第29話 戦争?と結婚!
あともう一話閉話を投稿して終わりになります。お読みいただければ幸いです。
パルタ王国王宮にて
パルタ王レオン・アギス・パルタはいつもの訓練をこなした後、王としての執務を取っていた。
50を過ぎても身体は鍛え抜かれた筋肉でおおわれ、その眼光は鋭く、顔や体にはいくつもの古傷が残っていた。
「どうも事務仕事は苦手だ」とひとり呟いていたところ、第1皇子のクレオメネス・エウリュス・パルタが焦ったように執務室に入ってきた。「父上大変です!」
「王子が慌てるものではない。下の者に示しがつかないではないか」とレオン王はたしなめた。
「それどころではありません。ダイワ王国軍と指揮官であるジョン・クサツ伯爵が王に面会したいと、国境を越えて進軍してきています」
「なんと、ダイワ王国軍随一の武闘士であるジョン・クサツがか!」
「それだけではありません。コロン合同国からタカシ・クサツがやはり王に面会したいと兵を率いてやってきています。そして、ターフ連合大公国からユウシ・クサツがやはり兵を率いて王への面会を求めてやってきています。どの国も腕利きの武闘士と魔法使い、亜人兵や亜妖精を連れており、大変な戦力を保持しています。さすがのわが国でも戦って勝てるかどうかわかりません。今は同盟国やパルタ軍には戦闘を控えるように命じています。いかがいたしましょうか」
「クサツの三恐が揃ぶみか。これは最高の死に戦の舞台だな。とりあえず、オリンピック平原にて会おうではないか。その旨、3人に使者を送ってくれ」
「あと、レオニダスが今こちらに向かっているそうです。迎えの者をやりますか」
「そうだな、父の最高の戦いをやつにも見せてやりたいからな。馬車を手配し、迎えに言ってやれ」
「父上、もしよかったら私も戦いたいのですが」
「うん?お前は跡取りだろ」
「このような舞台、私の一生に一度あるかないかです。血が騒いで仕方がありません。家督はレオニダスに継がせましょう」
「お前は、本当にわしの子だ。親子で逝くか」
「はい、冥府にお供いたします」
二人は笑いあった。
カヨたち一行にて
いきなりレオが真っ青な顔になって私たちの部屋に飛び込んできた。
「夜這い?いいけど責任取ってもらうわよ」
「冗談言っている場合じゃないんだ。ダイワ軍とコロン合同国軍、ターフ連合大公国軍がパルタに攻め込んできたんだ。急いで戻るよう馬車が来ている。申し訳ないけどここでお別れです」
ちょっと待って。なんか聞き覚えのある国ばかりなんだけど。
「とりあえず私たちもついていくわ。その国にはコネがあるし」父と兄たちの伝手を使えばなんとかなるかもしれない。
「そんなレベルの話ではないのです。ジョン・クサツ殿とその二人の息子が軍を率いてきています。パルタ単独ではとてもかなわないし、同盟国を動員しても互角に持ち込めるかどうか。それに急なことで、同盟国を動員するのは時間的に難しい。ほぼ負けが確定している。父も兄も玉砕するつもりだ。だからすごく危険なんだ。とてもカヨさん達を連れていけない。って、カヨさん達、どうして頭を抱えているの?」
父や兄たち何やっているの!
