無能と呼ばれた男、無双する
まず状況を整理しよう。
僕たちの前に現れた黒マントの男は、どこからどう見ても真正面から戦うタイプではない。さっき毒矢を放ってきたときのように、こっそり陰から獲物を仕留めるのが得意だと思われる。
ではなぜ、あえて僕らの目の前に現れたのかといえば。
あくまで推測に過ぎないが、Sランク冒険者たるユメルを戦線から追い払うためだろう。
だから治療のタイムリミットをダシにして、ユメルを誘惑し――。
僕だけを戦線に残したかったんだと思う。
なぜこいつがミスリアの毒を知っているのかが謎だが……。いまはそれを考えているときではない。いったん思考から除外する。
つまり男の純粋な戦闘能力は、ユメルには遠く及ばないはずだ。まあSランク冒険者は世界最高峰クラスの実力者だし、それも当然だけれど。
だからきっと、ユメルを「追い払えなかったときのための保険」を用意しているはずだ。
目の前の男だけに気を取られていてはいけない。
「ふふ……。私をハゲと愚弄した罪、しっかり償わせてやる!」
まだ頭のことを根に持っているのか、黒マントの男は血走った目でユメルをロックオンしている。右手には剣が握られているが、これをそのまま「剣で戦うつもり」だと認識してしまってはいけない。
なにか罠が仕掛けられているはずだ……!
そうして周囲の気配を探っているうち、僕はその気配を感じ取った。足音ひとつたてぬよう、じりじりとこちらに近づいている二つの気配。どうやら背後から、僕らの首を刈る機会を窺っているらしい。
「さあ、かかってこい! 私を怒らせたことを後悔させてやろう‼」
……ってことは、ああやって男がピーチクパーチク騒いでいるのは、その足音を気取られないためかもしれないな。実際、二人が近づいてくる音はほとんど聞こえない。
馬鹿っぽく見えるが、なかなか策を巡らせているじゃないか。
となれば、僕がやるべきことは一つ。
補助魔法を発動し、男二人の敏捷度と攻撃力を落とすことだ。
さすがに気配のことをユメルに耳打ちしている時間はないだろうし、それを悟られようものなら速攻で攻撃してくるだろう。だから二人の戦闘能力をできるだけ落とすことで、不意打ちにもユメルが対処しやすいように持っていきたい。
一秒。
二秒。
三秒。
「――いまだ!」
二人組が突進してくるタイミングに合わせて、僕は補助魔法を発動。
後ろからユメルの首を狙っているだろう二人の速度を、半減以下にまで落とした。
「なにっ……!」
「急に体が重くッ……‼」
二人組は両手にナイフを携えていたが、補助魔法の影響で思うように動けず。
そのノロマな襲来を、Sランク冒険者たるユメルが気づかないわけがなかった。
「そこよっ‼」
ユメルの振り払った剣先が、二人組の胴体を的確に捉える。
ベルフレドみたいに腕力だけの剣士ではないので、こうした咄嗟の襲撃にもしっかり対応してくれるな。やはり前のパーティーよりも、ユメル一人と組んだほうが格段に動きやすい。
後ろから襲い掛かってきた二人組は、そのままなすすべなく地面に伏していった。
「ば、ばばばば、馬鹿な⁉」
取り残されたハゲ――否、黒マントの男が絶叫をあげる。
「どうして急に二人の動きが……! ユメル・ハーウェイ、貴様はSランクの剣術を身に着けつつも、魔法の類まで扱えるというのか……‼」
「違うわよ。私じゃない」
ユメルはちらと僕に視線を向けると、すぐに油断なき表情を男に戻す。
「全部そこの彼――アデオルくんがやってくれただけ。私がこの襲撃にしっかり対応できるよう、全部計算してくれたのよ」
なんと。
彼女にはまだなにも話していないはずなのに、もうすべて伝わっているとは。
これもSランク冒険者の成せるわざ……といったところなのだろうか。
「馬鹿な! ありえぬ!」
しかし黒マントの男は、なおも喚き続けるのみ。
「その男はレベル1だぞ! Aランク冒険者とは名ばかりの寄生虫だ! そんな人間が、我らの上をいくなどと……!」
「あら、簡単な話よ。アデオルくんはあなたより格段に強くて――そしてきっと、私よりも強い。それだけの話よ」
「な…………」
「じゃ、さようなら。あなたたちが気を失っている間に、仲間の冒険者にあなたたちを連行してもらうから」
「ま、待て……!」
しかしハゲの懇願は叶わず、無惨にもユメルに会心の一撃を見舞われていた。
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