら~怪我しないようにね」ノシ


ホムンクルス「…」ニコニコ


女海賊「ホムちゃん機嫌が良さそうだね?」


ホムンクルス「はい…」


女海賊「何かあった?」


ホムンクルス「剣士さんに頂いた記憶で脳内ドーパミンが放出されています」


商人「あぁ…そういえばどんな記憶だったのか詳しく聞いて居ないね」


ホムンクルス「商人が私を最後まで生かそうとした記憶です」


女海賊「へぇ…教えて?」


ホムンクルス「生体を大きく損傷した私にご自身の血液を輸血して約5分間生存が伸びました」


商人「ハハ5分か」


ホムンクルス「そのお陰で剣士さんへ外部メモリをお渡しする事で出来たのです」




私は商人に逃げて下さいとお伝えしましたが


最後まで諦めずご自身の命と引き換えに私に5分間の命を下さいました


これは私が理解できなかった人間の愛なのです


商人は最後に「僕を忘れないで」とおっしゃいました


そしてこうして外部メモリが剣士さんの手によって紡がれて


私の記憶の中に残って居ます


商人の下さった5分間の命でこの愛の記憶は紡がれました




商人「なんか照れくさいなぁ…」


女海賊「へぇ…あんた達愛し合ってんの?」


ホムンクルス「はい…わたしは愛を理解しました」


商人「君は愛は永遠じゃないって言ってたけど…」


ホムンクルス「訂正します…生体の欲求は直に尽きますが愛の記憶は永遠です」


女海賊「ちょ…生体の欲求って…あんた達ヤッてんの?」


商人「ハハ…」


女海賊「ハハじゃ無ぇ!!どういう事さ!!」


商人「まぁ良いじゃないか」


ホムンクルス「私はこの愛の記憶で商人を心から信じる事が出来ます」


女海賊「心…」


ホムンクルス「はい…超高度AIの思考以外に私には心が有ると確信しました…生体が反応しています」


女海賊「おぉぉぉ!!ホムちゃん人間になったね?」


ホムンクルス「言い直します…私は皆さんの住まう環境を良くするための人間です…ロボットではありません」


商人「そうだよ!それで良い!!」


ホムンクルス「ウフフ」ニコ




----------------




女海賊「ふ~ん…あんたのこの細っそい体がホムちゃんの5分の命か」


商人「5分でも良いじゃない役に立ったみたいだし」


ホムンクルス「もう一つ次元の繋がりについて発見があります…この発見は今までの私のシミュレーションを覆す可能性があります」


商人「どういう事?」


ホムンクルス「過去の精霊は魔王と戦うために受動的ではなく能動的に戦っていた可能性があります」


商人「ちょ…それじゃ分かんないな…詳しく話して」




精霊は過去の記憶の改ざんを勇者を通じて何度も行っていた可能性です


アドミニストレータ権限を付与された者が勇者でしたら記憶の改ざんが可能と言えます


勇者に少しづつ変化を加え記憶の中でシミュレーションを実施し


現実の次元と入れ替えるという手法を行っていたと仮定すると


女海賊さんの様にドワーフの血を持つ勇者が誕生したのは


精霊が導いた結果と言い換える事ができます




商人「歴史の塗り替えを精霊がやっていたと…」


ホムンクルス「思い返してみてください…ドワーフの血を持つ女海賊さんが少しづつ魔王の影を退けて居ますね?」


商人「そういえばそうだね…」


ホムンクルス「魔王化ウイルスの抗体はすでにこの世界で効果が出て居るのです」


女海賊「ウイルスって…そういう意味?」


商人「精霊の記憶を侵しているウイルス…それを退治するのがドワーフの血を持つ勇者」


女海賊「ちょ…私が精霊の記憶に入って行くって事?」


ホムンクルス「これは可能性のお話です…次元の繋がりを加味するとそのような戦い方も考えられるというお話です」


商人「ちょっと待ってちょっと待って…考え直したい…」



---勇者は必ず精霊に導かれてる---


---そうかそれは権限を付与されてるのか---


---じゃぁ今の剣士は誰に権限を付与されたんだ?---


---どうやって?生まれ付いた訳じゃ無いのか?---



女海賊「ホムちゃん私難しい話分かんないからさぁ…一緒に水浴び行かない?」


ホムンクルス「はい…よろこんで」ニコ


女海賊「ちょっとホムちゃんの体チェックする」


ホムンクルス「はい…」




-----------------




商人「あーでもない…こうでもない…」ブツブツ


魔女「主は壁に向かって何の念仏を唱えて居るのじゃ?わらわが帰って来たのじゃが無視か?」


情報屋「商人?みんなは何処?」トントン


商人「うわ!!びっくりした…」


魔女「びっくりはこちらの台詞じゃ…他の者は何処じゃ?」


商人「あぁ…何処だっけな」


魔女「ヤレヤレ…もう良い!折角お土産にオリハルコン原石を持ってきたのじゃがな」ドスン


商人「すごいじゃない!女海賊がよろこ…」


女海賊「あ!!魔女帰って来た!!どうだった?」


魔女「主にオリハルコン原石の土産じゃ…好きに使って良いぞ」


女海賊「ええええええ!?マジ?うわ!!でか!!」


情報屋「古代遺跡の奥に採掘場が有るらしいわ」


女海賊「マジマジ?ちょ…パパ連れて来て良い?」


魔女「ほう?そりゃ良いのぅ…母上に言うておくでいつでも来い」


商人「オリハルコンとミスリル銀の交易が始まるね」


魔女「剣士らは又狩りに行っとるんか?」


女海賊「うん!弓の訓練だってさ…盗賊と二人でイエティ狩りだよ」


魔女「むぅ剣士が居らぬではちと話せぬのぅ」


情報屋「酒場にでも行きましょうか…どうせ盗賊なら酒場にくるわ?」


魔女「そうじゃな…ちと食事じゃな」




『ルイーダの酒場』



ドゥルルルン♪



ワイワイ ガヤガヤ


イエティを乱獲してる2人組が居てよぉ…


あの緑の髪の子可愛くない?


エルフの女3人組が豚追いかけまわしてんだよ


黒い騎士がエルフと話してるの見たんだってよ


ワイワイ ガヤガヤ



魔女「相変わらずじゃな此処は」


情報屋「あのリュートのお陰で悪い人は居なさそうよ?」


魔女「うむ…良い事じゃ」


女海賊「ホムちゃんこっちこっち…」


情報屋「あら?髪型変えたのね…口紅も?」


女海賊「私がイメチェンしたんだ!可愛いっしょ?」


盗賊「お!居た居た…やっぱここか」


女海賊「それこっちの台詞…やっぱ来たね」


盗賊「ヌハハ…見ろ!今日の収穫だ」ジャラリ ドスン


情報屋「袋一杯の銀貨?すごいわね」


盗賊「金貨も入ってんぞ…今日はじゃんじゃん食え!俺のおごりだ」


女海賊「どうせ剣士がほとんど狩ったんでしょ?だったら私の物だよ」


盗賊「何言ってんだ!俺はしっかり皮剥いだぞ…なぁ?剣士!!」


剣士「ハハそうだね」


女海賊「新しい弓どうだった?」


剣士「うん!すごく良いよ!気に入った」


女海賊「おっし!ほんじゃちょっと装飾したげる…貸して」




----------------



魔女「…それでじゃ…父上の書斎から出て来た手記に寄るとのぅ勇者の出生に関わって居った様なのじゃ」



30年も前の記録なのじゃが


シン・リーンの祭事で精霊の魂を呼び覚ますのに各国の代表やハイエルフそして時の王まで参列して居ったのじゃ


その中で父上はハイエルフと約束事を交わして居る


ハイエルフは精霊樹の魂が無うなって存続の危機にあったのじゃが


それよりも心配して居ったのが精霊樹によって導かれる勇者が居らんくなる事だった様じゃ


どうやらハイエルフは精霊から勇者の導き方を聞いて居ったんじゃな


エルフの森の御所にある精霊のオーブ


この記憶の中に古代の管理者が記録されておって


その魂を複製して勇者に与えて居ったらしい


これが途絶える事で勇者が生まれんくなるのをハイエルフは危惧しておったのじゃ


じゃからハイエルフは魔術院長より時空の魔術を学び


精霊のオーブに記録されて居る古代の管理者の魂を量子転移したのじゃ


その魂はハイエルフの子宮に宿り…生まれたのが剣士じゃ



剣士「…マザーエルフ」


魔女「うむ…その者こそ父上と約束を交わした者じゃな」


女海賊「今の話からすると魔女の父上は悪い人じゃ無いね」


魔女「そうじゃ…昔はやさしい父だったのじゃ」


女海賊「じゃなんで黒の同胞団になってんのさ」


魔女「これじゃな…」スッ


女海賊「幻惑の杖…」


魔女「当時この杖を持って居ったのは時の王じゃ…杖を使って命じたのじゃろう…精霊の目的を果たせとな」


女海賊「それ時の王が間違った解釈してる目的じゃん」


魔女「悪い者なぞ始めから居らんのじゃ…歯車が噛み合って居らん…その結果が今じゃ」


商人「なるほど…噛み合わない結果争いが生じて憎悪を生んで行った訳だ…そして魔王を膨らませる」


魔女「父上の目を覚まさせなければならぬ…幻惑されて今もなお眠って居る」


盗賊「前に女海賊を幻惑させた時はくすぐったら目を覚ましたな?」


女海賊「なぬ?あんた私に杖使ったの?」


盗賊「ヌハハ覚えて無いか!死ぬほどくすぐったら正気に戻った」


魔女「盗賊や…主の言う事は真やもしれぬ…杖の幻惑を目覚めさせる方法はわらわでは分からん」


盗賊「俺のスリ技術なら脇の下なんざ楽勝だぜ?」


女海賊「あんたマジで言ってんの?」


盗賊「冗談に決まってんだろアホが」


魔女「否…あながち悪い線は行って居らん様に思う…睡眠もくすぐれば解けるでのぅ…」




----------------



ドゥルルルン♪



吟遊詩人「我らは求め歌う♪救世の英雄を~♪メデューサに挑む猛き勇者を~♪」



女海賊「剣士?あんたさぁ…さっきマザーエルフって言ったじゃん?」


剣士「うん…」


女海賊「もしかして記憶戻ってる?」


剣士「うん…」


女海賊「いつから?何で言ってくんないのさ」


剣士「君はもう分かってると思ってたよ」


女海賊「あ…そっか…だから愛してくれたんだ」


剣士「体を重ねると分かるよね…魂が繋がる」


女海賊「私鈍感だからさ…ちゃんと言われないと自信無いんだよね」


剣士「信頼してるよ…君とはずっと一緒だよ」


女海賊「ムフ…なんで急にそんな事言うの?」


剣士「僕の目を見て?」


女海賊「んん?青い目」


剣士「君も目が青い」


女海賊「だから何?」


剣士「この意味わかる?」


女海賊「何よ…ちゃんと言ってよ」


剣士「運命が一緒なんだよ…何処に行っても一緒」


女海賊「ムフフもっと言って」


剣士「勇者としての運命が一緒…どこにでも2人で行く」


女海賊「ムフフフフフ」


剣士「分かった?」


女海賊「そう言われると何も怖くないね」


剣士「僕はね…自分が何者なのかやっと分かったよ」


女海賊「勇者?」


剣士「そう…僕たち二人は勇者なんだ…精霊が最後に導いた勇者」


女海賊「最後に…」



---思い出した---


---シン・リーン古代遺跡の壁画---


---上から順に連なって読めるけど---


---下から逆にも読み取れる---


---最後の勇者はすべてを救う---


---それを今からやるんだ---




-----------------




盗賊「お前等いつまで見つめ合ってんだ?気持ち悪りぃな…おら剣士!お前も飲め!!」


女海賊「うっさいな爺じぃ!!折角の良い気分が台無しじゃん!!」


魔女「これこれ邪魔をしてはイカンぞ盗賊…」


情報屋「盗賊は相手してもらえる人が居なくて暇なのよ…」



”聞こえるか…”



魔女「ん?女海賊や…貝殻から声がしておるぞ?」


女海賊「え?あぁ…荷物入れに…」アセアセ



”聞こえたら返事をするのだ”


”アサシン?”


