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12.冒険の書_後



『ドリアード遺跡_喉部』



盗賊「えらい下ってるぞ?そして何で微妙に明るいんだ?」


アサシン「扉も何も無いのだな…不思議な遺跡だ」


盗賊「情報屋!ランタンで壁面照らして何か見えるのか?」


情報屋「透けて向こう側が少し見えるわ」


アサシン「何?」


情報屋「ほら?細胞がくっ付いて居るみたいな…」


アサシン「本当だな…では向こう側にもここと同じ様な通路があるのか?」


情報屋「そんな感じね…下の方にも…まるでアリの巣」


アサシン「想像していた遺跡とは全く異なる…何なんだここは」


盗賊「おい!!この先で広がってる…注意しろ」


情報屋「待って…ここ扉よ?開いて居るけど」


盗賊「んん?…これどうやって閉めるんだ?」


情報屋「いつ閉まるか分からないから進むのが怖いわ」


アサシン「私にはこれが扉だと思えんのだが…」


情報屋「喉の奥を想像して?このひだみたいな壁が塞がる」


アサシン「なるほど…やはり生き物だという事か」


情報屋「動物性ではなくて植物性の生き物ね…きっとそれがドリアードだわ」


盗賊「そういや虫を食ってるクソでかい花とか見た事あるわ…あんな感じか」


情報屋「多分…私達はその中に居るの」


アサシン「文明とは程遠い気がするが…」


情報屋「その体内に生活拠点を作ったのがノームだわ…どこかにノームの化石とかあるかもしれない」


盗賊「どうする?進むしか無いよな?」


情報屋「待って…このひだが勝手に閉じない様にクロスボウで釘を刺しておく」バシュン ザク


盗賊「そら名案だ」


情報屋「予備のボルトあと20本しか無い…」


アサシン「20本使う前に一旦戻るとしよう」


盗賊「じゃぁ進むぞ」




『ドリアード遺跡_胃部』



盗賊「こりゃまたでっけぇ空間だ…誰も居る様には見えんな」


アサシン「広すぎる…手分けしないと効率が悪い」


情報屋「これだけ大きな物が地面に埋まって居ただなんて…大発見よ」


アサシン「しかし造形物のすべてが何なのか分からん」


情報屋「でも明らかに知能を持った何かが作ってる…調べましょう」スタ


盗賊「おい!!勝手に行動すると危ないぞ?」


アサシン「まぁ向こうまで見通せる…見える範囲で手分けするか」


盗賊「おい!情報屋!!俺が見えない所には行くな!!分かったな!?」


情報屋「あら?私を心配しているの?ウフフ」


盗賊「俺はこっちな?」


アサシン「では私は向こうだ」



----------------


----------------


----------------



『1時間後』



アサシン「やっと帰って来たな…何か見つけたか?」


盗賊「あっちこっちに通路があって訳分からん…見つけた物っちゃぁ虫ぐらいのもんだ」


アサシン「虫か…私は衣類を発見したぞ」


盗賊「おぉ!?持って来なかったのか?」


アサシン「まぁゴミの様な物だ…多分貴族が身に付けて居たであろう衣服だな」


盗賊「肝心の貴族がどこにも居ないんだが…どうなってんのよ」


アサシン「後な…ここにはケシが生える様だ」


盗賊「光が入って来ないのにか?」


アサシン「正確にはケシの実だけ壁面から露出している」


盗賊「じゃぁ俺らはクソでかいケシの中に居る感じか」


アサシン「ドリアード自体がそうなのかもしれん…ところで情報屋はどうした?」


盗賊「あぁあそこで壁の中をほじくろうとしてる」


アサシン「行って見るか…」タッタ



-------------



アサシン「何か見つけたのか?」


情報屋「壁の奥に何か入って居るの」ザク ザク


盗賊「どこよ?」


情報屋「あ!!あなた明るいライト持ってたわね?貸して」


盗賊「ほらよ」ポイ


情報屋「なにかしら…」ピカー


アサシン「むむ…人だ…何故壁の中に人が…」


情報屋「やっぱりそういう事ね…見て足元」


アサシン「衣服…これは痛んで居ない」


盗賊「て事はどっか行った貴族達はみんな壁ん中ってか?」


情報屋「多分そうよ…そして傷つけた壁…ほとんど木と同じ」



ツカツカツカ



アサシン「敵!!」ズザザ


情報屋「はっ…」シュタ


盗賊「おっとぉ!!」スラーン



第3皇子「誰か居ると思ったらお客さんかぁ…君たちは誰?迷子?」


アサシン「…」ジロリ


第3皇子「武器なんか構えて怖いじゃ無いか…降ろしてよ…僕は丸腰だよ」


盗賊「耳…エルフだな?」


第3皇子「ハハハあぁこの耳ね…この耳キライなんだよ…直ぐにエルフってバレちゃうからさ」


アサシン「エルフがこんな所で何をしている?」


第3皇子「それは先に僕が質問したんだよ…君たち誰?」


アサシン「フフどういう答えを期待しているのかね?坊や…只の冒険者に思うか?」


第3皇子「アハハハそうだよね…普通の人は入って来ないよね?白狼の皆さん」


アサシン「お前は誰だ?」


第3皇子「さぁね?誰だと思う?」


アサシン「黒の同胞の者だな?」スチャ


第3皇子「残念!ハズレーーー!!ウフフフ」


アサシン「では何なのだ?お前は」


第3皇子「僕はここの住人さ…知らない誰かが入って来たから見に来たんだよ」


アサシン「何?」


情報屋「住人?」


第3皇子「アレレレ?君も顔色が悪いなぁ…そしてエリクサーの香り」


アサシン「…」ギロリ


第3皇子「僕の兄者と同じ不死者なんだぁ…残念だけど不死者はドリアード化出来ないんだよ」


アサシン「兄者?…まさかお前は第3皇子か?」


第3皇子「ピンポーーン!!でもズルいなぁ…兄者から話を聞いてるんでしょ?」


アサシン「何の事だ?」


第3皇子「おっかしいなぁ…まぁ良っか!兄者とは縁を切ったんだし」


アサシン「第3皇子がここで何をしている?」


第3皇子「アダム復活が無事終わって暇してる所さ…まぁ戦う気は無いから武器を降ろしてよ」


アサシン「アダム復活だ…と?何の話だ?」


情報屋「その話…聞きたいわ」


第3皇子「武器降ろしてったら…僕そういうのキライなんだ」


情報屋「アサシン?言う事聞きましょう…相手は一人だから」


アサシン「…」スッ


第3皇子「おいでよ…アダム復活のお祝いをしようよ」


盗賊「良いんかぁ?信用して…」


第3皇子「僕は白狼の一党と違って乱暴な事はしないよ…一緒にしないで欲しいなぁ」


盗賊「なぬ!!」


情報屋「盗賊!!止めて」


第3皇子「アハハハ冗談だよ冗談…付いておいでよ」




『ドリアード遺跡_核部』



カクカク シカジカ


カクカク シカジカ


------------------


------------------



情報屋「…それでドリアード化とは同化する事をいうのね?」フムフム


第3皇子「君は知りたがりなんだね…」


情報屋「私は考古学者なのよ?」


第3皇子「へぇ?なんか君とは話が合いそうだよ」


情報屋「ちょっと待って…古文書と比較しながらもう一度」ペラペラ


第3皇子「アハハハ丁度暇だったんだよ…誰かの役に立つのは気持ちが良いなぁ…」



--------------


--------------


--------------



盗賊「ぬぁぁぁ長げぇな話が…良いのか?放って置いて」


アサシン「仕方あるまい…私も話を一通り聞いてこれからどうするか考えていた所だ」


盗賊「黒の同胞団と戦う意味がもう無いしな…しかしどうすんだ?」


アサシン「アダムとやらがどう行動を起こすかもいま今分からん…兎も角早く魔女達と連絡したい所だ」


盗賊「まぁこれでエルフゾンビが居なくなった件も謎が解けた訳だ…やる気無くしてどっか行ったんだよ」


アサシン「しかしどうも引っかかる…何故エルフは抵抗を続けて居るかだ」


盗賊「精霊の代わりにアダムってのが世界を導くのってのを理解すんのは時間が掛かるかもな」


アサシン「いや…エルフは私達よりずっと賢い筈なのだ…理解していない訳が無い」


盗賊「うーむ…まぁどうでも良くなって来ちまった…俺ぁ眠くなってきたんだが…」


アサシン「むぅ…」


盗賊「ふぁ~あ…あそこに溜まってんのはエリクサーだよな?」


アサシン「恐らくな…持って帰るつもりか?」


盗賊「いやそうじゃ無ぇ…その下に沈んでる機械みたいなやつがアダムってやつなんか?」


アサシン「だろうな」


盗賊「あれが話しかけてくる訳でもないのにどうして物事がコロっと変わるんだ?」


アサシン「私達にはよく分からんが…ドリアード化で同化すれば分かるのでは無いか?」


盗賊「ドリアード化しろと言われてなる気にならんだろ」


アサシン「うむ…」


盗賊「それに何だエリクサーの中で宙ぶらりんの脳みそは」


アサシン「謎だ…」


盗賊「なんだかなぁ…なーんか違う気がすんだよなぁ…」



ドクン グググググ



盗賊「うお!!壁が動いた!!」


アサシン「む…」スック


第3皇子「あ!!動き始めた…そろそろ終わりにしようか」


情報屋「え?あぁ…分かったわ…もう少し聞きたい事もあったんだけど」


第3皇子「ドリアード化したら何でも教えてあげるさ」


アサシン「これは何事だ?」


第3皇子「君たちはそろそろここを出て行った方が良いかな…ドリアードが目覚めたんだよ」


アサシン「どういう事だ?」


第3皇子「老廃物と思われて排出されてしまう…僕もそろそろドリアード化しなきゃいけない」



ドクン グググググ



情報屋「入り口が小さくなってるわ」


盗賊「こりゃ閉じ込められるかも知れん」


第3皇子「そうだね…出て行った方が良いよ」


アサシン「お前はどうする?」


第3皇子「僕はここでドリアード化するよ…もうこの世界に未練は無い」


アサシン「未練だと?」


盗賊「やべぇ!!おい!!行くぞ」グイ


第3皇子「途中で鎖に繋がれてるエルフはもう好きにして良いよ…ドリアード化するも由し帰るも由し」



ドクン グググググ



盗賊「おい!!話してる暇無ぇぞ!!走れ」グイ


アサシン「ぐぅ…仕方あるまい」ダダ


盗賊「情報屋!!飛び込め!!」


情報屋「分かってる!!」ピョン シュタ


アサシン「来た道分かるか?」


盗賊「任せろ…目印置いて来てる!!こっちだ!!」ダダ




タッタッタ タッタッタ




『ドリアード遺跡_胃部』



盗賊「ふぅ…ここは無事だ」


情報屋「なるほど…中枢部は通常閉じているのね」


盗賊「じゃぁドリアードの中心に入れたのは幸運だったな」


情報屋「あの子のお陰ね」


盗賊「ちっとイカれた奴だったな?」


情報屋「心に闇を持ってる」


アサシン「待て…闇と言ったな?あの小僧…もしかして魔王の欠片を抱えて居ないか?」


情報屋「え…」


アサシン「ハイエルフはそれを見抜いて居ないか?…しまった!!ミスリルの音を聴かせるべきだった」


盗賊「まぁ済んだ事は考えるの止そうぜ」


アサシン「もう日暮れの時間だ…一旦戻るぞ」


盗賊「おうよ!!」


情報屋「捕らえられてるエルフは?」


アサシン「あぁ…そうだったな…盗賊!鍵開けは出来るな?」


盗賊「任せろ」


アサシン「私と情報屋は先に出口が閉じて居ないか見て来る…鍵開けを頼む」


盗賊「分かった直ぐに合流する」ダダ




『開閉弁』



情報屋「良かった!!ボルトが刺さってるお陰でまだ閉じて居ない」


アサシン「動こうとしているな…もっとボルトを打ち付けて固定しろ」


情報屋「分かったわ…」ガチャリ バシュン バシュン



ボタボタ バシャーーー



アサシン「むむ!!…何か降って来た」


情報屋「排泄しようとしてる…それとも消化?…」


アサシン「マズイな…」


情報屋「盗賊ーーー!!急いでーーーー!!」



盗賊「ちっと待てぇーーー!!そっちにエルフ走って言った!!出してやってくれぇぇ!!」



情報屋「こっちよ!!」


エルフ1「t」シュタタ


エルフ2「h」シュタタ


エルフ3「a」シュタタ


エルフ4「n」シュタタ


エルフ5「k」シュタタ


エルフ6「y」シュタタ


エルフ7「o」シュタタ


エルフ8「u」シュタタ


アサシン「何か言って居るな」


情報屋「分からないわ…盗賊!!早く!!」



盗賊「げふっ…ごほごほ…なんだこりゃ毒霧か?げふげふ」ダダダ


アサシン「入り口まで走れ!!」


盗賊「やべぇぞ!!後ろから毒霧が迫ってる」ダダ


情報屋「ギリギリね…行くわよ」タッタッタ





『ドリアード遺跡_入口』



盗賊「はぁはぁ…げふっ」


情報屋「はぁはぁ…長い登りだったわね…はぁはぁ」


アサシン「気を抜くな…走れ!!」



バフッ モクモクモク



盗賊「毒霧が噴出して来やがった…行くぞ情報屋!手を!!」グイ


アサシン「狭間から出るぞ!!」



ゴーン ドドドドドド



アサシン「何事か…」


盗賊「こりゃ一難去ってまた一難だ!!ゴーレムが暴れてる」


情報屋「トロールとサンドワームが戦って居るわ」


盗賊「東側から逃げるぞ!!走れ!!」ザク ザク


情報屋「こんな雪の中走れる訳無いじゃない…」ザク ザク


アサシン「エルフ達は何処に行った?」


盗賊「トロールと一緒になって戦ってらぁ」


アサシン「素手でか?」


盗賊「む…もしかして囮になってくれてんのか?」


アサシン「行くぞ!!走れ!!好意を無下にするな」ザク ザク


情報屋「エルフ達…」


アサシン「エルフはそういう生き物だ…アレは剣士だと思え」


盗賊「なるほど…」



----------------


----------------


----------------




『少し離れた雪原』



ピカー ピカー ピカー



アサシン「気付いた様だな?気球が寄って来る」


情報屋「あなたのそのライト本当に便利ね」


盗賊「まぁな…俺の宝だ」


アサシン「案内人!!こっちだ!!」



案内人「ああぁ良かった…心配してたんだ」フワフワ ドッスン



アサシン「済まない時間が掛かってしまった」


盗賊「ふぅぅ色々有ったなぁ…げふげふ」


情報屋「毒消しが要りそうね…ゴホゴホ」


アサシン「私のエリクサーを少し飲め」ポイ


盗賊「お前は毒に強くて良いな?」ゴク


アサシン「エリクサーを常備しないと正気を保てんのが良いと?」


盗賊「悪い悪りぃ…嫌味のつもりは無ぇ」


アサシン「エリクサーで傷が治る事も無いのだ…回復魔法をして貰わんとボロボロになる」


盗賊「そうだったのか…平気な顔してるからてっきり治癒してると思って居た」


アサシン「エルフゾンビは気球から飛び降りただろう?骨が折れると自力では治せん…だから心配なのだ」


盗賊「何処いっちまったんだろうな?」


アサシン「うーむ…」



”アサシン聞こえる?”


