第12話 グレタとの再会
もうすぐ終わりです。もう少しお付き合いいただければありがたいです。
国の開発、発展を進めながら、グレタさんの行方も探した。最近まで、このあたりで冒険者として働いていたらしいが、迷宮が発見されたことで、他の多くの冒険者たちと一緒で迷宮の方に流れていったらしい。僕は、クサツ公国がある程度安定すると、迷宮に向かう旨、皆に言った。
迷宮のある隣国、クリスタル王国に入国許可を取り、迷宮に向かった。
メンバーは僕とリンダさん、フィーとネスカさんの4人のいつものメンバーである。
迷宮に着くと、直ぐに冒険者ギルドの出張所に向かった。
迷宮ができたことで、何もなかったこの土地に小さな町ができていた。
多くの冒険者が来たことで、宿泊施設、飲食店が進出、冒険者ギルドも出張所ができ、迷宮からの産物の買取所ができた。
迷宮を管理するための役所や治安維持のための兵士も来て、町の人口は次々と増えていった。
そんな発展していく町の様子を眺めながら、ギルドに向かった。
ギルドはバタバタとしていたが、ちょうど冒険者たちが迷宮に潜った後なのだろう、少し余裕があるようだった。
「すみません。教えていただきたいことがあるのですが」
「はい、迷宮に関することですか。それでしたら、こちらの冊子に詳しく書かれていますので、お読みください」受付の女の人は慣れたように、冊子を渡してきた。
「実は人探しをしていまして、グレタという魔法使いなのですが」僕は尋ねた。
「グレタさんですね。はい、今こちらにいらっしゃいますね。あっ…」受付嬢は書類を見ながら話しをしていて、急に言葉を切った。
「どうしたのですか」僕が訪ねると、「グレタさんは、一週間前に迷宮に潜ってまだ出てきていませんね。う~んこれはもうだめかな」と受付嬢が言った。
「どういうことですか」僕は不安に駆られながら訪ねた。
「この迷宮は発見されたばかりで、魔物も産物を豊富にあるので、だいたいの冒険者は朝入って、夕方出てきて、獲物を換金するのがほとんどなのです。たまに、迷宮で一泊する者もいますが、ある程度大きなパーティで、得られた産物を運べる余裕のある冒険者に限られます。グレタさんは、シングルで潜られているので、だいたいいつも日帰りだったようです。それが、もう一週間も戻ってこないのであれば、おそらくは…」
「迷宮には、直ぐに潜れますか?」僕は焦ってそう言った。
「大丈夫です。ギルドを出て、直ぐ左に建物があります。そこに入ると、係員がいますので、入場料を払えばすぐに入れます。あと、迷宮に入る際、入場届を出していただくことになっています。迷宮でなくなった場合の後処理について、有料ですが依頼することができます。死亡が確認されている場合は直ちに、未帰還の場合、1月たって出てこなかった場合に執行されます。最近は、未帰還者が多くなっており、1月の規定を見直すことが検討されています」
「ありがとうごさいます。早速潜ってみます」そう言って、僕は隣の建物に向かった。入場料は一人銀貨3枚だった。銀貨5枚で安い宿なら泊れるから結構高いが、それ以上のもうけがあるのだろう。
係員の説明では、産物の買取は冒険者ギルドで行うこと、その際1割の税が取られることを言われた。
地図はあるかと尋ねたら、簡易版、通常版、詳細版とあるとのこと、詳細版をお願いしたら、金貨3枚とられた。後、地図は毎月更新されるとのこと。いい商売をしている。
迷宮の中は、一定の間隔で明かりがともされており、また石造りの通路で大人が5人ぐらい並んで歩けるぐらい広く、とても歩きやすくなっている。
迷宮経験者のリンダさんが地図を持ち、僕たちを先導した。
迷宮の地下1階は多くの冒険者がいて、地図を広げて確認する者やパーティで打ち合わせする者、下の階に向かう者などが数多くいた。
どうも1階の魔物は狩りつくされ、産物も取りつくされ、単なる通路となっているようだ。
地下2階に降りると少し人が減ったが、あまり状況は変わっていなかった。ただ、まだこの階の魔物は狩りつくされていないのだろう。オオカミのような魔物3匹と戦うパーティがいた。
助力しようとしたら、リンダさんに止められた。
「手を出しちゃダメ。魔物は初めて会ったパーティが倒す権利があるの。もしそれを戦っているパーティの許しがなく、横から奪えば、冒険者ギルドから追放を含めた重い処分があるわ」といって、大声で「手伝いがいるかしら」と戦っているパーティに聞いていた。