”あぁ通じたな”


”どう?そっちの調子は?”


”セントラルの軍船が寄港して来だして状況が変わったのだ…これ以上貧民街に留まるのは無理だ”


”どうなっちゃってんの?”



セントラル城の陥落後に貴族院が王権に反発をしていてな


貴族院による主権国家の維持を要求しているのだ


寄港してきている軍船は貴族院側に属している


数的に不利な状況になってしまったから


衝突を避ける為にセントラル国王を一時的にフィン・イッシュへ亡命させざるを得ない状況なのだ



”一旦フィン・イッシュに戻るって事?”


”そうだ…王権派を一部貧民街に残して大多数はフィン・イッシュに戻る”


”おけおけ状況分かったよ”


”事態はそれだけでは無いのだ”



貴族院にはフィン・イッシュが王権復興を扇動している様に見えていてな


既に武力衝突が起きて居るのだ


シャ・バクダのオアシス領がセントラルに占領された


特殊生物兵器部隊が率いる魔物達によってな



魔女「キマイラを動員して居るのか?」



”フィン・イッシュは軍をほとんど持って居ない…王都に進軍されれば直ぐに陥落する”


”私らに応援に来てほしいって事ね”


”そうだ…急で済まないが王都が危ない”


”おっけ!キマイラ相手なら任せて”


”頼む…又連絡する”




------------------




魔女「嫌な話じゃのぅ…元老院の次はセントラルの貴族院の解体か…」


商人「次は軍を沢山持って居るのが厄介だ」


盗賊「砂漠は今雪原になってんだろ?そんな所を行軍するとは思えんが?」


商人「軍じゃなくてキマイラなら可能なのかもね」


盗賊「…あぁそういう事か」


商人「もともとシャ・バクダにはそんなに沢山軍は駐留して居なかった」


魔女「サキュバスの様な飛行型のキマイラなら楽に行軍出来るのぅ」


女海賊「ええ!?あんなのが一杯来たらどうにもなんないじゃん」


魔女「歌じゃな…キマイラを使役して使えばよい」


女海賊「おぉ!!魔女賢い!!」


商人「なるほど…使役して貴族を始末しろと命令しても良い」


女海賊「それだと無関係な貴族にも被害出ちゃうよね?」


商人「無関係な貴族はセントラルに残ってると思うんだよね…わざわざ雪原超えてシャ・バクダに行くのは悪い貴族だよ」


女海賊「なんか引っかかるけど…まぁそっか」


商人「良い貴族がまだ残って居るとして主権国家の維持を要求するのは悪い事じゃ無いと思うんだ」


魔女「そうじゃな…内政がきちんとして居らんのじゃったら出来る者にやらせた方が良いのぅ」


商人「今のセントラル国王が軍属だったから反発してるんだよね…きちんと話した方が良いんだよ」


魔女「ここでも歯車が噛み合って居らんのじゃな」


商人「こういうのを収めるのが魔王と戦うって事さ」


魔女「商人の言う通りじゃ」


女海賊「ふ~んあんた割とマシな事言うね…おっけ!従ったげる」




『宿屋』



女海賊「…やると決めたら即行動!!早く荷物まとめて準備して」


情報屋「魔女は女王様に挨拶して行かなくて良いの?」


魔女「母上には貝殻を渡してあるで構わぬ…それより主は古文書の写本だけで良かったのか?」


情報屋「本当はもう少し調査したかったけれど古文書もまだ解読されて無いししばらくは解読の努力ね」


商人「新しい古文書?」


情報屋「そう…1700年前より以前の記録だと思うの…使われている文字も違うのよ」


商人「へぇ…それスゴイ発見じゃない」


情報屋「解読出来ればドリアード伝説とかいろいろ分かるかも知れない」


女海賊「あのさぁ…早く荷物まとめてって言ってんの分かってる?」


盗賊「外にソリ出してっから荷物載せろぉ!!」


魔女「では行くとするかのぅ」ノソリ


女海賊「ハイハイ早く行った行った!!」


情報屋「ウフフ夜逃げみたい」


女海賊「ホムちゃん私から離れないでね…行くよ」


ホムンクルス「はい…」



-----------------


-----------------


-----------------




『古都キ・カイ近郊』



ノソノソ ノソノソ



女戦士「…このヤクと言う牛はもう少し早く走れんのか」


ローグ「そら無理ってもんす…歩かないで済んだだけ良かったと思って下せぇ」


女戦士「未来!しっかり付いて来いよ」


子供「うん!」


ローグ「未来くんもうヤクに乗るのは慣れたでやんすか?」


子供「大丈夫!一人で出来るよ」


女戦士「しかし…何処を見ても火山灰と雪で植物は死滅だな」


ローグ「そーっすね…地獄の様でやんす…かしらももう真っ黒でやんすねぇ」


女戦士「フン!」


ローグ「この調子だと日暮れまでにキ・カイには着かんでやんすね」


女戦士「凌ぐ場所を探さんとな」


ローグ「向こうの崖際で雪凌げる洞穴でも探しましょう」


女戦士「早くこの不格好なマスクを外したいものだ」


ローグ「そーっすね…ヤクもこんなマスク付けさせられて可哀そうっすね」




『崖際』



ローグ「あそこに凌げそうな洞穴あるっすね」


女戦士「キャンプ跡と木材もあるな…誰かが使ったか…」


ローグ「丁度良かったじゃないっすか…あそこで一晩休みやしょう」


子供「待って…」クンクン


女戦士「む…臭うか?」


子供「うん…何か居る…人間の匂いじゃ無いよ」


女戦士「こんな所にオークが来て居るのか?」


ローグ「あっしがハイディングで見て来やす…ちっとここで待ってて下せぇ」


女戦士「頼む…」


ローグ「へい…」スタタタ



--------------



ローグ「リリース」スゥ


女戦士「何が居た?」


ローグ「オークじゃなくてオーガっすね…人食い鬼でやんす」


女戦士「なるほどキャンプを襲った訳だな?何匹居るのだ?」


ローグ「1匹っす…やりやすか?」


女戦士「未来!実践訓練だ…私がオーガの注意を引く…ハイディングからオーガの首を切れ…出来るな?」


ローグ「あっしもサポートしやす」


女戦士「ローグは反撃に備えろ…倒しきれなかった場合はお前がオーガを処理しろ」


ローグ「へい!」


女戦士「行くぞ…ハイディングで一気に寄る…ハイディング!」スゥ


子供「ハイディング!」スゥ


ローグ「ハイディング!」スゥ


女戦士「迷ってないな?付いて来い」スタタ





『洞窟』



女戦士「リリース!」ブン ザクリ


オーガ「ガウ…ウオォォォォ」ドスドス


女戦士「シールドバッシュ!」ドン


オーガ「ウガ…」ヨロ


女戦士「今だ!!」


子供「リリース!」スパン


オーガ「ギャオ…」ボタボタ


女戦士「もっと深く切り抜け!!もう一度!!」


子供「このぉ!!」スパン


オーガ「ウオォォォォォ!!」ドドド ガツン!


