第十四話 桜が涙声でそうつぶやいたのを聞いた気がした。
「あ、葵・・・・??」
振るえる声で小さくつぶやく。自分の声なのかわからないくらい、か細くて情けない声だった。
辺りを明るく照らしていたオーロラが消えたが、鋭い光が俺たちを照らした。
桜が両手に収束させたマナが強い光を放っている。
「神雷槍!!」
ズドォォーーーンッッ!!!!!
再び爆音とともに地面が振動する。黒騎士の間近にいた俺たちのところにも熱波が吹き付けてきた。葵ごと吹き飛ばされて俺たちは地面を転がった。
視界がチカチカする。・・・やったのか?
「きゃあっ!!!」「ナツちゃん!!」
衝撃とともに俺の身体に何かがぶつかってきた。・・・ナツ!?
「ナツ、大丈夫か?!」
「う・・・。」
肩をつかんでゆさぶるとナツは小さく声をあげて答える。
「よかった、無事・・・」
そう言いかけたところで、ナツの着ていた白いシャツが真っ赤に染まっているのが見えた。肩から血が噴きだしている。
「・・・お前が光の巫女・・・か?」
暗い、不協和音のような響きを持った声が聞こえてきた。顔をあげると、黒騎士と桜がにらみ合うようにして向かい合っている。桜も傷を負ったのか、苦しそうに息をしながら右手で左肩を抑え、地面に膝をつけていた。桜を見下ろす黒騎士が再び問う。
「お前が光の巫女か?・・・それとも、さっきの娘か?」
「ナツちゃんは関係ない!私が光の巫女よ!!」
桜が声を張り上げる。
「・・・なら、お前には一緒に来てもらおう。我が主がお前を必要としている。」
黒騎士がそう呟くと右手を前にかざすと、その手の周りだけ闇が一層色濃くなる。その右手から桜へと闇が伸び、桜を包む。
「桜!!!」
桜の身体が闇に包まれ、見えなくなる。そして、黒騎士がこちらを向いた。
「そこの娘にも光の巫女の素質がある。・・・消させてもらう。」
そう呟いて、黒騎士がレイピアをかまえ、ゆっくりと歩み寄ってくる。
ナツを守らなきゃ。ナツを守るのは俺なんだ。そう強く思ったのに、剣をつかもうと手を伸ばしたのに・・・・・
俺の身体は、動かなかった。
「マナよ、光に宿りて友を運ぶ船へとその形状を変えよ!光乃方舟!!」
桜がそう叫んだのが聞こえた瞬間、俺たちの身体は温かな光に包まれ、俺は、自分の身体が宙へと浮き上がるのを感じた。
「ハル君、さよなら・・・。」
桜が涙声でそうつぶやいたのを聞いた気がした。
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