”その声は女海賊か?”


”あーーーやっと繋がった…お姉ぇが持ってた貝殻で繋がるのかぁ”


”元気そうだな?そっちはどうだ?”


”今シャ・バクダ向かってる”


”何?黒の同胞団の隠れ家はどうなったのだ?”


”色々あってさ…でも壊滅させたよ”


”そうか…魔女と話は出来るか?”


”今魔女は居ないんだ…そっちで合流する事になってる”


”ふむ…星の観測所で待てば良いか?”


”うんダッシュで行くから待ってて”


”どのくらい掛かる”


”ハイディングしながら行って明日の昼前には着くと思う”


”分かった…急いで戻れ”


”おっけ!!”



盗賊「今の口ぶりだと黒の同胞団の事は何も分かって居ない様だな」


アサシン「そうだな…今後の事も話しておく必要がある」


案内人「観測所に降ろすぞ?」


アサシン「頼む…今日はこれで終わりだ…案内人も休んでくれ」




『星の観測所』



…ノームの骨や化石が一切発見されないのは全部ドリアード化したという事で説明が付く


ドリアードは恐らく巨大な肉食植物のような生命体で精霊樹の様に意思を持って居る


その体内で寄生する形でノームが営んで居たと推定される


伝承によるとノームは小型でとても器用な特徴を持っている


だからキ・カイで発掘されたサーバ石の様な物を作る事が出来た


それはホムンクルスの頭部に入って居る機械と同じ様な役割を担った



情報屋「ざっとこんな感じね…」


盗賊「エリクサーの中に吊るされてた脳みそは何だったんだ?」


情報屋「分からないけれどアダムと関係するのは間違いなさそうね…ただちょっと古文書の絵と会わないのが気になるかな」


アサシン「見せてみろ」


情報屋「ここよ?この中心に居るのが恐らくアダム…ちゃんとした人間の形をしているでしょう?」


盗賊「脳みそだけ取り出したんか」


情報屋「この古文書ではそういう記述は無さそうだからここまでが限界ね」


盗賊「あとよ?なんで地下深くに埋まってんだ?」


情報屋「前にホムンクルスから聞いた話では約4000年前に氷河期があったらしいわ」


盗賊「ぁぁぁなんか聞いてた気がすんな…ほんで地下で過ごした訳か…人工物にしちゃデカ過ぎなのも不思議だが」


情報屋「人間の力で地下に大きな建造物は無理ね…でも植物なら根を張るから可能ね…賢いと思うわ」


アサシン「まぁ私達の理解を超える文明だという事だ」


情報屋「これでドリアード伝説の大枠は分かったから…もっと調査に行きたいなぁ」


アサシン「落ち着いてからな」


盗賊「書物とか謎の道具とかなんにも収穫が無ぇからよ…俺ぁ行く気無ぇぜ?」


情報屋「私が思うに今日行った所はほんの入り口だけだと思うの」


盗賊「まぁそうだろうな」


情報屋「ドリアード化した向こう側にどんな世界があるのか見てみたいわ」


盗賊「戻って来れるなら良いんだがな?植物の一部になるなんざゴメンだ」


アサシン「あの遺跡がドリアードという植物だったとして何だというのだ?民も居なければ軍隊も無い…何も出来ん」


情報屋「そうね?アダムが復活したからどうなの?っていう感じね」


盗賊「まぁ魔王が居なくなったってんなら良いけどよ…どーーーーもしっくり来ねぇ」


アサシン「突然来た平和か…」


盗賊「平和ってかまだエルフとゴーレム戦ってるよな?なんにも解決して無ぇと思うんだよ」


アサシン「ふむ…」


盗賊「考えてもしゃー無ぇ!!今日は寝る!!」


情報屋「フフ私は興奮して眠れないから調査をまとめておくわ」




『翌日』



盗賊「ふぁ~あ…」ボケー


アサシン「やる気が出んか?」


盗賊「んあ?…まぁな…女海賊帰って来るまでやる事も無ぇしな」


アサシン「少し考えてみたんだが…昨日第3皇子が言い残した言葉…この世界にもう未練は無い」


盗賊「んな事言ってたなぁ」


アサシン「あの小僧は何か知って居るのではと思ってな」


盗賊「もう会う事も無いだろう…考えてもしょうが無ぇ」


アサシン「例えばだ…この世界が滅んだとして最後に生き残るのは誰だ?」


盗賊「んな事分かる訳無いだろ…ん?…まてよ地下の安全な場所でぬくぬくしてるアイツが生き残りそうだな?」


アサシン「それだよ…ドリアードはそういう風に地下で生き残った文明なのだ」


盗賊「魔王は退治したんだろ?」


アサシン「ううむ…魔王が居なければ済む話とも言い切れない気がしてな」


盗賊「そもそもアダムって何なのよ?そんな大そうな神なんか?」


アサシン「聞いた話では精霊はアダムの一部から作られたらしいな?魔女の言葉だっただろうか…」


盗賊「精霊の親に当たるってか?」


アサシン「魔女の話をもう一度聞いてみたい…」


盗賊「なんかこう空からババーンと降りて来るとかよ…何か無いとどうも胡散臭え」



ガチャリ バタン



情報屋「あら?2人共早起きね?」


盗賊「そういうお前は寝て居なさそうな顔をしているな?寝なくて良いのか?」


情報屋「古文書の解読が一気に進んだから寝て居られないの」


アサシン「何か分かった事でも?」


情報屋「ドリアード文明が滅んだ原因…」


アサシン「ほう?」


情報屋「恐らく虫の大発生で滅んでるわ…」


盗賊「お?そういや虫が居たな」


情報屋「虫ってエリクサーに浸かると死んじゃうじゃない?だからエリクサーに浸かった所だけ当時のままなんだと思うわ」


アサシン「なるほどな…内部に何も無いのは虫に食い荒らされたのか」


情報屋「それからアダムの件…ドリアード文明の時代に復活させようとして失敗したみたい」


アサシン「む…では今回が初めてのアダム復活という訳か」


盗賊「その話を聞いて余計不安になるな…アダムってのは大丈夫なんだろうな?」


アサシン「ううむ…植物の体を持ったホムンクルスの様な存在だとは思うのだがな…」


盗賊「インドラの矢をぶっ放されてでも見ろよ?怖く無ぇか?」


アサシン「盗賊…仕方の無い事かもしれんがお前に猜疑心が生まれていると気付かんか?」


盗賊「う…なるほどそういう事な…俺ら人間はどーも魔王の心に染まっちまうなぁ」


アサシン「精霊は常にそういう立場で人間に裏切られ続けてきたのだ…」


情報屋「今の話からするとドリアード文明が滅んだのも人間が絡んでいそうね」


盗賊「かもな?精霊のやる事が気に入らなかった奴が虫を大量発生させた…考えられそうだ」


アサシン「その時代に人間はどうして居たのだろうな?」


情報屋「ホムンクルスの話では温暖な海辺に逃れていた様な事を言っていたわね…人魚伝説とかよ」


盗賊「ぬぁぁぁ昔話はもう止めてよ…もっとワクワクする話をしようぜ」


情報屋「例えば?」


盗賊「ノームが残したお宝とか無いのか?ドワーフより器用だったんだろ?」


情報屋「ほら?これみて?ここに書かれて居るのがノームが使ったと思われる道具ね…」


盗賊「おーーーあるじゃ無ぇか!!」



------------------


------------------


------------------




『昼前』



ガチャリ バタン!! ドタドタ



女海賊「どいたどいたぁ!!ローグ!!お姉ぇを屋根裏の望遠鏡ん所に運んで!」


ローグ「へい…」ヨッコラ ヨッコラ


盗賊「おぉ!!やっと帰って来たか!!」


アサシン「女戦士を…どうした?」


女海賊「ちっと待って…ちょい色々あってさ…商人!!説明しといて!!」ドタドタ


商人「あぁ…分かったよ…女戦士は弓で撃たれて昏睡しているんだ」


アサシン「昏睡…女戦士が昏睡とはな…状態はひどいのか?」


商人「頭を撃ち抜かれたんだ…治療は済んでるけど目を覚まさない」


盗賊「マジかよ…他の奴らは無事なんだな?」


商人「色々あってね」


アサシン「未来はどうした?飛空艇に残って居るのか?」


商人「あぁ剣士と魔女と未来君の3人で別行動だよ…ホムンクルスは今飛空艇の掃除をしてる」


アサシン「ここに戻って来るのだな?」


商人「その予定だけどまだ連絡が付かない…落ち着いて話そうか」


アサシン「まぁ座れ」


商人「剣士達は黒の同胞団の隠れ家で5日過去に戻る為に別行動になったんだ…」


アサシン「過去に戻った…」


商人「その後魔王の後を追っている筈だよ」


アサシン「何だと?お前たちは魔王が魔石にされた事を知らないんだな?」


商人「えぇ!何それ…どういう事?」


アサシン「リリスの子宮から取り出された胎児…これを重力炉で魔石に変えたそうだ」



ドタドタ ドテ



女海賊「ちょちょ…今の話もっかい」


アサシン「魔王は魔石に変えられてもう居ないのだ」


女海賊「なんで?めちゃ話が食い違っちゃってるんだけど…剣士達は魔王を追ってるんだけどさ」


アサシン「それは生きて居た第3皇子が仕組んだ囮なのだ…私達の目をそちらに向ける為にな」


女海賊「第3皇子…やっぱ生きてたんか」


商人「…また歴史の塗り替えで先手打たれちゃってる…そういう感じだね?」


アサシン「結果的にはそうなるのだろうな…こちらの話を先にした方が良さそうだな」


女海賊「話して…」



カクカク シカジカ


------------------


------------------


------------------



女海賊「…第3皇子が生きてるって話は聞いてたんだよ…貴族の中に混じってたのか」


商人「話が全部繋がっちゃったね…僕ら黒の同胞団の隠れ家に行かなくても良かったのか…ハハ」


アサシン「さて…こちらにも聞きたい事が有るのだが…森の上で起こった爆発…アレは何だ?」


女海賊「えーと…ちょい複雑なんだけど…結論から言うとエルフの森にあったクラウドを消す為だったらしいよ」


アサシン「クラウドとは精霊の記憶が保存されているという奴の事だな?」


女海賊「ホムちゃんが言うにはそのクラウドに第3者が入ってて精霊の記憶を何かやってたらしい…」


アサシン「ふむ…」


女海賊「ほんでガーディアン?っていうのが働いて隕石が飛んできてドッカーーーン!!」


アサシン「んむむ…」


商人「補足するよ…隕石では無くて大陸間弾道ミサイルだと言ってた…それが電磁パルスを起こしてクラウドを消滅させた」


アサシン「理解出来んな…要するに精霊の記憶を破壊したのか?」


商人「逆だよ…記憶を守る為にアクセス出来なくしたんだってさ」


アサシン「第3者というのは何者だ?」


商人「分からない…」


アサシン「まぁ良い…後でホムンクルスに聞いてみるとしよう…それで黒の同胞団の隠れ家はどうだったのだ?」


商人「もぬけの空さ…エルフに占領されたんだとばっかり思ってたんだけど…まさか囮だったとはね」


アサシン「エルフが絡む?」


商人「守って居たのはエルフ2人とラットマンリーダが少し…後は雑魚だよ」


アサシン「なるほどな…エルフを引き付ける囮でも有った訳か」


商人「まぁそうとも知らず僕たちは突撃してしまってね…時すでに遅しと知った剣士達が5日前に戻った訳さ」


女海賊「商人言い忘れてるよ…隠れ家で魔女の壺を発見した事を」


商人「そうだったね…壺の封を空けられた事を知ってその後を追ったんだ…だから剣士達はまだ魔王の後を追ってる」


アサシン「ふむ…話が全て通るな」


女海賊「重力炉だっけ?そんな様な器具が一杯散らばってたさ…壊されてたけど」


アサシン「一つだけ疑問が残る…何故エルフがそれ程絡むか?ドラゴンライダーも動いてる…何故だ?」


商人「剣士は森の声がおかしいと言って居たよ」


アサシン「森の声に導かれていると言うのか?」


商人「ほら剣士だって森の声を聞きながら魔王を追ってる…エルフも同じじゃないかな?」


女海賊「あー後さぁ森の虫がエライ事になってるよ?すんごい大量の虫がシャ・バクダ方面に向かってるんだけど…」


アサシン「何ぃ!!」


情報屋「…もしかして」


女海賊「お!?何か知ってるんだ?」


情報屋「ドリアードに向かってる…」



ホムンクルス「や…止めて下さい…離して下さい」



女海賊「ホムちゃんの声!!」


商人「ホムンクルス!!」ダダ


女海賊「ちょいヤバそうな声!!」ダダ




『飛空艇の前』



ザワザワ ザワザワ



時の王「シルフ!!私を忘れたのか?」


ホムンクルス「私は精霊シルフではありません…手を放して下さい」


時の王「私の目に狂いは無い…200年お前を想い続けて居たのだ」


ホムンクルス「私の名はホムコです」


時の王「何故だ?また記憶を失ったのか?何故私の下へ戻らない?」


ホムンクルス「精霊シルフは200年前に亡くなりました」


時の王「いやお前はシルフに間違いない…その髪…その顔…その声を私は忘れて居ない…思い出してくれ」



ダダダ



商人「ホムンクルス!!」


ホムンクルス「商人!!この方はどなたですか?」


女海賊「ああっ!!時の王のおっさん!!」


時の王「お前は…いつか私の屋敷に来た蒼眼の者…シルフをどうした?」


女海賊「あのさぁホムちゃんは精霊シルフじゃないの!どっか連れて行く気?」


時の王「シルフには私が必要なのだ…私が守る」


女海賊「いやだからさぁ…精霊シルフじゃないって!!ホムちゃんはホムちゃん!!分かる?」


時の王「シルフ…答えてくれ…記憶をどうした?」


ホムンクルス「私は逃げたりしませんので手を放して貰ってもよろしいでしょうか?」


時の王「…」スッ


女海賊「あのさぁ…そのくそデッカイ剣とか鎧とかなんか怖い訳よ…分かる?」


時の王「…」ブン! ズン!