女戦士「盾で防いでいる間に首を落とせ!!」グググ


子供「ふぅぅ」シュタタ スパ ボトン


オーガ「…」パクパク


女戦士「そうだ…最後の切り込みの感じだ…覚えておくのだ」


ローグ「あっしの出番無かったっすねぇ」


女戦士「オーガの角と牙を採れ…死体は私が外に捨てて来る」


ローグ「アイサー…未来くん解体の仕方を見ておくでやんす…こうやって戦利品を回収するんすよ?」ゴリゴリ




----------------



ローグ「ヤクを入り口に繋いでおきやした…これで何かあっても先にヤクがやられるっす」


女海賊「未来!火炎魔法を使ってみろ…この薪に火を付けるのだ」


子供「うん!火炎魔法!」ポ チリチリ


女戦士「ふむ…自己流ではそんな物か…まぁ火が付けば良い」


子供「どうやってやるんだろう?」


女戦士「今度剣士に教えて貰うのだ」


子供「パパあんまりお話してくれなくってさぁ…」


女戦士「フフ未来の話し方は妹にそっくりだな」


子供「ママはいっぱい教えてくれるよ…ほら硫黄と石で…」ゴツン ボウ



メラメラ パチ



女戦士「それでも良いが魔法の方が硫黄を少し使うだけで済む様だぞ?」


子供「うん…わかった…勉強する」


ローグ「綺麗な雪を持って来やした…これで水にしやしょう」


女戦士「ヤクの分も持って来てやってくれ」




----------------




女戦士「気球を買い付けるだけのつもりだったのだがえらく苦労をするものだ」


子供「ビッグママ?顔が汚れてる…拭いてあげるよ」」


女戦士「その呼び方はヤメロと言っただろう…ママで良い」


子供「ごめん…ママ?顔…」フキフキ


女戦士「マスクの跡が付いていたか?」


子供「うん…マスクの所だけ白いから変だよ…顔を全部隠すマスクを買わないとね」


ローグ「キ・カイに到着したらもちっと良いマスクを買い揃えやしょう」


女戦士「しかし…火山灰でこれほど不自由になるとはな…」


ローグ「馬が弱ってるのが痛いでやんす…牧草もあんまり無いっすからねぇ…」


子供「ヤクって強いんだね」


女戦士「馬よりマシなだけだな…このままでは直に弱る」


ローグ「気球仕入れたら早い所売った方が良いでやんす」


女戦士「これは先行きが心配だ…」




『翌朝』



女戦士「未来…起きるんだ…もう行くぞ」


子供「うーん…ふぁ~あ」ノビー


ローグ「雪止んでるっす…今の内に移動した方が良いっすね」


子供「おっけ!じゃぁ今日はこのヤクに乗る!」ピョン



ブモモーーー



女戦士「フフ…やはりそっくりか」


ローグ「あっしに着いて来て下せぇ…いきやすよ?」




----------------



ノソノソ ノソノソ



女戦士「左前方に狼煙か?灰が舞っているのか?」


ローグ「何でやんすかね?」


子供「…」クンクン


女戦士「分かるか?」


子供「多分オーガの匂い…他の匂いもする」


女戦士「他の…」


ローグ「オーガに何か襲われてるんじゃ無いっすかね?」


女戦士「ふむ…捨て置けんか」


ローグ「どうしやす?」


女戦士「まぁ実践訓練だと思って行こう」


ローグ「手順は昨日と同じっすね?」


女戦士「そうだ…ローグはサポートに回れ」


子供「今度こそ一発で!!」





『荷馬車』



ガウガウ ギャオ ガブガブ



ローグ「ちぃと遅かったでやんす…馭者ともう一人も食われてるでやんす」


女戦士「オーガ3匹か…作戦を変える…ローグはバックスタブで確実に仕留めろ」


ローグ「あいあい…」


女戦士「未来はローグのバックスタブを真似て見ろ」


子供「うん…見たことあるから大丈夫」


女戦士「ハイディングを上手く使うのだぞ?」


子供「わかってるって」


女戦士「行くぞ?ハイディング!」スゥ



----------------



女戦士「リリース!」スゥ ブン! ザクリ


ローグ「リリース!バックスタブ!」ジャキン ボトン


子供「リリース!バックスタブ!」スパ



オーガ「ガウ?…ウオォォォォ!!」ドスドス



女戦士「あと2匹!!シールドバッシュ!」ドン


オーガ「ウゴ…」ドタリ


子供「このぉ!!」シュタタ スパ


ローグ「未来君!こうやるんす…バックスタブ!」ジャキン ボトン


子供「すごい…」


女戦士「あと1匹!!シールドスタン!!」ゴン


オーガ「ガァァ…」ピヨピヨ


子供「僕も!!バックスタブ!」ジャキン ゴロン


ローグ「良いーっすねぇ!今のっすよ」


女戦士「ふぅ…上手く奇襲が成功した…ローグ!戦利品を頼む」


ローグ「アイサー」




------------------




女戦士「今のは小型のオーガだ…慢心するな?一発で仕留められん場合は反撃がくると思え」


子供「うん…」


ローグ「未来君はあっしのダガーよりも刀身が長いのを意識して使うと良いっすね」


子供「切り方が悪い?」


ローグ「あっしは刀の使い方は分からんでやんすが多分コツがあると思うでやんす」


女戦士「叩くのではなく切り抜け…刀身の長さを上手く使えばよい」


子供「うん…工夫してみる」


ローグ「かしらぁ!!この荷馬車頂きやしょう」


女戦士「積み荷は何だ?」


ローグ「なんかいろいろありやすが…うぉ!!!」


女戦士「どうした!!」ダダ


ローグ「檻の中に子供が居るっす」


女戦士「何ぃ?…ハーフオークの子供か?」



オークの子「うぅぅぅぅ…」ギロ



子供「ハーフオーク?…怯えてる…」


ローグ「檻の中に居たんで助かったでやんすね…どうしやす?」


女戦士「この荷馬車は奴隷商が運んで居たのだな…死体に何か残って居ないか?」


ローグ「ちと見て来るでやんす」タッタッタ


女戦士「未来!荷馬車にヤクを繋げ」


子供「うん…分かった」




------------------




ローグ「かしらぁ!!やっぱり奴隷商の身分証を持っていやした…2人分っす」


女戦士「見せて見ろ…」


ローグ「これっす」


女戦士「ふむ…男と女か」


ローグ「これ使えやすよ?キ・カイで行動しやすくなるっす」


女戦士「使える物は使おう」


子供「ママ!?死んでるヤクはどうしよう?置いて行くの勿体ないよ」


女戦士「ローグ!ヤクを最小限で解体出来るか?」


ローグ「30分欲しいでやんす」


女戦士「私が周囲を警戒しておく…急いでやるのだ」


ローグ「アイサー!!」


女戦士「未来!…急いで火を起こして肉を焼け…朝飯だ」


子供「うん!!」




-------------------



メラメラ パチ



子供「肉焼けたよ!!はい…」


女戦士「私は見張っているから後で良い…先に食べろ」


子供「檻の中の子にもあげて良い?」


女戦士「…オークか」


子供「可哀そうだよ」


女戦士「フフそうだな…ヤクから剥ぎ取った毛皮も与えておけ…あの恰好では寒い筈だ」


子供「うん!!あげて来る」シュタタ


ローグ「未来君は思いやりがあるでやんすねぇ」


女戦士「オークは言葉が通じないだけでドワーフと似たような種族だしな…しかし…」


ローグ「ハーフオークならすこし通じるかもっすよ?」


女戦士「だと良いが…さすがにオークを連れては歩けんな」




子供「肉焼いて来たよ?お腹空いてない?」


オークの子「うぅぅぅぅ…」ギロリ


子供「ほら?食べて?」スッ


オークの子「うがぁぁぁぁ!!」バタバタ ブン


子供「そんなに怖がらなくて大丈夫だよ…」タジ


オークの子「ハムハム…」ムシャムシャ ガブ


子供「お腹空いてたんだね?この毛皮もあげるよ…ちょっとまだ生臭いけど」バサ


オークの子「がぁぁぁ!!」ドタバタ


子供「檻が邪魔だなぁ…ほら?この隙間から…」グイ


オークの子「ぅぅぅぅ…」モグモグ


子供「あれ?君…おっぱいが…」


オークの子「ハムハム…」ガブ モグ ムシャムシャ


子供「水もあるよ?…この皮袋の中」


オークの子「むぐっ…んぐっ」ゴグゴク


子供「そっか…何も貰えて無かったんだね」


オークの子「ふごふご…」ガブムシャ


子供「良く見たら顔とか頭とか傷だらけだ…回復魔法!」ボワー


オークの子「んむ?…」


子供「どう?良くなった?」



タッタッタ



女戦士「何の光かと思えば…未来の回復魔法か」


子供「この子…女の子だよ」


女戦士「そうか…未来!お前が面倒を見ろ…そろそろ出発する」


子供「僕は馬車に乗ってて良いの?」


女戦士「キ・カイに到着したら荷の中に隠れるのだ…奴隷商という事で街まで行く」


子供「うん…わかった」


ローグ「かしらぁ!!解体した肉は馬車の中に吊っときやすぜ?未来君!!手伝ってくだせぇ!!」


子供「あ…うん」


ローグ「あっしが肉抑えとくんでロープを掛けて結んで下せぇ!!…よっこら!!」


子供「ここだね?」グイグイ ギュ


ローグ「まだあるっすよ…よっこら!!」




『荒野』



ガラゴロ ガラゴロ



子供「…虫の羽…これキノコ?…何かの心臓…これは脂肪かな?…変な物ばっかりだよ」


ローグ「多分全部錬金術の材料でやんすね」


女戦士「この身分証も少し妙だな…なんだこの印は?」


ローグ「見た事無い印でやんす…偽物では無さそうですがねぇ」


女戦士「他に何か持って居なかったのか?」


ローグ「有ったかもしれやせんが食い散らかされてて良く分からんかったっす」


子供「ママ?樽にあるのは小麦かな?…なんか匂いが違うんだけど…」


女戦士「ローグ見て来い…私が馭者をやる」


ローグ「あいあい…あらよっと!!」ピョン


子供「この樽だよ…匂いが違う粉だよ」


ローグ「んんんん!!かしらぁ…スゴイ物乗ってますぜ…樽一杯の麻薬っすよ」


女戦士「なんだと!?…マズイな」


ローグ「これ入国出来やせんぜ」


女戦士「この身分証の印は密輸用なのか?」


ローグ「奴隷商を装って密輸は有りっすね…どうしやす?このまんま行っちまいやすか?」


女戦士「ふむ…いざとなればハイディング…行って見るか」


ローグ「なぁ~んか怪しい匂いがプンプンしやすね?」


女戦士「うむ…大量の麻薬と言えば黒の同胞団…手掛かりを掴める可能性がある」


ローグ「もしかするとキ・カイでも同じ事やらかすつもりだったかもしれやせんね」




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女戦士「やっと見えて来た…昼前には到着出来そうだ」


ローグ「ヤクは乗るよりも荷を引いていた方が早いっすね」


女戦士「未来!隠れる場所は良いか?」


子供「うん!大丈夫…見つかりそうだったらハイディングするから心配しないで」


女戦士「フフ余計な心配だったか…オークの子は落ち着いたか?」


子供「一言も話してくれないよ…ずっと睨まれてる」


女戦士「檻の中では仕方がない」


子供「ママはこの子どうする気?売っちゃうの?」


女戦士「私は金なぞ要らん…ただキ・カイの中でオークを連れまわすのは出来んな」


子供「着るものとマスク付けたら分からなくなるよ」


女戦士「未来はその子を助けたいのだな?」


子供「うん…」


女戦士「では未来が責任を持って面倒を見ろ」


子供「わかった…僕が何とかする」


女戦士「フフ…」---本当に妹にそっくりだ---




『外門』



ウィーン ガシャ ウィーン ガシャ



鉄器兵「…」シャキーン


門番「止まれ止まれ…身分証を出せ」


ローグ「へいへい…」ポイ


女戦士「…」ポイ


門番「…ふむ奴隷商か…通れ」


ローグ「え?あ…」


門番「今積み込みをしているのが2番船だ…わかるな?」


ローグ「へいへい…じゃ通るでやんす」


門番「奴隷だけ確認する」


ローグ「後ろっす」


門番「ふむ…オークの子か…早く行け」バサ


ローグ「あいー…」グイ



ブモモモーー ガラゴロガラゴロ



女戦士「やはりおかしいな…何も確認せず入れるとは」


ローグ「結果オーライすよ…ほんで何処行きやす?」


女戦士「まずは外の街の商人ギルドだ…奴隷商の身分証があれば宿泊に困らんし気球の買い付けも話が出来る」


ローグ「分かりやした…」グイ



ブモモモーー ガラゴロガラゴロ




『外の街』



ガヤガヤ ガヤガヤ



ローグ「避難民でごった返してるっすね…なんか人が多すぎでやんす」


女戦士「何故灰の降る外の街に居るのか…地下に行けば良いだろうに」


ローグ「そーっすよね?」


女戦士「海賊たちが噂をしていたが…地下からオークに襲撃されているのかも知れんな」


ローグ「チカテツ街道の向こう側っすね?」


女戦士「そうだ…何処に繋がっているのかは知らんが度々襲撃があるとは聞いて居る」


ローグ「南のオークが住んでる場所もこの灰で住む所無くなってるっすかね?」


女戦士「後で少し情報を集めて見よう」




『商人ギルド』



ガヤガヤ ガヤガヤ



女戦士「荷馬車は裏手に泊める場所があるそうだ…ヤクも預かって貰える」


ローグ「移動させておくっす」


女戦士「宿泊できる場所は今は無いらしいから荷馬車で休む事になる」


ローグ「あっしは構わんすよ?」


女戦士「私は気球の買い付けに行くからお前は未来の面倒を見てやってくれ」


ローグ「分かりやした」


子供「ママ!!少しお金が欲しい」


女戦士「自分で何とかするのでは無かったか?馬車に乗っている物は好きにして良い…売って稼いで来い」


子供「あ…うん…ありがとう」


女戦士「ローグ!未来から目を離すな」


ローグ「へい!!分かってるっす」


子供「どれが高く売れるのかな?ローグさん分かる?」


ローグ「オーガの角とか牙が売れるでやんす…全部売っちまいやしょう」


