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会話

ポルトニアに到着するも、何故か店の正面では無く裏口だった。


「着きましたよ」


スッと立ち扉を開けようとするリックさんに私は『どうして?』と声を掛けた。

すると、察したようにリックさんがあなたとお姉さんの配慮ですよ、とだけ言い扉を開き先に降りていった。


降りた側には店の裏口、白い扉が目の前にあり軽くノックをしたのち返答を待たずにリックさんは開け、中へと入っていく。

戸惑う私だったが、着いていく他なく中へと入った。

すると、入った先は厨房へと繋がり、私達の姿を見た従業員達は一斉に目線をこちらに向けるが、特に声を上げる事はなかった。


「ちゃんと話は通っているので気にしないでください」


リックさんは説明しつつ先を進むが、私は気になりそちらへと目線を向けてしまっていた。

そして従業員の一人と目が合うが、程なく目線を逸らされ何処かに行ってしまった。


「あの、姉は……」

「アルバート様と一階にいます、これから私達は二階へと向かいます」


人気店のポルトニアは多くの人を入れるため二階にも席が用意されており、これからその場所へと向かうそうだ。

赤茶色の壁が続く廊下を歩いていき、左に曲がると店内へと出た。

だが、そこには私達の姿を隠すように白い大きなパーテションが立ち、すぐにその横にある階段を登り始めた。


配慮がされているとはこう言うことか…と納得しつつついて行き、二階に並ぶ丸いテーブルの一つに私を座らせた。


「この下にアルバート様とお姉さんがいます」


その言葉に急に緊張が走り、息を呑み、口元を両手で押さえ始めてしまった。


「そこまでしなくても大丈夫ですよ、従業員も配膳をしたりと動き回ってますので神経質にならなくても」

「で、でも」

「何か飲んだら落ち着くはずです。何か貰ってきますのでそこに居てください」


そうしてリックさんは私の元から離れていき階段を降りて行った。

二階にポツリと残された私はつい聞き耳を立て、下にいる姉達の会話を聞き取ろうとしていた。



ーーーーーー



「アルバート様、お会いできて本当に嬉しいです!こちら私が作った物ですが、良ければ!」


姉の声が聞こえた。しかもご丁寧に自身が作ったと大嘘をつきながら…。


「……」


肝心のアルバート様の声が聞こえてこなかった。

声が小さいのか、それとも姉が張り切りすぎて私にも聞こえるくらい大きいのだろうか…。


「さぁ、お召しになってください!」


私が渡した白い箱からモンブランを出しているのだろう…。

今思えば人気店にいるのだから持ち込むのはいささか失礼では、と私は思い込んだ。

だが、姉はアルバート様に気に入られようと必死だ。


「ど、どうでしょうか??」


「ほ、本当ですか!?やったぁ!?」


以前として姉の声が店内中に聞こえる。

あんな高い声で話す姉に対し恥ずかしい気持ちになってしまう私だったが、どうやらモンブランについては好評のようで、そこは救いだった。


「ご趣味はなんですか?私は…」


今日と言う日を待ち望んでいた姉は矢継ぎ早に質問をし、少しでも接点を持とうと必死のようだ。

内心、姉の言葉から発する言葉は嘘がいくつもあるようだが、アルバート様にはそれはわからないのかも知れない。

耳を傾け聞いている私の耳に階段を上がってくる足音が聞こえてきた。


「お待たせしました」


リックさんの手には銀色のポットと白いティーカップがあった。

テーブルに置くとそのカップの中には輪切りにカットされたレモンが一つ入っていた。


「紅茶……?」

「紅茶は苦手でしたか?」

「い、いえ、大丈夫です、すみません」


ゆっくりと注がれる紅茶から香る匂いが少しだけ私の体から緊張を解いていった。

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