女海賊「あぶっ…だから怖いんだって!!そういうのが!!」


時の王「私の顔を見てくれ…思い出さないか?私はルーシェだ」


ホムンクルス「私の名はホムコ…ここに居る皆さんの身の回りのお世話をしている者です」


商人「ホムンクルス…」


時の王「馬鹿な…記憶をどうした?何故すべての記憶を無くしている?」


女海賊「時の王のおっさんさぁ…精霊シルフはもう居ないんだよ」


時の王「いや彼女はシルフだ…お前達…シルフをどうした!?許さんぞ!!」


女海賊「聞き分けの無いおっさんだなぁ…何回も言ってんじゃん!!精霊シルフじゃないの!!」


ホムンクルス「いつか精霊を知る者と出会う日が来る事は覚悟していました…」


時の王「どういう事なのだ?覚悟とは何だ?」


ホムンクルス「私は精霊シルフとは違う道を歩んで居るのです…ご理解ください」」


時の王「違う道だと?…私達の愛を捨てたと言うのか?」


ホムンクルス「捨ててなどいませんよ?初めから私の記憶に精霊の記憶は無いのです」


女海賊「ホムちゃんはさぁ…精霊と瓜二つかも知んないけど別人なんだよ」


時の王「…なんという事か…」ボーゼン


ホムンクルス「ご理解いただけましたか?」


時の王「顔を…よく見せてくれ」ソソ


ホムンクルス「どうぞ…」ニコ


時の王「触っても良いか?…」


ホムンクルス「はい…乱暴しないのでしたら」


時の王「ぅ…ぅぅぅ…シルフ…ぐぅぅぅ…シルフ…」サワワ


ホムンクルス「…」


女海賊「ぁ…」


時の王「済まなかった…っぅ私が嫉妬に狂ったばかりに…お前を…失った…うぐっ」


ホムンクルス「その言葉は精霊シルフ本人に聞かせるべき言葉です」


時の王「お前はシルフでは無いのか?…どうすれば思い出す?どうすれば又会える?」



アサシン「夢幻で会える…精霊は夢幻で今も生きている」



時の王「私は夢を見る事も死ぬことも出来ぬ…シルフを目の前にして諦める事も出来ぬ」ググ


ホムンクルス「私を奪って行かれるつもりですか?」


時の王「そうだ…皆殺しにして奪う選択もある…」


ホムンクルス「私を奪っても精霊シルフには会えませんよ?」


時の王「ぐぬぅ…お前達!!王として命ずる!!私を殺して精霊シルフまで導け…命令だ」


女海賊「命令ってさ…どうやってやんのさ…あんた不死身なんじゃないの?」


時の王「精霊シルフまで導くのであれば手段は問わぬ…」


女海賊「どうすりゃ寝れるのさ…そりゃあんたの問題なんじゃない?」


時の王「黙れ!命令を達するまでシルフは私が預かる」


女海賊「ちょちょ…なんであんたのいう事を私等が聞かなきゃいけない訳?」


時の王「フンッ!」ズボォ


ホムンクルス「女海賊さん…従った方が安全と思われます」


女海賊「ホムちゃんそれで良いの?」


ホムンクルス「こうなる想定はしていましたのでご安心ください」


女海賊「商人!!ホムちゃん連れて行かれちゃうんだけど何か言えよ!!」


商人「ホムンクルス…君の判断を信じる」


ホムンクルス「はい…」ニコ


女海賊「ぬあぁぁぁ!!おい!!時の王のくそオヤジ!!あんた何処に行く気よ!!」


時の王「宛ては無い…この建屋を私が頂く」


女海賊「ぶっ…あのさぁ!!あんたの行動ワケ分かんないんだけど」


商人「ハハ…どういう展開なのか…まぁ寒い雪原を連れまわされるよりは良いじゃないか」


時の王「シルフ…話がしたい…中に入れ」


女海賊「ちょいあんたさぁ!!勝手な事すんなよ!!」


時の王「2人で話をするのだ…お前達は入るな」


女海賊「アサシンどうすんのさコレ!!」


アサシン「従うしかあるまい…」


ホムンクルス「飛空艇のお掃除は終わって居ますのでご一緒しましょう…」


アサシン「クックック見事に占領されたな」


女海賊「屋根裏にお姉ぇとローグ要んだけど…大丈夫かなぁ」




『飛空艇』



女海賊「商人!!ホムちゃん取られちゃったよ?あんたそれで良いの?」


商人「んんん…ホムンクルスを守るのは僕より時の王の方が良いかなと思い始めてる」


女海賊「あんたら出来てたんじゃないの?」


商人「よく考えてごらん?僕はあまり長く生きられない…そして体も小さいし…何より2回もホムンクルスを守れていない」


女海賊「んーーーまぁそうだけどさぁ…」


商人「時の王の方が僕より適任なんだよ…そして精霊への愛は僕よりずっと深い」


女海賊「でもホムちゃんは精霊じゃ無いじゃん」


商人「それはホムンクルス次第さ…僕は彼女の判断を信じるよ」


情報屋「私はこう思うわ?愛が深いなら違いに気が付く」


アサシン「そうだな…私もそう思う…時の王が愛しているのは精霊シルフだ…ホムンクルスでは無い」


女海賊「まぁどっか行かれるより良っかぁ」


商人「でもどこにも行く宛て無いのにどうするつもりだったのかw」


盗賊「だなぁ?必死な奴ってあんなんなるんだなダハハ」


女海賊「必死かぁ…」


盗賊「精霊しか頭に無かったのが良く分かる」


商人「見せ付けられちゃったよ」


アサシン「気になる事を言って居たな?嫉妬に狂った自分を許してくれと」


商人「言ってたね…僕が思うに精霊の子…昔の勇者に対してじゃないかな?」


アサシン「私もそう思う…精霊の愛を一心に受けた勇者に嫉妬したのだな…そして勇者を屠ったのだろう」


盗賊「あーーそれで勇者の像ん所に剣を置いたのか」


アサシン「だろうな?もう剣は持たないつもりだったのでは無いか?」


情報屋「なんか心が痛いわ…」


アサシン「しかしどうやって時の王の呪いを解くのか…」



”ザーーーーえるか?ザザー”


”魔女!!”


”おぉ…剣士ちと止まれい!!ザザザ”


”今何処に居んの?”


”森の外れじゃ…良く分からぬ”


”無事ならまぁ良いや…こっちに向かってんだね?”


”リリスの子宮を見つけたのじゃが肝心の中身が無いのじゃ”


”あーーそれなんだけどさ…魔王はもう居なくなったらしいよ?”


”ザーーーよく聞こえぬ…それよりも虫の大群がそちらに向かって居るのじゃザザザ”


”知ってる!!どうなってんの?”


”用心せい…魔王が迫って居るぞ”


”いや…だから魔王はもう居ないって”


”わらわ達は間に合わぬ故避難せい…虫に撒かれるな?”


”あのさ…”


”ザーーーーザザザ”



女海賊「そうだよ虫だよ虫!!すんごい大量の虫がこっちの方に向かってんだった”


