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街での出来事

その後、父は私から離れ、私も姉の言われた通り隅々まで掃除をし姉を呼びに向かった。


「遅かったわね、もうお昼近いんだけど?」

「……遅くなりごめんなさい」

「まぁ、いいわ。ちゃんと綺麗にしたんでしょうね」


声を掛けた私に気付くと椅子から立ち、私を引き連れ、部屋へと向かった。


入るなり先程と同じように周囲を見ては天井へと目を向ける。

時には近寄り、指でなぞっていく。


「ふーん」


指を見て出す声に私は唇をキュッと噛んだ。


「やればできるじゃない。最初からそうしてれば良かったのに、馬鹿ね。あんたは」


褒め言葉と嫌味を同時言われ、つい目を背けた。


「これで明日はアルバート様が来ても大丈夫そうね。

明日のために栄養取らなくちゃ!それにたっぷり寝ておかないと。クマなんて作ったら最悪だわ」


私に近寄ると、すぐにお昼を用意しなさいと告げてきた。

しかもいつもは出す料理の指定は無いのに、今回ばかりは指定してきた。


だが、それを作るには食材が無かった。

その旨をつい口に出すと、買えばいいじゃない?とだけ返ってくる。


もう一度街に行くのは嫌だった。

噂話をもう一度聞く羽目になるのかもしれないのだから…。


渋る私に姉は腕を掴むと部屋から追い出すように自分の部屋から私の部屋へと引き連れて行った。


「えっ」

「いつものバックさえ持てば行く気になるでしょ。私はお腹がペコペコなの」

「そんなぁ」


部屋へと強引に行かされ、バックを持たされた私は扉の外へと追い出されそうになった。


「早く行ってきなさいね」

「待って!」


私は掴まれた姉の手を掴み返した。


「……なによ?」

「今日は、その、色々動いたからまた行くのは辛い。お姉様の望む料理はできないかもしれないけど、他なら出来る」


代替えを示し、街に行くのを拒んだ。

すると、姉は私が持つバックを奪い去ると告げてきた。


「私は『それ』が食べたいのよ!そういう気分の時だってあんただってあるでしょ!

……いいわ。私が行く」


バックを奪った姉は掴まれた手を振り解くと、私に掌を向けてきた。

だが、意味がわからず首を傾げた。


「あんたも鈍いわね!お金、お金よ!?」


やはり自分のお金は出さない…。

私はポケットからあの巾着袋を渡すと姉は足早に家を去っていき、街へと向かっていった。




ーーーーーー




あれから姉はしばらく帰ってこなかった。

お腹の空かせた姉のために望む料理以外を少しだけ作りつつ待っていた。

でも頭の中はモヤモヤしていた。

噂話の人物であろう姉が街中を歩いている。

もしかしたら囲まれ色々詮索されているんじゃないか、はたまた、買い物なんてそっちのけでチヤホヤされ有頂天になってるんではないか…と。


帰ってこない姉に対し色んな妄想が広がっていた。

そんな時だった、扉が開き姉の声がしてきた。


「あぁ~、なんて日なんだろう!」


陽気だ。

しかも出迎えた私を見るなりバックから何かを渡してくる。


「あんたにあげるわ」


姉が手渡してきたのは青いシュシュだった。


「これは…?」

「少しでもアルバート様に可愛く思ってもらいたいから髪留めを買ったのよ。そのついで。

それよりもいい話を聞いたわ!?」

「な、なにを?」


姉の陽気な態度、しかも絶対に私なんかに買う事もないのに買ってきた行動。

その後に出てくる言葉に私は言葉を失くした。


「アルバート様が好きな女性、……私に違いないわ!?ブロンズの髪でエメラルドの瞳。

それって私よね!街を歩いたら皆、私の事を見て噂するのよ。

あぁ~私って罪な女。明日どんな顔して会えばいいのかしら」


高笑いしつつ私にカゴを手渡し大広間へと消えていった。

だが、バックの中身に食材はなく、私が渡した巾着袋以外何も入って無かった。


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