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名門出身の武闘士が、魔法使いにあこがれて魔法使いになろうと頑張る話  作者: 信礼智義
第3章 クサツカヨとサヨ、フェーの冒険
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第26話 新しい仲間?

毎日18時に投稿しています。お読みいただければ幸いです。

 私たちは前に進むことにした。後ろからは何人かフードをかぶった連中が付いてくる。

 「まるで送り狼ね。私たちが弱ったら襲って来ようというのでしょ。皆殺しにする?」

 「そうしてもいいのですが、奴らは病院に雇われているのでそっちから苦情と賠償を求められますよ。 まあ、戦闘に巻き込まれたことにして消してもいいですが。カヨさんのお考え通りにしますよ」レオが言った。

 「そうねえ…」と私が悩んでいると、フードの連中の一人がやってきて、「何やら物騒な話をしているので、話をしにやってきた。俺はこの死体あさりの組のリーダーである「腐った肉」だ」ひどく低い声で話し始めた。

 「俺たちはあんた等を襲わないし、怪我をしたら助けよう。その代わりあんたたちの後についていくことを認めてほしい」

 「何で私たちの後についてきたがるの?」

 「あんたに強い。おこぼれだけで相当な稼ぎが期待できる」

 「わかったわ。でも後ろについてこられるとうざいのよ。一緒に行きましょ。別に戦わなくていいわ。戦闘が始まったらすぐに後ろに下がって。それでどう?」

 「わかった。そちらの方が私たちもありがたい」

 死体あさり達は5人いた。全員がフードをして長いコートを着て更に巨大な手袋をしていた。

 

 しばらく進むと、アントのグルーブと出会った。周りには冒険者はいない。

 いつも通り、レオが魔法を使い、私とサヨが肉弾戦を、そしてフェーが悪霊たちを使って攻撃した。次々と倒していったが、一匹抜け出して、レオに向かっていった。

「レオ!」思わず大声を出すと、レオは「突」というと拳を繰り出した。その拳はアントの体を吹き飛ばした。実に見事な拳だった。思わず見惚れてしまった。


 アントたちは全滅した。私はレオに言った。「あんた正規の武闘士なの?実に見事な突きだったわ」

 レオは渋い顔で、「私の家は武闘士の家系でダイワ王国外ではかなり有名な家なんです。でも僕は魔法士になりたいと思って家を出ました。敵に接近されたので思わず出てしまいました」と言った。

 「いや、すごいよ。迷宮を出たらぜひとも手合わせしてほしいな」と私が嬉しそうに言うと、苦笑いしながら「まあ、カヨさんが望むのなら」と言った。


 さて、アントの死体を回収していたら、レオが「腐った肉さん、私が倒したので良いのなら1体持っていくかい?カヨさんもいいよね」と言ったので、「レオが倒したのだから別に構わないのだけど、どうしてなの?」と聞いたら「私が倒したのだけ倒し方が違うから、出口の受付で変に疑われたらいやですしね。死体あさりは出口の関所はフリーだから彼らなら問題ないし」

 腐った肉はびっくりした顔をして、「本当にいいのか?アントの死体は高く売れるのだぞ」

 「構わない。ただし、アントの死体は君たちが処理してくれ」

 「ありがとう。それではもらい受ける」と言って、アントの死体を回収した。アントの死体を確認した死体あさりたちはアントにできた傷を見て何かに気が付いたのだろう、びっくりして言いかけた。

 「あなた様は……」腐った肉は、レオが口に指をあてた姿を見て、黙ってしまった。

 冒険者はいろいろ訳アリの者が多いと聞くが、レオも何か訳アリらしい。

 まあ、強ければ父も何も言わないだろう、って何を考えている私は。


 そのまま進むと、一組の冒険者と出会った。男3人と女1人のパーティだ。

 時空収納持ちなのだろうか、何も持っていなかった。ただじろじろと私たちを見ていた。

 そのまま出口に進もうとしている様子だった。

 声をかけることもなく、そのまますれ違った。ただ、男たちが私たちを見てにやにやしていた。

 

 「このあたりで一泊しよう」レオが言った。野宿する場所の周りに何か砂のようなものをまくと、北側に床を掘ってその周りに目隠しをした。

 中央に台を置くと、時空収納からスープの入った鍋を取り出し、小さい火弾を鍋の中に打ち込んだ。一瞬にしてスープが温まった。

 時空収納からパンをたくさん出すと、「さあ、めしあがれ」と言って、私たちに勧めた。

 スープを一口飲むととてもいい味で、具もたくさん入っており、パンは柔らかくとてもおいしかった。レオの料理は本当においしい。


 「君たちもどうだい?」死体あさりたちに言うと、彼らはびっくりした顔をして「俺たちに分けてくれるのですかい?」と尋ねてきた。

 「隅の方で固まって別のものを食べているみたいだけど、なんかとてもおいしそうには思えない。大したものではないけどもしよかったらどうかなと思って」

 