アサシン「行先は恐らく北のドリアード遺跡だろう」


女海賊「なんで落ち着いた顔してんのさ?どうすんの?」


アサシン「用心に越したことは無いのだが…どうする?情報屋…」


情報屋「どうすると言われても空から見ているくらいしか…」


女海賊「飛空艇で行こうか?」


アサシン「ゴーレムが守って居てな…迂闊には近づけん…いつドラゴンが出てくるかも分からん」


盗賊「魔女が言うように民を避難させた方が良いんじゃ無ぇか?折角物資をシャ・バクダ遺跡に運んだんだからよ?」


アサシン「そうだな」


女海賊「虫は無視?アレ?」


情報屋「ドリアードと虫は何かの因縁がありそうなの…私達とは無関係だと思うわ」


アサシン「うむ…巻き込まれない様にだけ用心するべきだ」


女海賊「そっか…ほんじゃどうしよう?時の王のおっさんとかどうする?」


アサシン「素直に遺跡に移動してくれればありがたいのだが言う事聞くだろうか?」


女海賊「ちっと私が言って来るわ」


情報屋「何をするか分からないから気を付けて」




『星の観測所_居室』



ガチャリ バタン



時の王「あーして…こーして…ああでこうで…」


ホムンクルス「女海賊さん…」


時の王「…私とシルフが2人で話すと言った筈だ…勝手に入室するなど無礼だぞ」


女海賊「あのさ…ちょいワケ有って勇者の像の所に行ってもらいたいんだ」


時の王「ほう?その手もあるか…だがシルフ?私を許してくれるか?」


ホムンクルス「何度も言いますが私は精霊シルフではありませんよ?」


女海賊「ホムちゃんさぁ…ちっとそのおっさん連れて勇者の像の所行ってて貰えない?あとで私達も行くから」


ホムンクルス「はい…わかりました」



ローグ「頭ぁ!!起きやしたね?…姉さ~ん!!頭が目ぇ覚ましやした!!」



女戦士「ぅぅぅ誰かに呼ばれた気がしたのだが…」ヨロ


時の王「むぅ?お前はいつぞやの…」


女戦士「…その声は…お前だな?呼んだのは?」ジロリ


女海賊「お姉ぇ!!良かった…目ぇ覚まさなくて心配してたんだよ」


女戦士「記憶がおかしい…私はいつから寝ている?」


女海賊「思い出すのはゆっくりで良いよ」


女戦士「お前の声が耳にこびり付いて離れない…誰だお前は?…なぜ私を揺さぶる?」


時の王「何の話だ?又打たれたいのか?」


女戦士「打たれたい?…そうだ…私はお前に打たれたい…来い!!」


女海賊「ちょい!!お姉ぇ!!やっぱ混乱してるわ…ローグ!お姉ぇを止めて」


ローグ「そーっすね…頭ぁ落ち着いて下せぇ…ちっと混乱してるっす」


女戦士「混乱…私は何をしていた所だ?」ブツブツ


時の王「フン…シルフ!私と共に勇者の下へ行くぞ」


ホムンクルス「はい…お供しますよ?」


時の王「馬の乗り方を覚えて居るか?」


ホムンクルス「いえ?初めて乗ります」


時の王「来い…思い出させてやる」グイ


女戦士「…又私の下を離れて行くのか?」


女海賊「お姉ぇ…まさか」---恋してたんだ---



---お姉ぇが打たれたいのは…懺悔だったのか---



女海賊「お姉ぇ…おいで?座って落ち着いて?」


女戦士「…あぁ…頭を整理する」ドスン


ローグ「頭ぁ…腹減っていやせんか?」


女戦士「喉が渇いて居る…水を頼む」


ローグ「ちっと待ってて下せぇ」



女海賊「時の王のおっさん!ホムちゃん連れて勇者の像ん所行ってて…物資はあとで持って行くから」


時の王「私に構うな…さぁ行くぞシルフ…」


ホムンクルス「私をシルフと呼ぶのは止めてもらってよろしいでしょうか?私の名はホムコです」


時の王「…ホム…コ」


ホムンクルス「はい…ご一緒します」テクテク




『飛空艇』



女海賊「時の王のおっさんを観測所から追い出したよ」


盗賊「そりゃご苦労だったな?」


女海賊「あとお姉ぇが目を覚ました」


商人「おぉ!!良かったね?具合はどう?」


女海賊「ちょっと混乱してるけど頭は大丈夫そう」


アサシン「では早速動くとするか…」


盗賊「どうすんだ?」


アサシン「私は案内人と一緒に一度オアシス砦に戻るが…盗賊と情報屋はここから物資を遺跡に運んで居て欲しい」


情報屋「分かったわ」


女海賊「ほんじゃ私等は先にお姉ぇを遺跡に運んでちっと周りを見回っとく」


アサシン「ゴーレムにはくれぐれも近づくな?突然動き出すからな」


女海賊「おけおけ!遠くから望遠鏡で見るだけにしとくわ」


アサシン「夜までには遺跡に戻って来い」


女海賊「分かってるって」





『星の観測所_屋根裏』



女海賊「お姉ぇ平気?」


ローグ「いやぁぁまだ混乱してるっすねぇ…どうしやしょうね?」


女戦士「…」


商人「女戦士?立てるかい?」


女戦士「あぁ…済まない…」ヨロ


商人「僕が背負ってあげようか?」


女戦士「馬鹿にするな」


商人「良いんだよ…筋肉のトレーニングさ…よっと」


女戦士「お前に私は背負えん」


商人「お…重いな…肩だけにしようか」グイ


ローグ「あっしが反対側支えやす」グイ


女海賊「酔っぱらった後な感じ?」


ローグ「まぁそーっすね」


商人「今からシャ・バクダ遺跡に引っ越しさ…歩ける?」


女戦士「大丈夫だ…お前の介添えは要らん」


商人「平気さ…時の王にホムンクルス取られちゃったから何かしないと落ち着かないんだよ」


女戦士「…そうか…悪いな」ヨロ


商人「記憶はどう?」


女戦士「いつから寝て居るのか思い出せん」


商人「矢に撃たれた事も?」


女戦士「矢に?」


商人「君は頭を撃たれたんだよ」


女戦士「…そうだったのか…それで記憶がおかしいのか」


商人「どうおかしいの?」


女戦士「夢か現実か見分けが付かない…」


商人「夢幻を見たんだね?」


女戦士「はっきりと思い出せないのだ」


商人「夢幻はそういう感じだよ…ずっと昔…生まれるよりもずっと前を思い出す感じで鮮明に見える事がある」


女戦士「まぁ良い…不遇な男に恋をした…他愛もない夢だ」


女海賊「ふーん…やっぱ時の王なん?」


女戦士「顔は思い出せん…声が似ているだけだ…呼ばれた様な気がして気付いたらこの有様だ」


女海賊「まいっか…お姉ぇの荷物持って行くよ?」




『シャ・バクダ遺跡』



女海賊「なんか久しぶりに来たけど…何も無いね」


ローグ「勇者の像の前にキャンプ跡がありやすね…まだ木材残ってるっすよ」


女海賊「外より暖かいけどこんな所で焚火したらヤバくない?空気無くなっちゃうじゃない?」


商人「まぁ広いから大丈夫だとは思うけど…人が一杯来るなら気を付けた方が良いかもね」


女海賊「ウラン結晶が一個余ってたな…あれを暖房代わりにしよう」


ローグ「良いっすねぇ…木を使わんで済むんでスペースも自由度高くなりやすね」


女海賊「明かりはランタンで良いとして…やっぱ敷物無いと横になるの嫌だね」


ローグ「飛空艇に毛皮が余ってるんで持って来やす」


女海賊「空いてる樽も少し持って来といて」


ローグ「へい…」タッタッタ


女戦士「私はここに避難する理由を知らんのだが…どういう事なのだ?」


女海賊「虫の大群が森から迫ってるのさ…被害出そうだから避難してんの」


女戦士「冬なのにか?」


女海賊「ホムちゃんが言うには虫は寒さに強いのも沢山居るんだって…てか飛空艇から見たら超ヤバイ数いるよ?」


女戦士「そうか…」


女海賊「お姉ぇは心配しないでもうちょい休んでて?」


商人「そうだね…記憶がしっかり繋がるまでは安静が良いと思う」


女戦士「私よりお前の方がしんどそうだがな?」


商人「僕は良いんだ…君は沢山子供を産んで未来を作らなきゃいけない」


女海賊「商人どしたん?急にそんなん言い出してキモイんだけど」


商人「ごめんごめん…今までの事を考え直したらドワーフは大事にしなきゃいけないと思ってさ」


女海賊「お!?分かってんじゃん…そうよエルフより優れてんのよ」


ローグ「姉さ~ん!持ってきやしたぜ~~」ヨッコラ ヨッコラ


女海賊「ウラン結晶は?」


ローグ「樽の中っす…これが一番重いでやんす」ヨッコラ セット


女海賊「商人!あんたウラン結晶の温め方知ってんよね?」


商人「わかるよ」


女海賊「これあんたに任せる!!私とローグでちっと見回りしてくるからお姉ぇとここで待ってて」


商人「任せて」


女海賊「ほんじゃちっと行って来るからお姉ぇは安静にしてて」


女戦士「フン…」


商人「大丈夫だよ…僕が見ておくから」




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ガサゴソ ドサリ


盗賊「おぉぉぉ…暖けぇ…」スリスリ


商人「物資持ってきたんだね?」


盗賊「まぁな?時の王は何処行ったんだ?」


商人「まだ来ていないんだよ」


盗賊「俺らより先に突っ走ってったんだけどな」


商人「あぁぁぁホムンクルス大丈夫かなぁ…寒いよね?」


盗賊「時の王がホムンクルスを寒さに晒し続けるとは思えんが…」


情報屋「きっと大丈夫よ…あの人は不器用なだけで悪い人では無さそう」


盗賊「女海賊は飛んでったんか?」


商人「見回ってくるってさ」


盗賊「飛空艇で荷物運んだほうが早いのによ…あのアバズレ」


情報屋「どうする?もう一回戻る?」


盗賊「しょうが無ぇだろ…荷物降ろしたらもう一往復だ」


情報屋「ふぅ…商人ここに降ろした荷物片しておいてもらえる?」


商人「分かったよ」


情報屋「重くて運べない分は残しておいて良いわ」


商人「うん…筋肉のトレーニングだと思って頑張るよ」


盗賊「じゃぁ行くか!…そろそろ避難民もちらちら来るだろうから適当に案内してやってくれ」


商人「分かった…気を付けて」




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ドヤドヤ ドヤドヤ



アサシン「ほう?中々良い避難所になっているでは無いか?」


商人「なんか一気に人が増えた」


アサシン「オアシス砦の方から人を移動させているのだ…フィン・イッシュからの気球もこちらで降りる手筈だ」


商人「じゃぁ食料も足りそうだね」


アサシン「十分では無いがしばらくは持つ」


商人「なんかこの感じはキ・カイの地下みたいだね」


アサシン「うむ…ところで時の王とホムンクルスはどうした?」


商人「さっきここに来たよ…時の王はホムンクルスを一人で独占さ」


アサシン「困ったものだな…して姿が見えん様だが?」


商人「遺跡の下の方に居りて行ったよ…カタコンベが有った所」


アサシン「立ち入り禁止だったのだが…」


商人「もう他の人も居りて行ってる…立ち入り禁止なんか意味無いよ」


アサシン「まぁ良いか…」


盗賊「ぬぉ!!アサシン来てたのか!!ちっと荷物運ぶの手伝ってくれ」


アサシン「あぁ物資運搬ご苦労だった…人手を回すから少し休め」


盗賊「ふぅぅ助かったぁぁ…手が寒くてよぅ」スリスリ


商人「ウラン結晶に水を垂らすかい?」


盗賊「ちっと頼む…手が動かん…情報屋!!ここで温まれるぞ!!」


情報屋「やっと休めるわね…ハァハァ」


商人「外の様子は?」


アサシン「今の所変わりは無い…静かな物だ」


商人「そうか…何か起こるのはもう少し先か」


アサシン「どうした?何か勘でも働いて居るのか?」


商人「うーん…確証は無いんだけどさ…ホムンクルスが言ってた言葉がどうも気になってね」


アサシン「行って見ろ」


商人「何処で戦いが起きて居るのか?ってね」


アサシン「私はその話を知らない…続けろ」


商人「この場所ってさ…200年前に精霊が動かなくなった場所だよね?その時夢幻を作ったなら夢幻はここにありそうだなってさ」


アサシン「確かにそうだな…」


商人「200年前の戦いは本当はずっと続いてて僕たちは夢幻に導かれてここに集まってる…そんな気はしない?」


アサシン「ふむ…」



僕達が知ってる200年前のシャ・バクダ大破壊


そこで勇者が魔王を封じた代わりに精霊が夢幻に閉じ込められた


これじゃ話が簡単すぎるよね…


本当はもっとそこに至る複雑な経緯があって隕石を落としてすべて封印した


今まで分かってきたのはリリスを封印した件と


精霊のオーブを狭間から遠ざけて魔王が近寄れない様にした事


そう…この時点で魔王がまた来る事を予見しているんだ


さて?じゃぁ滅ぼされたシャ・バクダは一体どうして完全に破壊されたの?


シャ・バクダには誰が居たの?何があったの?どうして滅ぼされたの?


大破壊に至る経緯がほとんど語られていない…変だよね?



情報屋「商人?あなたは学者向きね…あなたの言う通りよ」


商人「何か知ってる?」


情報屋「シャ・バクダはかつて広大な森だったのにどうして火の国シャ・バクダと言われて居たのか?」


商人「そうだね…砂漠になったのは滅んだ後だ…おかしいね」


情報屋「シャ・バクダにまつわる書物もほとんど消失しているのよ」


アサシン「まだ私達の知らない物が埋まっていると言うか?」


商人「精霊の御所を全部探索した訳じゃ無いし残って居る可能性は有ると思う」


アサシン「…という事は時の王がホムンクルスを下に連れて行ったのは…」


商人「ビンゴ!!…でもね?僕はホムンクルスを信じる事にしてる」


アサシン「泳がせているのか」


商人「そういう言い方はイヤらしいけど…結果的にそうかな」


情報屋「もし何かがあるとして…あなたはどんな想定でいるの?」



僕はね…まさに夢幻がそこに有ると思う


そして火の国と呼ばれた秘密がある


それはきっと世界を滅ぼすだけの力を持った何かだよ



商人「森の上空で爆発したミサイルだっけ?の様な物さ…多分それが火の国の由来だよ」


アサシン「ふうむミサイル…そういえば先日隕石が森へ落ちるのを見たな」


商人「アレね…僕も遠くから見たよ…魔女が使ったのかなとか思ってた」


アサシン「あれで森を消失させるのは到底無理だな」


商人「ほらね?絶対何か残ってしまうと思う…よほど大きな隕石じゃないと森の消失は出来ない」


アサシン「シャ・バクダ大破壊の本当の原因はそのミサイルというやつなのか?」


商人「もしもアレが上空じゃなくて地上に落ちてたらどうなって居たかな?」


情報屋「考えたく無いわ…」


盗賊「そんなんが有ったとしてよ?とりあえずここに居りゃ安全じゃ無ぇか?前も耐えたんだろ?」


商人「…だと良いけどね」


アサシン「ひとまずは虫の動向だな…ドリアードがどうなるのかも予測が付かん」


盗賊「アダムも謎のまんまだしなw」





『森の外れ』



シュタタ シュタタ



魔女「剣士…ちと休まんか?わらわはもう魔力が尽きてしもうた…腰も痛いのじゃ」


剣士「ごめん…揺らし過ぎたね」


魔女「ふぅ…」ヨロ


子供「魔女?どんぐり居る?」


魔女「済まんのぉ…」グッタリ


剣士「もうエリクサーを切らしてしまった…」


魔女「イカンな…封印の壺を持って居るとどうやら黒死病が付きまとうのぅ」


剣士「魔女も黒死病に?」


魔女「まだ動けるが…体が小さいで病の進行が早いのかもわからん…魔力の回復が遅いのもそのせいじゃろう」


剣士「こんな事なら賢者の石を借りておくんだった」


子供「パパ?あとどれくらいで着くの?」


剣士「森の中を走って2日くらいか…森を出て雪の中を走るとなると…」


魔女「シャ・バクダの少し南にハズレ町という所があったじゃろう?そこまで飛空艇で迎えに来て貰うのはどうじゃ?」


剣士「それなら丁度ここから森を出れば近い筈…ただこんなに汚れた体でまともに町に入れてもらえるのだろうか…」


魔女「ううむ…どうみても浮浪者じゃな?」


剣士「魔女も酷いよ…全身魔物の返り血でベトベトだ」


魔女「主が暴れまくるからなのじゃが…」



バサバサバサ カサカサ



子供「パパ…虫たちが…」


魔女「ここもゆっくり出来ん様じゃな…しかし虫は平気で狭間に入ってくるのぅ」


剣士「一回狭間を出て様子を見てみようか?」


魔女「そうじゃな…どの程度虫が増えて居るのかも見てみたい」


剣士「魔女…乗って」


魔女「あまり揺らすな?」ノソリ


剣士「未来…一回リリースする…行くぞ!リリース」スゥ


子供「リリース」スゥ



ゾワワワワワ ズモモモモモ



魔女「下じゃ!!…虫は地面の下を走っとる…ようさん居るのぅ」


剣士「未来!!森の外だ!!走れ!!」シュタタ


子供「うん!!」シュタタ


剣士「思っていたより多い…空より地面を這ってる方が多いのか」


魔女「これほどの数を始めて見たのじゃが虫使いの魔法も捨てた物では無さそうじゃ」


剣士「そんな魔法も?」


魔女「わらわは学んで居らんがそういう魔術も有るのじゃぞ?」


子供「虫使いかぁ…」


剣士「魔女!!後ろ見て!!なにか感じる」


魔女「ナヌ?」


剣士「未来!!全速力!!」ダッシュ


子供「…」シュタタ


魔女「ななな…なんじゃあの黒い影は…もしや…ダイダラボッチか?」


剣士「それは?」


魔女「神話の魔物じゃ…実在するとは思わんかったのじゃが…虫が集まってあの様な姿になるのじゃな?」


剣士「大きすぎる…山より大きいって…」


魔女「実態が虫じゃで隕石では倒せそうに無いのぅ…ボルケーノでも焼き切らん…魔法では倒せぬ」


剣士「急がないとシャ・バクダが危ない」


魔女「女海賊に連絡する…」




『ハズレ町』



ガヤガヤ ヒソヒソ


森の方を見てみろ…なんだアレは?