「うるさい、さっさと行け」戦っているパーティの男がそう怒鳴った。
リンダさんは「そういうわけだから行きましょ」と言って、その場をあとにした。
3階、4階と進むにつれ、人の数が減り、魔物の数も増えてきた。
僕らは4階で初めてクマのような魔物と遭遇した。僕は魔法で、ウインドカッターを使って、首を切り落とした。死体は、次元袋に入れた。
その後何回か、魔物と遭遇した。そんなに強くないので、だいたい一撃で仕留めて、次元袋に収納した。この次元袋、前領主が持っていたもので、かなりの容量があり、今回役立てようと持ってきた。
5階に降りると、冒険者の姿はほとんど見かけなくなった。地図を確認すると、どうも6階に下りる階段までが発見されており、6階以上は未探査らしい。この5階もまだ十分に探査されておらず、魔物もかなり強いらしい。
ここで、グレタさんの気配を探ることにした。僕とリンダさんはこの階にリンダさんの気配を探査した。僕は見つけることができなかったが、リンダさんはかすかだが、グレタさんの魔力を感じることができた。
それは小さな部屋になっている場所だった。
行ってみると、かなり小さな部屋で、奥にオリハルコンの鉱石の塊があった。
魔力を流してみると、その部屋の床には移動の魔法陣が書かれており、オリハルコンにつられたパーティがこの部屋に入ると、どこかに飛ばされてしまうようだ。
魔法陣を調べたリンダさん曰く、魔法陣が機能を停止しているため、どこに飛ばされるかわからないとのことだ。
グレタさんがどこに飛ばされたか調べられないかと、移動の魔法陣を調べていると「おい、邪魔だ。どけ」と突き飛ばされた。
受け身を取って立ち上がると、5人組のパーティがずかずかとその部屋に入っていく最中だった。 「お宝発見~やったぜ、俺たち付いてる」とリーダーらしき男が言った。
「おい、そこは…」危ないぞと言いかけたところで、5人組のパーティは消滅していた。
リンダさんが魔法陣を調べると、転移の魔法陣が発動していて、青白く光っていた。
「転移先が分かったわ。10階ね」リンダさんが言った。
グレタの戦い
私、グレタは部屋の隅でうずくまっていた。迷宮に入るとき非常用として用意した3日分の食料も尽きかけていた。
5階でオリハルコンの塊を発見したのは良いが、床に書かれていいた移動の魔法陣を発動させないよう、魔術を行使していたら、後ろからいきなり蹴飛ばされた。
魔法に集中して気がそれていたため、そのまま部屋の中に突き飛ばされた。なんとか発動をさせまいと、急遽浮遊の魔法で、地面につかないようこの身を宙に浮かべたが、私を突き飛ばした馬鹿どもがのしのしと何の警戒もなく部屋に飛び込んだおかげで、魔法が発動、私も巻き込まれて、ここに転移してしまった。
一緒に転移してきた連中はどうなったかって?
いきなりの転移であわてたのだろう。部屋から飛び出していったら、断末魔の声がして、それっきりだった。
私は様子を見るためにこっそり手入り口の壁に隠れて、外を見たが、巨大な虎が無数に広場におり、何かをむしゃむしゃ食べていた。
周りを観測すると、巨大虎の巣に入りこんでしまったらしい。
巣の周りに小さな小部屋がいくつもあり、どうもあのオリハルコンの部屋からランダムに飛ばされるらしい。飛ばされたときに、その部屋の出入り口から光が漏れ見えるからだ。虎たちは、光が見えると、その出入り口で待っていて、飛び出してきた冒険者たちを食っていた。
私の魔法で、2・3匹なら倒せるが、巣から出るまでに絶えず襲ってきたら、巣の出口にたどり着くまでとても魔力が持たない。
私はチャンスを待った。しかし、一週間待つけれど、チャンスは訪れなかった。
冒険者たちは1日に何回か飛ばされてきたが、一瞬で皆殺しにされていた。
もしかしたら、他の部屋に生き残りがいるかもしれないが、連絡を取る手段もない。
虎たちが寝ている隙にと思ったが、虎たちは交代で休んでいるようで隙が無かった。
食い伸ばしていた食料も着きかけており、だめもとで虎の巣に突っ込むかどうか悩んでいた。
その時だ。虎の巣の入り口から氷結魔法が放たれたのは。出入り口にいた虎たちはあっという間に凍り付き、氷像のようになった。