 死体あさりたちは黙ってスープとパンを受け取って食べ始めた。

 「うまい!」「こんなうまいもの生まれて初めて食べた」中には泣きながらスープを口に運んでいる者もいる。

 「俺たちは普段は病院から出る残飯を乾燥させて固めたものを食べている。これは報酬の一部となっている。はっきり言って、くそまずい。でも食べられる。そうすれば生きていける」腐った肉はスープを口に運びながら言った。

 「報酬で食堂に行くなり、食べ物を買うことはできないのか」とレオが訪ねると「俺たちは食堂に入れない。露店で物を買うこともできない。だから病院に卸した人間の部品の報酬として、食べ物や衣服、寝床をあたえられている。どれもゴミみたいなものばかりだが。だから今もらったこの食べ物は俺たちにとって本来一生縁のないものだった。本当に感謝する」

 レオは、少し悲しそうな顔になりながら「たくさんあるから好きなだけ食べてくれ」とだけ言った。

 

 腹がいっぱいになると、「私たちは寝るけれどお前たちはどうする?」

 すると腐った肉は「俺たちは離れて寝る」と言ったので、「襲われないか?」とレオが尋ねると「俺たちの体はアントが嫌う臭いと味がする液が塗ってある。アントはそのことを知っているから俺たちを襲わない。他の冒険者は俺たちが体の部品しか持っていないことを知っているから、襲って奪おうとは思わない。なんせ体の部品は雇われた病院に行かなくては引き取ってもらえないし、闇の病院に売りに行くと、自分たちが部品にされかねないことを知っているしな。だから俺たちのことを冒険者たちは無視するのさ」と言った。

 「そうか、じゃまたな」と言って、死体あさりたちは別のところに移動した。


 「さて、じゃ寝る準備をしますか」とレオは言って、オオミズトカゲの皮を地面に敷いた。

 この皮は断熱効果と水を通さない特性があり、氷の上でも快適に寝ることができる優れものだ。更にその上に巨大な毛布を出した。この毛布は二つに折って、中に入って寝るようになっており、保温性が高く、かつ剣で切り付けられても簡単に切れないようになっている。

 「三人はこの毛布に入って寝てくれ」とレオが言うので、「あなたはどうするの?」と尋ねると「魔法士のマントにくるまって隅の方で寝るよ。わかっていると思うけどトイレはあの目隠ししているところだから。あと、周りに撒いた砂の外に出ないように。中に入れなくなるからね」と言って、ごろりと横になろうとしたので「不寝番はどうするの」と尋ねると「必要ないよ。撒いた砂は土魔法が仕込んであって、これを越えて中に入ろうとすると串刺しになりますよ。あと、魔法に対する結界も仕込んでありますしね」

 「私も悪霊を撒いておくの」フェーは言った。フェーの背後から黒い蛇のような悪霊たちが無数に発生し、周りに散っていった。

 「じゃ寝るか、明日はもっと奥に進みますよ」と言って寝ようとするので、「一緒に寝ましょうよ」と言って、毛布に引きずり込んだ。

 「えっ、さすがに未婚の男女が一緒に寝るのは…」

 「冒険中だもの。問題ないわよ。それともレオは私たちを襲うの?」と私はいたずらっぽく笑った。まあ、私たち相手にそれができたら受け入れてもいいかも。でも、責任取ってもらうけどね。

 「そんな無理やり何てしません。ちゃんと順番を踏んでからです。そういうことをするのは」とレオはドギマギしながら答えた。

 「じゃ問題なし、寝よ寝よ」と私がレオの右側の腕に抱き着き、サヨが左側の腕に抱き着いて、フェーがレオの上に載った。

 「動けないのですが」レオが困ったように言った。

 「うふふ、おやすみなさい」と言って、腕に私のふくらみを当ててみた。

 どうもサヨもそうしているらしい。レオの顔は真っ赤になっていた。

 フェーは胸にほほをこすりつけながら「美味しそうなの。食べたいの」と言った。

 見ると、目は複眼になっており、触覚も飛び出していた。姿が元に戻っていたのだ。

 レオの方を見ると、そんなに驚いていなかった。

 「レオ、フェーの姿を見て驚かないの?」

 「前に亜妖精を妻にしている武闘士の方と会ったことがあって、姿を見せてもらったことがあります。ターフ連合大公国に仕えている武闘士の方で、元はダイワ王国の第5武闘兵団にいた方だと聞きました。里帰りだったそうです」