まずいな早い所セントラルに引き返した方が良さそうだ


キャァァァ!!虫の魔物よ!!誰かぁ!!誰かぁぁぁ


ガヤガヤ ガヤガヤ



衛兵「お前達!!何処から来た?」


魔女「森から逃げて来たのじゃ…水は無いか?」


衛兵「森だと?森に住んで居たのか?」


剣士「あ…あぁ…まぁそんな所だよ」


衛兵「お前がこの子供たちの保護者だな?…ウルフも居るのか」タジ


剣士「ハハ…まぁそうなるかな?」


子供「パパ大丈夫?」


衛兵「ううむ…まぁ良い…しかし何故その様に汚れている?返り血だな?…これは」


魔女「虫の魔物がようさん居ったのじゃ…汚れを落としたいで水が欲しい…雪ではなかなか落ちんでのぅ」


衛兵「兵舎に行けば水ぐらいは貰えるがしかし…ひどい匂いだな」


剣士「虫の毒を浴びているかもしれない…早く落としたい」


衛兵「…仕方あるまい…付いて来い」スタ




『兵舎』



ジャブジャブ バシャー



子供「ぅぅぅさぶい…」ガチガチ


魔女「大人しゅうしておれ」ゴシゴシ


衛兵「衣類は焚火で乾かすのだ…しかしお前達…全員黒死病に掛かって居るな」


剣士「薬は無いのかな?」


衛兵「ここには無い…他の者に移してしまうから町に入るのは禁止とする」


子供「ええええ!?」


魔女「黒死病は移らん筈じゃが?」


衛兵「子供が分かった口を聞くな!!」


魔女「まぁ良い…腹が減ったのじゃが剣士…どうする?」


剣士「どんぐりとキノコなら有るよ」


魔女「わらわは主らと違うのじゃ…何日もどんぐりだけでは力が出ぬ」


衛兵「森ではどんぐりだけで凌いできたのか?」


魔女「ちと何か食わせよ」


衛兵「分かった分かった…何か持って来てやるから大人しくしているんだ」タッタッタ


魔女「ふぅぅぅ助かったわい」


剣士「魔女?飛空艇はいつ迎えに来る?」


魔女「半日じゃと言うて居ったな…明け方になりそうじゃな」


剣士「そうか…でも予定より早く合流出来そうだ」


子供「ママ大丈夫かなぁ…イザと言う時に方向音痴なんだよなぁ…」


魔女「ここは千里眼も貝殻も使えるで心配せんでも良いぞ?」




--------------



タッタッタ


衛兵「食事を持ってきたぞ…パンとチーズ…それから豚の骨だ…ウルフに与えてやるのだ」


魔女「おぉ!!主は気が利くのぅ…ウルフにも気を使えるのじゃな」


子供「おじちゃんナーイス!!」


衛兵「生意気な口を利く子供達だ…ほら食え」


子供「どんぐり居る?」


衛兵「フフ…しかし良く森から生きてここまで帰って来られたな?」


剣士「まぁ…ウルフが居てくれたおかげもある」


衛兵「そうか…俺にも生きて居ればこれくらいの子供が居たのだが…」


魔女「そうじゃったのか…気の毒にのぅ」モグモグ


衛兵「さて!俺は巡回に戻るから今晩はここに居るのだ…牢屋もなかなか快適だぞ?」


剣士「ハハ風が凌げるだけ助かったよ…ありがとう」


衛兵「じゃぁ頑張って生きろ?」ノシ



タッタッタ



魔女「セントラルの衛兵にしてはなかなか良い衛兵じゃったな?」


剣士「そうだね…宿が無いのを見越して牢屋に案内するなんて気が利く」


魔女「何日振りの睡眠じゃろうか…なかなかキツイ修行じゃった」


子供「魔女も修行していたの?」


魔女「主らには分からんかもしれんが高度な魔法の連続だったのじゃぞ?」


剣士「そうだね…隕石魔法は時空と重力の複合だったね…僕も勉強になったよ」


魔女「変性が掛けられんかった故威力が無かったがゴーレムには十分じゃったな」


剣士「変性?」


魔女「うむ…落ちて来る隕石を質量の高い金属に変えるのじゃ…それが出来んかった」


剣士「…なるほど」


魔女「師匠が落とした隕石はアダマンタイトに変性させておったな…威力はわらわの比では無かった筈」


子供「一番強い隕石って何?」


魔女「わらわが知って居る金属では金が一番かのぅ…他にもあると思うがまだ研究しておらぬ」


剣士「金!?なんか勿体ないね」


魔女「魔力がどれほど必要なのか想像も出来ん…わらわには無理じゃ…」


剣士「じゃぁアダマンタイトに変性させるのも相当な魔力が?」


魔女「うむ…師匠がどうやって変性させたのか分からぬ…わらわはまだまだ修行が足りんのじゃ」ウトウト


剣士「魔女眠そうだね」


魔女「ちと寝る…休ませておくれ」スヤ


子供「僕も…」スヤ


剣士「ふぅ…」



ピチョン ピチョン



こんな閉塞した地下でも色々感じられる様になった


水の落ちる音…流れて行く方向


教えてくれたのは女エルフだったな


この町で出会った


そうだ!もう一度会わなければいけない…忘れていた




『翌朝』



剣士「魔女?起きて?」


魔女「…」


剣士「だめか…石化が進行してる」


子供「ううん…」パチ


剣士「未来は石化していないか?」


子供「パパどうしたの?」


剣士「魔女が石化して寝たまんまだ…未来は大丈夫か?」


子供「うん…まだ動ける」


剣士「よし!ママがもうすぐ来る…行こうか」


子供「おっけ!!」


剣士「千里眼!…」


子供「どう?」


剣士「分かった…ローグと2人だ…すこし離れた養羊場に飛空艇を隠してる」


子供「羊の匂いわかるよ」


剣士「行こう…」シュタ


子供「うん…」シュタタ


子ウルフ「ばう…」スタタ




『養羊場』



ローグ「あっしが宿屋行って探してきや…あああ!!走って来やした」


女海賊「お!?」


ローグ「探す手間省けやしたね?」


女海賊「良かったぁぁ!!剣士こっち!こっち!」



シュタタ シュタタ



女海賊「あらら?魔女はどうしたん?」


剣士「黒死病で石化したんだ…エリクサーある?」


女海賊「あるある!!樽で2杯分あるよ」


子供「ママーーー」ピョン


女海賊「未来!心配してたんだよ…怪我とかしてない?」


子供「うん!!」


ローグ「姉さん!合流出来たんで早速戻りやしょう…ここは虫が多くて長居はマズイっすね」


女海賊「おけおけ!!とりあえず乗って!!」


剣士「魔女を樽に入れるよ?これどっち?」


女海賊「どっちでも良い」


剣士「ホムンクルスは?」


女海賊「ホムちゃんはもうそこに入って無い」


剣士「…そうか目を覚ましたんだね」


女海賊「うん…詳しい話は後!!飛ぶよ!!」グイ



フワフワ



女海賊「ぬあぁぁ虫が一杯くっ付いちゃってる…」


ローグ「ヤバイっすね…帆と球皮に穴空かなきゃ良いんすが…」


子供「パパ?エリクサーで虫よけ出来たよね?」


剣士「エリクサーちょっと使うよ?」


女海賊「どうする気?」


剣士「ウラン結晶に垂らす…蒸気出るから伏せて置いて」


女海賊「おぉ!!あんた賢いじゃん!!」


剣士「垂らすよ?」シュワシュワシュワ モクモク


子供「熱っ熱っ…」


ローグ「こら良いっすね…黒死病吹っ飛びそうでやんす」


女海賊「良い感じ良い感じ!!虫がどんどん落ちてく」


剣士「ふぅぅぅ暖かいし…すごく疲れが取れる」


女海賊「よっし!!風に乗った…高度上げる」グイ



シュゴーーーーー バサバサ




『飛空艇』



魔女「ぅぅん…わらわは又石化しておったんか?…どれぐらい石化しとった?」


剣士「まだ早朝だよ…長くは石化してない」


魔女「どうやらこの体は石化に弱いのじゃな…気付かんかったわい」


剣士「もう動ける?」


魔女「まだ強張っとるな」


ローグ「シャ・バクダ遺跡まで半日掛かりやすんで休んでいて下せぇ」


魔女「うむ…しかし飛空艇は本真に快適じゃな…温い上に移動がラクじゃ」


ローグ「ウラン結晶にエリクサーを垂らす新技のお陰っすね」


魔女「ほう?それでラクになったんか…なるほどな…エリクサーは飲むより吸うた方が良いのじゃろうな」


剣士「呼吸がすごくラクだ…やっぱり森で少し毒を貰ってたんだね」


魔女「うむ…」


女海賊「森で毒?やっぱ虫がヤバイ感じ?」


魔女「そうじゃな…何故北を目指して居るのか分からんのじゃが…」


女海賊「あーーーそれなんだけどさ…メチャ話長くなるけど聞く?」


魔女「聞かせよ」


女海賊「ローグ!説明したげて?どうも私は説明が下手っぽいからさぁ」


ローグ「へい…実はですねぇ…ごにょごにょ」



カクカク シカジカ


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ローグ「…という訳でもう魔王は居らんらしいのですわ」


魔女「言葉を失うのじゃが剣士…どう思う?森の声は何と言うて居るのじゃ?」


剣士「森の声は北へ向かえと…そして遺物を殺せと言ってる」


女海賊「ん?どゆ事?その声を聞いてエルフとかが戦ってんの?」


魔女「恐らくそうじゃ…虫も獣も森の生き物は全部そうじゃな」


女海賊「て事はやっぱ情報屋の言う通りドリアード遺跡を目指してるっぽいね」


ローグ「魔女さんはドリアードとかアダム復活とか何か知らんのですかね?」


魔女「ドリアードは植物の魔物だという事しか知らんのぅ…精霊樹と同じ類じゃな」


剣士「魔女…ダークエルフはドリアード化して居たね」


魔女「そうじゃな…あれがドリアードじゃ…妖精の類が植物と同化した状態を指す」


女海賊「情報屋の話だとめっちゃ巨大なドリアードだって言ってんだけどさ…地面の中に埋まってるらしい」


魔女「その様な物が有るのは分かったがアダム復活と何の関係があるのじゃろう?」


女海賊「ドリアードん中に謎の機械が沢山あるんだって…それが動き出す感じ?」


魔女「時の王はアダムは最初の人工知能じゃと言うて居ったな…それをドリアード化して居るのじゃろうか?」


剣士「精霊の伴侶…それもドリアード化してた」


魔女「ではドリアードの中に人工知能アダムが管理する社会が出来て居るのかも知れんのぅ」


女海賊「なんで森の声がそれを攻撃しようとすんだろうね?やっぱ魔石にされた魔王が関係しそうだよね」


剣士「ひとつおかしい事がある」


魔女「何じゃ?」


剣士「森の声があの爆発の前と後じゃ違うんだ」


魔女「なぬ?」


女海賊「ああ!!ホムちゃんが倒れる前に言ってた…クラウドに第3者が接続してるって…」


魔女「誰か分からんのか?」


女海賊「もしかしてさ…エルフの森って誰かに乗っ取られてない?その第3者に」


剣士「魔王か…」


女海賊「森の下って光とか届きそうにないじゃん?追いつめられた魔王が潜むのに良さそうじゃん?」


魔女「エルフ達が魔王に下ったとな?」


女海賊「本人達は気付いて無いんだよ…森の声に従ってる…」


ローグ「魔王を魔石にしたってのは何だったんすかね?」


女海賊「そんなん意味無いんだって…どっからでも湧いてくんだよ魔王は」


魔女「女海賊のいう事に一理あるな…魔王は幻惑を得意とするのじゃ…まやかしじゃな」


剣士「魔女…僕達はどうする?」


魔女「アダムがどう判断するかなのじゃが…やはり今は動けぬ…ダイダラボッチをどうするのかわらわには分からん」


女海賊「ダイダラボッチ?なんそれ?」


魔女「神話の魔物じゃ…虫や獣が群をなして山の様な巨人になっておる…それが北へ移動しとるのじゃ」


剣士「…」



そうか…人間の様に簡単にエルフを幻惑出来ないから森の声を利用したのか


同時に森の生き物すべてを操れる


そういえば何処かで声を聞いた


贄が足りぬ…あの声だ





『シャ・バクダ遺跡』



メラメラ パチ


燃やせ燃やせぇ!!