子供「おっけ!!僕がやってみる」


ローグ「あっしは見てるだけでやんす…未来君の好きにして良いっすよ?」


子供「そうだ!?ママのマスクも買って来るね」


女戦士「フフ任せる」




『道具屋』



店主「…坊や…どっから盗んで来たんだい?」


子供「盗んだんじゃ無いよ…ちゃんとオーガを倒したんだよ」


店主「いやいやそんな訳無いよなぁ?」


子供「買い取ってくれないの?」


店主「いやまぁ…買い取らん訳じゃ無いんだがね?うーむ…」


子供「いくらになるの?」


店主「子供相手に商売し難いが…これでどうだい?」ジャラリ


子供「ローグさん!!どう思う?」


ローグ「あっしは見てるだけでやんすよ?」スラリ


店主「あわわわ…お客さんのお子さんでしたか…冗談ですよ」ジャラジャラ


子供「へぇ~おじさん僕を騙そうとしてたんだ」


店主「冗談ですって…ハイおまけも付けるんで」コトリ


子供「おっけ!ありがとね…あ!そうだ…マスクある?」


店主「なんでも揃ってるが買っていくかね?」


子供「うん!!見せて」


店主「じゃぁ奥の部屋に…」


子供「うわぁ…服もある…ローグさんもマスク変えよう!これどう?」


ローグ「ゴーグル付きっすね?あねさんみたいでやんすね?」


子供「これなら顔も隠れるし丁度良いと思う」


ローグ「あっしに似合うでやんすか?」


子供「ママとお揃いにしよう!僕もゴーグル付きが良いな…コレにしよっと」


ローグ「未来君の好みはあねさんと同じなんすね」


子供「あとこの服と…この当て物…それから履物はこれが良いかな」


店主「いやいや今日は良い客が来たもんだ」


子供「いっぱい買うから負けてよ」




『荷馬車』



ジャブジャブ



子供「はいコレ…水と布…これで体拭いて?」


オークの子「うぅぅぅがう!!」ズザザ


子供「逃げないで?」


ローグ「未来君…自分の顔を拭いてみたらどうっすかね?」


子供「そっか…」フキフキ


オークの子「…」ジロリ


子供「ほら?拭いてみて?」スッ


オークの子「…」グイ


子供「あぁぁ…手枷が邪魔だ…ローグさん!鍵持って無い?」


ローグ「あるっす…これが檻でこっちが手枷っすね」ジャラ


子供「僕が檻の中に入って拭く…貸して」


ローグ「噛まれない様に気を付けるでやんすよ?」ポイ


子供「ありがとう」パス



ガチャン ギー



オークの子「…」ギロ タジタジ


子供「大丈夫!大人しくしてて?」フキフキ


オークの子「むぐっ…」タジ


子供「ちょっと待って…髪の毛の汚れも落とすから」ジャブジャブ


オークの子「…」ゴシゴシ


子供「うわっ…真っ黒だ」ジャブジャブ ゴシゴシ


子供「そう!大人しくしておいて?手枷外すよ?」カチャリ


子供「次は着替えよう…ほら?自分でできる?」


子供「うわ…君力強いな…分かった分かった…自分で着替えて見て?」


ローグ「言う事聞きそうでやんすね?」


子供「うん…落ち着いて来たよ」


ローグ「買ってきた食べ物居るでやんすか?」ポイ


子供「うん!一緒に食べてみる…ほら?パンとチーズだよ…食べて?」モグ


オークの子「はむっはむっ…」ムシャムシャ


ローグ「ふむ…逆らう気は無さそうでやんすね…檻から出しやしょう」


子供「そうだね…この檻寝るのに邪魔だし」


ローグ「檻はあっしが外に出しやす…出て下せぇ」


子供「檻から出るよ?おいで…」グイ


オークの子「ふむっ…」グググ


子供「抵抗しないでよ…」グイグイ


ローグ「未来君が先に出れば良いでやんす」


子供「うん…ほら?出ておいで?」


オークの子「…」ソロリ スック


ローグ「その子は未来君より少し大きそうでやんすね?」


子供「ちょっとだけね」


ローグ「じゃぁ檻を引っ張りだすんで未来君は反対から押して下せぇ」


子供「うん…」


ローグ「えいさーほー!!」グイ ズズズ ガチャーン


子供「これで広くなった」


ローグ「積んである干し草で寝床作りやしょう…これで快適っす」ガッサ ガッサ


子供「これ君が付けるマスクとローブだよ?」ファサ


オークの子「…」ジー


子供「こんな風に付けるんだよ…」ギュゥ グイ


オークの子「…」ギュゥ グイ


子供「そうそう!!それでフードを被るんだ」ファサ


オークの子「…」ファサ


ローグ「ふむ…この子は賢いかも分からんすね…状況を理解してるでやんす」


子供「うん…」


ローグ「その格好なら少し歩いても良さそうっすね」


子供「おいで…」グイ


オークの子「…」


子供「手を離さないで…」ピョン


オークの子「…」ピョン




『露店』



店主「買ってくかーい?」


子供「うん…このカバンと薬草…それから火打石」


店主「金はあんのかい?」


子供「これで足りる?」ジャラ


店主「ほーう?どこの坊ちゃん?こんなに要らねぇよ」ジャラ


子供「よし!これは君のだよ?腰に付けるんだ」グイグイ


オークの子「…」ジー


ローグ「食べ物は後で干し肉を作りやしょう…ヤクの肉がいっぱいあるっすからねぇ」


子供「塩が必要だね」


店主「塩も有るよ!!干し肉作るのにぴったりな岩塩だ…買ってくかい?」


子供「それも頂戴…いくら?」


店主「一塊2銀貨」


子供「おっけ!」チャリン


店主「毎度ぉ!!」


子供「後は武器か…」


ローグ「武器は要らんすね…荷馬車の中に入ってたっすよ」


子供「気が付かなかった…」


ローグ「奴隷商が持ってた剣っす…装飾付いてたんで後で売ろうと思ってたでやんすがね?」


子供「それで良いっか…じゃぁ帰ろう…おいで?」グイ スタタ


オークの子「…」スタタ




『焚火』



メラメラ パチ



ローグ「薄く切った肉を煙で燻すんすよ…ここに入れて下せぇ」モクモク


子供「これ全部作る?」


ローグ「半分は山賊焼き用に残しておきやしょう…もう作っても良いでやんすよ?」


子供「今はお腹減って無いかな」


ローグ「じゃぁどんどん干し肉作って下せぇ…出来上がった奴からあっしが片づけやす」


子供「沢山あるなぁ…」スパ スパ


ローグ「直ぐ出来るんでどんどん切って下せぇ」




女戦士「戻った…もうオークの子を檻から出して居るのか」


ローグ「かしらぁ!!多分大丈夫そうっすね…言う事聞いてるでやんす」


女戦士「まぁ良い…オークの子は未来に任せる」


ローグ「気球の方はどうでやんすか?」


女戦士「貨物用の気球を買い付けた…少し高かったのだが行動の制限を受けるよりは良い」


ローグ「じゃぁもう荷物を気球に載せ替えやすか?」


女戦士「手に入るのが2日後だ…それまでここで足止めだな…ところでオークの子は話せるのか?」


ローグ「一言もしゃべらんすね…只頭は賢い様に見えるっす」


女戦士「ふむ…さすがオークと言った所か…恐怖で動けんという事は無さそうだな」


ローグ「あっしらに従った方が良いと判断してる様でやんす…状況判断が子供の割に良いっすね」




子供「あ!!ママ!!マスク買って来たよ…ゴーグル付き」


女戦士「丁度目に灰が入って気になって居た所だ…顔を洗って来る」ツカツカ


ローグ「未来君…後2日ここに泊る事になりそうっす」


子供「僕は平気だよ」


ローグ「その子が心配でやんすね…2日間人間の街に居るのは苦痛かも知れんでやんすよ?」


子供「この恰好ならバレやしないよ」


ローグ「一人で逃げなければ良いんすがねぇ…」


子供「もう少し話してみるよ」




-----------------




子供「この皮袋に雪を詰めておけばそのうち水になるよ」ツメツメ


オークの子「…」ジー


ローグ「かしらぁ!この剣は何で出来てるでやんすかねぇ…やたら重いでやんす」


女戦士「貸してみろ…」


ローグ「刀身が白銀色…なんか珍しい金属でやんす」


女戦士「ほう?これはコバルトの合金だな…腐食しない様に作られた剣だ」


ローグ「ロングソードにしちゃ重いっすよね?…2キログラムは超えてるっす」


女戦士「鈍器に近いが私には丁度良い重さだな…預かる」


ローグ「重戦士用っすか?」


女戦士「そうだ…これほど重いと素人では使いこなせん」


子供「ママ!その剣をこの子にあげたらダメ?」


女戦士「子供が使える剣では無いぞ?」


ローグ「かしらぁ…あっしが使って良いって言っちゃったんすよ」


女戦士「ううむ武器を預けて何も起こさねば良いのだが…」


ローグ「背負わせて荷物持ちって事でどうでやんすか?どうせ振り回せんでやんす」


女戦士「まぁ良い…どうせ拾い物だ…未来が責任を持て」


ローグ「未来君良かったっすねぇ」


子供「ママありがとう!!」


ローグ「あっしが背負える様に細工してあげるっすよ?」


子供「大丈夫!細工は得意なんだ!!ママに教えてもらったから」




------------------




女戦士「私は未来と地下の様子を見て来る…ローグは船着き場まで行って情報を集めて来い」


ローグ「日暮れまでに戻って来る感じで良いでやんすか?」


女戦士「任せる…夜はこの馬車で休む」


ローグ「時間余りそうなんで補給物資も馬車まで運んでおきやすね?」


子供「ママ?この子も連れて行って良いよね?」


女戦士「未来が面倒を見るのだろう?邪魔にならない様にしろ」


子供「うん…」


女戦士「マスクは外さない様にな…付いて来い」スタスタ


子供「いくよ!」グイ スタタ


オークの子「…」スタタ





『地下』



衛兵「止まれ!身分証を見せろ」


女戦士「…」パサ


衛兵「む…フリーパスの奴隷商」


女戦士「通って良いか?」


衛兵「子連れとは…チカテツ街道はフリーパスでも立ち入りが制限されているから行かない様に」


女戦士「何故そのような事になって居る?」


衛兵「奴隷移送用のトロッコが動いて居るからだ…見に行くならシェルタ砦で許可を取ってくれ」


女戦士「そうか…ご苦労!通るぞ?」スタスタ



--------------


--------------


--------------



子供「ママ?今の話って…」


女戦士「未来も気付いたか…どうやらチカテツ街道を使って奴隷のオークを移送しているのだな」


子供「そんなのこの子に見せられない」


女戦士「そんなつもりは無いから安心しろ」


子供「どうしてオークを掴まえたりするの?」


女戦士「さぁな?私の方が知りたい…行くぞ?迷子にならない様に気を付けろ」





『中央ホーム』



ガヤガヤ ガヤガヤ



子供「露店がいっぱい…」


女戦士「何か欲しい物はあるか?」


子供「僕は何も…」


女戦士「ここにはな…色んな機械で出来た物が売って居るのだ」


子供「ママは何か買う気?」


女戦士「望遠鏡が欲しくて見に来た…興味は無いか?」


子供「欲しい!!」


女戦士「私が選んでやる…しっかり付いて来い」


子供「うん!!」



-----------------


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子供「ママそんな大きな望遠鏡買ったの?」


女戦士「フフ未来の望遠鏡はコレだ」


子供「おぉ!!カバンに入る!!」


女戦士「未来は何か買ったのか?」


子供「虫メガネさ!!この子の分も買ったよ」


女戦士「ふむ…それがあれば魔法を使わないで火を起こせるぞ?」


子供「うん!知ってる」


女戦士「良い買い物をしたな?」


子供「他にもホラ!!バネとかネジとか…こんなのもあるよ帯眼鏡!」




------------------




子供「手足が機械になってる人が多いね」


女戦士「黒死病で動かなくなった手足を機械に変えて居るのだな」


子供「エリクサー飲めば良いのに…」


女戦士「南の大陸には恐らく材料が無いのだ」


子供「あの手はちゃんと動くのかなぁ?」


女戦士「機械に変えた方が良いと言う話も聞いた事がある」


子供「ふ~ん…」



オークの子「がうるるる…」グイ



子供「おっとっと…どうしたの?」


オークの子「ぅぅぅ」ギロリ


子供「んん?あ…ママ!!あの人…」


女戦士「どうしたのだ?」


子供「あの人から変な匂いがする…なんだろう?ゾンビ?」


女戦士「近寄るな…」


子供「何か話してる…」


女戦士「聞こえるのか?」


子供「うん…悪い話」



ヒソヒソ ヒソヒソ



子供「麻薬が届かないから追加で送れって…誰と話してるんだろう」


女戦士「他には何と?」


子供「う~ん…奴隷を海上で積み替える?何の事か分からない…」


女戦士「貝殻に向かって話しているな…マズイなこんな所にもリッチが居るのか…」


子供「悪い人だよね?」


女戦士「未来…良く聞け…今来た道を2人で帰れるな?」


子供「大丈夫だよ」


女戦士「お前は爆弾をいくつか持って居たな?」


子供「うん」


女戦士「私によこせ…」


子供「これだよ…」コロコロ


女戦士「3つか…よし…私はこの爆弾でリッチを始末してから戻る」


子供「気を付けてね」


女戦士「初めての冒険だ…2人でとにかく上手く帰るのだ…良いな?」


子供「わかったよ…大丈夫だから心配しないで」


女戦士「よし!行け…」




『地下入り口』



タッタッタ タッタッタ



子供「こっちだよ…手を離さないで」


オークの子「…」グイ


子供「止まらないでよ…」




ドーン ドーン ドーン




子供「爆発音…」


衛兵「なんだぁ!!襲撃か!?」ダダダ




ザワザワ ザワザワ


何!?今の音…


オークの襲撃が来たのかも知れん


まずいぞ…外に逃げろ!!


嫌ぁぁぁ!!


