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渡辺美沙⑥

宇都宮から聞いた

お菓子大作戦を

実行するか?

迷っていた彼女だが


店舗を訪問した際に

元々、塩対応なら

実施した時の

わずかな可能性に

掛けた方が良いと思い


お菓子の安売り店で

宇都宮に言われた通り

お菓子の大袋を

3つほど買うことにした。


『甘いのだけじゃなく

ばかうけ、とか』

『しょっぱいのも買え、って

言ってたな』


そう言って

お菓子を選んでいる

渡辺は


『お菓子代は自腹だから

担当先に全店舗

差入れしたら破産だよ』と

ボヤいている。


買い終えた渡辺は

すぐに自分の担当先の

店に向かう。


宇都宮は差入れする際の

注意点もアドバイスしていた。


壁が高くなっている

店舗の先輩社員じゃなく

店で1番若い社員に渡せ、と


『休憩室で、お茶と一緒に

食べてね?』


そう言って、お菓子を

渡した後は

先輩社員に

売り上げ状況を確認して

業務をこなす。


先輩社員は相変わらず

彼女に塩対応だ。


確認が終わり

店舗を出た渡辺は


『あの先輩が友好的に

なる日がくるのかな?』と

ボヤいている。


そして次の店舗でも

同じく差入れをして

この日は都合

3店舗に差入れをした。


次の日にも

別店舗に差入れをして


そんな事を繰り返して

2週間が経った頃

ある店舗に

変化があった。


渡辺が定例の

店舗訪問をした時に

若い従業員に

お菓子を渡そうとした時に


『渡辺さん、待ってましたよ』と

言って


彼女を出迎え

『渡辺さんが

お見えになりました』と

内線電話で別室に

連絡をしている。


いつもと違う雰囲気に

違和感を感じた渡辺を


『少し良いかしら?』と

その店舗の女性店長が

笑顔で話し掛けて


店の事務所に渡辺を

招き入れた。



つい最近までは

訪問しても

居留守を使われたり


やっと捕まえて

状況確認をすると


あからさまに

めんどくさそうにしていた

店長が彼女を

笑顔で招き入れたのだから

渡辺じゃなくても

不思議であろう?


『先週、入荷した

フリ-スなんだけど』


『薄いべ-ジュが人気で、

在庫が無くなりそうだから』

『追加でオ-ダしといて

くれる?』

そう言って仕事の話を

笑顔でし始めたのである。


『え?はい?』


どうしたの急に?


女性店長は、その後も

今までと違う態度で

積極的に

渡辺と仕事に対しての

意見交換をしている。


『世間ではピンクが

流行色って言われているけど』

『ウチのブランドだと

ブラウン系が

売れ線だと思うけど』


『他の店だと、どうなの?』


そう言って彼女に

質問をしてきた。


聞かれた渡辺は

すぐに他店舗の

売り上げデ-タ-を

店長に見せる。


すると

『準備がいいわね?』と言って

笑顔で資料を受け取り

他店の売り上げを確認し始めた。


どうしたの?


先週までと180度

真逆の店長の態度に

ビックリしたまま

打ち合わせが終わり


彼女が店を出ようとすると

店長が、わざわざ

見送りに来てくれ


『いつも、お菓子の

差入れありがとうね』と言って

見送ってくれたのだ。


いつも、お菓子の差入れ

ありがとうね


見送ったくれた上に

お礼まで言われた。


女性店長に聞かれた

他店舗の売り上げデ-タ-も


お菓子配りを始めたのと

同時に

宇都宮に言われて

準備をしておいたものだった。


次の日は

他の店舗でも

渡辺に友好的になる

所が出てきた。


友好的になった店長を

8タイプの性格分けをして

その人に合わせた

話し方にしてみると


今までと同一人物か?と

思うほど親しく

なっていったのである。


帰る頃には次回の

渡辺の来店スケジュールを

事前に聞いてきて


必ず、その時間に

待っていると

言い出す始末だ。


すると渡辺に仕事で

困っている事はないか?と

聞いてきて相談に乗る

姿勢を見せてきたので


『はい、他の店舗の

店長さんとは

鈴木店長さんのように

上手に喋れなくて』と

正直に今の困っている事を

吐露すると


『どこの店?』と

彼女に聞くと

片っ端から電話を

してくれ始めたのだ。


『本社の渡辺美沙ちゃんが

アンタの店に行くから』


『売れ線の情報があるから

聞いた方が言いわよ?』


そう言って彼女の

優秀さを

アピールしてくれている。


同僚の店長の

この電話は

効果絶大だった。


どの店舗も訪問すると

歓迎してくれるように変わり


みんな今までと

同じ人か?

そう思うほど

彼女に友好的だった。


店長も意見を出してくれて

建設的な意見交換が出来た。


打ち合わせを終えて

店を出た彼女は

清々しい気持ちである。


いつもと同じ景色な筈なのに

色が多く見える。


店長達が友好的になった

要因は?


お菓子なの?


でも、どの店舗でも

『お菓子、いつも

ありがとうございます』と

言われた。


極め付けは

宇都宮に言われて準備した

他店舗の売り上げデ-タ-だ。


こんなの社内の端末で

誰でも見れるじゃない?


宇都宮に言われた時に

彼女は半信半疑で

懐疑的だった。


だが宇都宮は

『おそらく店長達は

資料の見方と

活用方法を知らない』


『だから準備しといて

説明してあげたら喜ぶし』

『渡辺さんに感謝を

してくれると思いますよ』


宇都宮の指摘は

的中していた。


すごいよ宇都宮さん


彼女をドン底の窮地から

救いだした

彼の評価が

彼女の中で急上昇している。


お礼をしなきゃ


今日の成果の報告と一緒に

晩御飯に招待したい。


意気揚々と宇都宮に

電話をして

『お菓子大作戦と

資料のプレゼンが大好評でした』


『色々とアドバイスをして

下さった、お礼に』

『今晩、ご飯を

ご馳走させて下さい』と

彼女が言うと


『そういうのは

いいから』と

アッサリと

断られてしまったのであった。











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