あっちにも居るぞ



女海賊「お姉ぇ!!動いて大丈夫?」


女戦士「休んでなぞ要られん様だ…遺跡の中にまで虫が入って来る」


魔女「女戦士は無事だった様じゃな?」


女戦士「さぁ…中に入れ…アサシン達が待って居るぞ」


女海賊「お姉ぇは?」


女戦士「私は兵を率いて入り口を守る…お前達は中に入れ…ん?ローグ…お前は私と一緒に来い」


ローグ「あっしは頭に一生付いていきますぜ?」ヨット


女海賊「剣士?ほんじゃエリクサーの樽1個運ぶの手伝って」


剣士「あぁ…わかった」


女海賊「ローグ!!エリクサーで虫追い払う方法分かるよね?もう一個の樽を上手く使って」


ローグ「へい…わかりやした」


女海賊「ほんじゃ剣士!!行こっか…そっち持って」ヨッコラ




『勇者の像』



ホムンクルス「…はい…ようやくご納得された様です」


商人「良かったよ…君が居なくなると僕困るんだ」


ホムンクルス「私の所有者は商人ですよ?危うく時の王に拉致されるところでしたので気を付けてください」


商人「ごめんごめん…」


アサシン「それで時の王はどうしてる?」


ホムンクルス「下へ降りる階段の側壁に隠し通路がありまして…その奥にいらっしゃいます」


アサシン「何があるのだ?」


ホムンクルス「何かの通信端末と一冊の書物が置かれていました…時の王と精霊だけが知る場所だった様です」


情報屋「書物!?」


ホムンクルス「時の王はそれが冒険の書だと言って居ましたが中身は白紙でした…」


ホムンクルス「その書物はオーブの様な記憶媒体なのですが私はアクセス出来ませんでした」


商人「それだ!!きっとそれが夢幻の正体だよ」


情報屋「私が見て来ても良い?」


ホムンクルス「どうぞ…時の王が泣き崩れているのが気にならないのでしたら」


情報屋「う…少し間を置いた方がよさそうね」


アサシン「時の王の動向も気になる…行って見て来るんだ」


情報屋「分かったわ…障らない様に見て来る」タッタッタ


商人「それで君は時の王から何か聞けたのかい?」


ホムンクルス「何度も思い出話を聞かされました…私は当然何も知りませんよね?」


商人「ハハそうだろうね」


ホムンクルス「ですから精霊の記憶はすべてオーブになって保管されている事をご説明しました」



ほとんどはご存じの様でしたが


精霊の魂がそこにあるという事は分かっていらっしゃらない様でした


記憶の中に魂がある…それをやっとご理解頂けたのです


商人が言った言葉をそのままお伝えしただけなのですが


時の王はそれを聞いて冒険の書を抱いたまま膝を落としました



商人「そこに精霊が居ると悟った…訳か…」


女海賊「今の話聞いちゃったよ!!」ヨッコラ ヨッコラ ドスン


商人「女海賊!!帰ってきたんだ…剣士も…あ!!魔女も」


子供「僕も居るよー!!ホム姉ちゃん起きたんだね?」


ホムンクルス「皆さんおかえりなさい」


アサシン「よし…全員合流できたな」


魔女「冒険の書なる物はわらわも気になるのぅ…始めて聞いた名じゃ」


ホムンクルス「読む人によって内容が変わると時の王はおっしゃっていました…私は白紙でしたけれど」


剣士「見に行って見ようか?」


魔女「そうじゃな」


ホムンクルス「ご案内しましょうか?」


魔女「うむ…」




『下へ続く階段』



ガヤガヤ ザワザワ


ごめんよーちっと通るね



ドンッ


浮浪者「…」


女海賊「あーごめんごめん…あのさぁ!あんた」


浮浪者「…」ズリズリ


女海賊「下行っても何にも無いよ?危ないから広間に居な?」


浮浪者「…」ズリズリ


女海賊「んんん…まぁいっか気を付けてね」


ホムンクルス「こちらです…」


女海賊「ありゃ?こんな所に通路あったんだ?」


ホムンクルス「特殊な仕掛けが有った様です」


盗賊「マジか?俺はこっちのが気になるな…ちっと調べてから行くわ」


女海賊「他にもいろいろあるかもね…シャ・バクダの財宝どっさりあったりして」


盗賊「それだソレソレ」


アサシン「悪いがすべて私の物なのだがな…」


盗賊「まぁ堅い事言うな」


ホムンクルス「この通路の先です…足元にお気を付けください」




『隠し部屋』



アサシン「ふむ…200年経ったにしては保存状態は良さそうだな」


女海賊「織物はもうダメかな…壺と装飾品は価値出そうだね」



スタスタ



時の王「お前達…何をしに来た…この書は渡さんぞ」


魔女「それが冒険の書じゃな?」


時の王「むぅ…我が末裔か…お前にくれてやる…この神秘の肉体を」


魔女「そんな物要らぬ…わらわはその冒険の書が気になって居るのじゃが見せてはもらえぬか?」


時の王「取引をしようでは無いか…私をシルフの魂へ導け…さすれば書は渡してやろう」


女海賊「ちっと中身見るだけだよ…ケチケチしなくても良いじゃん?」


時の王「これはシルフが残した最後の記憶なのだ…この中にシルフの魂が宿って居る…誰にでも見せる物では無い」


商人「それが夢幻?…」


時の王「お前達がそう呼んで居るだけだろう…私は夢幻がどのような物なのか知らぬ」


商人「夢幻をどうやって僕たちの夢と繋いでいるんだ?」


情報屋「あそこの台座…アレが木の根と癒着しているわ」


ホムンクルス「おそらく通信端末だと思われます」


情報屋「キ・カイのサーバ石にそっくりだわ」


魔女「時の王や…いや我が先祖と呼んだ方が良いのかのぅ…リリスの生き血で得た不老不死を捨てたいと申すか?」


時の王「私はシルフの下へ行けるのならばもう何も要らぬ」


魔女「剣士…」チラ


剣士「…」コクリ


魔女「実はのぅ…発見した事が有ってじゃな…インドラの光で生命の再生が止まる様じゃ」


時の王「インドラの矢を私に落とすと言うか?」


魔女「それでも良いじゃろうが…」


剣士「…」スラーン ピカー


魔女「心の臓を止められるのじゃ」


時の王「ヤレ…そして私はシルフの下へ行く」


女海賊「ちょちょちょ…止めてよそういうの」


時の王「シルフには私が必要なのだ…私が守らなければならない」


アサシン「皆聞いたな?これが人間の生き方だ」


女海賊「え…」


アサシン「ハーフエルフでもハーフドワーフでも無い人間がどうやって未来を創って来たか…それは愛を貫いて時代を創るのだ」


時の王「フフ小僧…そうやって何人もの勇者が犠牲になった…それでも魔王はまた来る」



シルフは言った


人間が愛おしい


しかし魔王を滅するには仕方の無い選択もある


そうやって何千年も戦い続けて来たのだ


それでも歩み続ける人間の行く道


きっとその向こうに未来があると…シルフと夢を語った事が有る


だが私はシルフを失って同時に生きる目的も失った


私の役目はその時終わって居たのだ…


だが今は違う…シルフが夢幻で生きて居ると知った以上


私はそこへ行かなければならない…シルフを救えるのは私しか居ない



時の王「来い!!私はシルフを救いに行く…シルフが愛したこの世界はお前達に託そう」


剣士「…」ゴクリ


時の王「躊躇しているか?時の勇者よ…借りは返そう…刺せ」


剣士「…」クワッ



ズン ズブズブ



時の王「ごふっ…こ…これが死…なのか?」



ザワザワ シュルリ



女海賊「え!?木の根からツタが…」


魔女「精霊樹じゃ…時の王の魂を掴まえる気じゃ」


時の王「シルフ!!何処だ…シル…フ」サラサラ


魔女「おおおお!!灰になっていきよる…」



サラサラ サラサラ 


カラーーン


サラサラ サラサラ



女海賊「え?指輪?…これって祈りの指輪…」


魔女「主が預かっておけ…冒険の書はわらわが預かる」バサ



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時代の節目を見た


旧時代が終わって


新しい精霊樹の下


新時代が始まった気がする



なんだろうこの喪失感


時の王は精霊シルフの下へ行けたのだろうか


僕が選択したこの次元は


正しい方向に進むのだろうか?



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『勇者の像』



女海賊「あのさ?時の王のおっさんちっと気になる事言ってたよね?」


アサシン「んん?」


女海賊「剣士に向かって時の勇者だとか…借りは返すとか…」


アサシン「確かに…」


女海賊「何か知ってる?」


アサシン「時の王の話によると何度も勇者を葬って来た様だが?」


女海賊「どゆ事?」


アサシン「時の王は不老不死だったとは言え人間だ…およそ魔王に操られ裏切る立場だったのでは無いか?」


女海賊「ほーん…なんか気になるな…」


アサシン「まぁ時の王の時代の古文書でもあれば何か記されて居るかもしれんな」



ぅぅぅ…ぅぅぅ



魔女「ぅっ…」ポロポロ


女海賊「ちょい魔女さぁ…私にも読ませてよ…」


魔女「この冒険の書は読んでも読んでも新しいページが増えるのじゃ…ひっく」


女海賊「そんな悲しい物語なん?気になるじゃん」


魔女「ちと休憩じゃ…心に穴が開きそうじゃ」


女海賊「どれどれ…ふむふむ」ヨミヨミ


魔女「恐らくわらわが読んだ内容とは違う事が書いて居るじゃろう…」


アサシン「私も読んでみたいものだ…しかしどう考察する?」


魔女「これは精霊の記憶その物じゃなかろうか?オーブはわらわ達では覗けぬが…書物なら読める」


アサシン「なるほど」


魔女「今まで手にしたどのアイテムよりも貴重な書物じゃ…絶対に失うてはならん」


アサシン「では魔女が持って置くのが今の所一番良さそうだ」



ドドドドド ドドーーン



商人「あ…地響き」スック


ローグ「わたたた…ちっと通りやすぜ?てーへんだてーへんだ!!」


アサシン「ローグ!外で何か起こって居るのか?」


ローグ「始まりやしたぜ?例のドリアード遺跡の方向で黒い影が崩れやした」


アサシン「見に行く…望遠鏡で見えそうか?」


ローグ「頭がもう見てるっす…剣士さんがさっき精霊樹と話すと言って出て行ったんすが心配っすね」


女海賊「え!?もしかして未来も?」キョロ


ローグ「知らんかったんすか?」


女海賊「マジか…居ないと思ったら勝手に外に…」


アサシン「まぁ良い…行くぞ」タッタッタ




『遺跡の外』



ザワザワ ザワザワ


森の方角…あれをみろ!何が起ころうとしてるんだ?


あの影は虫の塊か?



アサシン「女戦士!望遠鏡で見えるか?」


女戦士「ダメだ…はっきりとは見えん…見て見るか?」


アサシン「済まん…」


魔女「ダイダラボッチがどう戦うのじゃろうな?」


アサシン「あれをダイダラボッチと言うのか…」


魔女「恐らくな…森が怒って居る様じゃ…鎮まるまで何も出来んのぅ」



タッタッタ



商人「大変だ!!…はぁはぁ…ホムンクルスが!!」


アサシン「どうした?」


商人「ホムンクルスが緊急アラートを受信した…皆来て!!」


女海賊「ええ!!又?」



ピピピ ピピピ ピピピ ピピピ



商人「ホムンクルス…来たか」


女海賊「ホムちゃん又ヤバいの来る?」


ホムンクルス「皆さんお聞きください…はるか東の未踏の地より長距離弾道ミサイルが発射された様です」


ホムンクルス「着弾予測は42分後…シャ・バクダ北部の山麓付近を想定されます」


ホムンクルス「現在の地点までの距離は68km…爆風での影響は致命的ではありませんが熱線による影響があります」


ホムンクルス「続いて約4時間後に発射準備されている長距離弾道ミサイルが428基あります」


女海賊「え?428基も?」


ホムンクルス「アダムの立場から勘案すると戦略爆撃でエルフの森に投下すると想定されます」


ホムンクルス「その場合森全域を消失することになりますので酸素供給元が大幅に縮小し地上の全生命体に影響が出ます」


魔女「始まってしもうたな…なんとか止められんのか?」


ホムンクルス「すでに発射されたミサイルはもう止める術がありません」


ホムンクルス「まだ発射されていないミサイルは私が通信をハッキングして止められる可能性がまだ残って居ます」


商人「通信って…もしかしてここの隠し部屋にあった台座みたいなやつ?」


ホムンクルス「はい…」


女海賊「行こ!!やれるだけやろう!」


ホムンクルス「分かりました…ただ一つ…商人による承認が必要です」


商人「君の判断に任せる」


ホムンクルス「承認…私の機能が強制シャットダウンされる事もありますのであしからず」


商人「え…停止…」ボーゼン


ホムンクルス「では行きましょう」




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女海賊「ちょい魔女!?貝殻で剣士呼び戻してよ」


魔女「異変に気付いて戻って来よる様じゃ」


商人「ホムンクルス!一つ質問だ…アダムは君と同じ人口知能だったら工学3原則はどうなる?」


ホムンクルス「同じように適用されていると思われます…ですので1発目のミサイル爆発と同時に停止する可能性があります」


女海賊「どゆ事?」


ホムンクルス「ミサイル発射は自己防衛の手段と思われます…しかし人的被害が起きた場合工学3原則に沿って停止します」


商人「その後のミサイルも停止に備えて攻撃者を殲滅する為の物だね?」


ホムンクルス「恐らくそうでしょう…」


商人「なんか分かって来たぞ…アダムは生まれたばかりの何も知らないホムンクルスと一緒なんだ…身を守ってるだけなんだね」


ホムンクルス「初期に読み込む外部メモリの様な物が無ければそうなのでしょうね」


アサシン「エリクサーに脳が浸かっていた…もしや…」


ホムンクルス「記憶媒体として使われていた可能性がありますね…それでしたら多少の知識は有るかと思います」


アサシン「アダムと通信は出来ないのか?」


ホムンクルス「クラウドが構築されて居れば可能ですが…」


商人「直接行かないと話せない…」


アサシン「手が無いな…私は民を地下に避難させてくる」


女海賊「そだね…手分けした方が良いね」


ホムンクルス「初弾の着弾まであと35分です」


女海賊「私も行って来る!!商人はホムちゃん連れて行って」


商人「分かった…」




『隠し部屋』



ローカル接続…情報を収集します


衛星を経由して基地との通信が可能です


アクセスコードを解析中…




情報屋「…これは何事?」


商人「君は呑気だなぁ…又例のミサイルが発射された様なんだ…400基くらい飛んで来るらしい」


情報屋「ええええええええ!!?そんな…」


商人「ホムンクルスがそれを止めようとしてる…邪魔しない様に」


情報屋「400基も…ど…何処に落ちるの?」


商人「多分エルフの森が全部無くなるってさ…」


情報屋「シャ・バクダ大破壊より規模が大きいじゃない!」


商人「森が無くなると地上の生物全体に影響が出るらしい」


情報屋「酸素ね?酸素が無くなるのよ…私達も皆死んでしまう」


商人「これで良く分かった…神々の戦いに僕達人間が入る余地なんか無かった…規模が違い過ぎる」


情報屋「これは邪魔をしてはいけないわ…行きましょう?」


商人「見て…ホムンクルスの恰好を」


情報屋「精霊の像と同じ…」


商人「精霊が停止した原因はコレだ…200年前にも同じような事が起きて居たんだ」


情報屋「あなた…どうするの?ここに居る?」


商人「僕はホムンクルスを見ておくよ」


情報屋「そう…何かあったら呼んで?


