第1話 魔法にあこがれる武闘士
本を読んでいたら、急に思いついて書いてみました。もし、ブックマークが3つ以上取れたら連載します。
僕は、その魔法を見た時、あまりの美しさに言葉を失った。両手の間から魔力が練られ、それが凝縮していく過程の中で、輝きが増し、それが手からはなたれる瞬間、閃光が走った。
それはまるで、地上で花火が輝いたようだった。
その時、僕は思った。僕は魔法使いになると。
僕の家はダイワ王国に使える武闘士の家系であり、代々武闘士として王国に仕え、伯爵の地位をいただいていた。
武闘士とは、魔力を用いて、身体能力を活性化し、戦う戦士のことである。特に我が家はその能力が高く、曾祖父は一人で一万の敵と戦い、敵をほぼ壊滅に近い状態にして戦争そのものを終わらせたこともある歴史に名を遺すような武闘士だった。
僕はその家の長男として生まれた。そしてその血を色濃く受け継いだ。幼少の時から武闘士として訓練を受け、7歳のときには、国内有数の武闘士として名が知られるようになっていた。
この国にも魔法使いがごく少数だがいる。普通、戦争では魔法使いが魔法を撃ち合い、そのあと、騎士や兵士が突入し、敵を粉砕するが、我が国の場合、魔法使いはあくまで本陣を魔法攻撃からの防御に徹して、武闘士が雄たけびを上げながら突っ込むというのが、一般的な戦法だ。
敵の魔法攻撃はどうするかって?武闘士は体に魔力をまとわせているので、多少の魔法攻撃などかゆみすら覚えない。剣も槍もはじくし、一発殴れば、盾を持った騎士でも盾ごと粉砕してしまう。
近隣諸国では、狂戦士の国と恐れられていた。我が国は、気候もよく、食糧生産力も高く、鉱物資源も豊富であるため、他国から狙われやすいのだが、この武闘士がいることで他国からの侵略を防いでいた。
僕はその武闘士としての高い能力を見込まれて、8歳の時には、近衛武闘兵団の戦士として働きはじめた。
部隊は王宮に駐屯しており、国内でも優秀な武闘士が集まっていた。
武闘士の訓練は、全身と体内に魔力をまとわせ、それが途切れることなく、戦闘ができることが必須である。
よって訓練中は魔力を一定の状態に保ち、どんなことがあっても揺るがないこと、かつ身体強化と防御のための魔力を最大出力で出すことが重要であり、並の武闘士であれば1時間もたないところを半日出し続ける必要がある。
それができるものが近衛武闘兵団に入ることができ、訓練が終わると、半数以上の戦士が魔力切れでぶっ倒れるのがいつものことである。
ある時、訓練を終えて帰宅しようとして、急にトイレに行きたくなった。兵舎からは離れていたため、兵舎のトイレまで戻るまでもつかどうか不安だったため、近場でトイレを探し、なんとか見つけて用を足した。
用を足し終わって、トイレの外に出てふと周りを見ると、まったく見覚えのないところだった。
王宮は広く、いつも決まった順路を行き来していたため、他は全く分からない。
うろうろと知ってる道を探しながら、とぼとぼと歩いていた。
ところがいくら探しても全然見つからない。おまけに人通りもない。困ってしまい、僕は廊下に座り込んでしまった。
「ぼく、どうしたの」声をかけられふと見ると、きれいなお姉さんが立っていた。
「道に迷ったの」僕がそう答えると、ニコッと笑って「じゃお姉さんが連れて行ってあげるよ。どこへ行きたいの?」と言った。
僕はいつも出入りする出入り口の特徴を伝えたら、お姉さんは「軍用の出入り口ね。わかったわ、連れて行ってあげる」と言って、僕の手を引いて歩き始めた。
歩きながらお姉さんは僕に色々話しかけてくれた。きっと迷子で気弱になっている僕の気を紛らわせるためだろう。
お姉さんの名前はグレタということ、職業は魔法使いであること、王宮に仕えていること、年は17歳でフルト王国にある魔法学校を卒業して一年ほど冒険者をした後、この国の魔法使い募集に応じて採用されたとのことだ。
「君はお父さんが武闘士なのかな。それで、お使いか何かに来て、迷子になっちゃったのでしょうね。大丈夫、もうすぐ出口だからね」と言って慰めてくれた。
僕が正規の武闘士で、トイレに行って迷子になったなんて恥ずかしくて言えません。僕はあいまいにうなずいた。
グレタお姉さんは出入り口まで送ってくれて、「じゃ、僕気を付けて帰ってね」と言った。僕はどういうわけかまた会いたいと思い、「ありがとうございました。グレタお姉さん。僕の名前はタカシです。また、会いたいです。どこへ行けば会えますか」と尋ねた。
グレタお姉さんはちょっとびっくりした顔で、そのあとニコッと笑い、「私は普段は魔法小隊の兵舎にいるわ。行き方はちょっと待っててね」そう言って、内ポケットからメモを取り出して、さらさらと書いて渡してくれた。
「グレタお姉さんありがとうございます。お礼をもっていきますね」そう言って、お互いに「またね」と言って僕は家に帰った。
翌日、訓練が終わると、グレタお姉さんのもとを訪ねた。手にはお礼のお菓子をもってだ。家に帰ってから、家令のセバスチャンに言って、この街でも評判のお菓子を手に入れてもらった。ちなみに両親にはこのことを言っていません。迷子になったなんて恥ずかしすぎてとても報告できません。
魔法小隊の詰め所は王宮の端にある小さな建物だった。隣は魔法の練習場になっていたが誰もおらず、門衛もいないので、僕はコンコンとノックした。
すると、一人のお姉さんが出てきた。
「僕、こんなところにどうしたの?」そのお姉さんは言ったので、僕は「昨日迷子になって、こちらのグレタお姉さんにお世話になったので、そのお礼に来ました」と言った。