虎たちはあわてて巣穴の入り口に向かったが、出入り口は狭く、数頭が出入りできるだけのスペースしかないため、虎たちで詰まってしまい、身動きが取れなくなってしまった。
そこに風魔法によるウインドカッターが虎たちを切り裂き、絶命した。
私はチャンスとばかりに、部屋から飛び出し、後ろから虎に攻撃を加えた。
数頭の虎達が炎に包まれ、絶命した。外の部屋からも生き残りの冒険者が出てきて、虎達に襲い掛かった。
虎達は恐慌を起こしたように逃げ惑った。ウインドカッターと氷結魔法を中心に、全員の活躍で虎たちを次々と倒していき、ついには虎達は全滅した。
虎の死骸を乗り越え、一人の男の子がこちらにやってきた。後ろには少女や女の子や女性を連れていた。
女性は見知った人物だった。「リンダ隊長ですか?」
リンダは微笑み、「お久しぶりね、グレタ」と言った。
「グレタさんお久しぶりです」一人の少年が微笑んでいた。
その少年はとっても好みのタイプの少年だった。何を思っているの、と頭を振って「初めまして。私はグレタと申します。前にどちらかでお会いしたことがありましたでしょうか」
そういうと、その少年は、えっという顔をして、涙をぽろぽろこぼし始めた。
あわてた私は、「ごめんなさい、大丈夫?」と言って、涙をふいいてあげた。
リンダ隊長やほかの二人の少女もアチャーとばかりの顔で、頭を抱えていた。
「ひどいです、忘れるなんて。僕です、タカシです」そう言いながら、ぽろぽろ涙を流し続けていた。
「えっ、タカシ君!ごめんなさい、すごくカッコよくなっているからわからなかったの。許して」私は謝った。
「一つお願いを聞いてくれれば許します」タカシ君は言った。
「うん何でも言って。お姉さんができることなら何でもするから」慌てて私はそう言った。
もしかしたら、エッチなお願いされるかも、まあ、タカシ君ならいいか、命を助けてもらったお礼もあるし。
「僕と結婚してください」タカシ君は間髪入れずに言った。
「ええ、いいわよ……えっ、えっ」私はあわてた。
「みんな聞いたよね。グレタさん取り消しは無しですよ。何でもお願い聞くって言いましたよね」
「あきらめなよ。グレタ。タカシ君はお前を探してここまで来たんだよ。お前の魔力を発見してから5階からここまで、いや早いこと早いこと、見敵必殺とばかりに、魔物を倒しまくってあっという間に10階まで下りてきて、お前の魔力を発見すると、間髪入れずに魔法で虎達を皆殺しにしたんだよ」リンダ隊長はにやにやしながら言った。
「タカシ君、私嘘ついてたの」
「ああ、人種じゃないんですよね。問題ないです」ニコニコしながらタカシ君は言った。
「あっそうだ。みんなを紹介しますね。この子は、正室のフィーです。親の決めた許嫁です」「フィーなの。フィーお姉さまと呼ぶの」
「えっ、正室?この子亜妖精よね。というか、タカシ君奥さんいたの?」
「ごめんなさい。貴族の習わしで、正室は親が決めることになっているんだ。グレタさん嫌ですか」タカシ君は申し訳なさそうに言った。
「いや、貴族の習わしは知ってるし、複数の奥さんを持つことは普通なのよね。大丈夫だけど、人種じゃなくてもいいの。亜妖精って、かなり恐れられている亜人よね」
男をさらい、おもちゃにした挙句、最後には食べてしまうと言われ、男たちには恐怖の対象となっている亜人だ。外見も虫のようで、とても性の対象になりえるものではないというのが、世間一般の評判だ。
「フィーは、父と亜妖精の間の子で、異母妹に当たります。子供の時から一緒ですけど、特に怖くはないですよ」と不思議そうな顔をしていた。
肩を叩かれたので、そちらを見ると、「タカシ君少し変わっているから。まあ、慣れなさい」とリンダ隊長が達観した顔で言った。
「あっ、次はリンダさんですけど、グレタさん知ってますよね」
「私は第三夫人ね。よろしく、グレタ姉さん」とにやにやしながら言った。
「それで第四夫人のネスカだ。ダークエルフさ。よろしくな、グレタ姉」にやにやしながら言った。
「グレタさんは第二夫人ね。みんな仲良くね」とタカシ君は言った。
私の頭の中は疑問符だらけだが頭の整理が追い付かないので、あとで確認しようと決意した。
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