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実物

入った先にいる赤髪の男性に対し、リックさんはすぐに頭を下げた。

この人は多分…。


「アルバート様、レナ様をお連れしました」

「あぁ」


やはりアルバート様だ。

初めて間近に見るその人は若いが、ただならぬオーラを発しており少し気後れしてしまいそうだった。


「こっちに」

「はっ。……レナさん、どうぞアルバート様の前まで行ってください」

「は、はい」


ぎこちなく歩き出す。

部屋の中は物が少なく、アンティーク調の椅子と机、後ろには黒枠の本棚があり隙間なく埋められていた。


「あなたがレナ、だな」

「はい……」


少し上目遣いで私の事を見てくる。

目の前にいるアルバート様の顔は綺麗だった。

見た目は私より年上だが、そんなに離れてるようには見えなかった。

少し切長な目で色は青、唇は血色のいい赤色をしており、なにより特徴的なのは声だ。

低く落ち着いた感じでゆっくり話す様子は実際の年よりかなり上の人の話し方だ。


「あの……」


ただずっと見られる事に耐えれず私は声を出すと同時に目を逸らした。


「いや、失礼。先日は君の姉の世話になった」

「い、いえ」


これは試験なのだろうか?

料理ができる人を探しているのだから何かを作り、それを審査する…そうとばかり思っていた。

しかしそれとはかけ離れており、膝がすこしカクカクと動き一刻も早く終えて欲しい気持ちになった。

そんな私の様子を感じ取ったのだろう、フッと笑い話しだした。


「そんな緊張などしなくて結構。気楽に話がしたいだけだ」


いきなりそんな事言っても無理だ……。

目の前にいるのはこの国の王子だぞ、と頭の中で問いた。

逸らした目を少しだけ戻しチラリと見ると目が合った。


「レナ=イシュバール」


突然フルネームで私の名を呼んだかと思ったら私の生い立ちをつらつらと話し出した。

そのどれも間違っている箇所はなく…。


「君は姉が嫌いだそうだね」


その言葉に思わずリックさんの事を見てしまった。


「あぁー、リックを責めないで貰いたい。関係ない、

周りの人間に調べさせた。……というより知っていた」

「知っていた?」

「君の父と私の父は古くからの付き合いだ」

「そう、ですか」

「君と姉は双子、見た目は一緒だが性格は全く違うようだ。今日会ってみてより確信した。

君の姉は私には無いものを持っているみたいだしな」

「無いもの、って」



その後、私達は世間話をし、そして…。



「…君のことはよく分かった。もう帰っていい。

リック、後は任せた」

「はっ」


「あの!」


私はこれは何のためにしたのか、試験と聞いていたので自分が思っていた試験内容を問い詰めた。


「……料理ができる者を探しているのは本当だ。さっきも言ったが君の家庭は君が料理をしていると聞く。ならできて当たり前だ」


的確に返し、アルバート様は私に背を向けて本棚の方を見始めた。


「レナさん、行きましょう」


軽く背を押され私は部屋を後にされた。






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