第15話 敵地への潜入
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戦いが終わり、無事に父上からも一人前として認められ、あらためて、王から指令を下されました。
西の隣国、ターフ連合大公国に潜入し、ダイワ王国に敵対している東の大公、マイク・シーチを打倒せよというものでした。
事前に与えられた情報によると、マイク・シーチはダイワ王国への領土的野心があり、たびたび国境紛争を起こしているそうで、第5武闘兵団が対応して追い返しているが、ターフの全兵力を使ってダイワへの攻撃をもくろんでいるそうです。
しかし、現王であるグリル・モーツはそのことに乗り気ではなく、マイク・シーチと対立しているそうです。
さらに現王の弟であるスーフ・モーツは飼い殺しにされている自身の立場に不満を持っていて、更に高い地位につけるように求めているが、王はそれを拒否しており、そのため王を恨んでいるとのことです。
ターフ連合大公国は5つの大公が治める国で、東西南北と中央の5人の大公がおり、そのうち一番力の強い中央のモーツ家が代々王位を継承しています。東西南北の4人の大公は皇后を順番に出しており、現在の皇后は東の大公の妹に当たるそうです。
なお、側室は随時娶っており、現在は北の大公の妹が筆頭側室になっているといいます。
さて、僕の武闘士としての実力は兄や父上に劣る者ではないが、兄が身体強化、火、水、土、風属性に それらの複合魔法を使いこなせたうえ、かなりの威力であったのに引き換え、僕は風と水の適性がなく、その二つは全く使えません。
しかしその代わり、時空魔法と治癒回復魔法がかなり得意です。
ちなみに僕の妻たちは、フゥーが闇魔法、マゼンダさんは火魔法、ブルーカさんは水魔法、カラミティさんは風魔法が得意です。当然魔法使いのお姉さんたちは基本的な魔法は全部使えます。
最初僕だけで行く予定でしたが、フゥーが「私もついていくの」といってついてくることになり、魔法使いのお姉さんたちも「私たちも行くわよ。ユウシ君の力になりたいから」と言ってついてくることになりました。
さて、僕らは馬車に乗ってターフに向かいます。一応形としてはいろいろな国に旅しながら仕事をする移動商人兼冒険者のような感じで、国境の検問に向かいました。
国境の検問はそこそこ並んでいました。移動商人は戦争があろうと商売のネタがあれば自由に国境を越えて商売をするのが基本です。
「次の馬車こい」衛兵が言います。
僕が馬車を進めて、身分証を衛兵に渡しました。
「マイク15歳、商人と助手兼護衛3名か」と衛兵が訪ねますので、「はい、その通りです」と答えました。フゥーは亜妖精で目立つので、箱の中に隠れてもらっています。
「ふ~ん、なかなか美人ぞろいだな、少し俺たちの相手をしてくれよ」と下卑た笑いを漏らしました。
無言で3人ともダガーナイフを取り出しました。
「冗談だよ、とさっさと通りな」慌てたように言って次の馬車に移りました。
しばらく進んでから、「みんな大丈夫だった?」と尋ねたところ、「衛兵の質が落ちているわね。ほとんどチンピラじゃない」マゼンダさんが呆れたように言いました。
「おそらくまともな兵隊は別のところで動員しているのではないかしら」ブルーカさんは考えるように言いました。
「とりあえずターフ連合の首都であるモーツタウンに急ぎますか」そう言うと、箱に隠れていたフゥーを出してから、馬車を時空魔法の次元袋に収納すると、大きな板を作りました。みんなこの板の上に載ると、僕は板を浮かし、猛スピードでモーツタウンに向かいました。
僕の時空魔法は、無限にものを収納できるだけでなく、このように空間移動も可能です。ちなみに作り出した板は下から見上げると、普通に空が映るようになっており、僕らの移動が他人に発見できづらいようになっています。
その日の夕方にはモーツタウンに到着しました。僕らは町に入ると、商人ギルドに挨拶しに行きました。ついでにいろいろうわさを聞いてきました。
話を聞くと、いろいろきな臭い状況のようです。
モーツ王の近衛師団は現在中部と東部の境界付近にて東部大公軍と合同訓練中であり、首都には留守番の警備隊がいるだけのようです。これは、本来はその地域に駐屯する師団、東部は第2師団が東部大公軍と一緒に訓練するのが普通とのことでしたが、今回、王国軍の派兵要望を取り下げる代わりに東部大公軍と近衛師団の合同訓練を要望し、聞き入れられたそうです。
王弟のスーフ・モーツは屋敷にこもって誰とも会わない状態だそうです。
とりあえず僕らは宿をとって、皆で今後の方針を確認しました。
まずは商売の振りをしながら情報収集と偽の情報を振りまくことにしました。
東部大公は王のすげ替えを狙っていて、自分の息のかかったものに王位を継がせてから連合大公国全軍をもってダイワ王国に攻め込むつもりだという噂です。
ある程度うわさが広まった時点で僕自身がこっそりと王に謁見し、東部大公の討伐を依頼してもらい、東部大公とその一族を殺して、後釜に親ダイワ王国の者を任命してもらおうと考えています。
誰が親ダイワ王国なのかだって?
それはダイワ王国側に考えてもらい、僕は条件をおぜん立てしていこうと考えています。それによって西部国境の安定を図るというミッションを達成しようと考えています。
スーフ・モーツ屋敷にて
スーフ・モーツは屋敷で一人の男と会っていた。「クーデターの用意は準備万態整っております。冒険者にまぎれて東部軍の兵士たちが首都に入りこんでいます。警備部隊のミール隊長の抱き込みも完了しており、クーデターが起きても、王国直轄の兵たちは動かないようなっています。安心して、行動を起こしてください」
「私は兄王を殺して王位を簒奪する。理由はダイワ王国に対する優柔不断な態度であり、これは賄賂をもらっていることが原因だとする。そして東部大公は演習中のモーツ直轄軍の動きを制約し、私への支持を表明する。同時に残り3大公に対して、領地の安堵と地位の保証をし、懐柔する。首都に残っているミール将軍率いるモーツ軍は私の指揮に入る。以上でよかったのだよな」スーフ・モーツは貧乏ゆすりをしながら言った。
「その通りでございます。陛下。東部大公はその見返りとして、ダイワ王国との戦争での助力と、妹である皇后とその子供たちを助命すること、この二点が東部大公の要求です」
「他の大公の縁戚である妃が生んだ娘はどうする」
「そちらはご自由に。我々が必要なのは、東部大公の妹である皇后さまとその血を継ぐ二人の王子の命さえ問題なければご自由に」と言って、ニヤリと笑った。
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