 フェーは意外そうな顔をしながら、問題ないなら遠慮せずに食べちゃおうかと思ったらしい、レオに襲い掛かろうとした。ちなみに食料的な意味でなく、性的な意味でだ。

 「フェー、食べちゃだめよ」

 「もうレオでいいの。カヨもサヨもいいと思っているの」

 「あの~私生きているのですが。生きたまま食べられてしまうのでしょうか」レオが恐る恐る言った。

 「もういいから寝なさい」そう言って目をつぶった。すぐに眠りについた。

 しばらくしたのだろう。「ぐえっ」「げっ」という声が聞こえた。

 急いで飛び起きると、男が二人串刺しになり、もう一人が悪霊の餌になっていた。

 魔法使いの格好をした女だけ、悪霊と戦っていた。

 レオがすぐさま飛び出し、腹に一発衝撃波をくらわせて女を気絶させた。

 「こいつらさっきすれ違った冒険者です。きっと戦利品を奪いに来たのでしょう」レオは冷たい顔で言った。

 「さて、この女だけど持ち物と衣類をすべて脱がしてぐさいますか」


 私は軽蔑した目でレオを見た。「レオ、この女を犯すの?」男だから溜まるのはわかるのだけど、こんな女相手にすることないじゃない。それなら私が……ゲフンゲフン

 「この女魔術師だろ。なに仕込んでいるか分からないですから。最後っ屁とばかりに自爆されたらたまらないです。裸にしたら、フェーさん、何か仕込んでいないか悪霊で全身調べてくれますか」と言って、衣類や持ち物をもって私たちに背を向けて何やら魔法を唱え始めた。


 「フェーがしらべてみるの」と言って、悪霊たちで全身調べ始めた。事前に手足を縛っておいたが、しばらくして気が付いたようで「何!これ何!気持ち悪い!おねがい、取って!」と喚き始めた。

 

 「こいつすごいの。前と後ろの二つの穴には罠があったの。知らずに入れれば、突き刺さって毒が出るようになっていたの。あと口の中には毒薬が仕込んであって、キスしたら即死するの。胸にも毒が塗ってあってなめれば即死なの」とフェーは言った。

 レオが戻ってきて、「こちらも調べたけど、暗器や毒針があちこちに仕込んであって、一体何本あるか分からない。とりあえず服は預かっておきます。魔法の杖は普通の物だけど、自爆魔法が仕掛けられていました。外にも持ち物はすべて武器か爆弾か毒です。あきれるぐらい恐ろしいですね」と言って、感心していた。


 「ちょっと、あんたたち服返してよ。いつまで丸裸で置いておくの」とその女は言った。

 死体あさりたちが寄ってきて、死体をばらしていたが「旦那、この女どうします?ばらしていいならすぐにやりますが」と言ってきた。

 「ちょっと、やめてよ。ねえ、旦那、何でもしてあげるから助けてよ。これでも私凄いテクニックなのよ。そいつらみたいな小娘と違って最高の経験させてあげるからさ」と必死に言ってきた。

 レオは、はあ、とため息をつくと「カヨさんどうします?処分してもいいですが一応貴重な魔法使いですからね。使い捨ての肉壁代わりに使うのも手ですけど」と言ってきた。

 まあ、処分してもいいのだけど、利用価値のあるのなら使いましょうか。何かしたら処分すればいいのだし。

 とりあえず、死んだ冒険者から剥いだ代わりの衣服を与え、手足と首にフェーの悪霊を巻き、頭に爆裂石を仕込んだ輪っかを取り付けた。

 あと、魔法の杖以外はすべて没収した。

 

 私たちは先へ進んだ。捕虜にした女魔法使いの名前はメリンダと言った。

 「ねえ、これ以上進むの?」とメリンダはおびえたように言った。

 「ああ、奥まで行くつもりよ」と私が答えると、「ねえ、やめた方がいいよ。私たちが奥に進んだ時、何やら叫び声が聞こえたんだ。普通のアントは声が出せないはずだからか、アント以外かアントでも上級種だと思うんだよ。そんなのと戦うなんて危険だよ」

 「だから奥から引き返してきて、たまたますれ違った俺たちを襲ったわけか」とレオが冷たい顔で言った。

 「だって、全然アントが倒せなくて、奥までいったらそんな状態だろ。少しでも稼がなくちゃと思ったんだよ」

 「カヨさん、やっぱりばらしましょう」レオが私に向かって言った。

 「ちょっと待っておくれよ、お嬢ちゃん助けておくれよ」と半泣きで私にすがってきた。

 「ちょっとレオ、脅かすのはやめなよ」と言うと、「別に脅かしているわけではありませんよ」とひどく冷たい目でメリンダを見ていた。

 「まあ、役に立たなかったら、ばらせばいいのだから、今のところは大目に見てあげようよ」と私がレオを説得した。

 しばらくそのまま冷たい目で見ていたが、ため息をつくと「カヨさんが言うならしかたありません」と言って、目をそらした。

 「ねえ、この旦那何者だい。すごい殺気なんだけど」メリンダは尋ねてきたので、「うん、普通の優秀な冒険者だと思う…」正体を知らない私は言葉を濁すように答えた。



お読みいただきありがとうございました。もし少しでも気になりましたら星かブックマークをいただければ大変ありがたいです。

星一ついただければ大変感謝です。ブックマークをいただけたら大大感謝です。ぜひとも評価お願いいたします。


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