第四話 つまりナツ、お前も光の巫女候補なんだ。
ラ・セゾン。それがこの世界の名前だった。
剣有り、魔法有りのファンタジーの世界。
テクノロジーの代わりに魔法が発展し、独自の文明が展開されている。
この世界にはマナと呼ばれる魔力が溢れていて、そのマナを利用して人々は魔法を行使し、生活を豊かにしていった。が、そのマナが原因で動植物などが変化し、人を襲うようになった。それらは魔獣と呼ばれるようになり、その魔獣を狩る人達はハンターと名乗るようになる。
葵は3年前このラ・セゾンに「召喚」されたらしい。今俺たちがいるこの村は「ザ・ワールド」と呼ばれ、住人は皆異世界人、つまり俺らがいた世界から「喚ばれて」来た人達だそうだ。
この「召喚」というのにも事情がある。
長い間、人と魔獣との戦いは一定の均衡を保ってきた。だが近年、この均衡が崩れ始めたのだ。「魔王」の出現である。並みいるハンターが討伐に挑んだが、魔王は魔族と呼ばれる独自の人型の魔獣を配下に引き連れ、圧倒的な力を誇った。力あるハンターは次々と魔王に狩られ、人は魔獣を狩る存在から、魔獣に狩られる存在へと落ちていった。
暗黒時代の幕開けだった。
魔王の恐怖に震える人々の間で、いつしかまことしなやかに囁かれるようになった「光の巫女」伝説。伝わる際にズレが生じたのか地域によって異なるものが多数あるが、どの伝承にも次の一節が必ず存在する。
-- かの地より闇を従え来たるその者、光の翼を持って全ての魔を祓いたまわん --
「つまりナツ、お前も光の巫女候補なんだ。」
葵は涼しげな表情を崩さずにさらりとそうのたまった。