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当日

言い争いもあり、食事をあまり食べれず大量の料理が残ってしまい、その全てを捨てるしか無かった。


洗う手はまだ少し震えており、気を抜くと落として割ってしまいそうになる。

だけど、父の忠告もあり、姉はそれ以上私に関わってくる事はなくこの日は更けていった。




ーーーーーー



翌日、とうとうアルバート様が家に来る日を迎えた。


部屋では姉が例のドレスを着て何度も自身の姿を鏡に写し、ニヤニヤと笑っているようだ。


「……いい、いいわ!なんて似合うのかしら!」


半開きの扉からは姉の甲高い声が漏れ、厨房にいる私にも聞こえてきた。


(とうとう……)


今日全てが分かるんだと思うと、姉以上に私もソワソワした気持ちになっていた。


「そ、そうだ……」


私はいつ来てもいいように家の前を掃除しようと、慌てて厨房を後にした。

家を出たところを掃きつつ空を見ると雲が空を覆い、遠くの方では黒い雲が見えた。

多分、雨が降るのだろう…。


風も少しずつだが強まり、冷たさを顔に感じた。


すると、ゆっくりだが、黒い馬車がこちらへと向かってくる事に気づき慌てて掃除をする手を止めた。


(き、来た)




家の前で馬車は止まると扉が開き中からは、見た事もない老人がまず降りてきた。


「失礼、ここはイシュバール家かな?」


話しかける老人は白髪で右手には黒いステッキを地面へとつき、腰を少し曲げながら私に声をかけてきた。


「……あ、はい」


「アルバート様、どうぞ」


老人の言葉の後、馬車からはあのアルバート様が降りてきた。

以前洋食屋で見たあのままの格好だ。


「……レオナはいるか?」

「え、えぇ、います」


私は慌てて家へと戻り扉を開けると中にいる姉に声をかけた。


「ほぉ……」


私の後ろからアルバート様が家の中に入るとゆっくりと周りを見渡し始めた。


「すこし埃っぽいですな」


老人が続いて入るなり部屋が汚いと指摘してくる。


「すみません!?」


私は慌てて謝るがアルバート様はそんな事は気にせず姉が来るのを待っていた。

すると、奥からドレスの両端を掴みつつこちらへとやってきた姉。


「あぁ~、アルバート様!?……ようこそ、我が家までお越しに」


普段では見慣れない姉の仕草や動作があった。


「あぁ、すまないな、急に」

「いいえ、お忙しい中、私なんかにお時間を取って頂き光栄ですわ」


とても丁寧に頭を下げ、お礼を述べる様子に私は姉の二面性にゾクっとした。

使い分けている、明らかに…。


要職の子達には使わなかった言動や所作。

でも、いま目の前にいるアルバート様に見せる行動は明らかに気に入られようと必死だ。


「立ち話もなんですから、どうぞこちらへ」


姉は自身の部屋へと招こうとした。


「そうですわ、今日はとても美味しい紅茶が手に入ったのです。お飲みになりませんか?」

「……そうだな」

「レナ、用意してくれる?」

「はい……」


「じゃあアルバート様、こちらへ」


姉とアルバート様は部屋へと移動していった。


「物腰の柔らかい方だ」


老人が姉をみて、ボソリと呟いていた。


「あの、何かお飲みに?」


私が声を掛けるとこちらを見て、頂くとするかと告げたので大広間に通し、座る老人に昨日買った紅茶を差し出した。


「……そなた、名をなんという?」

「え、あの、レナ、と言います」

「レナ?レオナと言うものは姉か?」

「はい、そうです」

「歳は?」

「あの…私と同じで、15です」

「ん?同じとは?姉なんだろう、同じとはおかしな話なんだが」

「いえ、私と姉は双子で……」


双子と言った私を老人は、『似てない』といいつつも納得したようだった。


「あの、し、失礼ですが、アルバート様とは……?」

「ワシは執事じゃ。それもアルバート様のお父上の、でもある」

「し、執事?」

「ラルフじゃ」


ラルフと言うのがこの老人の名のようだ。

確かに執事と言われ、リックさんのようにスーツ姿であるからもっと早く気付くべきであった。


「そうでしたか……ごめんなさい」


謝る私に頭を下げる必要はないといい、出された紅茶を飲んでいた。


「ウォーレン様も良い方を見つけたようだ」

「うぉ、ウォーレン?」

「なんだ、アルバート様を知ってるんじゃないのか?

アルバート=ウォーレン。街の者なら知ってるはずなんだが?」


下の名なんて初めて聞いた。

いや、そもそも私には縁遠い人だったから知ろうともしなかった。


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