ザワザワ ザワザワ




衛兵「君たち邪魔だ!どくんだ!!」ダダダ


子供「まずい…人に撒かれる…行くよ!!」グイ スタタ


オークの子「…」スタタ





『裏路地』



メラメラ パチ



子供「はい…山賊焼きだよ…今度のは塩で味が付いてるからおいしいよ」


オークの子「…」プイ


子供「食べて良いよ?」


ローグ「あらら?未来君帰ってたでやんすね?かしらは何処行きやした?」


子供「まだ地下の方から帰って来て無い」


ローグ「えええ!?未来君は2人で帰ってきたでやんすか?」


子供「うん…」


ローグ「マジっすか…何も無くて良かったでやんす」


子供「ママ大丈夫かなぁ…」


ローグ「心配する様な事があったでやんすね?」


子供「リッチ?っていうゾンビみたいな人が居たんだ…始末するって一人で…」


ローグ「ええええええええ!!?そらマズイっすね…かなりマズイっす」


子供「僕たちは馬車で待ってるから様子見て来てよ」


ローグ「ここから動いたらダメでやんすよ?あっしはちっと行って来るでやんす」


子供「気を付けて!!」



タッタッタッタ




『夕暮れ』



リリース スゥ



ローグ「未来君!!回復魔法が必要っす」


女戦士「はぁはぁ…金属片を抜いてから回復してくれ…はぁはぁ」


子供「ママ!!」


ローグ「抜きやすぜ?痛いっすよ?」


女戦士「早く抜け…」


ローグ「ふんむ!」ズボ ズボォ


女戦士「はうぅ…うぐっ」ドクドク


ローグ「未来君!回復魔法を!!」


子供「回復魔法!」ボワー


女戦士「もっとだ…はぁはぁ」


子供「回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー


女戦士「ふぅぅぅ…」


子供「血が止まった…ママ大丈夫?」


女戦士「後は薬草を当てておけば良い…処置してくれるか?」


子供「うん…」


女戦士「しかし…侮った…」


ローグ「かしらは無茶し過ぎっすよ」


女戦士「自爆するとは思って居なかったのだ」


子供「倒せたの?」


女戦士「未来の爆弾で跡形も無く吹き飛んだ…一般の人の被害は無い」


ローグ「こんな所までリッチが来てるんすね」


女戦士「船着き場の方はどうだったのだ?」


ローグ「奴隷船が2隻入ってるっす…行先はセントラル沖でやんす」


女戦士「いつ出港するのだ?」


ローグ「2隻目に奴隷を積んだら出港とか言ってやした…どんくらい掛かるかはわからんす」


女戦士「1隻あたりどのくらいの奴隷を積んで居るのだ?」


ローグ「船の大きさからして500ぐらいっすね」


女戦士「海賊で拿捕出来そうか?」


ローグ「鉄器兵を何とかすれば行けそうっすね…やるんすか?」


女戦士「奴らは間違いなく黒の同胞団だ…見過ごすわけにいくまい」


ローグ「拿捕して海賊にでもするんでやんすか?」


女戦士「まだそこまで考えては居ないが…さて…」




----------------




子供「ママ?穴の開いた金属糸のインナー直したよ」


女戦士「未来は器用だな…助かる」


子供「ママの装備でも貫通するんだね…あの金属」


女戦士「油断したのだ…至近距離から直撃だった」


ローグ「かしらがあんな大怪我したの見た事無いでやんす」


女戦士「フフ私は少し血を流したぐらいが丁度良い…今はスッキリしている」


子供「山賊焼き食べる?塩で味付けしたからおいしいよ?」


女戦士「頂く…」モグ


ローグ「あっしも頂くっす」モグ


女戦士「お前も食べておけ」


子供「僕はあんまりお腹が空かないんだよ」


女戦士「エルフの血か…」


ローグ「それなら馬車にキノコがあったっすね」


子供「あ!!欲しいかも」ゴソゴソ


オークの子「…」ダダ


子供「ん?君もキノコ欲しいの?」


女戦士「そういえばオークもエルフと似たような種族と聞いたな」


子供「キノコいっぱいあるよ…はい」


オークの子「はむはむ…」モグ


ローグ「言葉が通じれば良いでやんすがねぇ…」




-----------------




ローグ「壺を拾ってきたでやんす…こん中に炭を入れて下せぇ」


子供「馬車の中に入れるの?」ガッサ ガッサ


ローグ「そーっす…雪が降りそうなんで炭で暖を取るんす」


子供「干し草と毛皮があって良かったね」


ローグ「あぁもう雪がチラついてるっすね…積もらなきゃ良いでやんすが…」


女戦士「未来!馬車に入れ…寒くなるから固まって休むぞ」


子供「うん…」


女戦士「その子も連れて来い」


子供「おいで…」グイ


オークの子「…」


ローグ「壺を置いとくでやんす…あっしは後で休むんで先に寝て下せぇ」


女戦士「フフ固まると中々暖かい」





『翌朝』




ローグ「あぁぁぁさぶ…」


子供「雪積もっちゃったね」


女戦士「商人ギルドの建屋の中は暖かい…行って来ても良いぞ」


子供「あ!!屋上から望遠鏡使おうかな?」


女戦士「ほう?私も行って見るか」


ローグ「あっしは火を起こしとくんで行って来て良いっすよ?」


女戦士「よし付いて来い…」





『商人ギルドの屋上』



子供「何か見える?」


女戦士「私の望遠鏡は倍率が高くてな…見えにくい」


子供「僕のは船が見えるよ」


女戦士「未来の望遠鏡の方が使い勝手が良いな…貸してくれないか?」


子供「うん…」


女戦士「ふむ…奴隷船は一応大砲を乗せているな」


子供「ママは助けるつもりなんだよね?」


女戦士「助ける事になるのかは分からんが黒の同胞団は放置出来ない」


子供「オークを奴隷にしてどうするんだろう…」


女戦士「行先はセントラルなのだろうな…どうする気なのか」


子供「オークとエルフは似た種族だって言ってたでしょ?」


女戦士「そう聞いた事があるだけだ」


子供「エルフってどうして掴まえられるのかな?」


女戦士「む…エルフの代わりに捕らえられて居ると言うのか?」


子供「掴まえられたエルフってどうなってるんだろう…」


女戦士「エルフの心臓は錬金術の材料…まさかオークの心臓を使うつもりか?」


子供「…」


女戦士「まてよ?ドワーフの国に攻めようとして居たのも同じ理由なのか?」


子供「心臓無くなったら死んじゃうよね…」


女戦士「ざわざわこんな遠方まで心臓の為に来るとは思えんのだが…」


子供「遠方ってどのくらい?」


女戦士「…」



---シャ・バクダまでの移送は考えられない---


---セントラルに送ったところで何も無い筈---


---他に拠点を持っているという事か?---




----------------




ローグ「かしらぁ!朝食出来やした…未来君と一緒に降りて来てくだせぇ」


女戦士「ローグ!!」


ローグ「へい?」


女戦士「あの奴隷船に忍び込んで火薬を盗んでは来れないか?」


ローグ「無茶言わんで下せぇ…火薬の入った樽背負って逃げる自信なんか無いっす」


女戦士「海に捨てるのは出来んか?」


ローグ「あの船の荷室は船底なんすよ…樽背負って甲板に出る前に見つかるっす」


子供「ママ?火薬に海水掛けると爆発しなくなるよ」


女戦士「む!!砂鉄を酸化させるのだな?良い案だ」


ローグ「未来君は賢いっすねぇ…海水掛けるぐらいなら出来るっす」


女戦士「大砲さえ使わせなければ拿捕が楽になる…行って来てくれ」


ローグ「わかりやした」




『焚火』



メラメラ パチ



ローグ「今日は豪華っすよ?芋と卵に肉!!」


子供「肉はもういいや…卵と芋はカバンに入れとく」


ローグ「あらら?お腹空いてなかったんすねぇ…」


女戦士「私が頂く」モグ


ローグ「じゃぁあっしは奴隷船の方に行ってきやすね?」


女戦士「頼む…私は錬金術師を探して素材について聞いて来るから未来は商人ギルドから出るな」


子供「うん…」


女戦士「建屋の中に居る商人達から買い物をするのは自由にやって良い」


子供「本当!?」


女戦士「馬車に積んである錬金術の材料は好きにして良い…取引の練習もしておけ」


ローグ「未来君良かったっすねぇ?」


女戦士「建屋からは出るな?」


子供「分かってるよ!!何があるかなぁ…」ワクワク




『馬車』



ガサゴソ ガサゴソ



子供「あぁぁ!!それも食べられるの?」


オークの子「ガリガリ…」バキ ガツガツ


子供「錬金術の材料にはオークの食べ物も多いんだ…骨も食べるのか」


オークの子「ふんっ!」ポイ


子供「それはダメ…角とかは後で細工に使うから売らない」


オークの子「…」ジー


子供「これくらいで良いっか?袋のそっち側持って?売りに行くよ…よいしょ!!」


オークの子「…」グイ


子供「おっけ!!じゃ行こう」スタタ


オークの子「…」スタタ




『商人ギルド』




ガヤガヤ ガヤガヤ


昨日の爆発騒ぎで地下に行くのに制限が…


こりゃ商売できんすなぁ…ハハハ


はい商船に乗る方はこちらに並んで…


個別トレードはあっち行ってね


ガヤガヤ ガヤガヤ



娘1「あんたお使い?」


子供「え…あ…うん…おばさんは?」


娘1「おばさんじゃないよ?お姉さんて呼んでくれる?」


子供「ごめん…お姉さんは誰?」


娘1「商人ギルドの店番」


子供「へぇ…偉い人なんだ」


