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名門出身の武闘士が、魔法使いにあこがれて魔法使いになろうと頑張る話  作者: 信礼智義
第2章 クサツユウシの闘争
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閉話7 女王の思考と北部大公の思惑

本日2回目の投稿です。お読みいただければ幸いです。

女王執務室にて

 「女王様お疲れ様です。そろそろ休憩されていかがでしょうか。お茶のご用意をいたします」女王が執務を取っていると、お側付のメイドから声をかけられた。

 「そうですね、ちょっと一休みしようかしら」そう言って、エリザベス女王は執務を止め、メイドが用意したお茶とお菓子をつまんだ。

 「姫様お疲れではないですか?」そのメイド、ドロシーは心配そうに尋ねてきた。メイドとして女王が幼い時からお世話をしてきた者で、彼女は女王にとって姉のような存在であり、気心の知れた存在であった。

 「もともと女王になる予定は私の人生ではなかったからね。どこか他国の王家に嫁ぐか、それとも大公家のどれかに嫁ぐか、王がどういう政略を建てるかで相手が決まることになっていたからね」

 ドロシーは少し渋るような感じてあったが、思い切ったように「ユウシ様に嫁がれてよかったのですか。言っては何ですが、他国の伯爵家で、悪名高きクサツ家の者ですが、姫様はお辛くないのですか」と尋ねた。

 「ユウシ様は好きよ。とても強いし、顔立ちだって悪くない。性格も基本穏やかで結婚するなら上等だと思うわ。身分だって、公爵の地位に昇っているし、伯父様や南部大公の覚えもいい、これ以上の婿がねはいないと思うわ」女王は微笑みながら答えた。


 「ねえ、ドロシー今の状況ってどうな風に考える?」突然女王は尋ねた。

 「今の状況とは?」ドロシーは思わず繰り返した。

 「私も少しは政治学を学んでいるの。将来どこかの王家に嫁いだ時に役立つように。まあ、さわりだけなんだけどね」女王は言った。

 「いま、この国は伯父様の北部大公が事実上支配しているわ。北部、中央、西部はベアード大公の支配下に置かれていると言って過言ではないわ」そう言って、机の上の書類に目をやった。

 「私が決裁している書類もすべて北部大公の目が通ったものを追決裁しているに過ぎないわ。私は事実上の傀儡ね」そう言って、苦笑した。

 「この国は、もともと5人の大公が力の均衡をもって支配していた国なの。それが、西部と東部は滅亡し、中央は力を失った。この国は、北部大公と南部大公の二人により収められているわ。この二人は今すぐではないにしろいずれ衝突するでしょう。どちらにしろ私の運命はあまりいいものではないわ」

 「どういうことでしょうか」ドロシーが訪ねた。

 「北が勝てば新しい王家は北部大公の家がなるでしょう。そして私たちは消されるでしょう。南が勝てば私たちは処刑よ。どっちにしても終わりよね」女王は苦笑しながら言った。

 「それでは、姫様に未来は」ドロシーが言いかけると、「まあ、詰んでいると言って間違いないわね」


 ドロシーが黙ってしまった。何も言えなかったからだ。

 「でも助かる道はあるの。それがクサツ家との縁よ」

 「クサツですか?」

 「狂気と死の体現者にして、ダイワ王国伯爵、近衛武闘兵団の団長、ジョン・クサツとその二人の息子たち、彼らは敵対するものすべてに恐怖と死をもたらす者、その一人を夫にした私はクサツの血を継ぐ者を生むわ。私が生んだクサツはどんな伝説をこの地に残すでしょうか」エリザベス女王は艶然と微笑んだ。

 「つまり、クサツと血をつなぐことで自らの運命を切り開かれるのですか」

 「そうね。正直分からない。でも、この婚姻は私が生き残る唯一の手段でもあるの。彼と彼のもう一人の正妻である亜妖精のフゥーさん、ダイワ王国魔法兵団幹部だったマゼンダさん、ブルーカさん、カラミティさん、この五人だけで、我が国の一個師団を壊滅させることができるわ。そして、東部地域に駐屯している、ユウシ君が指揮下に置く元ダイワ王国第5武闘兵団と亜妖精の集団は、その気になればこの国と互角に戦闘ができる戦力だわ。そして、父ジョン・クサツと兄タカシ・クサツがどう動くか、それによってユウシ君はこの国の王となるでしょう。望むか望まぬにかかわらず。私はそれについていくだけ。私と子供が生き延びる世界が作れるなら、あとのことはすべて関係ないわ」