「ごめんレオ、それ私たちが絶対に何とかできると思う。一緒に行こう」
「でも危険だよ」
「実は私の本名はカヨ・クサツ、妹たちはサヨ・クサツとフェー・クサツ。ジョン・クサツの娘なの。父上たち何を考えているのかわからないけど、私たちのことを父も兄たちも溺愛しているから行けば何とかできると思う」
「えっ」レオは驚きすぎたのか、声に詰まってしまった。
しばらくしてから、納得したように話し始めた。
「カヨさん達ってクサツ殿の娘だったんだ。道理で強いわけだ」
「とりあえず行きましょう」
私たちは馬車に乗ってパルタ王のもとに急いだ。
私たちが着くと、オリンピック平原には、パルタ軍とダイワ軍、コロン合同国軍、ターフ連合大公国軍がにらみ合っていた。
王と第一皇子が二人中央に立ち、それと対峙するよう父と兄たちが立っていた。
「わしに会いたいとはどういう要件かな」パルタ王は威厳を保ちつつ、大声で言った。
父が軽い調子で言った。
「ちょっと待ってくれ。ちょうど当事者が来たようだ。おーい、カヨ、サヨ、フェーこっち来いよ」
私はレオを連れて、中央に来た。
「父上、遅くなりました」レオがパルタ王に挨拶した。
「うむ、レオニダスよ。久しぶりだな。ところで、そなたのそばにいる方々はどなたかな」王は少し訝し気な顔をしながら訪ねた。
「私の名前はカヨ・クサツ、後ろに控えます二名は妹たちでサヨ・クサツとフェー・クサツと申します。レオニダス様と一緒にパーティを組んでおります。実は王にお願いがあります」
父や兄たちがにやにやしている。王は何が何だかよくわかっていない様子だ。
「ほう、そうか。それで願いとはなにか」王はとりあえず尋ねてきた。
「レオニダス様を私たちの婿に欲しいのです。婚約者がいるそうですが、うまく話をつけてはいただけないでしょうか」
父と兄たちがよく言ったと、私たちを称賛するとともに、王に対してまさか断らないだろうな、断ったらお前どうなるか分かっているだろうなと言うものすごい殺気が率いている軍全体から発し始めた。
王は少し不思議がりながら、「ああ、別に構わんぞ。婚約者と言っても特に政治的なものではなく、こいつがどっか行ってしまわないようにくさびのつもりで婚約させたものだからな」王が言った。
すると、「ちょっと待ってください」と後ろから声がした。
「私はレオニダス様の婚約者のニキでございます。いくら政略結婚だからと言って、簡単に夫となる男を奪われては女が廃ります。ここはパルタの流儀で戦いにて決着をつけたいと思います」と言った。
ニキと名乗る人物は体が大きく、全身が筋肉に覆われながら大変スタイルのいい女性だった。
「いいね、男をかけた戦いだ。カヨ、サヨ、フェー負けるなよ」と父上がはやし立てた。
兄上たちも笑っていた。
そうだね、戦って勝ち取るのは、クサツの流儀でもある。
「望むところ、一つ勝負しましょう」
私とニキは向かい合って、戦闘態勢を整えた。
両陣営から応援の声が上がっていた。オリンピック平野は応援する声に包まれた。
とりあえず、先手必勝、私は急速に接近し、拳を腹に充てようとした。ニキはさっとよけて、私の腹に拳を食いこませようとした。
私は後ろに飛び、拳の直撃を免れると、頭に右足の回し蹴りをした。右足を手で受けたので、そのまま頭めがけて左足で打ち込んだ。
今度はよけきれずかすった。
そのショックで頭に衝撃が来たのだろう、ガクリと膝を落とした。
そのすきに脳天に回転蹴りをくらわせた。
そのあとはラッシュラッシュでぼこぼこにした。
ニキは倒れて、私の勝利が決まった。
歓声が轟いた。
私はレオに近づき、跪いていった。
「どうか私達と結婚してください」
それまで呆然としていたレオはハッと、気が付くと「父上の許しがいただけたのでしたら、ぜひともお願いいたします」と言って手を取った。
再び歓声が轟いた。
そのあとは宴会だ。オリンピック平野は大宴会場になった。
父も兄たちもおめでとうと言ってくれた。
「でもなんで兵を率いてきたのです?」
「いや、名を貸してほしいと言うから、よっぽど惚れた男がいるのかなと思って、婿の見物がてら娘たちをサポートしようと思ってな」
「僕らも妹たちをサポートしようと思って来たんだよ」
そして、父と兄たちはレオの方を見て、「それじゃ一つ婿殿の味見といきますか」といって、ニヤリとした。
レオは引きつった顔で、「お手柔らかにお願いいたします」と言った。
レオは3連戦させられ、何とか相手していたが最終的にぼこぼこにされていた。
「なかなかいい感じだったな。わが家の婿にふさわしい」父は言った。
