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第十一話 とりあえず回れ右して逃げようとした俺の気持ちも理解できると思うから。


 村を囲んでいた壁、というよりも木を組んで作られた柵の一部が派手に壊されていて、そこから狼のような獣が次々と村へと侵入していたのだ。

黒っぽく汚らしい毛でおおわれていて、体長は2メールほど。正直かなりでかくて、怖い。鋭い牙は噛みつかれたら一発で死にそうだ。血走った眼は濁っていて、血のように赤い舌をのぞかせた口からはよだれが垂れてきていた。そんなのが20匹以上いて、うなり声をあげている様子を想像してみてほしい。とりあえず回れ右して逃げようとした俺の気持ちも理解できると思うから。


「マナよ、炎に宿りて我が敵を焦がす球となれ。火球かきゅう!」


俺が逃げようと自分の足に氣を集中させていたら、葵が大声で詠唱を行った。バスケットボール大の炎の玉が葵の左手から打ちだされ、でか狼の一匹に直撃。


「ギャゥウウウッ!!」


吹っ飛ばされたでか狼はそのまま炎上し、それが合図となったのか周りにいたでか狼たちが一斉に葵めがけて突進してきた。


「マナよ、光に宿りて壁となって我らを守れ。光壁こうへき!」


桜が詠唱し、光の壁が葵と桜を囲む。イメージ的にはオーロラが2人を囲ってる感じかな。でか狼たちはその光の壁を突破できないらしい。

光の壁に守られた状態で葵はさらに左手に魔力を集中し始めた。付加する属性が強ければ強いほど魔法は強力になるし、魔力はお互い引き合う力があるので大気中のマナを多く必要とする高度な魔法ほど自分の魔力を強く錬成しなければならない、というのはこの前桜に教えてもらった。ということは葵の次の一発は相当強力な魔法なんじゃないか?

葵が詠唱を開始し、マナを自分の中へと取り込んでいく。


「マナよ、この地に住まう精霊へと我が声を届け、我が敵を薙ぎ払う力を我へさず、ぐっ!??」


「葵っ!???」


「葵さんっ!」

 桜、ナツが悲鳴に近い声をあげる。桜の光の壁を突き破り、葵の身体に突き刺さったのは、漆黒の鎧に身を包んだ黒騎士が手に持った西洋風の剣だった。


 葵が膝を折り、地面に崩れ落ちる。黒騎士が剣を葵が抜き取り、桜の方へと向き直った。

桜は状況を把握できておらず、ただ目を大きく見開いて葵を見つめている。

黒騎士の右手が動き、その凶刃が桜を襲う。


ドガッ!!!!


 強化した右足で思いっきり黒騎士の頭をけり飛ばす・・・つもりだったが左手に持っていた盾でガードされた。やつの剣が俺に向かって突き出されるが、相手の盾を足場に後方でジャンプすることでなんとかかわす。

 葵が詠唱を始めたあたりで急に黒騎士が現れ(闇の中から突然現れた感じだった)、その剣を葵に向けた瞬間に俺は全力で葵たちに向かって駆け出していたので、桜に剣が届く前になんとか割り込むことができた。が、状況はまるで好転していない。葵はなんとか生きてはいるみたいだけど、苦しそうに地面に膝をついている。桜は葵のそばへとしゃがみ、詠唱を開始していた。回復魔法を葵へかけてあげるところだろう。それに気付いた黒騎士が再び桜へとその剣を向けた。

 「させるか!」

葵が使っていたであろう刀を地面から拾い上げ、黒騎士へと突進する。

 黒騎士がこちらへ向き直った瞬間、反射的にのけぞるようにして回避運動。黒騎士の剣が俺の頭があった場所を通過していった。あぶねぇっ。

 連続して剣を振るう黒騎士に俺は防戦一方。全身を最大出力の氣で覆っているおかげでかすった程度では傷もできないが、直撃したらさすがに無傷ではすまないだろう。葵との特訓の時も思ったことだけど、突きっていうのは初心者の俺にはかなりかわしづらい。俺の技量では受けるなんてことはできっこないので、なんとか自分の刀で相手の突き軌道をずらし、後退しながらかわしていく。今はとりあえず葵が復活するまで時間を稼ぐことが最優先だ。ってか、ぶっちゃけ自分の身を守るので精一杯だけど。

 

ドガッ!「がっ!!??」


 そんなことを考えていたら頭部にハンマーで思いっきり殴られたような強い衝撃を感じた。視界が激しく揺れ、地面にたたきつけられるようにして転がる。

 蹴られたんだ、と認識したころにはもう目の前で黒騎士がその剣を構えていた。

 ・・・・あ、だめだ。


「マナよ、光に宿りて闇を照らせ!閃光せんこう!」


 俺が死を覚悟したその瞬間、閃光弾のような光が辺りを照らした。


 「・・・・・!!!?」


 黒騎士が一瞬ひるんだのを感じ、必死で転がるようにして回避運動。なんとか黒騎士との距離をとる。


 「ハル、大丈夫!?」


 ナツの声がすぐ近くから聞こえるが、さっきの閃光で俺の視界もやられてしまっているのでどこにいるかはわからなかった。


 「おま、ああいうのやるなら一声かけてくれってば!」


 「ごめん、そんな余裕なかったんだもん。」


 「・・・まぁ、たしかに。・・・サンキュ。」


 ナツの魔法が少しでも遅かったら今頃あの黒騎士のレイピアで串刺しだった。そう考えると今さらながら冷や汗がでる。

 まだ少しチカチカしてるけど少しずつ視界が回復してきた。すぐ近くに葵と桜も集まってきてるみたいだ。


 「・・・剣。」


 「とと、そうだった。」


 葵にさっき勝手に拾って使ってた剣を渡す。とはいえ丸腰じゃさすがに心細いなーって思ってたら葵が代わりの剣をくれた。葵が持ってる剣よりも若干グレードは低そうだが我がまま言ってる場合じゃないな。今は生き残ることが先決。


 目の前には黒騎士。その黒騎士の周りをでか狼がうろうろしている。

 こっちも葵と俺が前にでて、その後ろに桜。その斜め後ろにナツが控えている。


 「俺が黒騎士。サポートしろ。」


 葵が一言そうつぶやくと左手に魔力を集め、詠唱を始める。


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