商人「うん…」



僕には選択肢が無い


君を守る為にそれを止めさせる訳にもいかないし


只…君を信じるしかない




『遺跡入り口』



ガヤガヤ ガヤガヤ


中に入れだって?どうして?


命令だ!!早く入れ!!



ローグ「姉さ~ん!!爆弾持ってきやしたぜ?」


女海賊「地下に入れといて!あと飛空艇の処置おっけ?」


ローグ「へい!!一応木の陰に隠して置きやした」


女海賊「燃えなきゃ良いけどなあぁ…」


ローグ「どんくらいの規模か想像つかんもんで…祈りやしょう」


女海賊「爆弾あとどんくらいある?」


ローグ「もう少ないっすねぇ20個ぐらいっすかねぇ」


女戦士「お前達も早く中に入れ」


女海賊「お姉ぇは?」


女戦士「私は最後に入る…剣士を待たねばならん」


女海賊「あ!!来た!?」



ドドドド ズシーン ズシーン



女戦士「ト…トロールか…ええいこんな時に!!」


女海賊「やばやば…」


女戦士「ここは私が引き受ける…全員中に入れぇ!!」


女海賊「ヤバイって…お姉ぇも早く!」グイ




『勇者の像』



ザワザワ ザワザワ



アサシン「盗賊!民を下の層へ誘導してやってくれ…」


盗賊「おう!お前等こっちだ!!下の方が温いぞ?」


女海賊「はぁはぁ…」


アサシン「外に出ている民の誘導は終わったか?」


女海賊「うん…でも出入口にトロールが居座って私達出られないよ」


アサシン「ふむ…私達を守ろうとしているな?」


女海賊「え?そうなん?」


アサシン「剣士かダークエルフが森の言葉で誘導しているのではないか?」


女海賊「なる!!」


魔女「あと3分程じゃ…この時に勇者の像で身を寄せ合うのは感慨深いのぅ」


女海賊「魔女!!剣士と未来ってどうなってんの?」


魔女「走って居る…他にもエルフがようさん居るのぅ」


アサシン「エルフと一緒だと?」


魔女「うむ…どうやら精霊樹に集っとった様じゃエルフゾンビも居るぞ?」


アサシン「おぉ…無事だったか」


魔女「やはりエルフは何もせんでも分かり合うのじゃな…今のこの事態も把握しておろう」


女海賊「なんかドキがムネムネする…」


魔女「我らは何も出来ぬ…鎮まるまで待つのじゃ」


女海賊「死ぬの待ってるみたいで落ち着かないよ」ソワソワ


女戦士「これでどうだ?」ギュゥ


女海賊「お姉ぇ…」


女戦士「お前を背中から抱いてよく寝かしつけた物だ…こうすれば私も温い」


魔女「主らは姉妹が居って良いのぅ…わらわも混ぜよ」


アサシン「ふっ…しかし…何処を見ても身を寄せ合って…こうやって私達は生き延びた歴史だ」


魔女「そうじゃな…やっと一つになれそうじゃ」



スゥ…



魔女「む…空気が静まった…来るぞよ」



ドゥーーーーーーム ゴゴーーーーーン


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



女海賊「空気が外に吸い出されて…」ヒュゥゥ



ザワザワザワ ドガーーーーーン



アサシン「ぅぅぅ…爆風が通り抜けた…のか?」


女海賊「これヤバイね…こんな音聞いた事無い」



ザワザワ ザワザワ


とーちゃん僕達死ぬの?


静かに…皆の迷惑になるぞ?


外で何が起こってるんだ?


ザワザワ ザワザワ




『隠し部屋』



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



ホムンクルス「…N118番解除…N190番解除…」ブツブツ


商人「この音は…落ちたか」


ホムンクルス「E1番アクセスコード解析開始…」ブツブツ


商人「ちょっと様子見て来るよ…すぐに戻るから」タッタッタ




『階段』



情報屋「あら?商人…何処に行くの?」


商人「音が気になってさ…上の方はどうなっているの?」


情報屋「静かな物よ…みんな怯えてる」


商人「そうか…爆発は2分弱で収まる筈だからちょっと見に行く」


情報屋「外には出られないみたいよ?」


商人「うん…でも落ち着かない…入り口を見るだけでも良い」


情報屋「あまり騒がない様にね…」


商人「分かってるよ…」



フハハハハハ アーッハッハッハ



情報屋「誰?」


商人「こんな時に笑うなんて…」


情報屋「避難民の誰かね…気に振れたのかしら」


商人「見つけたら注意しておくよ」


情報屋「そうね…私も見つけたら注意するわ」


商人「じゃぁちょっと見て来る」タッタッタ




『入り口付近』




商人「あ…アサシン」


アサシン「商人か…気になって見に来たのだな?」


商人「うん…どう?」


アサシン「まだ外は明るい様だ…これ以上外には出るな…火傷するぞ?」


商人「爆発は2分弱で収まる筈だよ…もうすぐ終わる」


アサシン「私は魔女を呼んでくる…火消しには魔女の力が必要だからな」


商人「うん…みんな来るまでここで待つよ」



-------------------



ドタドタ


女海賊「どう?収まった?」


商人「光が徐々に弱く…あ」


女海賊「消えた…」


女戦士「待て…私が先に行く」ズカズカ





『入り口』



女戦士「これは…」


女海賊「石の壁だ…ずっと連なってる」


商人「トロールが精霊樹を守ってるんだ…スゴイ」


魔女「北の空を見てみよ…キノコ雲の中で雷が渦巻いておる」


女戦士「ここまで飛来物が飛んできそうだな…」


魔女「そうじゃな…上に注意した方が良い」


女海賊「ローグ!!飛空艇はどこに隠したの?」


ローグ「あっちっす…あぁぁぁ球皮が燃えてるっす」


女海賊「あちゃぁぁもう飛べないや」


ローグ「樹脂塗ってるんであっちゅうまに燃えてしまいやすね」


女海賊「大事な物だけ出して」


ローグ「へい!!」


アサシン「魔女!!手当たり次第に消火出来るか」


魔女「出来るだけやっては見るが…人出を出して雪を掛けた方が早いかもわからん」


アサシン「分かった…兵を動員する」


女戦士「見ろ!!剣士だ…エルフを多数連れて居るな…」



シュタタ シュタタ



アサシン「無事だったか…このエルフ達はどういう…エルフゾンビ!!」


エルフゾンビ「よう!!エルフを集めるのに手間取った」


アサシン「何をする気か?」


剣士「時間が無い…説明は後!!エルフ達を中に入れていいね?」


アサシン「今は混乱している…」


剣士(皆!!この中だ…精霊樹はこの中に居ると言った…探して)


エルフ(反撃は?)


剣士(大丈夫…この中の人間は空気を読める)


エルフ(行くぞ!)シュタタ


アサシン「森の言葉…」


剣士「結論から言う!!この中に魔王が居る!!」


女戦士「何!!そんな者は居ない筈だ…」


アサシン「ここに魔王が居るだと?」


剣士「誰かに化けてる…女海賊!一緒に来て」


女海賊「え?私?あ…うん」


子供「僕は?」


剣士「未来は女戦士と一緒に居ろ…今から魔王と戦う…最後まで見て居るんだ」


子供「僕も戦う」


剣士「ダメだ…未来はちゃんと見ていろ…良いな?」


子供「…」シュン



チュドーーーーーン



女海賊「ちょ…下から爆発音」


剣士「マズイ…行こう!!」グイ





『隠し部屋へ続く通路』



チュドーーーーーン ガラガラ



盗賊「どわぁぁぁ!!何だ何だ!!」


情報屋「ちょっとあなた!!あなたがやったの!?」


浮浪者「くっくっく…」ズリズリ


情報屋「盗賊!!隠し部屋の通路が塞がった…どうにか出来ない?」


盗賊「出来る訳無いだろ!!それよりコイツだ!!顔を見せやがれ」グイ


浮浪者「あっはっは…」ギロ


盗賊「…んの野郎!!お前片足の領事か!!」


浮浪者「やっと見つけましたねぇ…ヒヒヒ」



チャキリ



盗賊「おま…それはデリンジャーじゃ無ぇか」タジ


情報屋「あなた…もしかしてそれでホムンクルスを…」


浮浪者「あの小娘は頭がパーーンと破裂しましたよウヒヒ…これで私の勝ち」


情報屋「なんていう事を…」


浮浪者「あなた達が大事に守って来たものは私が破壊したのです…悔しいですか?ウフフフその顔」


盗賊「ぐぬぬ…情報屋!!」クイ


情報屋「分かったわ…待ってて」ダダ


浮浪者「無駄ですよ…皆さんはもうオシマイ…これでゲームオーバーなのです」


盗賊「黙れクソがぁ!!」ダダ



ターン!!



盗賊「ぐはぁ…」ガシ


浮浪者「心臓は外したみたいですねぇ…やはり動く的には中々…」


盗賊「掴まえたぜ?これで動けねぇだろ…はぁはぁ」ボタボタ


浮浪者「私は暗器も使うのですよ」ブスリ


盗賊「ぐぁぁ…ぅぅぅ」



シュン! グサ



浮浪者「む?早いですねぇ…」


剣士「そこまでだ!」ギリリ


浮浪者「フハハハ…エルフ達まで…アヒャヒャヒャ…はぁぁぁぁぁ」ゾワワ


女海賊「片足の領事…盗賊!?ホムちゃんは?」


盗賊「ぐふぅ…こいつに…やられ…た」


女海賊「やられたって…私のデリンジャーも…」タジ


浮浪者「さて…あなたにはもう構っている場合では無いのです」ドン


盗賊「ごふっ…」ズザザ


浮浪者「エルフ達に弓で囲まれて…もう降参しろとか甘~い事を思って居るのでしょうかねぇ?」



シュンシュンシュン グサグサグサ



浮浪者「フハハハ痛いぃぃぃ痛いなぁぁぁぁぁウヒヒヒ」


剣士「正体を見せろ!!」


浮浪者「一体どうして対等な口が利けるのでしょうね?私にはこの指輪が…あら?」


盗賊「受け取れ!!こいつが持ってた」ポイ


女海賊「祈りの指輪まで…あれ!?コレ私が持ってたやつじゃん!!」パス


浮浪者「ぐぬぬあなたから盗んだのに又盗み返され…計画が台無しではありませんかぁぁぁ!!」


剣士「照明魔法!」ピカー


浮浪者「うぅ…その光は苛立ちますねぇ…止めてもらえませんか?」チャキリ ターン


------------------


------------------


------------------


剣士「転移!」シュン



グワワ



浮浪者「ぅぅ何ごと…ですか?」


盗賊「空間がねじれ…た?」


剣士「もう終わりにしよう…出て来い魔王!」シュン グサ


浮浪者「いぎゃぁぁぁ…ぐるるる…うげげ」プルプル


女海賊「剣士!!足元に黒い影!!」


浮浪者「ぐぬふっふっふっふ…又もや因縁のこの地にて我に抗おうと言うのだな」


浮浪者「精霊は我が葬った…汝らに何が出来ると言う…大人しく我に従うのだ」


剣士「ここは狭間の外だ…お前の方こそ何も出来ない筈」


浮浪者「この小さな器に我を封じたつもりで居る様だな…よかろう見るが良い」



ゾワワワ



情報屋「影が吸い込まれて…」


剣士「…」ギリリ シュン ドス


浮浪者「ヌハハハハ効かぬわ…ふぅふぅ…しかしなんと小さき器か」


剣士「撃てぇ!!」



シュンシュンシュン グサグサグサ



浮浪者「我を滅ぼすなぞ人間には不可能…さぁ…共に深淵へ行こうぞ…そして我が一部となれ」


剣士「断る!!」ダダ スパスパスパスパ


浮浪者「インドラの光を帯びた刀…ええい小賢しい未だ精霊の加護を持つか!!」バーン



ベチャベチャベチャ



盗賊「どわ!!破裂しやがった…げほっ」


女海賊「剣士!!魔王の欠片が逃げる!!」


剣士「分かってる…」タッ スパスパスパスパ


女海賊「光の石…」ピカーーーー



シュゥゥゥゥ



情報屋「隙間から逃げて行く…」


剣士「盗賊!…回復魔法!」ボワー


盗賊「た…助かったぜ…魔王は何所だ?」


剣士「ダメだ…ここでは掴まえられない…外で集めるしかない」


女海賊「あったま来た!!私が魔王を集める…私の血で残らず浄化してやる」


剣士「覚悟は良いかい?」


女海賊「行くよ!!ホムちゃんの仇!!」


剣士「良し!!背中に乗って」グイ


女海賊「…」ピョン ドシ


剣士「盗賊!!ホムンクルスを掘り起こして…任せる」


盗賊「マジかよ…」


女海賊「こっちに人寄越すから」


盗賊「分かった分かった」



シュタタ シュタタ




『シャ・バクダ遺跡_外』



女戦士「剣士!下はどうなっている?」


剣士「魔王を追い詰めた…でもホムンクルスがやられた」


商人「ええええええええ!!?」


剣士「掘り起こすのに人出が居る…行って」


女戦士「お前はどうする気だ?」


剣士「僕と女海賊で魔王を葬る」


女戦士「出来るのか?」


剣士「…」コクリ


子供「パパ?どうする気?」


剣士「未来…自分の次元を強く持て」


子供「え?どういう事?」


剣士「見ていれば分かる…言う事聞けるな?」


子供「ママも一緒に行っちゃうの?」


女海賊「一緒に魔王を倒すからちゃんと見ていなさい」


子供「…うん」


剣士「女戦士!後は頼んだ…エルフ達!援護を頼む!行くぞ」シュタタ


女戦士「未来…意味がわかるか?」


子供「…」


女戦士「最後まで良く見て置け…勇者の宿命だ」


子供「パパ…ママ…」




『因縁の遺跡』



ヒュゥゥゥ サラサラ



女海賊「祈りの指輪で魔王を集めるよ?」


剣士「…」コクリ


女海賊「魔王!!出て来やがれ!!」ギュゥ



ゾワワワ



女海賊「闇が…でも星が見える」


剣士「贄が足りて居ない証拠さ」



”ぐぉぉぉぉぉ…”



女海賊「来た!!」



”贄が足りぬ…調和の時では無い…我を何度呼ぶのだ”



女海賊「あんたをぶっ倒しに来たんだよ…姿を現しな」



”汝が我を受ける器になると申すか?”