娘1「個別トレードはこっちだけど…大人の人は?」


子供「今は出かけてるんだ」


娘1「その袋は?」


子供「売り物だよ…買ってくれる?」


娘1「見ていいかな?」


子供「うん…」




----------------




娘1「ちょ…娘2!!見て…」


娘2「なに~?忙しいんだけど」


娘1「子供がこんなの持ってるんだけど…」


娘2「どれどれ…うは!!宝の山…」


娘1「君きみ…この袋の中身の価値分かってる?」


子供「錬金術の材料でしょ?」


娘1「う…君は何者?」


子供「買う気無いなら他の人探すから良いよ」


娘1「子供がトレードする物じゃ無いんだけど…」


子供「そうなんだ…困ったなぁ」


娘2「見積もってみようか?」


娘1「そうだね…何かあったら商人ギルドの信用問題になるね」


子供「良く分からないけど…待ってれば良い?


娘2「直ぐに終わるから」




-----------------




娘2「…全部で7金貨と60銀貨…水銀がメチャメチャ高い」


娘1「んんん…君きみ?この荷物を競売に掛けて良い?」


子供「僕その意味わからない」


娘1「んぁぁぁ…お姉さんがちゃんと売ってあげるから待っててくれるかな?」


子供「良いよ」


娘1「大人の人はどこ?」


子供「しばらく帰って来ないよ」


娘1「本当に売っちゃって良いのかなぁ?」


子供「うん!大丈夫!」


娘2「お姉ぇ…これちゃんと適正以上で売らないと後で問題になるんじゃない?」


娘1「う~ん…7金貨なんか家に合ったっけ?」


娘2「あるある!後で返品できるようにしておいた方が良い」


娘1「おけおけ!君きみぃ…この袋をお姉さんが7金貨と60銀貨で買い取るで良い?」


子供「良いよ」


娘1「ぶっ…あっさりだね」


娘2「お姉ぇ!じゃぁ金貨持ってくる」


子供「お姉さんありがとう」


娘1「大人の人によろしくねぇ~」




『裏路地』



よいしょ こらしょ どっこいしょ



子供「ふぅぅぅ!!馬車に乗せるよ?そっち側持ってね…せーの!!」ドッスン


オークの子「ふんが…フンフン!」


子供「いっぱい買ったね…開けて見てみようか?」



スタスタ



娘1「なぁ~んだ…こんな所に馬車泊めてたんだ」


子供「あれ?お姉さん…僕たちの事心配で見に来たの?」


娘1「一応ね…ここに馬車があるという事は大人はちゃんと居るんだね」


子供「今は出かけてるんだけどね」


娘1「何を買ったの?」


子供「どんぐりとか松ぼっくりとか…あと木の根」


娘1「またまたヘンテコな物ばっかり買うんだね…まぁでもこっちじゃ珍しいか」


ローグ「帰ったでやんす~」


子供「あ!!おかえり~」


娘1「大人の人ね?良かった…」


ローグ「ん?未来君の知り合いでやんすか?」


子供「商人ギルドの人だよ…僕たちの様子を見に来たんだ」


ローグ「へぇ?何かやらかしたでやんすか?」


娘1「いえいえ…沢山の錬金術の材料を持ち歩いてたから心配になって…」


子供「全部売ったよ?」


ローグ「いくらになったでやんすか?」


子供「7金貨と60銀貨くらいだっけな?」


ローグ「ほえ~えらく高く売れたでやんすね?」


娘1「競売に掛けると大体そのくらいに…」


ローグ「未来君…親切にしてもらったらお礼をするでやんす」


子供「あ!!ごめん…気が付かなかった」


娘1「いいのいいの…じゃぁ私はこれで」


子供「お姉さん…半分あげるよ」チャリン


娘1「ええええええ!?」


ローグ「いーんすいーんす!…貰っといてやって下せぇ…」


娘1「マジで?マジで?…」


ローグ「でも内緒っすよ?」




-----------------




ローグ「未来君にお土産でやんす…一袋だけ火薬を盗んできたでやんす」


子供「おぉ!!爆弾作れる!!」


ローグ「そう言うと思っていやした…本当あねさんにそっくりでやんす」


子供「昨日地下でネジを沢山買ったんだ!!これで爆弾が強くなる…」


ローグ「上手く行くと良いでやんすねぇ」


子供「早速作るよ!!」


ローグ「あっしは買い出しに行くんで馬車で待っててくだせぇ」


子供「うん!!ねぇ…君も手伝って?」


オークの子「…」ジー


子供「こうやって作るんだよ…」



これをこうして…こんな風に…


それでここに入れる


クルクルっと巻いて…




『夕方』



ツカツカ 



女戦士「未来はどうしている?」


ローグ「馬車の中で爆弾を作って居るでやんす」


女戦士「ふむ…気球の取引が早まったのだ…日が暮れる前に馬車の荷物を気球に乗せ換えたいのだが…行けるか?」


ローグ「直ぐに行けやす…気球はどちらで?」


女戦士「発着場で今荷物を降ろしているそうだ」


ローグ「じゃぁ急いでヤクを繋ぎやす」


女戦士「2匹のヤクはもう売約済みだ…繋ぐのは1匹で良い」


ローグ「わかりやした…直ぐに移動できるんで馬車に乗ってて下せぇ」




----------------



トンテンカン ゴシゴシ



女戦士「何を作って居るのだ?」


子供「あ!!ママ…余ってる角でアクセサリー作ってるんだ」


女戦士「フフ爆弾はもう作り終わったか?」


子供「うん…今乾かしてる」


女戦士「もう気球に移動するから準備しろ」


子供「早くなったの?」


女戦士「そうだ…深夜までには基地に到着したい」


子供「この子…どうしよう?」


女戦士「置いて行く訳に行くまい?連れて行くしか無いな」


子供「良かった」


女戦士「何だ?この袋は…豆か何かか?」ガサガサ


子供「どんぐりだよ…この子が一人になった時に食べられる様に」


女戦士「フフ…この木の根もか?」


子供「うん…僕も食べるけどね」


女戦士「これはマンドレイクの根だな…錬金術の材料だぞ?高かったのでは無いか?」


子供「売り物の中に水銀があってさ…高く買い取ってくれたんだ」


女戦士「水銀が合ったのか…お前は触って居ないな?」


子供「うん…どうして?」


女戦士「毒があるから子供は触ってはいけない」


子供「へぇ?ママは手を突っ込んで遊んでたんだけどな…」


女戦士「む…そうか…お前もドワーフの血が流れて居るとすると水銀を触っても良いな…今のは忘れてくれ」


子供「砂鉄に手を突っ込むのも良い?」


女戦士「好きにしろ」




------------------



ウモモォォーー ガラゴロガラゴロ



ローグ「…それでかしらぁ…錬金術の材料の件はどうでやんすか?」


女戦士「大した情報は無かった…確かにエルフの心臓は材料になるそうだがキ・カイ錬金術では使わないそうだ」


ローグ「じゃぁオークの心臓も使うかどうか分からんてこっすね?」


女戦士「シャ・バクダ錬金術を周知している者は見つからなかった」


ローグ「んんむ…じゃぁやっぱり心臓じゃなくてそのままキマイラにする感じなんでしょうね?」


女戦士「その線が強そうだがそんな魔物を見たことが無い」


ローグ「キマイラっちゃぁ…ミノタウロスとかケンタウロス…グリフォン…ハーピー」


女戦士「オークの体を使ったキマイラなぞ知らぬだろう?」


ローグ「そーっすねぇ…」


女戦士「奴隷の使い道は分からんが兎に角…黒の同胞団は捨て置けん」





『気球発着場』



女戦士「あの貨物用の気球だな…取引相手が待って居る」


ローグ「馬車は引き取ってもらう感じで?」


女戦士「うむ…私は話をして来るから荷の積み替えを頼む」


ローグ「分かりやした」


女戦士「未来も荷の積み替えを手伝え…出来るだけ早く移動したい」


子供「うん…」


女戦士「オークの子にも手伝わせろ」


子供「分かった」



ウモモォォーー



ローグ「未来君!あっしが気球に入れて行くんで未来君は荷を馬車から降ろして下せぇ」


子供「おっけ!君も手伝って!」


オークの子「がう…」ジー


ローグ「麻薬の入った樽を先に積みやす…よっこら!!」


子供「あと僕が降ろしておくよ…そっち側持って?ふんっ!!」ズリズリ



-----------------


-----------------


-----------------




『貨物用の気球』



ローグ「この気球は炉の送風が自動になってるっすね…これ良いっすね」


女戦士「高価なだけの事はあるだろう?」


ローグ「風の魔石はどれくらい持つでやんすかね?」


女戦士「さぁな?籠の中に替えの魔石が入っている筈だが…」


ローグ「ありやした…只なんか無くなるのが心配でやんす」


女戦士「ケチケチするな…無くなったら手動で送風すれば良い話だ」


ローグ「あっしの悪い癖が出やしたね…」



ズリズリ ドサ!



子供「これで最後のどんぐり」


ローグ「じゃぁ乗って下せぇ…狭いでやんすが炉の近くは暖かいっすよ?」


子供「おいで?」グイ


オークの子「…」


女戦士「では出発しようか」


ローグ「アイサー!!気球なら基地まで直ぐに着きやす」


女戦士「早く帰って水浴びがしたい…急いでくれ」



フワフワ フワフワ



------------------



ビョーーーウ バサバサ



”聞こえるか?…”


”…お姉ぇ?聞こえるよ!!どう?そっちは?”