 「姫様、大人になられましたね。ドロシーは感無量です」ドロシーの目には涙がごぼれていた。

 「大したことではないわよ。ただ、生き残りたいだけ」と言ってあわてて付け足した。

 「ほんと運任せだよね。でもこれしかないかなと思ったの。アッでも本当にユウシ君のことは好きよ」そう言って、微笑んだ。


ベアード大公執務室にて

 「北部、中央、西部の統治は順調です。すでに我々の息のかかった官僚、軍人が現地にて活動し、支配を固めつつあります」秘書官は書類を見ながら報告していた。

 「うむ」満足そうにベアードは答えた。

 「大公様、東部はそのままでよろしいのでしょうか」

 「構わない、東部は特に目立った産物もないし、単なる農業地帯だ。あそこは東部のダイワ王国との緩衝地帯にするつもりでユウシに任せてあるからな」

 「東部全体を渡すとは、少し多すぎませんか」

 「まあ、一応は連合大公国直轄領だからな、クサツの出方によっては、あとから取り戻すことも可能だろう」

 秘書官は少し、口ごもりながら思い切っていった。

 「女王との結婚も今一つ理解できません。主様の縁戚を嫁がせると思っておりました。クサツには殺人鬼や狂戦士など悪い噂に事欠きません。更にユウシ・クサツはすでに4人の妻を持っていましたし、女王の配偶者としてふさわしいとは思えません。なぜあのものに女王の配偶者などという名誉ある地位を与えたのでしょうか。もし、主様が不本意で起きたことでしたら、暗殺いたしましょうか」秘書官は言った。

ベアードはあきれたように言った。

 「クサツを暗殺する?お前自分の死刑執行許可書に自分でサインするつもりか。あの化け物を殺せるはずないだろう。そして奴らは絶対に復讐する。一族皆殺しは当たり前だし、下手すればこの北部が焦土になるぞ。西部の二の舞だ」

 「しかし、相手は人間です。殺せないはずはないです。大公配下の暗殺部隊を使えば可能ではないでしょうか」

 「やめとけ。南部大公の話は聞いたことはないか。あいつの父親は、全身火だるまになりながらも笑って海の上を歩いて敵船を吹っ飛ばしていたと聞くぞ。あいつも同じことができるのは間違いない。そもそも通常の方法であいつを殺すことができるのか怪しいところだ。もし、うまく殺せたとしても、次に出てくるのはタカシ・クサツやジョン・クサツだぞ。二人を暗殺できるのか?俺はやめろとしか言えないし、もし実行して失敗したらお前を切り捨てざるをえないぞ。まあ、それでクサツが納得してくれるかどうかはわからないがな」

 秘書官は黙ってしまった。


 「それにエリザベスの配偶者にユウシを据えたのはそんなに悪い手ではない」

 「なぜでしょうか」

 「一応、大公家から王家に嫁ぐ順番は生きているからな。本来ならば、今度王家に正室を出すのは、南部大公となる。しかし今回は女王であるから王配として男が嫁いでくることになるだろう。そうなると、まあ、南部大公は息子の一人を嫁がせてくるのは間違いない。せっかく北部閥が中央の支配を固めようとしているときに、大きな阻害要因となる。もし、わしが南部大公の立場ならば、中央のポストと、地方知事のポストを要求して領地の実質的な支配権を当然のように要求するだろう」

 「クサツならば南部大公は何も言わないということですか」

 「南部の民はジョン・クサツを救世主のようにあがめている。まあ、南部が亡びる寸前にあらわれ、自分たちを救ってくれた英雄だからな。その息子ならば文句を言いたくても言いにくいだろう。それにユウシ・クサツはこの内乱の英雄だ。英雄と王女とが苦難の末結ばれる、まるでおとぎ話のようではないか。民たちの人気は大変なもので、演劇の演目にもなっていると聞く。南部では、英雄の子はまた英雄ということで、ユウシの人気は大変高く、この結婚を支持する者は平民だけでなく、貴族にも多数いるとのことだ。南部大公が内心何を考えているにしろ、この結婚を認めざるを得ないだろう」そう言うと、大公はニヤリと笑った。

 「この国は、連合大公国と言っても、力を持っているのは北部のわしと南部のカルロス・シーサイドの二人だけだ。今のうちに力を蓄え、南部を圧倒し、この国をわれらベアード家の物とするのだ」

 秘書官は何も言わず、感激したような顔で、一礼して部屋を出て行った。


 秘書官がいなくなってから、彼は一人言葉をつぶやいた。

 「ただ、問題はこの件にダイワ王国とクサツ家がどう出てくるかだ。もし、南部に付かれたら状況がどう転ぶかわからん。とりあえず、クサツ家そしてその後ろにいるダイワ王国と友好を深めておくか」



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