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渡辺美沙②

合コンは世界の縮図である。


強い者、弱い者

人付き合いが上手い人

下手な人が

如実に現れる。


75点、70点、65点を

狙う男4人組は

あわよくば

今夜のお持ち帰りを狙い


全員ギラギラした目で

女子3人に

話し掛けている。


その輪に参加しない

宇都宮は50点の女性

森高万里に

『これ、美味しいですよ』と

料理を勧めている。


そのやり取りを

90点女性の

渡辺美沙は

静かに眺めていると


『良かったら食べません?』と

彼女にも宇都宮が

料理を勧めて


『どうも、すいません』と言って

彼女も箸をつける。


他の男子と別チ-ムのように

50点森高と90点渡辺に

『お酒は足りています?』と

気をつかう宇都宮に


森高と渡辺は

驚いている。


更に宇都宮は2人に

『何処かに旅行で

行きたい所って

ありますか?』と

ナイスな質問をしてきた。


初対面な人と話す時に

話題に困る事が多い。


好きな有名人や

好きなテレビ番組

その辺りを質問しがちだが


初対面の人に

何処までバラして

良いものか?と

バリアを張って

本音を喋らない事が多い。


だが旅行で行きたい場所なら

誰も傷つかずに

話が広がる。


すると森高が、すぐに

『私、マチュピチュに

行ってみたいです』と

答えてきた。


すぐに宇都宮が

『良いですねマチュピチュ』と

反応して


『会社って、長期休暇を

取りやすいんですか?』と

合わせて質問をすると


すると

『そうだった』

『担当の動物を置いてけないや』と

笑っている。


それを聞いた宇都宮が

『担当の動物?』と

不思議そうな顔で

質問をし返すと


90点の渡辺が

『万里はペットショップの

店長さんなんです』と

解説をしてきた。


それを聞いた宇都宮は

『ハムスターも

お店にいますか?』と

笑顔で質問をすると


『ゴ-ルデンや

ジャンガリアン』

『チャイニーズを含めて

全部で8種類くらいは

いますよ』と

万里が答える。


それを聞いた宇都宮は

『本当は犬や猫が飼いたいけど

仕事が不規則で難しくて』


『でも仕事が終わった後に

部屋に戻った時に

癒やしてくれる

ペットが欲しいと

思っていたんです』と

彼女に答えて


そこから森高の

ハムスター飼育の説明が

始まり


宇都宮が興味津々で

話に食い付き

その場は盛り上がっていった。


男4人と女3人は

勝手に騒いでいて

彼らの存在を

忘れたように

別に盛り上がり


それを見ている

90点の渡辺は

何処か寂しそうに

その様子を眺めている。


それに気付いた宇都宮が

『渡辺さんは何の

お仕事をされて

いるんですか?』と

質問すると


彼女は困ったような

表情になり

即答しないでいると


『美沙ちゃんは

アパレル会社の

チ~フなんですよ』


『凄くないですか?』と

50点の森高が

説明するが


『止めてよ万里』と

本当に言われたく

なさそうに

その話をシャットアウトする。


90点である美人が

困っている表情を見て

宇都宮はゾクっとした。


明らかに渡辺が

仕事の話を

嫌がっていたので


『渡辺さんは

旅行に行くなら

何処に行きたいですか?』と

彼女に質問すると


『う〜ん』と悩んだ後に


『群馬県の

おばあちゃん家かな?』と

彼女は答える。


それを聞いた森高は

『群馬県なら

休みがあれば

いつでも

行けるでしょう?』と言うが


『今は無性に

おばあちゃんに

会いたいんだよね』と

笑顔で答えている。


その話を聞いて

宇都宮は静かに

頷いた後に


『おばあちゃんは

渡辺さんに会ったら

何って言われると思います?』と

美沙に質問すると


彼女は困った顔になり

少し考えた後に

『ちゃんと寝ている?かな?』と

答えた。


『優しい

おばあちゃんなんでしょうね?』

宇都宮はそう答えて

それ以上、その話は

深く掘らなかった。


普通なら

よく来たね、や

元気だったかい?

久しぶりだね?


そんな言葉ではないか?


実は旅行の行きたい場所も

宇都宮が仕掛けた

心理学を使った

彼女の深層心理を

調べたモノである。


働いている女性に

この質問をする事は


仕事で追い詰められた時に

何処を逃げ場所としたいか?

などである。


彼女は睡眠不足になるほど

疲れていて

精神的な安らぎを求めて


100%味方である

おばあちゃんに

安らぎを求めているのだろう。


そう推測した宇都宮は

更なる作戦を考えた。


『森高さんは

ペットショップを

辞めたい、と

考えた事は

ありませんか?』と

質問をすると


『そんなの、毎日ですよ』と

言って苦笑する。


『じゃあ、何で

辞めないんですか?』と

宇都宮が

更に聞くと


『だってペットショップの

生き物達が心配じゃ

ないですか?』


『それに会社も困るだろうし』


そう教科書通りの

回答をしてきたので


『それで、森高さんが

ムリをして

身体を壊したら』


『結果、みんな困る事に

なると思うんです』


『俺、心理学を勉強していて

さっきも旅行の話を

したじゃないですか?』


『あれも、精神的な

安らぎを求めて』

『自分が行きたい

逃げ場所を聞く

質問だったんです』


そう言って視線を

渡辺に向けると

彼女と目が合った。


明らかに

宇都宮の話を聞いて

動揺している彼女との

目線を逸らして

再び森高に

話し掛けるように


『マチュピチュには

日帰りでは行けない』

『それは分かっているけど

逃げたい自分がいる』

そう言った言葉に

森高が頷くと


今度は顔を

渡辺の方に向けて

『仕事で疲れて

寝不足になる毎日』


『よく頑張っているね』


『そう言って

褒めてくれるだけで

嬉しいんじゃないかな?』


優しく微笑みながら

渡辺美沙を見ると


言い当てられた


そんなハッとした顔に

なっていたので


宇都宮は続けるように

『自分の周りにはいない

自分を認めてくれる人』


『自分を応援してくれる人を

本当は求めているんじゃ

ないですか?』


そう宇都宮に言われて

渡辺美沙は頬に

涙を流し始めていた。













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