「妹の相手として及第点かな。もう少し頑張ればもっと強くなると思うよ。その時が楽しみだ」兄二人が楽しそうに言った。
レオの父と兄もレオの戦いを見て、火が付いたのか、「我々にも一つ相手をしてくださらぬか」と戦いが始まった。
父や兄達についてきていたファー母さんやフィー、フゥーがフェーと、内側に顔を向け車座に飛びながら、くるくると回っていた。その姿は亜妖精の美しい容姿と、美しい妖精のような羽で飛ぶ姿はとても幻想的だった。
「フェー、男捕まえたの」「捕まえたの。美味しそうなの」「たくさんしてたくさん増えるの」「私たちもたくさんしているの」と話している内容はとてもえぐかったが。
クレオメネス・エウリュス・パルタはその姿に見惚れていた。
「亜妖精を見たのは初めてです。美しいものですね」
「普段はな。おい、ファー」父がファー母さんを呼んだ。
ああ、本来の姿を見せるのね。間違いなく引かれるわ。
「亜妖精はもともと人を食う化け物だ。若い男をたぶらかし、異界にある自分たちの集落に引きずり込み、絞りつくした挙句その肉を食らう。おまえはこれに耐えられるかな」父は、ニヤリと笑うと、ファー母さんに元の姿に戻るように言った。
ファー母さんは触覚を生やし、目を複眼にし、口には鋭い牙が生え、手は巨大なかぎづめが出た姿に戻った。
クレオメネス殿は一瞬びくりとしたが、まじまじとその顔を見ると、「レオはこの方の娘を妻にするのですか」と尋ねた。
レオは、「ええ、フェーさんも妻にするつもりですよ」とクレオメネス殿にこともなげに言った。
「ジョン殿、もしよかったら私にも亜妖精を紹介していただけないでしょうか」クレオメネス殿は思い切ったように言った。
「わかった。もうすぐファーに子供が生まれるからその子を君にやろう。ファー、構わないよな」
「構わないの」ファー母さんは何でもないように言った。
「ええっと、そうするといただけるのは10年以上後と言うことでしょうか」
父は少しきょとんとした顔をして、ああと納得したような感じで「亜妖精は数か月で大人になるし、丁度今孕んでいるから1年もあれば嫁に出せるよ」と言った。
ファー母さん、またできたんだ。少しびっくりした。
オリンピック平原では酒を飲みながらあちこちで武闘大会が開かれ、両軍の間でこぶしが舞い、魔法が飛びかった。女たちも女同士で戦っていた。
宴会兼武闘大会は朝まで続いた。
ちなみに父はニキさんを口説いていた。父は強い女が好きだからな。ニキさんもまんざらではないようで、母親が増えるのかなと少し思った。
これ以降、このオリンピック平原で4か国による合同の武闘大会が開かれるようになった。
未来にはこれが拡大し、オリンピックと言う運動競技が開かれるようになったと言うが、これはかなりのちの世の話である。
朝になって、私たちはレオを幕舎に連れ込み、寄ってたかってむさぼった。
メリンダは最初のうち遠慮していたが、私たちに強く誘われると、「それじゃ」と我々に加わった。すごいテクニックだった。今度教わろう。
脱がしてみると、いわゆる細マッチョと言うやつで、なかなかいい体をしていた。私たちは飢えたオオカミのように一日中交わった。レオは私達4人の攻撃に耐えきった。
結婚式は国に帰ってからおこなった。メリンダは遠慮していたが、一緒にやった仲だし、いろいろ夫婦生活についてレクチャーしてほしいからと、説得してレオの嫁の一人に加わった。
レオはクサツ伯爵家の養子となり、名前をレオニダス・パルタ・クサツとなった。
王に謁見して、将来爵位を継いだ時に辺境伯若しくは侯爵に陞爵することを約束され、当面の間は近衛武闘兵団団長付となった。
レオは魔法兵団にも参加を希望し、魔法兵団付の魔法士として、兼務で働くこととなった。
ニキはなんと父上の側室になった。まあ、お母様たちと父上の壮絶なバトルの末だが、その実力からお母様たちにも認められた。
レオは複雑な顔をして、「ニキ殿を母上と呼ぶのか」とつぶやいていた。
まあ、元婚約者が義理の母になるなんて、少し複雑な心境なのだろう。
私たちはとても仲良く日々を送っていた。私たちの婿探しは無事に終わりを告げた。
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星一ついただければ大変感謝です。ブックマークをいただけたら大大感謝です。ぜひとも評価お願いいたします。
4月も忙しいですが、だいぶましになるはずなので何か書きたいと思っています。未完の小説を書くか、それとも新作を書くか迷っております。