第六話 エスパーか、お前は。
「つまりね、召喚されるのは圧倒的に男性が多いの。」
とりあえず感動の再会が終わって(サクラとナツはあの後「きゃーー!!!」とお互い叫びながら抱き合っていた。女の子の「久しぶりー!!」のテンションの高さはかなり謎だと思う。)、落ち着いたところでサクラになぜサクラが光の巫女なのかを尋ねたところ、そんな返事が返ってきた。
「あれ?でもさっきこの村に入ってきたとき、結構な数の女性とすれ違ったぞ?」
「村にいる女性はほとんどがこのラ・セゾン出身の人たちだよ。私たちの前の召喚された人たちが旅先から連れ帰ってきたりして、どんどん数が増えていったって聞いたけど。」
とサクラが答えると、エロじじいが
「そもそも男だけしかおらんかったら集落として成立しないからのぉ」
と口をはさんだ。たしかにこのエロじじいには女性の存在は不可欠だろう。なんてことをちらっと思ったところで葵が、
「失礼なこと考えるな。」
と突っ込んできた。エスパーか、お前は。
「でもあの『闇を従え』って部分はどうなってるの?サクラちゃんって悪い意味じゃないけど、全く闇って感じしないんだけど。」
たしかに。サクラはどっちかというと春の暖かな日差しが似合う感じの女の子だ。
「俺が闇だ。お前にとってハルがそうなようにな。」
ナツの質問に葵が答える。そういえばさっきもエロじじいが俺のこと闇って呼んでたな。
「どういうこと?」
とナツがさらに質問を重ねると、村長が口を開いた。
「葵と桜は2人同時に召喚されたのじゃ。これはこの世界でもかなり珍しい。それに、桜は光属性。光の巫女にぴったりじゃろ。ついでに言うなら葵は性格が暗いから闇っぽいしの。」
適当じゃねぇか。隣でナツが「暗くないっ!」が小さい声で抗議していた。
「この村に住む人々には元の世界に帰りたいと思っているものも少なからずおる。が、その方法はまだわかっとらん。この世界では通信技術があまり発達しておらんのでな。周りの情報がなかなかこの島までは届かないのじゃ。」
「で、元の世界に戻るための手がかりを探すために、あたしと葵が選ばれたわけなんだ。光の巫女を名乗れば、少なくとも同じ人間からは好意的に接してもらえるはずだからって。エルフとか他の種族からはどうかわからないらしいけど。」
「同じ人間とはいえ、小競り合いが絶えないからのぉ。たとえ同じ種族でも属性が違うというだけで差別や偏見が生まれるのじゃから、むなしいものじゃな。」
「属性?あぁ、さっき話にでたこの世界の魔法のやつか?」
実はさっきから気になっていたのだ。いや、魔法が使えるってそれだけでなんか恰好よくね?
「そう。属性には基本的には火、風、土、雷、水の5種類で、例外的に光と闇属性も存在するんだって。ちなみに、私は光属性。この島では今んとこ私だけなんだってさ。」
と、サクラが少し誇らしげな顔で説明してくれた。
サクラいわく、この世界の魔法は基本的にマナ、と呼ばれる世界の魔力(空気のようなものでどこにでも存在するらしい)、を詠唱を通して体内に取り組み、身体の中に存在する自分の属性付きの魔力を混ぜ合わせ、呪文をとなえることで外に打ち出すのだとか。基本的に属性は1人1つらしいが、まれに複数の属性を所有する者も存在するらしい。また、光属性は闇属性以外の属性の魔法も一応簡単なものは使うことはできるとのこと。さすがはレア属性。
「たとえば、葵も複数属性の持ち主だよね?」
とサクラが問いかけると、葵は首を縦に振る。複数属性所有者は比較的に召喚された者に多いらしい。
なるほど。あの時はテンパってたから特に気にしてなかったけど、さっきの巨大ガニを倒したときの爆発は、葵の魔法だったのか。おそらく火属性かな?
そのあとはエロじじいはもう夜も遅いから老人にはきついわいとか言って帰って行ったので、久しぶりに、といっても俺とナツにとってはたかが3日ぶりなんだけど、葵とサクラと談笑して盛り上がった。あの2人にしてみれば3年ぶりの再会なので、いろいろ話すこともたまっていたようだ(といっても話していたのはもっぱらサクラだったけど)。