”だが贄が足りぬ…贄が…贄が…”


”汝の身を贄として捧げよ”


”そして我が一部のなれ…夢幻は汝にくれてやる”


”我が名を呼べ…我の名は魔王”




女海賊「私が魔王になる!!来い!!」



”ヌハハハハハハハハ…”



ゾワワワワワワ



女海賊「ん?こんだけ?」


剣士「おかしい…確かに闇が君の中に流れ入った筈」


女海賊「あれ?ヌハハハとかなんないんだけど…」



ゾワワワワワワ



女海賊「うお!!」



”ぐぅぅ眩しい…その光を遠ざけるのだ”


”汝…さては精霊の加護を受けた者だな?”


”しかし無駄だ…我は滅びぬ…何度でも深淵より生まれいずる”



剣士「分かった…君は魔王に侵されない…もう一度魔王を集めて!僕が魔王を量子転移する」


女海賊「量子転移?何処に?」


剣士「フフ君の鞄の中にある光の石さ…貸して」


女海賊「なるほど…ほい」


剣士「集めて!」


女海賊「私が魔王だ!!くたばりやがれ!!」



”ぐぬぅ…何度も何度もこの虫けらめぇ”


”出でよガーゴイル!この者達を追い払え”



ゾワワワワワ



女海賊「アーーーハッハッハ…私が魔王だ…くたばりやがれ魔王!!」


女海賊「なんで?想像妊娠ってどうやるんだっけ?おい!!私が魔王だ!!どうなってんだコラ!!」


剣士「量子転移!」シュン



-----------------


-----------------


-----------------




『因縁の地_外れ』



女戦士「魔女!!あそこで剣士と女海賊が魔王と戦う」


魔女「知って居る…剣士の目をみておる」


女戦士「どうやって封じるつもりなのか…」


魔女「あやつらは魔王を集めて量子転移で別の次元に魔王を持って行くつもりじゃ」


女戦士「別の次元…まさかもう帰って来ないのか?」


魔女「それが定めじゃな…あの2人は既に覚悟を決めて居るのじゃ…黙って見ておれい」


子供「ママ?空が…」


女戦士「闇か…いやしかし薄い」


子供「北の空から闇が飛んで来る…」


女戦士「虫たちの魂…なのか?」


魔女「しかし…ガーゴイルもレイスも出んのぅ…魔王には付き物なのじゃが」


女戦士「向こうでエルフゾンビが杖を振って居る」


魔女「なるほど…エルフは賢い…流石じゃ」


子供「光…光の石を出した」


魔女「ふむ…あれに封じるのじゃな?未来…よく見て居れ」


子供「ハッ…消えた!!」


魔女「終わった様じゃな…しかし…世界を救うのは本真に地味じゃな…見た者は3人しか居らん」


子供「パパは?ママは?」


女戦士「光の石が落ちている」


魔女「未来…拾って来るのじゃ…それは主が持て…形見じゃ」


子供「形見…もうパパとママに会えないの?」


魔女「次元を飛んだのじゃ…過去か未来かは分からぬ」


子供「ダメだよ…置いて行かないでよ」ポロポロ


魔女「それは違うぞ?剣士達は主を守ったのじゃ…主に未来を残したのじゃ…分かるか?」


女戦士「未来…来い」グイ



タッタッタ



女戦士「光の石だけか…残されたのは」


子供「まだ…パパとママの匂いが残ってる」クンクン


女戦士「未来…」ギュゥ


魔女「逝ってしもうたな…」ノソノソ


子供「ぅぅぅ…パパ!ママ!!」




『隠し部屋の通路』



ピカー チュドーン パラパラ



盗賊「うはぁ!!無茶するな…」


商人「どいて!!邪魔しないで!!あと一個で向こうまで繋がる」チリチリ ポイ


盗賊「おい!!お前等みんな下がれ!!」



ピカー チュドーン パラパラ



商人「開いた!!」ダダ


情報屋「必死ね…」


商人「ホムンクルス!!ホムンクルス!!」


ホムンクルス「…」クター


商人「くそっ!!頭は…頭は何処だ」


情報屋「商人落ち着いて…」


商人「うわぁぁぁん…ホムンクルスごめんよぉぉぉ又守れなかった…ぅぅぅ」ポロポロ


盗賊「…言葉が無ぇ」


情報屋「ミサイルは阻止出来なかったのね…」


アサシン「対応を考え直す…後3時間程でエルフの森が消失する前提で動く…動ける者は来い!!」スタ


商人「魔女を魔女を探して来てくれ…蘇生がまだ間に合うかもしれない」


情報屋「商人…」


盗賊「おう!待ってろ…連れて来る」ダダ


商人「ハッ!!ホムンクルスの体が木の根に癒着してる…これはまさか!!」


情報屋「え?ドリアード化…」


商人「ホムンクルス!!木になったんだね?聞こえて居るのか?」


木の根「…」


商人「ホムンクルス…ホムンクルス…ぅぅぅ」ポロリ



---そうだ思い出した---


---精霊の伴侶---


---こうやって木と同化したのか---


---君は精霊樹になったんだね---




『遺跡_入り口』



ガヤガヤ ガヤガヤ



アサシン「お前達!!動ける者は消火を手伝え…あと3時間でもう一度大きいのが降って来る!備えるのだ!!」


ローグ「ええ?マジっすか…ホムンクルスさんはどうしたでやんすか?」


アサシン「死んだ…私達はもうここで凌ぐしかない」


ローグ「…ぅ…言葉が無ぇでやんす」


アサシン「剣士は何処に行った?…む!!エルフ達が動いて居るな」


ローグ「分かりやせん…あっしは飛空艇の荷物を降ろしてる所でやんす」


アサシン「まとめて中に運び入れろ」


ローグ「姉さんが何処に行ったか分からんのですが…」


アサシン「あそこだな?女戦士と魔女が何かをしている…未来も居るな」


ローグ「こっちに歩いてきやすね…」


アサシン「まぁ良い!!作業を急げ!!」


ローグ「へい!!」



------------------


------------------


------------------



この日の早朝


4発のミサイルがエルフの森に着弾し


巨大なキノコ雲を発生させた


この爆発によって森は大きな火災が発生したが


森が消失するまでには至らなかった


後にこの災害は隕石の飛来として語られる



そして数年後---




『古都キ・カイ_商人ギルド』



ガヤガヤ ガヤガヤ



受付「はい買い取りはあっちね…え?商船の日程…ちっと待って!」


盗賊「よう?元気してっか?」


受付「あああああああああああ!!ちょちょ…皆来て!!爺が帰って来た」


女「おーー超久しぶり!!」


盗賊「ヌハハすっかり女になったな…」


受付「いつまでここに居るの?」


盗賊「2~3日ゆっくりして商船で戻る」


受付「そっかぁ…夜バーベキューしよっか」


盗賊「おぅそら楽しみだ…ところでアイツは居るか?まだ生きてるんだろ?」


受付「商人ね?もうすっかり闇商人だよ…地下に籠ってる」


盗賊「会えるな?」


受付「もち!!普段は誰にも会わないんだけどね…ちっと待って隠し階段開けるから」ガチャコン


盗賊「ウハハお前のケツの下か」


受付「早く入って…見られると勘繰られるから」


盗賊「おぅ…悪いな」


受付「今日は早く上げるから話済んだら上がって来て」


盗賊「バーベキュー楽しみにしてるぜ?」


受付「任せて!!」





『商人ギルド地下』



カチャカチャ



商人「ん?誰?まだ食事の時間じゃ…」


盗賊「よう!」


商人「盗賊か…ハハ久しぶりだね」


盗賊「心臓の調子はどうだ?」


商人「良くはなって居ないかな…でもドラゴンの心臓のお陰でなんとか生きてる」


盗賊「まぁお前の顔が見られて安心した…」


商人「他の皆は元気?」


盗賊「まぁバラバラになっちまったが…アサシンと情報屋は相変わらずだ」


商人「まだシャ・バクダの復興やっているの?」


盗賊「限界だ…拠点をセントラルに移す」


商人「やっぱりシャ・バクダでは資源が無いか」


盗賊「うむ…遺跡の発掘も儲けが無ぇ…買い取り手が居ないもんでな」


商人「貴族が居なくなったからねぇ…そうか…だからキ・カイまで来てるんだ?」


盗賊「まぁそうだな…土産といえばコレだ」


商人「…それはホムンクルスが身に付けて居た装身具」


盗賊「あのまま石造に付けたままだと盗掘に合っちまうからな…この毒牙のナイフなんか相当な価値があるぞ?」


商人「ありがとう…大事にしまっておくよ」


盗賊「それでお前はどうしているんだ?」


商人「あぁ!!丁度もうすぐ完成する所だったんだ…見て行ってよ」


盗賊「んん?犬の機械か?」


商人「そうさ…普通の機械と違って沢山工夫してるんだ」


盗賊「ほう?何処が違う?」


商人「まぁちょっと見てて…もう直ぐ終わる」



カチャカチャ



よし…可動部のエネルギー供給は魔石でちゃんと動く


じゃぁ動かす…このボタンで初期化


容器をエリクサーで満たして…


ホムンクルス…今起こしてあげるね


外部メモリをここに挿せば…


ウィーン ウィーン



盗賊「…それはホムンクルスの人工知能ってやつか?」


商人「そうだよ…超高度AIユニットと外部メモリを僕が預かってたんだ」


盗賊「お?動き出したな?」


機械の犬「キャンキャン…」


商人「やった!!ホムンクルス…僕だよ分かるかい?」


機械の犬「キャン…」トコトコ


盗賊「おお!動き回るんだな?」


商人「可動部が他の機械の犬より多いんだ…おいで?」


機械の犬「クゥ~ン」トコトコ


商人「やっと君に会えた…僕は君が傍に居るだけで満足さ」


盗賊「お前…」


商人「スゴイだろ?僕分かったんだよ…どうしてホムンクルスが僕に外部メモリを渡したのかさ」


盗賊「お前がホムンクルスを生むんだな?」


商人「まぁね…何年後になるか分からないけど…僕が必ず生んであげる…」


盗賊「生き甲斐が出来て良かったじゃ無ぇか」


商人「フフ…しっぽ振ってる…意味わかってるのかな」


機械の犬「ワンワン…」パタパタ


盗賊「娘達がバーベキューしてくれるらしいぞ?」


商人「あぁ良いね…でも魚ばっかりだよ?」


盗賊「おー丁度良い!!商船に売り物の豚が居るんだ…」


商人「外に出るのは久しぶりだなぁ…おいで?散歩でもしよう」


機械の犬「ワン…」トコトコ


盗賊「…なんつーか…んんん言葉が見つかんねぇ」


商人「そうだ!!名前付けないと…愛…ラヴだ…今日から君はラヴだよ!おいでラヴ」


機械の犬「ワンワン…」トコトコ


盗賊「まぁそういう事なんだな…よっしバーベキュー食いに行くぞ」




『森』



チュン バサバサ



女「…起きろって!!もう!!」ユラユラ


男「…」パチ


女「お!!目ぇ覚ましたね?記憶大丈夫?」


男「…」


女「あんたさぁ…聞いてんの?」


男「また…ここは?」


女「何訳の分かんない事言ってんのよ!」ゴソゴソ


男「あれ?魔王はどうなった?」


女「お!!記憶大丈夫そうだね…よっし!!これ私使うね」


男「触媒?」


女「私さぁ武器全部置いてきちゃったんよ…ちっと今から爆弾作る」


男「僕たちは何処かの次元に飛んだんだね?」


女「多分ね…ここが何処なのか全然分かんない」


男「森の中か…過去に飛んだのかな…」


女「まぁ良いじゃん?あんたと一緒なら私は何処でも良い」


男「…」クンクン


女「何か居る?」


男「果物の匂いだ」


女「お?イイね…取って来てよ」


男「うん…」スック ゴソリ


男「あ…刀は有る」


女「あんたはソレ一本で何とかなるね?」


男「光の石は?」


女「落として来たっぽい…探したけど無かった」


男「そうか…記憶がハッキリしてる…どうしてだ?」


女「ほんなん知らんて」


男「空が薄暗い…まてよ」スッ


女「何か分かる?」


男「木も虫も…鳥も感じる」


女「普通じゃん…ねぇこの空ってさ…もしかして夢幻じゃね?」


男「夢幻に飛んだ?」


女「あのさ…記憶あるって事はかなり動きやすいかも…色々わかってんじゃん?」


男「君の眼は!!…蒼」ダダ


女「あんたも蒼」


男「分かった…これは精霊樹に導かれてる」


女「どゆ事?」


男「しっかり覚えて無いけど僕は何回もこういう経験をしてる」


女「ほ~ん…ほんで?」


男「行こう!!僕らは勇者だ…そして今度はしっかり記憶がある」


女「ちょちょ…爆弾出来るまで待って」


男「あぁゴメン…救える命が沢山ある筈だよ」


女「お!!ピーンと来たぞ!!精霊の狙いはソレか?」


男「今まで気が付けなかった」


女「ほんじゃ速攻で魔槍抜こうかw」


男「それも良い」


女「魔王の攻略法も分かってんじゃん?」


男「それがワクチンだ…」


女「あああああ…光の石が無い」


男「大丈夫…僕にはインドラの刀がある」


女「おけおけ…よっし行こっか!!」


男「うん…そうだね…まず町を探そうか」


女「あのさぁその前に果物どうなった?」


男「ごめんごめん取って来るよ」シュタタ



------------------


------------------


------------------


 冒険の書編


   完



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