そのお姉さんは「グレタ、かわいい男の子があなたを訪ねて来たよ」と大声で言った。
「えっどうしたの」という声が聞こえると、そろそろと何人かの女の方が顔を出してきた。
「あれ、タカシ君じゃない」その声を聴いて、僕がそちらの方を見ると、グレタお姉さんが立っていた。
「グレタお姉さん、昨日はありがとうございました。昨日のお礼に来ました」と言うと「そんないいのに。まあ、中に入って」と言った。
中に入ると、建物の中には30名ほどの女性が思い思いにくつろいでいた。
グレタお姉さんは急いで、机の一つを片付けると、「ごめんね、散らかっていて」と言って席を進めてくれた。
「グレタお姉さん、昨日はありがとうございました。これ、ほんの心ばかりのお礼です」と言ってお菓子を渡した。
「そんな子供が気を遣わなくてもいいのよ。昨日は無事にお家に帰れた?」と心配された。
「はい、大丈夫です」その時、周りから視線を感じた。
部屋にいる女性たちがみんな僕のことを見て、にやにやしていた。中には、僕の全身をなめるように見ているお姉さんもいて、少し居心地が悪い思いだった。
「グレタお姉さん、もしよかったら魔法を見せてもらえないですか」建物から出る口実にグレタお姉さんにお願いした。
グレタお姉さんは微笑んで、「いいわよ。この国では、魔法は軽視されているけど、そのすごいところ見せてあげる」と言って、僕と一緒に練習場に行った。
何人かのお姉さんがついてきて、僕らのことをにやにや見ています。
「じゃ、タカシ君、火魔法を見せてあげる」そう言って、魔法を練り始めた。
火の塊が目標に当たり、目標が跡形もなく消滅すると、グレタお姉さんはどや顔で言いました。「魔法ってすごいでしょ」
「はい、初めて見ましたが、すごいです」僕は興奮して言った。
「じゃ今度は私が風魔法を」「いや、私が水魔法を」「やっぱり風魔法でしょ」ついてきたお姉さんたちが次々と魔法を見せてくれた。どれもすごかった。
「お姉さんたちすごいです」僕は感激のあまり大げさな身振りで、興奮していることを伝えた。
お姉さんたちは「うあ、可愛い~」と言って、僕を抱きしめた。もみくちゃにされていると、グレタお姉さんは「タカシ君が困っているでしょ」と言って、僕を救い出してくれた。
「ねえ、グレタお姉さん、魔法って僕も使えますか?」そう興奮して言うと、「う~ん、魔力の有無は先天的なものだからね。とりあえず、魔力の有無を調べてみようか」そう言って、なにか小さな石を取り出しました。
「この石に触ってみて」グレタお姉さんはそう言うと石を僕に渡してきました。
僕が石に触ると、石が光りました。
「タカシ君、君魔力あるわよ。魔法が使えると思うよ」と嬉しそうに言った。
その日から武闘士の訓練の後、毎日のようにグレタお姉さんのもとに通った。
グレタお姉さんは火魔法が得意で、僕に教えてくれた。
他のお姉さんたちもいろいろ魔法を教えてくれた。
グレタお姉さん曰く、「タカシ君の魔法は初級と中級の間のクラスね。でも努力次第では、中級になれるわ」と言ってくれた。
10歳になったある時、父から「お前、武闘士の訓練が終わると、いつもどこへ行っているのだ」と聞かれた。
僕は、この国で魔法使いがよく思われていないことを知っていたので、ひょんなことから可愛いお姉さんと知り合いになって、遊びに行っていると言った。
父はにやにやとすると、「お前も色気づく年になったか。わしも初恋は9歳の時だったな。お前の祖父と同僚だった方の娘だったよ。お前も俺の子だな」と言った。
父はかなりの艶福家で、正妻である母のほか二人の側室がいます。今は落ち着いていますが、一時期は愛人も数えきれないぐらいいたとか。
「もし、その子をものにしたらすぐに俺に言えよ。色々アドバイスしてやるから。女はものにした後が大変だからな」そう言って、父は笑った。
いや、そういう関係じゃないんだけど、魔法の師匠と弟子なんだけど。まあ、いいか、グレタお姉さん好きだし、僕の奥さんになってくれたらいつも一緒にいられるな、と単純に思った。
グレタお姉さんところに行って、父との話をしたらすごい微妙な顔をされた。
まあ、そうですよね、こんな子供と結婚なんて嫌に決まっている、すごく失礼なことをしたと謝った。
「ううん、そうじゃないの。ごめんね、傷ついた?」
「いいえ、こちらこそごめんなさい。変なことを言って。グレタお姉さんみたいな美人が僕なんか子供を相手にするはずないのは当たり前です。僕を嫌わないでください」
そう言うと、グレタお姉さんは体をぶるぶると振るわせて黙ってしまった。
あっ、これはまずい、本格的に怒らしてしまった。僕は「本当にごめんなさい。今日は帰ります」と言って逃げ帰った。
何日かして、僕は謝罪の意味で、お菓子をもって宿舎を訪ねると、すっかり顔なじみになったお姉さんからグレタお姉さんが魔法小隊をやめたことを知らされた。
突然、退職届を出して、旅に出てしまったとのことだった。
その日僕は号泣しました。僕の不用意な一言がグレタお姉さんをそこまで傷つけてしまうなんて。
ひとしきり泣いてから、僕は決心した。
僕は魔法使いになる。そして、グレタお姉さんに会って謝るとともに、あなたのおかげで立派な魔法使いとなったことを示すんだ、と心に決めました。
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先に予告した転生したサムライの話は6月には掲載したいと思っています。