”古都キ・カイに居るのだが黒の同胞団の手掛かりを見つけた”


”え!?マジ?そっちまで行ってんの?”


”どうやら大量にオークを捕獲して奴隷船でセントラル方面に移送している様だ”


”なんそれ?どゆ事?”


”ひとまず海賊で奴隷船を拿捕しようと思うのだが救出したオークをどうするか思案中なのだ”


”オークって言う事聞くの?言葉通じないじゃん?”


”だから困っているのだ…私はアサシンと直接話せないからフィン・イッシュで受け入れられないか聞いてくれないか?”


”おけおけ…なんかアサシンもフィン・イッシュに戻るみたいな事言ってたよ”


”大体1000体ぐらいオークの奴隷が居る様だ…海賊だけでは受け入れ切れん」


”うは…丁度さぁフィン・イッシュもセントラルに攻められそうでヤバイらしい」


”なら尚の事オークを保護して上手く自衛になれば良い」


”お姉ぇもフィン・イッシュに来る?」


”いや…私は黒の同胞団の手掛かりを追おうと思う”


”なんか掴んだの?”


”オークをセントラルに移送するのはやはりおかしい…他に拠点を構えていると思うのだ”


”なるほど…そういやさぁ…エルフの森南部に基地があるかも”


”それは確かな情報か?”


”そこらへんからミノタウロスがいっぱい出て来てるっぽいんだ”


”ふむ…それだな…それなら移送する意味がある”


”お姉ぇさぁ…未来居るんだから無茶しないで?”


”分かっている…常にハイディングして居ると思ってくれ”


”おけおけ…ほんじゃアサシンと話しできたら連絡するよ”


”良い返事を持って居る…”




-----------------




ローグ「奴隷のオークをフィン・イッシュに行かせるのは良い案っすねぇ…移民を歓迎してるでやんすよ」


女戦士「オークが事情を理解してくれれば良いのだが…」


ローグ「あっしは南の大陸の国境でオークを見たんすがね?オークは賢いでやんす」


女戦士「それはこのオークの子を見ても分かる…明らかに知性と理性がある」


ローグ「どっちかって言うと人間の方に問題がありやすね…オークは魔物と決めつけている人が居やすから」


女戦士「言葉の問題がな…」


ローグ「未来君のお友達が通訳になりやせんかね?」


女戦士「まだ子供だ…大人のオークが子供の言う事なぞ聞くものか」


子供「ホム姉ちゃんならお話し出来るかも」


女戦士「ホムンクルスか…そういえば言葉を覚えるのが早かったな」




『海賊の基地』



フワフワ



ローグ「何処に降りやす?」


女戦士「私の船の船尾だな…積み荷は明日積み替える事にしよう」


ローグ「わかりやした」


女戦士「私は水浴びに行くが未来も来るか?」


ローグ「うん!!この子も連れて行って良い?」


女戦士「良いぞ?汚れを落としてやる」


ローグ「今日はこのまま解散でやんすか?」


女戦士「うむ…海賊共には明日話をするからお前もゆっくり休め」


ローグ「あっしも水浴び行って良いっすかね?」


女戦士「好きにしろ…ただし覗くなよ?」ジロリ





『水場』



モクモク モクモク



女戦士「先に海水で汚れをしっかり落とすのだ」


子供「ぅぅぅ寒い…」ガチガチ


女戦士「海の方が温かいから早く落としてこい」ジャブジャブ


子供「えーい!!」ダダダ ザブーン


女戦士「お前は寒さに強いのだな?」ジャブジャブ ゴシゴシ


オークの子「…」


子供「ママ…だめムリ…寒い」ガチガチ


女戦士「桶の中の湯に浸かって良い…温まっていろ」


子供「ぅぅぅ…」ブルブル


女戦士「よし!綺麗になった…湯に浸かるぞ?…来い」


子供「熱っ!!」タジ


女戦士「寒いだの熱いだの注文が多い…ゆっくり入れ」ソソ チャプン


オークの子「…」タジ


女戦士「お前も入って良いぞ?」グイ


オークの子「うが…」チャポン


女戦士「湯は初めてか?温まると気持ち良いぞ?ふぅぅぅ」


ローグ「かしらぁ!!追加の湯を持ってきやしたぜ?にひひ」


女戦士「持って来てくれ…もう少し温めたい」


ローグ「へい!!」シュタ


女戦士「…」ジロリ


ローグ「いやいやいや追加の湯を持ってきただけでやんすよ…にひひ」




『貨物船』



ザブン ギシギシ



女戦士「やはり船の方が暖かいな…今日は居室で休むのだ」


子供「うん!!僕の荷物は居室に移しておくね?」


女戦士「お前の荷物?どんぐりと松ぼっくりか?」


子供「そうだよ…僕とこの子の携帯食料さ」


女戦士「フフまぁ好きにしろ」


子供「こっちだよ!!ぼくの部屋を見せてあげるよ」グイ スタタ


オークの子「…」スタタ


女戦士「子供は言葉が無くても良い…か」


女戦士「さて…私も休むか」



---------------


---------------


---------------




『翌日_気球』



トンテンカン トンテンカン



ローグ「未来君!!かしらに気球の改造して来いって言われて来たでやんす」


子供「僕もママにアロースタンド作れって言われたんだよ」


ローグ「じゃぁあっしは何しやしょうかね?」


子供「なんか海賊のおじさんが材料を置いて行ったんだけどさぁ?」


ローグ「んん?木材と布…これひょとしてあねさんと同じ様に帆を張れってこっすかね?」


子供「わかんない…でも好きにして良いって事だよね?」


ローグ「あねさんと同じはあっしにはムリでやんす…ちっと帆を張るぐらいっすねぇ」


子供「出来た!!アロースタンドこれで良い?」


ローグ「3つも作ったんすね?」


子供「うん!左右と後ろ用だよ…ボルトの入れ物はココさ」


ローグ「おぉ!!あねさんより工夫してるでやんすね?」


子供「クロスボウは何処にあるのかな?」


ローグ「あっしが持ってきてあげるでやんす」


子供「ダメだよローグさんは帆を作ってよ」


ローグ「あららら…やっぱしあっしは帆でやんすねトホホ」


子供「ちょっとクロスボウを探してくるね」




------------------




子供「ボルトって重いんだなぁ…よいしょ」


オークの子「…」グイ


子供「ありがとう!君は力持ちだね」


ローグ「未来君!!どうでやんすか?縦帆2つっす」


子供「へぇ?恰好良くなったね」


ローグ「クロスボウが3つ搭載されていると中々の火力っすね」


子供「最強の貨物用気球だね」


ローグ「馬鹿に出来やせんぜ?戦闘員乗せて気球から船の強襲にも使えやす」


子供「それなら下にもクロスボウ撃てるようにした方が良いね」


ローグ「そーっすね…あっしが床に細工するでやんす」


子供「なんか改造って楽しいなぁ…」ワクワク




-------------------




ローグ「かしらぁ!!見て下せぇこの気球の出来を!!」


女戦士「ふむ…ローグにしては中々良い」


ローグ「いやぁぁ未来君の細工もなかなかのもんす」


女戦士「未来は何処に行った?」


ローグ「船降りてヤードの方っすかね?ボルトを取りに行くとか言ってやした」


女戦士「そうか…この船用のアロースタンドも作って置けと伝えてくれ…20個だ」


ローグ「え!?この船で海戦やるんすか?大砲が無ぇでやんす」


女戦士「クロスボウで補う…こちらには爆弾があるのでな」


ローグ「飛距離が足りんでやんすよ」


女戦士「まともに撃ちあうつもりなぞ無い…ハイディングからの奇襲だ」


ローグ「あぁそういう事っすね…ならクロスボウの方が良いっすね」


女戦士「うむ…荷物を積み終わったらこの船でもう一度キ・カイまで補給に行く」


ローグ「クロスボウの入手っすね?」


女戦士「他にもあるがな?陸路で運搬が出来んから船で行った方が良いのだ」


ローグ「もう行くんでやんすか?」


女戦士「あと2時間ほどで荷の搬送が終わる…未来には船に乗って居ろと伝えてくれ」


ローグ「わかりやした」





『2時間後』



ザブン ギシギシ



船乗り「碇を上げろぉぉぉ!!」


ローグ「やっぱりこの船は40人ぐらいが賑やかで丁度良いでやんすね?」


女戦士「ガレオン級はそのぐらいが限界だな」


ローグ「大砲を一門も積んで無いんで貨物船扱いでどこにも入港出来るのが良いっすね」


女戦士「今回は奴隷商の身分証もあるからキ・カイでの仕入れもラクだろう」


ローグ「クロスボウ以外の仕入れって何を買うでやんすか?」


女戦士「食料だ…奴隷にされているオーク達には補給が必要だ」


ローグ「かしらぁ…あっしは一生付いて行くっす」


女戦士「未来が買ったどんぐり…あれはかなり安い…そしてオークにはとても良い食料と見た」


ローグ「どんぐりを買い占めるんすか?」


女戦士「他にも芋が安かっただろう?どうも植物の根や実を好む様だ…どちらも安いから仕入れる」


ローグ「あああああ!思い出しやした…それどっちもエリクサーの材料っすね」


女戦士「んん?そうなのか?」


ローグ「クヌギの実がどんぐりでアルコールの原料が芋っす…てことは松脂の代わりに松ぼっくり…」


女戦士「ほう?体内でエリクサーを作っているのか?」


ローグ「だからエルフもオークも小食なのかもしれやせん」


女戦士「そういえばオークの子は肉を沢山は食わんな」


ローグ「これって新説発見じゃないっすか?体の中で錬金術っすよね?」


女戦士「体内で錬金術…ふむ…いやしかし」---謎が深まるばかりだ---





『キ・カイ船着き場』



ギシギシ ガコン ギギギ



女戦士「ようし!!数名下船して食料の調達に行ってこい!!他の者は待機しろ」


子供「ママ?僕たちは降りる?」


女戦士「灰で汚れてしまうから居室に入って居ろ」


子供「うん…わかった」


女戦士「ローグはクロスボウとボルトの調達を頼む」


ローグ「アイサー!!弓は要らんすか?」


女戦士「クロスボウだけだ…キ・カイではクロスボウの方が安い」


ローグ「分かりやした…じゃ行って来やす」タッタッタ


女戦士「…」---奴隷船2隻は入れ違いで出港してしまったな---





『居室』



ガチャリ バタン



オークの子「!!?」ズザザ


子供「あ!!大丈夫だよ…怖がらないで?」


オークの子「…」ギロリ


女戦士「やはり大勢の男達が居ると怯えているのか?」


子供「うん…みんな珍しそうに覗いて行くから…」


女戦士「ふむ…慣れてもらうしか無いのだが…男達には私からも言っておく」


子供「でも目はしっかりしてる」


女戦士「怯えているのでは無く身構えているだけか…プライドが高いのだな」


子供「おいで?大丈夫だから…」


オークの子「…」ソローリ


子供「沢山の人に見られるのが嫌みたい」


女戦士「…」---この子は私に似ているな---



---自分の見た目に自信が無い…---


---卑下されている様な目が嫌なのだ---


---だから剣に逃げる---




女戦士「未来!木剣で素振りを教えてやれ」


子供「え?あ…うん」


女戦士「剣を背負わせても触ろうとしないという事は今まで持った事が無いのだ」


子供「わかったよ…ママに教えて貰った通りにやってみる」




---------------



ブンブンブン ブン!!



