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翌日、朝から姉はバタバタとしていた。


「ちょっとぉ、早くして、お父様!」

「……」


食事もそこそこに姉は父を急かし、早く家を出たそうだった。

昨日起こった衝撃的な出来事。

父は姉に従う他なく、姉に背を押され力なく家を出ていった。


だが、出る前に姉は私に言い放っていた。


「明日、アルバート様が来るんだから私が帰ってくる前に掃除しときなさいね。ちゃんとしたかどうかチェックするからね!

それと、分かってるわよね?来るんだから買っときなさいよ」

「……うん」


買え、と言うのはお茶や菓子だろう。

でもそれを買うお金など姉は一切出す事はない。

全部私持ちだ。


「昨日あれ程いったのに、あんたって物欲ないわね。何でも買ってもらえるチャンスよ!?」

「可哀想だよ……」

「可哀想?どこが??」

「どこが、って…」


使える物は使う、利用できる者は利用する。

姉の根底にあるのは多分そういう気持ちなんだろう…。

本当にアルバート様と婚姻なんてしたらもっと拍車がかかってしまうのではないだろうか…と心配だ。


大広間を片付け、誰もいない家でゆっくりしようと思ったが、今日はそれも出来そうにない。

優先順位をつけるなら、買い物、掃除、そして私の時間だ。


「はぁ…」


怒やされるのはもう苦痛なので私は父と同じ重い足取りで家を出た。





ーーーーーー





「お、レナじゃないか。この前はどうした?黙って去っていくなんて今までなかったじゃないか」


魚屋の店主が私に話してくる。


「すみません、あの時は…」

「いや、もういいさ。それより聞いたか?」

「何をですか?」


店主が指差す方には屋敷が見えた。


「アルバート様にどうやら好きな女がいるらしい」

「えっ」

「いまじゃ誰かって噂話をそこらじゅうでしてるぞ」


店主の言葉に私はガンと頭を打たれた気がした。


(まさか……)


「レナは誰だか知らないか?」

「い、いいえ!?」


首を真横に何度も振り、知らない素ぶりを見せた。


「まぁ、王子が好きな女なんだからとびきり綺麗なんだろうなぁ。その点、俺の娘なんて……」


店主は自身の娘さんを卑下するように項垂れ、ブツブツと文句を言い始めた。


「あの…」


私は店主から逃げるようにその場から去っていった。


「……なんだよ、また去っていくじゃねぇか」






「そんな……まさか……本当に上手くいくの?」


姉の妄想とばかり思っていた事が現実になるのかもしれない。

そう思うと私の心臓はバクバクと鼓動し、軽い過呼吸気味になってしまっていた。


(噂…そう、噂だ)


自分を落ち着かせるために何度も同じ言葉を繰り返し頭の中で唱えていく。

だが…。



「アルバート様の相手ってブロンズの髪をしてる子らしいわよ」

「本当に?」

「ブロンズなんて一杯いるじゃない」

「でも、あんたじゃない事は確かね!」

「酷いわね!?」


(ブロンズ……そんな……)


街で聞く噂話がどんどんと私の中で確信めいていく。

本当に、実現してしまうのか…。


(いやだ。絶対に!)


私は買う物だけを買い、すぐに帰ろうと足早に目的のお店へと向かった。


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