秘密
それから数日…
父からは何も言ってこない。
と言う事はまだ結果は出てないのだろう…。
そんなに長く日数が必要なのだろうか。
私以外は受けていないような印象だったが、それを知る術はない。
それよりも…
「レオナ」
「なに、お父様」
いつものように大広間で囲いながら食事をとっていると父が姉に一枚の茶色の便箋を渡した。
「これは?」
「開けたらわかる」
詳しい事は一切言わずに渡す父を、姉は軽く首を傾げつつ渡された便箋をビリビリと破っていく。
中からは一枚の紙があり、それを読み始めた。
「……」
私は紙を見る姉の方を見ず、なるべく早めに食事を終わらそうと手を動かした。
「……嘘っ」
姉の声につい反応し、そちらを見ると口元に右手を添え驚いていた。
「お父様、これ、本当?」
「……何が書いてあるかは俺は知らん。ただ、渡してくれと言われたから渡したまでだ。
なにか良い事でも書いてあるのか?」
「良いも何も……やったぁ!?」
姉は立ち上がると椅子は後ろに倒れたが、そんな事はお構いなしにはしゃぎ、クルクルと回りながら喜びを表現していた。
「嘘みたい!アルバート様がまた会いたいって!?
しかも今度は家にくるって!?どうしよう!?」
「そうか。良かったな」
「良かった所じゃないわ。家にくるって事は部屋で話すのよね。綺麗にしなくちゃ」
「……別に明日来る訳じゃないだろ。いつなんだ?」
父の問いに姉はもう一度、紙に目を通す。
「えっ……。明後日?明後日なの!?なんでもっと早く渡してくれなかったのよ!?」
姉は便箋を早めに渡してくれなかった父に近づき責め始めた。
詰め寄り言葉をかける姉に、父はうんざりした表情を見せながら対応しており、その様子を私はチラッとみるだけに止め、あまり見ないようにしていた。
「明後日だなんて困ったわ。着る服が無いのに」
「……いくらでもあるだろう。服なんて」
「なに言ってるの!アルバート様よ。前回と同じなんて恥ずかしくて着れないわ」
「前回じゃなくても他にも色々持ってるだろう、いくつ買ってやったと思うんだ」
「そんな言い方ないんじゃないの?……ねぇ、お父様」
「ダメだ」
強請る姉を父は一蹴し、大広間から出ようとしていた。
でも…。
「……私、知ってるんだから」
「何をだ?」
「お父様の秘密」
姉の言葉に父は出て行こうとした足先を戻し、姉の方を向いた。
「何を言ってる、俺に秘密など無い」
「いいえ、……ある」
姉は自信たっぷりな顔を見せ、腕を組み父と向き合った。
「なら言ってみろ」
「いいのかしら?レナもいるんだけど?」
二人の視線が一気に私に向けられた。
「……」
見られた事で手は止まり、私は二人を交互に見ていく。
「いいんでしょ、お父様、言って」
「……」
「お、お父様?秘密って?」
姉は父の秘密を知っている様で焦りなど見せない。
一方で、父は少し額に汗が浮かびつつある。
少しの静寂の後、姉はゆっくりと口を開いていった。