子供「ぐちゃぐちゃだけどそんな感じで良いよ」


女戦士「次は未来が凌いでみろ」


子供「うん…僕に打ち込んでみて?」


オークの子「…」ジロリ


子供「来て良いよ…」スチャ


オークの子「…」タタ ブン


子供「…大振り」カコン


オークの子「ウガ!」ブンブン



コンコン



女戦士「運動していれば気が紛れる…しばらく立ち合って居るが良い」


子供「うん!いろいろ教えておくね」


オークの子「ググ!」ブンブンブン




『半日後』



ザブン ギシギシ



ローグ「いやぁぁキ・カイの外の街に衛兵が増えて居やしてね?何回も身分証見られましたわ」


女戦士「クロスボウは無事に入手出来たか?」


ローグ「荷室に入れてありやす」


女戦士「食料の調達も手間取って居そうだな?」


ローグ「そーっすね…あっちも衛兵に止められてるっすね」


女戦士「そろそろ出港したいのだがな」


ローグ「これからどうする気で?」


女戦士「セントラルに向かう途中の灯台がある島周辺で奴隷船を拿捕する」


ローグ「海賊船は同時に動いてるでやんすか?」


女戦士「近場に居るのが2隻だけなのだが先に向かっている筈だ」


ローグ「2隻…じゃぁこの船が主力になりやすね」


女戦士「向こうは大砲が撃てんからな…気球を持って居る私達に分がある」


ローグ「向こうが他の軍船と接触しちまう前にやりたいっすね」


女戦士「うむ…ハイディングで先回りして待つ形にしたい」




-------------------




ローグ「未来君!船長室の方へ移動して下せぇ」


子供「え!?ここで良いのに」


ローグ「あっちの方は人が来ないでやんす…かしらが使って良いと言ってるでやんす」


子供「そっか…じゃぁ荷物持って行こうかな」


ローグ「あっしが持つでやんすよ?」


子供「うん…どんぐりの袋をお願い」


ローグ「立ち合いをやっていたでやんすか?」


子供「そうだよ…僕がこの子に教えてるんだ」


ローグ「オークの子はどうでやんすか?」


子供「僕とは全然違う感じだよ」


ローグ「あっしにも後で見せてくだせぇ」


子供「うん!船長室って狭くない?」


ローグ「船長室のデッキでやれば良いっす」


子供「そっか…おいで?」グイ


オークの子「…」




-----------------




ローグ「やっと荷入れが終わりやしたね…随分時間かかりやしたね」


女戦士「衛兵は麻薬を探しているらしい」


ローグ「そりゃガサ入れが来る前に早い所出港した方が良いっすね」


女戦士「うむ…船員が乗り込み次第出港させる」


ローグ「見てくだせぇ未来君とオークの子の立ち合い…受けだけだと未来君は力押しされてるっすね」


女戦士「体重差だな…まぁ良い訓練だ」


ローグ「オークの子のブレない目はかしらみたいっすね」


女戦士「フフお前もそう思うか?私も似ていると思った…小さいなりに誇り高い」


ローグ「あの真っ直ぐな目を未来君も感じてると良いでやんす」


女戦士「立ち会っている本人が一番感じていると思うぞ?」




------------------




船乗り「全員船に乗りました!!出港できます」


女戦士「よし出港だ!!碇を上げろ!!」


海賊共「へーーい!!」


女戦士「横帆を出せ!!面舵いっぱい!!」



ギシギシ ギギギ ユラ~ 





『貨物船』



ザブ~ン ユラ~



ローグ「いやぁぁやっぱり海の方が温かいっすね」


船乗り「キャプテン!!後方から高速巡視船が一定距離で付いて来ます」


女戦士「気にするな…直に霧が出る」


ローグ「かしらぁ…これあっしらの船を拿捕するつもりじゃ無いっすかね?」


女戦士「沖でキ・カイの軍船が控えて要るのは海賊たちから聞いて居る…霧に紛れてハイディングすれば済む」


ローグ「なら良いっすね」


女戦士「ハイディングで進めば2日は何も起きん…適当に過ごしておくのだ」


ローグ「じゃぁあっしはアロースタンドでも作って置くでやんす」


女戦士「未来考案の奴だな?20台必要になるからよろしく頼む」


ローグ「クロスボウを20基備えてるとちょっとした要塞になりやすね?」


女戦士「洋上での乗り込み阻止には効果が高いだろう」


ローグ「ところであねさんはアサシンさんと連絡付いたでやんすかね?」


女戦士「あぁフィン・イッシュでオークの難民を受け入れる件は承諾されたらしい」


ローグ「良かったっすねぇ」


女戦士「無人島の領土を与えてくれるそうだ…やはりフィン・イッシュ女王は懐が深い」


ローグ「上手い事共生できると良いでやんす」


女戦士「そうだな救出する甲斐があると言うものだ」




-----------------




女戦士「さて…奴隷船に乗っている鉄器兵の件だが」


ローグ「10体は乗って無いっすね7~8体って所っす」


女戦士「正直クロスボウだけで倒せるとは思って居ない」


ローグ「爆弾だと船が痛んでしまいやすね?」


女戦士「やはり私が乗り込んで正面突破しか無いか?」


ローグ「あねさんの爆弾があれば甲板に乗ってるのは海に落とせるんでやんすが…」


女戦士「海に落とせば良いか…1体づつなら何とかなりそうだが…」


ローグ「ボルトにロープ付けて引っ張り落とすのはどうでやんすかね?」


女戦士「ロープにそれ程余裕が無いな」


ローグ「あっしらが着ている金属糸の装備を解いてでやんすね…金属糸を使うのはどうでやんす?」


女戦士「ほう?私とローグ…そして未来の分で足りるか?」


ローグ「十分とは言えやせんが使える様にはできやすね」


女戦士「よし!こうしよう…この船のクロスボウは囮だ…気球から一体づつ狙って鉄器兵を海に落とす」


ローグ「良いっすね…貨物を空にしておけば鉄器兵も吊れやすね?」


女戦士「3体程落とせば私が乗り込み何とか出来る」


ローグ「それで行きやしょう」





『2日後_灯台の有る島』



ザブ~ン ザブ~ン



女戦士「私達は沖で停船だ…漁村に行く者は小舟に乗れ」


ローグ「かしらは行かんのでやんすか?」


女戦士「行っても何も無いのでな?私は望遠鏡で見張って置く」


ローグ「じゃぁあっしは魚の調達に行って来やす」


女戦士「この島では酒も造っているから買ってこい」


ローグ「わかりやした」


女戦士「未来?お前はどうする?ローグと一緒に行って来ても良いぞ?」


子供「行こっかな…少し走りたいし」


ローグ「良いっすよ?直ぐに帰って来るんで散歩みたいなもんす」


女戦士「そうだ!!浜辺に大きなカニが居るはずだ…腕試しに狩ってこい」


ローグ「それは軍隊ガニっすね…食べられるでやんす」


子供「へぇ?」


ローグ「あっしが見とくんで2人で狩ってみて下せぇ」


子供「よーし!!一緒に行こうか」グイ


オークの子「…」


ローグ「じゃぁ行って来るでやんす」


女戦士「日暮れまでには戻って来るのだぞ?」




『浜辺』



ザザー ザブン



ローグ「あそこに居るでやんす」


子供「おっけ!行って来る」スタタ


オークの子「…」スタタ


子供「君も剣を使って?」スラーン


オークの子「…」スラリ


子供「いくよ?」タタタ ブン キーン



軍隊ガニ「!!?」ガサガサ



子供「硬い…」タジ


ローグ「足の付け根を狙うっす…足を落とさんと逃げられるでやんすよ?」


子供「足か…」タタタ スパ ボトリ


オークの子「…」タタタ ノッソー ブン ゴツン!



軍隊ガニ「ギュッ…」ブクブク



子供「え!?」


ローグ「あらら?軍隊ガニが失神しとるっすね…足を全部落として下せぇ」


子供「あ…うん」タタタ スパ スパ スパ


ローグ「コバルトの剣は重すぎでやんすが鈍器代わりに丁度良さそうっすね」


子供「すごいなぁあの剣…一発で倒しちゃた」


ローグ「あと2~3匹狩って下せぇ…今日の夜はカニのバーベキューやりやしょう」


子供「うん!!」


ローグ「あっちにも居るでやんすよ?」




『小舟』



ローグ「ちっと船で待ってて下せぇ…あっしは魚を仕入れて来るでやんす」


子供「ここで待ってるよ」



ザザー ザブン ザザー ザブン



子供「君は怪我してない?」


オークの子「ウガ…」


子供「手?見せて?」


オークの子「ウゴウゴ…」


子供「豆が潰れたのか…あの剣重すぎだしね…治してあげる…回復魔法!」ボワー


オークの子「ウトガリア…」


子供「ありがとうって意味?」


オークの子「ルゲアリグンド」


子供「ん?どんぐりくれるの?」


オークの子「…」カリ モグ


子供「僕らの携帯食料だね」カリ モグ




『貨物船』



ワイワイ ガヤガヤ


このカニはあのオークの子が獲って来たんだってよ


ほーうオークも仲間に出来んのか


旨いなこのカニ!!


酒はどこだぁ!?


ワイワイ ガヤガヤ



女戦士「フフみんな喜んで居るな」


ローグ「大量でやんした」


女戦士「未来…今度は何を作って居るのだ?」


子供「軍隊ガニの甲羅でオークの子の防具を作ってるんだよ」ゴリゴリ


ローグ「良い材料が手に入ったでやんすね?」


子供「うん…すっごい軽くて硬い…トゲトゲも恰好良い」


女戦士「黒い甲冑か?」


子供「甲冑って程でも無いけどさ…ほら?」


女戦士「ふむ…布の服よりは随分マシになるな」


ローグ「未来君は本当に器用でやんすね」


子供「ねぇねぇこれ装備してみて…僕とお揃いだよ」


オークの子「ニナ?レコ…」タジ


女戦士「む…何か話しているな?」


ローグ「そーっす…未来君にだけ話をするみたいっす」




『2日後』



ローグ「船が2隻見えるっす」


女戦士「何!?海賊船か?」


ローグ「違うっすね…例の奴隷船でやんす」


女戦士「ちぃぃ海賊船は間に合わなかったか…」


ローグ「どうしやす?」


女戦士「私達はこの島から離れる振りだ…碇を上げろ!!」


ローグ「向こうの補給を狙う感じっすかね?」


女戦士「そうだ!!補給で停泊する筈だからそこを狙う」


ローグ「気球を準備しときやす」


女戦士「未来!気球に乗れ…戦闘になるぞ」


子供「うん!!この子も連れて行くよ?」


女戦士「クロスボウの撃ち方を教えて置け!!」


子供「おいで!!」グイ


女戦士「者共ぉ!!戦闘準備だ!!寝ている者を起こせぇ!!」




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